今回は、蒼ドラ訓練生編Iのエピローグです!
まぁ、薫も色々悩んでるみたいで………
それでは、エピローグ『Another familiar』をどうぞ
エピローグ. Another Familiar
『昇格、おめでとーーー!!』
「あ、ありがとうございます」
見慣れたはずの《ナイト・ロザリオ》の大広間“リビング”の壁や床、テーブルなどは鮮やかに飾り付けられている。
あのちょっとした事件から二週間後、俺に一通の手紙が届く。その内容は、訓練生龍刃師から隊員龍刃師への昇格を知らせる手紙だった。
すぐさま冬姉に連絡を入れ、昇格を知らせた。その後、俺は《ヴァンドラ》を飛び出して、母さんのいる総技術高度医療センターへと向かった。
昇格のこと、《ヴァンドラ》のこと、戦って勝ったこと、《ナイト・ロザリオ》の仲間のこと。母さんは全ての話を楽しそうに聞いてくれた。
そして今日、《ナイト・ロザリオ》のメンバーが俺の昇格記念パーティーを開いてくれたのだ。
「えっと、その、正直、自分がいつ、どの時点で、《第二フェーズ》を解放したのかは分かりません。ですが、これを機に更に上を目指したいと思っています」
「薫くん、硬いぞ」
「ご、ごめん、悠大。緊張しちゃって」
自分の所属する龍刃班のリーダーにタメ口を使うのは、なかなか慣れないが、これはこれで、なんか新鮮だ。
「え、じゃ、カンパーイ!」
『カンパーイ!!』
グラスを鳴らし、パーティーが始まった。
パーティーと言っても、《ナイト・ロザリオ》のメンバーと冬姉、龍ヶ崎さんとミミさんの九人だけで行っている。でも、やっぱり俺にはそれが幸せ以外の何ものでもなかった。
「薫、隣座っていい?」
「おぉ、澪か。良いよ」
「薫はさ、なんでそこまで強くなりたいの?」
「うーん、色々あるけど、やっぱり約束かな」
「約束?」
「うん」
俺は飲み物を口に運び喉に通して、澪に父さんのことを話した。
「–––ってな事があって、その時父さんと約束をしたんだ。母さんを守るって」
「そっか、あんたも色々大変なのね。まぁ、一人で悩まないで、たまには私たち“家族”にも相談しなさいよ」
「–––––––!?あ、ありがと……」
澪は少し微笑むとその場を離れた。
「“家族”か…………」
「家族がどうかしましたか?」
「ん?ぅわ!?か、カノンさん、顔、顔が近い!」
二cmlの先に銀髪超絶美人がいる。俺は、なんとか理性を保っていた。
「おいカノン、薫くんが嫌がってるだろ?」
悠大が助けに入ってきた。しかし、ガードも硬い。
「そんな事ないわよね、薫くん?」
そぅ–––と、顎下を撫でられる。
「うぅぅ、はぅ」
「やめろやめるんだカノン!それ以上やってしまうと、薫くんが壊れる!」
「良いじゃないですか。フフフ」
やばい。やばいやばいやばい!
っというか、これ、悠大も遊んでるよね、絶対そうだよね。ちょっと誰かーーー!!
「うぅぅ、あの、カノンちゃん………これ、開かないんだけど」
このソプラノボイスは、おそらくリリィだ。そして、その声に反応してギラーンと光るカノンさんの目。
カノンさんは、勢いよくリリィに飛びついていった。
「ありがとうリリィ。君の無事を祈る」
「ははは、いや〜、薫くんも災難だったね。カノン、気に入った人や物には、よくあぁしてるんだよ」
「いや、あれ、完全に悠大も楽しんでたから。バレてるから」
「だよね。薫くん………今、楽しいだろ?」
「うん」
「これが、君にとってのもう一つの“家族”だ。泣いて、笑って、時には怒って、そんな当たり前を、日常を守るのが俺たちの仕事だ」
「うん」
視界には、俺のもう一つの家族たちがいる。
感情が表に出やすい澪。
最年長で、悠大と一緒に俺たちを引っ張るカノンさん。
人見知りだが、何事にも一所懸命なリリィ。
俺の全てを受け入れてくれる悠大。
根は優しく、いつも心配をしてくれている冬姉。
俺の中で最も父さんに近い存在の龍ヶ崎さん。
出会ったばかりの俺に優しくしてくれるミミさん。
そして–––。
「悠大、雫は?」
「地上に上がってるよ」
「分かった……」
〜☆〜★〜☆〜
地上に上がり辺りを見渡すと、少し離れた芝生の上に雫を見つけた。
「雫、何してんだ?」
「薫くんですか。星を眺めてました」
「隣良い?」
「はい」
そっと腰を下ろし、雫の隣に座った。しばらく、無言の時間が進む。
「小さく思えます」
「え?」
「この夜空を見ていると、全ての事が小さく思えてしまいます」
「そうだね。なんか、俺も胸のモヤモヤが解けた気がする。俺な、ずっとずっと考えてたんだ。俺が、何でここまで“強くなりたい”って思うのか、もしかしたら、父さんを殺された恨みから、復讐の想いから、強くなりたいって思ってるんじゃないかって。守りたいって思う事で、本当の気持ちを隠してるんじゃないかって」
雫は、静かに俺の話を聞いてくれた。
「でも、さっき澪にさ、『私たち家族にも相談さなさい』って、言われたんだ。悠大にも『これがもう一つの家族だよ』って言われたんだ。ただ、嬉しかった。母さんと冬姉、今まで支えてくれるのはその二人だった俺に、新しい家族が出来たって、嬉しかったんだ。けど、俺にそんな資格あるのかな?もしかしたら、復讐のために強くなってるかもしれないのに、そんな汚れた心を持ってる俺に、家族なんて………」
「それを受け入れて、和らげてくれるのが家族ですよ」
雫はそう言った。
「薫くんは今まで、お母さんから沢山の愛を受け取っています。そして今、生きています。幸せでしょ?生きてるのが幸せ、当たり前のことだけど大切なこと。家族は、その一人一人がみんなを受け止め支え合うものだとあたしは思います」
「雫………」
「あたしは、薫くんが復讐に染まっても、薫くんがそれを嫌がる限り、絶対戻してみせる。薫くんが望む色にあたしたち家族が染めていく。だから、薫くんもあたしたち家族を受け入れて、守ってくださいね。そのために強くなってくださいね」
「………ありがとう、しず、く、ありがド………」
涙が止まらない。ひたすら溢れてくる。これは幸せの涙。嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。
まだ分からないことも沢山ある。バロンのこと、三神のこと、三神石のこと、《舞龍人》のこと、そして鬼人のこと。まだ鬼人以外にも龍人ではない何かがいるかもしれない。それも、想像を絶する力を持つ何か。
現在地球上で、戦えない者と戦える者の割合は、九五対五–––その五%の希望の中に俺もいる。
戦えない者のために、母さんと冬姉のために、そして………もう一つの家族のために、俺は–––
–––––《強くなりたい》。
はい、第一部のエピローグが終わりましたが、次回からは第二部に突入します。
第二部は【夜の薔薇“ナイト・ロザリオ”編I】になる予定です。
面白くなるように精一杯努力しますのでよろしくお願いします。
それでは、第二部で………