蒼き炎の龍刃師“ドラグーン”   作:猫神 イリヤ 弍

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どーも、元『猫神 イリヤ』の『猫神 イリヤ 弍』です。
トラブルが起きてしまいログイン出来なくなったので、新しくユーザーを作りました。今後は、こちらで連載するので、よろしくお願いします。
コメントも、待ってます。


訓練生編Ⅰ
I.暁月の名


プロローグ

 

龍刃師“りゅうじんし”–––《ドラグーン》と呼ばれる彼らは、列記とした人間である。ただ、普通の人間とは違い、寿命が長く、老化が遅いだけで–––。

彼らの先祖はその昔、世界を危機から救った。その危機は、《龍人化現象》と言い継がれている。

龍人化現象は、二〇六四年–––今から丁度三〇〇年前に世界中で起きた現象だが、その内容は当時ではあり得ないものだった。多くの人間が、竜“ドラゴン”や一角獣“ユニコーン”、さらには魔神などの、仮想生物と融合。正確には、ほぼその姿となり、龍人化しなかった人々を襲い出したのだ。

しかし、龍人化したにも関わらず人の姿を保ち、さらには龍人化の力を使い、人々を守った者達がいたのだ。

それが、龍刃師–––《ドラグーン》である。

八年前に起きた《第二次龍人大戦》以降、バラバラだった龍刃班は、幾つかの組織として結成され、本格的な仕事となった。もちろん、命を賭けた危険な職業だ。

年齢制限はないが試験があり、龍刃血“りゅうじんけつ”と呼ばれる龍刃師の血の適合者だけが、龍刃師となる事が出来る。そして、龍刃師の血族–––つまり、元々龍刃血を血液に含んだ、 龍刃師の子孫たちは、半ば強制的に龍刃師となる事になっている。

………………………………。

そう、俺は……。《暁月 薫》は、龍刃師の子孫なのだ。龍刃師の血族なのだ。

現在十六歳の俺は今、龍刃師最高組織本部《ヴァンドラ》へと向かっている。父さんとの約束を守る為に………。《ヴァンドラ》の最強最新鋭龍刃班《ナイト・ロザリオ》の隊員となる為に………。

黒リムジンの車窓に映る俺の覚悟に満ちた眼は、眼前の蒼穹よりも碧く透き通っている。

 

Ⅰ.暁月の名

 

蒼い空、白い校舎、そして………………血の匂い。

世界立凛花高等学校の三階、1-Bの教室からは真っ赤に染まる海が見える。それは、八年前に起きた《第二次龍人大戦》の残骸であり、恐怖の象徴である。

このクラス–––いや、この世界の人間はみんなバカだ。なぜ、命を賭けてまで龍刃師になろうとするのか、俺には分からない。意味不明だ。

–––ただ、カッコイイから–––そっちの方がまだ分かる。なぜみんなは、「この世界を護る」だの「龍人化現象を止める」だの言うのだろうか……………。本当に意味不明だ。

《第二次龍人大戦》の時、あの青かった海が、龍人と龍刃師の血で真っ赤に染まる瞬間を見た人間が、そんな事を言うなんて………………。

 

【カーーン カーーン】

 

放課後の鐘の音だ。

俺はその音を聞くと、サッと立ち、早歩きで階段を降り、一階の昇降口に向かった。そして、靴に履き替え、サッサと校舎から出た。

帰り道はいつも一人。次々に人とすれ違う中、俺は左側に並ぶビルに映った自分を見ていた。

全体を短く整えた茶髪の下にある顔は、男にしては小さく、その上白い。瞳が大きめの碧眼と、筋の通った鼻のせいか、妙に女顔である。身長一七十cmlのその体は、細く白く弱そうだ。

「母さんの所に行こっかな……………」

俺は、いつもより低めにそう呟いた。

俺の母親《暁月 千尋》は、体調を崩しやすく、現在は総技術高度医療センターに入院している。

母さんは、俺と三つ上の姉を“去年まで”女手一つで育ててくれた。そして、数え切れない程の借りがある。だからこそ、こうして毎日医療センターへと足を運んでいるのだ。

いや、これは俺の自己満足なのかな………。

そんな事を考えている内に、総技術高度医療センターの前にある交差点に着いた。

その時だった。この時、俺の運命の歯車が動き出したのだ。

バァシャン‼︎‼︎というガラスが割れた音に、俺は俯いた顔を上げ上を向いた。医療センターの六階、左から六つ目の窓–––俺が良く知る【606号室】の窓から、人間のような黒鬼–––龍人“黒鬼型”が勢い良く飛び出していた。

俺は、しばらく頭の中が真っ白になったが、すぐに正気を取り戻した。

「母さん………‼︎‼︎‼︎」

俺は全力で走り出し医療センターの前まで行ったが、そこには奴がいた。

黒いオーラに包まれた龍人の口からは大きな牙が生え、頭からは二本の真っ赤な角が捻れ生えている。

その姿を見た瞬間、俺の頭の中で、過去の記憶が生々しくフラッシュバックした。フラッシュバックされたそれは、八年前に起きた《第二次龍人大戦》のものだった。

俺の父親《暁月 仁》は、龍刃師だった。そして、《第二次龍人大戦》中、当時八歳だった俺を龍人“黒鬼型”から守る為に………死んだ。最後に聞いた–––いや、見た言葉は

––– か あ さ ん を た の ん だ ぞ –––

だった。確かに父さんの唇はそう動いた。しかしどうだ、今のこの状況は………。たった一つの約束を果たせそうにないではないか。

俺は後退りながら叫んだ。

「くそくそくそくそくそ………くそ‼︎‼︎俺は、また家族を守れないまま失うのか⁉︎俺には分からない、なんで家族や大切な人じゃない誰かを守る為に戦うんだよ………………⁉︎なんで、なんで本当に守りたい時に力がないんだよ‼︎‼︎」

その長い俺の問いに、一瞬の赤い影が答えた。

「薫、あんた今、自分で言ったじゃん………」

その声には、聞き覚えがあった。一年前、家を出て行ったあの人の声だった。

俺はその姿を見て、ゆっくりと口を開く。

「ふ………冬姉………?」

風に揺れる栗色の髪は肩甲骨あたりまで伸び、こちらを向く瞳は俺そっくりの碧眼。大人の美貌を備えた唇はリンゴのように赤い。そして、スッとした白い体を、唇より赤い制服が包み込んでいる。背中にある《龍印》を見れば、それが《上級龍刃師》の制服だとすぐに分かる。

少し背が高くなっているが、間違えるはずがない。この人は《暁月 冬華》………俺の姉だ。

俺は少し混乱している。一年前、俺と母さんに何も言わずに出て行った冬姉が、なぜこの街にいて、俺を助けているのか。なぜ、冬姉が《上級龍刃師》の制服を着ているのか………………。

「冬姉………この状況、意味分かんないよ……」

俺がそう言うと冬姉は、右手に持った、緑光の刃が伸びた剣で龍人を仰け反らせ、俺の手を握り走り出した。

 

〜☆〜★〜☆〜

 

「冬姉、なんでだよ………?なんで、龍刃師に‼︎」

 

俺は、冬姉に手を引かれて医療センターの裏に来た後、しばらく冬姉の話を聞いた。話の内容をまとめると、こうだった。

冬姉が一年前に家を出て行ったのは、龍刃師になるためだったという。そして、ならなければならない理由があったというのだ。

しかし、相変わらず意味が分からない。理由があるなら、俺達に話してくれれば良かったではないか。この一年間の間に、連絡を入れてくれれば良いではないか。

俺はそんな思いを「冬姉、なんでだよ………?なんで、龍刃師に‼︎」に込めたのだ。

しかし。

「説明は後でする。許されるまで謝る。だから今は、薫とママを助けさせて………………」

そう言われ、冬姉を責めることが出来なくなってしまった。でも、これだけは聞いておきたく、口を開いた。

「分かった………。じゃあ冬姉、これだけ教えて?さっき、俺自身が答えを言ってるって言ってたけど、アレってどういう………………」

「薫、あんたはさっき、『なんで本当に守りたい時に力がないんだよ‼︎‼︎』って言ってたよね……。逆に質問するけど、“薫と同じ気持ちの人が”この世界に何人いると思う……?」

そんなの………。

「……………数え、切れないよ……」

俺はそれを考えた瞬間、自分の愚かさを痛感した。だから俺は、答えをこんなにも苦しそうに言ったのだ。涙を堪えながら言ったのだ。

「薫………………」

俺は立ち上がった冬姉を見上げた。すると、冬姉はニカっと笑い明るい声で言った。

「その為に………。薫みたいに、助けを求める人達の為にあたし達が–––龍刃師がいる………‼︎ママはさっき助けた、次は薫の番……。後は、この《S級ドラグーン》に任せなさい‼︎」

冬姉はさらに強く笑うと、医療センターの壁を駆け上がって行った。

 

それから、冬姉が戻って来たのは五分後だった。赤い制服は相変わらず綺麗なままで、髪すら乱れていない。冬姉は、本当に強いのだろう。

冬姉は戻って来た後–––通話のやり取り。遅れて来た仲間らしき人達への指示。医療センター損傷部の修復。装備品の手入れ。–––などの多くの仕事をし終えた後、俺に言った。

「薫………‥ママの所、行く?」

「………あぁ、うん…………」

俺は、短く返し、冬姉の後をついて行った。

エレベーターで六階まで上がり、廊下を右に十と九つ目の扉の前で止まった。扉左に貼られたプレートには、【暁月 千尋】の四文字が書かれている。

ゆっくり扉を開けると、ベッドの上で太陽の光に眼を細めながら、空を眺める母さんがいた。

長く伸びた黒髪と横に長い碧眼はベストマッチし、若々しい。逆に、肌は白く体は細く痛々しい。さらに病服で身を包んでいるので、こちらまで胸が苦しくなる。

「ママ…………薫、連れて来たよ……」

母さんは冬姉の声に気付くと、こちらに振り向き、優しく笑って口を開いた。

「薫、いらっしゃい……‼︎さっきね、冬華が助けに来てくれたんだよ‼︎久しぶりに会えてうれしかった……」

母さんの笑顔と弾む声を聞いて、俺は思った。そして、誓った。

–––母さんを守りたいと……。世界中の大切な人達を守りたいと……。そして、龍刃師になってやると…………。

俺はそう心に決め母さんの近くまで行き、いつもより長く話しをした。

 

〜☆〜★〜☆〜

 

結局、俺は医療センターに泊まってしまった。眼が覚めた現在、午前七時二十分である。高校には充分間に合うが、俺は病室から出なかった。

俺が眼を覚まし十分後、母さんが眼を覚ました。

「おはよう………薫……。眠れた……?」

俺は母さんの声を聞き、自分の気持ちを再確認した。そして、過去最高な笑顔で母さんに言った。

「母さん……。俺、夢が出来た………」

「どんな?」

母さんはニコッと笑いながら、そう言った。それに対して、俺は思った事をそのまま言葉にした。

「………父さんみたいになる。冬姉を追いかけて龍刃師を目指すけど、いつか、冬姉も父さんも追い越して、最強の龍刃師になってやる。それで、母さんを守る………」

これは、父さんとの約束だったしな。

と心の中で付け加え、母さんの瞳をまっすぐ見た。

すると、母さんは

「………ありがとう………」

そう言った。

涙が零れそうになったが、何とか耐えた。

「薫、あんたどうやって龍刃師になるつもり?」

尖ったその声は、母さんのものではなく、冬姉のものだった。気付かない内に、病室の扉に背中を預けていた。

「………………………」

俺は、黙り込んで考えた。

どうしよう、何も考えてなかった。まず、何すれば良いんだ?

俺がそこまで考えた所で、冬姉が、全てを見透かしていたかのように言った。

「やっぱり。薫の事だから、そんなに深く考えてないと思った……。あのね、薫、あんたが本気で龍刃師になりたいなら、あたしがキッカケを作ってあげる。でも、そこから先は少しでも、薫自身が自分の力で進まないとね………?」

「…………あ」

–––りがとう。と言おうとしたと同時に冬姉が、

「自分の足で進まないと、ア・タ・シ、を越せないからねぇ……?」

そう言った。

「ウゥ…………‼︎⁉︎やっぱり、聞いてた……?」

俺の質問に対する冬姉の満面の笑みに、思わず腰を抜かしそうになった。昨日の龍人“黒鬼型”よりも、オーラが怖かった事は言わないでおこう。

「あ、そうそう–––」

冬姉が何か思い出したのか、突然話し出した。

「–––薫、あんたは《訓練生龍刃師》には、一〇〇%なれるから、心配しなくて良いわよ……」

「何を根拠に………」

「根拠って………。まぁ、薫が《暁月》だから………だね。薫には言ってなかったけど、《暁月》って《龍刃師の血族》だから………………」

「……………………ハァァァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎」

俺の脳が………………フリーズした。

 





第1話『暁月の名』をご覧下さりありがとうございます。
そして、申し訳ありませんでした。
今後とも、よろしくお願いします。

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