東方 混純録〜月の希望の章〜illusion raid(イリュージョン レイド)   作:秘幻

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第4話《委ねられた未来》

現在、智里、想鵐、そしてエメラードがいるここ、百夢草原では暗黒の軍団に対して紅魔館と白玉楼の戦力による武力衝突が起こっていた。

ここは幻想郷側の領域だったのだが、暗黒軍の進行により戦闘状態となった。しかし、幻想郷側の予想していた進行時期よりも早く、幻想郷側はここで苦戦を強いられる事になってしまった。

一気に四つの地点で戦闘が起きている現状況ではそちらに援軍を送る事は不可能と本部に言い渡された紅魔、白玉楼連合は少ない兵力でこの場を切り抜けなければならないと言う事態に陥っていたのだ。

 

 

 

智里「で、そんな戦況下に俺たちは放り出されたって事か?」

 

 

 

暗黒兵の女性への尋問が終わった智里は想鵐と共に湯のみを持ちながら外で風に当たっていた。

 

 

 

想鵐「残念だけど、そう言う事になっちゃうね。戦力がかなり限られている幻想郷に対して暗黒は戦力不明と来た、理不尽にも程があるよ。」

 

 

 

忘れられた者たちが集う幻想郷、故にその数がお世辞でも多いとは言えない。しかも幻想郷と言う限られたフィールドでの防衛戦、数えるだけでもウンザリさせられるようなハンデの数である。

 

 

 

智里「雀の涙程の戦力か……。確かに理不尽だな。」

 

 

 

想鵐「どうするかね、力任せにやれば全滅だ。」

 

 

 

智里「それを考えるのは俺らじゃ無い、紫だ。」

 

 

 

現在、智里達は幻想郷側にいるが別に戦力に加わっている訳では無い、だから彼らは自由に動けるのだ。しかし、だからこそ彼らは幻想郷の軍団に対する発言権も無い。

つまり、今の彼らに出来る事は無いのだ。

 

 

 

▽△▽△○△▽△▽

 

 

 

零侍「………………ここは?」

 

 

 

気がついたら僕は両手を鎖に繋がれ、バンザイの体制で拘束されていた。

確か、僕は火山でアグニスと呼ばれる殺人兵器と戦い、勝った。

けど、その後後ろから椛に……。

そこまで思い出すと意識が覚醒する。

 

 

 

零侍「クソ!」

 

 

 

手にかけられた鎖を外そうと引っ張るが案の定、外れ無い。鎖は冷たく、コンクリートで出来た暗い部屋に金属音を響かすだけだった。

そもそも何で僕はこんな所にいるんだ?考えていると何者かの足音が近づいて来て、足音の持ち主が僕が閉じ込められている牢屋の前で立ち止まり、こちらを向く。

 

 

 

?「……目が覚めた様ですね。」

 

 

 

零侍「……なんの真似だ?椛。」

 

 

 

零侍は鉄格子の向こう側にいる椛を睨む。手の鎖が無かったら鉄格子に顔を擦り付ける程に近づいていただろう。

 

 

 

椛「人の事を誰だと言った割にはこう言う場所ではすぐに椛と呼ぶんですね。」

 

 

 

零侍「そんな訳あるか。今のお前だって俺の知っている椛では無い。」

 

 

 

椛「なら何で椛と呼ぶんですか?」

 

 

 

椛の冷たい目が零侍を見る。

 

 

 

零侍「誰もお前が完全に椛じゃ無いとは言っていない。」

 

 

 

零侍は椛の視線に怯む事無くそう言う。

零侍が感じているのは椛が別人と言う事では無く、椛の心が変わっている事を感じているのだ。

 

 

 

椛「そうですか、まぁ良いです。どの道にせよ、貴方はここからは出られない。」

 

 

 

零侍「言ってくれるな……。」

 

 

 

椛「事実ですから。」

 

 

 

こうもあっさりと言われるも返す言葉が無い。

だが零侍は「フッ」っと笑った。

 

 

 

零侍「じゃあ、俺がここから『脱走出来る』と言ったら?」

 

 

 

すると椛の耳がピクッと微かに動く。

 

 

 

椛「……負け犬の遠吠えですね。」

 

 

 

零侍「自分も犬のくせに。」

 

 

 

椛「狼です!」

 

 

 

頬を少し赤くして怒る椛、全てが変わってしまった訳では無いと分かる事が出来た。その為、零侍は少し口元が微笑んでしまった。

結局、椛はあの後何処かへ行ってしまった。

あんないかにも脱出出来ますよ的な事を言ってしまった以上、やらなければならない。

 

 

 

零侍「さて……どうするか。」

 

 

 

あちこちを見てみるが、分かる事と言えば、自分が檻の中にいる事の再確認と能力が全般的に使えない事である。

能力が使えない理由としてはさっき見つけたのだが胸の部分に謎の機械がつけられていた。恐らくこれで能力の制御などをされているのだろう……。

いずれにせよ、まずはこの両手の鎖をどうにかしなければ……。

どうにかなら無い物かと考えていると声がかかる。

 

 

 

?「……お前、幻想郷側の者か?」

 

 

 

零侍「……!誰だ?」

 

 

 

零侍は下げていた顔を上げる。

すると声の持ち主は自分の入れられている檻の反対側にいる事が分かった。恐らく自分と同じ囚人だろう。

 

 

 

煉地「フン、テメェと同じ囚人だ。」

 

 

 

檻の隙間から入って来る月の光が男の顔を写す。

髪は赤に黒を微量に混ぜたダークレッド。

右頬に傷がある。

まさに何か危ない橋を渡ってきたって感じである。

 

 

 

零侍「幻想郷側に加担して捕まったのか?」

 

 

 

煉地「俺がこんな所に捕まってる様な奴に見えるか?」

 

 

 

零侍「うん、と言うか実質捕まってるしな。」

 

 

 

煉地「シャラップ!」

 

 

 

煉地は零侍を睨みながらブツブツと言う。

 

 

 

煉地「大体、てめーみてぇなヒヨッコの相手してるだけでもありがたく思われても良いんだぞ?」

 

 

 

零侍「ヒヨッコ!?何て事言うんだ!僕もいい年だぞ!?」

 

 

 

煉地「あぁ!?顔が幼ねーのに随分と大口叩いてくれるなオイコラ!」

 

 

 

二人がギャーギャー言っていると看守なのか、ゴーグルをかけて、チャイナ服の強化版の様な物を着た奴が来る。

 

 

 

「何騒いでんだテメェら!うるせーよ!!」

 

 

 

煉地「あぁ?黙っとけ腐った死体が!」

 

 

 

「んだとテメェ!もういっぺん言ってみろ!」

 

 

 

煉地と看守が檻越しに言い合いになっていると、煉地が行動に出る。

 

 

 

煉地「だーから!!」

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

煉地は檻に顔を近づけていた看守の頭に手を回して、看守の顔を檻にぶつける。

 

 

 

煉地「黙っとけ腐った死体がつったんだよ!!」

 

 

 

「グフェベ!!?」

 

 

 

監獄内にガシャアアアアアンと言う音が響き、看守はそのまま気絶する。

すると煉地は看守の服を掴み、自分の檻に近づけると看守が持っていた鍵を奪い、自分の檻を開けて自由になる。

 

 

 

煉地「フン、カスだな。」

 

 

 

零侍「……。」

 

 

 

零侍がマジかと言った顔をしていると、煉地は零侍が捕まっている檻の前に来る。

 

 

 

煉地「……開けてほしーか?」

 

 

 

零侍「……開けてくr」

 

 

 

ガシャン

 

 

 

零侍「……普通さ、聞いてから開けるだろ。」

 

 

 

煉地「いや、聞いてる時間が勿体無かった。」

 

 

 

零侍「強欲かお前は!?」

 

 

 

とりあえず、手の鎖も外してもらい、檻の外に出る。

出たはいい物の……この後はどうするべきかまだ決まっていない。胸元の機械は外れない様だし、能力が使えない以上戦闘は極力避けたい。

そんな事を考えている零侍を他所に煉地は気絶し、倒れている看守の服をガサゴソ漁っていた。

 

 

 

零侍「……何してんるだお前?」

 

 

 

煉地「何って、これに決まってんだろ。」

 

 

 

そう言いながら取り出したのは鉄で出来たL字の物……

 

 

 

零侍「拳銃!?」

 

 

 

煉地「あ?何だ、知ってんのか?」

 

 

 

零侍「知ってるも何も、何当たり前の様に取り出してんだあんたは!」

 

 

 

煉地「バカ言え、ただでさえゾンビ共が徘徊してるこの監獄内で銃無しでどう動くってんだ?」

 

 

 

零侍「……ゾンビ?」

 

 

 

零侍は煉地の言っている意味が分からず突っ立っていると煉地は「ハァ」とため息をつき、看守のゴーグルを外す。

 

 

 

零侍「……!?」

 

 

 

看守の顔に目や鼻などと言った物は無く、デッサン用の木のマネキンの様な頭に無数の切り傷が痛々しく付いている肉だった。

 

 

 

煉地「……他に質問は?」

 

 

 

零侍「……無いです。」

 

 

 

煉地「よく言った。ならこれをお前に装備させよう。」

 

 

 

そう言いながら煉地は看守から漁った物を零侍に投げよこす。

零侍がそれを受け取り、何かを確認すると黒い棒……つまり警棒だった。

 

 

 

煉地「良し、行くぞ。」

 

 

 

零侍「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」

 

 

 

煉地「何だよ。」

 

 

 

煉地はウンザリと言った顔をしながらこちらを向く。

 

 

 

零侍「何であんたが必殺武器と来て僕はヒノキの棒!?おかしいでしょ普通!」

 

 

 

煉地「あ?いいだろーが。撲殺ぐらい出来るだろーが。」

 

 

 

零侍「撲殺する前に蜂の巣になるわ!!」

 

 

 

二人が再びギャーギャー言い合っていると看守が二、三人現れ、拳銃を発砲してくる。

二人はとっさに近くの物陰に隠れる。

 

 

 

煉地「チッ、見つかっちまったじゃねーか。」

 

 

 

零侍「いや、それはあんたが……もういいや。その代わり!倒してくれよ?」

 

 

 

煉地「分かってる!」

 

 

 

煉地は物陰からゾンビ看守に向けて銃口を向けて、引き金を引く。

 

 

カチャ

 

 

 

煉地「……あ、弾切れだ。」

 

 

 

零侍「最早ヒノキの棒同等じゃねーか!!」

 

 

 

煉地「バーカ、こう言うのはな……。」

 

 

 

煉地はそう言うと物陰から飛び出し、壁を蹴って移動し、銃弾にかする事無く到着すると、拳銃の取っ手の部分でゾンビ看守達を気絶させる。

 

 

 

煉地「こうやって使うのさ。」

 

 

 

零侍「それ今の警察に言ってみろ、警察いなくなるぞ。」

 

 

 

零侍は既にもうどうにでもなれと言った顔であった。




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