蒼き炎の龍刃師“ドラグーン”   作:猫神 イリヤ 弍

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お久しぶりです。猫神 イリヤ 弐です。

そろそろ、第一章が完結の予定なのですが。バトルシーンを書くが難しく、自分の中ではイマイチです。
もっとたくさん書いて、バトルシーンを面白くできるようにしたいと思っています。

それでは、第八話『《翠樹の猛者》』をどうぞ


VIII.《翠樹の猛者》

VIII.《翠樹の猛者》

 

呆気にとられている。

恐怖が迫っている。

俺の目に映っているのは、ざっと千を超える敵の援軍《キル・パーティ》だ。

最悪の状況。

「かーくん!なにがあったんだ!」

ミミさんのその声に我を取り戻した俺は、電柱から飛び降りて言った。

「………敵の援軍が………キル・パーティが………」

その震えた声を聞いたミミさんは、「この状態でか………」とつぶやきながら、何かを考える形をとった。そして、俺たちに指示を出した。

「かーくん、しーちゃん。今は最悪の状況だ。僕たちも援軍を要請しよう。退散……」

「いやです」

ミミさんが完全に言い終わる前に漏れてしまった。口から漏れた。自然と震えが止まり、言葉が出た。

「かーくん、なにを言ってるんだ」

「……俺が見たところ、奴らは鬼人ではなく“鬼型”の龍人でした。龍人なら俺でも倒せる。あんなに大量の龍人を放ったまま犠牲者が出たらどうするんですか!危険なのは、重々承知の上です。でも、俺にとっては、自分以外の人の方が大切なんだ、助けたいんだ!こんな気持ちになったのは初めてなんだ!」

溢れる。想いがどんどん溢れ出してきて、言葉が止まらない。

「雫とミミさんは、援軍を要請して来てください。僕がなんとか保ちますから………」

ミミさんは真剣な顔で俺の話を聞いた。雫は少し驚いているようだった。

どれだけ否定されても、やっぱり–––

「助けたいんだ………!」

「薫くん」

雫は、俺の方に触れて言う。

「あたしも、薫くんが大切ですよ。もし君がいなくなってしまったら嫌だよ。でも、だからこそ、ミミさん………薫くんを行かせてあげてください」

「し、しかしだな」

「あたしが、そうしたいんです。あたしも付いていきます」

「しーちゃん………。分かった、かーくん、しーちゃん、戦いに向かってくれ。僕が“あの子”を呼んでくる」

「あ、ありがとうございます!」

俺は頭を深く下げた。

なでなで

 

「え?」

「よしよし」

「なに頭撫でてるんですか、ミミさん!」

「いやね、君の過去のプロフィールを見たことがあるけど、成長したんだな、と思ってね」

優しくミミさんは微笑んだ。

「そうだ。まだ、正式に使用許可は下りてないんだけど、発明者の僕から渡すのには問題ないと思うから、渡しておくよ」

ミミさんは撫でをやめると、白衣の内ポケットから小さなバッグのようなものを二つ出し、俺たちに手渡した。

「そのバッグをなめてもらったら困るね」

「いや、俺、別になめてないですよ」

「………なめてもらったら困るね」

「………………どんな機能なんですか?」

俺は、緊急事態にも関わらずリアクションを待つミミさんを無視して、話を進めた。

「全く、かーくんにはユーモアが–––」

「ミミさん!」

「分かったよ……。僕が開発したそれは《小型四次元バッグ》–––通称《四次元バッグ》!」

………いや、小型が外れだけだし……。

「そのバッグは、この時空、この次元とは異なる別の空間に繋がってる。しかも、その空間はどこまでも続いている、限りなくね。四次元バックに道具を入れておけば、いついかなる時でも簡単に取り出せる。手を入れて、道具の名前や形を考えるだけでね」

「すごいですね……」

「でしょうが!」

ミミさんは分かりやすく調子に乗った。

「けど、僕が渡したのはそれだけじゃないよ–––」

 

〜☆〜★〜☆〜

 

「薫くん、良いですか?」

「うん、いつでもいける」

雫は頷くと《四次元バック》に手を入れ、あるものを取り出した。

《卵型仮想空間超速製造機》–––通称《VRエッグ》である。雫は《VRエッグ》のボタンを押し、バレないようにキル・パーティの中央に投げ込んだ。すると、黄緑色の光がゆっくりドーム型に拡散し、俺たちをキル・パーティごと包み込んだ。

目を開けると、そこには先ほどと変わらない街の光景が広がっていた。正確には、先ほどと変わらない街の光景をコピーした全く別の空間に、俺たちとキル・パーティが転移したのだ。

これが、ミミさんの開発したもう一つの道具《VRエッグ》の機能である。現実世界とは全く異なる空間つまり、別次元に一時的に作られた仮想空間なのだ。《VRエッグ》は被害が出ないために作られたものだ。周りに拡散した光は、半径約八kmlの大きなドーム型となり、その内側に入った場所の隅々まで完璧にコピーする。しかも、転移されるのが龍人と龍刃師に限られているため、被害は全くでない。もちろん、現実世界とは完全に隔離された空間であるため、外部からの侵入や、内部からの脱出もあり得ない。

「分かりました。では、五秒後に出ます………四、三」

今現在、俺は雫とビルの陰に隠れている。ミミさんとの会話を終えた後、猛スピードでキル・パーティのいた方へ走ったのだ。幸いなことに、俺たちがついた時、被害は一つも出ていなかった。だから、タイミングを見て、行こうという話になり、現在に至る。

「………二、一……今!」

合図と同時に俺たちは二手に分かれ、大きな円を描くように走り出した。

スタートダッシュは完璧だった。

俺は、眼前に龍人“黒鬼型”を確認すると、脇の間から“ビルドRDG”を一直線に突き出し“黒鬼型”の心臓部を一気に貫いた。

「ほぉぉぉぁぁああ!!」

まずは、一体目。ドス黒い煙となって浄化した。

視界ギリギリで左右に“赤鬼型”と“青鬼型”を確認した。俺は、“黒鬼型”を貫いた時の体制のまま、その勢いで反時計回りに体を捻り、空中で一回転すると同時に二体を撃破した。どちらもドス黒い煙となって浄化する。

二体を浄化し、右脚で着地するとその形のままツーステップ踏み、再び空中に身を放り出した。俺の真下に、一、二、三、四……五体の“鬼型”龍人を確認した。俺は握った左拳に強く力を込めた。ビルドRDGの光が強く立ち上がるのを感じたその瞬間を逃さず、勢いに任せて一発ずつ“鬼型”龍人の脳天に打ち込んだ。

着地した時には、約八体の龍人を倒していた。ほんの一ヶ月と少し前まで、龍刃師ではなかった俺にしては、上出来だった。しかし–––。

 

合計六〇体。

 

それが、雫がたった十二秒で倒した龍人の数だ。

俺が十二秒で倒したのは八体。目に見えて分かる、圧倒的な強さだ。雫の周りだけ空気が違う。そう感じてしまう。

でも、その雫を守れるくらいに強くならないと、最強にはなれない。雫は今、俺の目指す場所にいる。だからこそ、越えなくてはいけないのだ。

再び集中する。俺は、ビルドRDGを握り直し、キル・パーティの中に突っ走っていった。

 

戦いは、三〇分ほど続いた。俺は、体力をほとんど削り、座り込んでいた。《リフドキシンβ+02》を使い少しずつ回復している。

俺は、あることを考えていた。

戦いが始まる前。ミミさんに道具の説明をされ、キル・パーティの元へ走り出そうとした時。ミミさんは聞いた事のない単語を言っていたのだ。

–––《舞龍人》“ぶりゅうじん”–––。

 

それが何なのか、ずっと頭の中でぐるぐる回っているのだ。

「雫………」

「はい?」

「ここに来る前、ミミさんが『ピンチの時以外《舞龍人》になるな』って言ってたけど、《舞龍人》って、なんだ?」

「………そうですね、いい機会ですし教えましょう」

そう言うと、雫はゆっくりと説明を始めた。

「薫くんは、《三神石》という言葉を聞いた事がありますか?」

「そう言えば試験の時、龍ヶ崎さんがそんな事を……。青い石だ。あの時青い石を持たされたんだ」

「その青い石が三神石“第二の石”である《神海石》です」

雫は一息つくと、腰を下ろして再び話を始めた。

「薫くんは、《龍人化現象》–––《第一次龍人大戦》について、知っていますか?」

「いや、あまり……」

「……龍刃師は、二〇六四年に起きた《龍人化現象》の時、龍人になった人が心意の力で人の姿を保った事により生まれました。そこまでは知っていると思います」

「うん、まぁ」

「その時、この世で最初に龍刃師となった三人。彼らは、そのあまりの力の強さに《三神》とよばれたんです。そして、《龍人化現象》直後に起きた《第一次龍人大戦》で勝利したのち、倒れてしまいました」

「名前からして“三神”と“三神石”が繋がってるのは分かるけど、倒れちゃったら、三神石は?」

「はい、三神は倒れてしまいましたが、彼らは最後に残った全ての力を使って、自らの魂を龍へと転生させたんです。そして、それぞれ石に憑依したんです。それが、《三神石》です」

「……なるほど、そうなのか。っでも、結局のところ《舞龍人》と何の関係がある訳?」

「三神石が《舞龍人》の鍵になるんです。つまり、三神石に宿る龍–––三神の魂から、三神の力を得た状態の事を《舞龍人》と呼ぶんです。選ばれた龍刃師は、龍と心を繋ぐことにより、龍を具現化して《舞龍人》になるんです」

「ほぉ、まぁなんとなくだけど分かったよ。ありがとう」

「いいえ。まぁ、《舞龍人》より《三神の後継者》って言う人の方が、多いんですけどね」

「………後継者?」

なぜか、頭の中に冬姉の顔が浮かんできた。何か引っかかる感じ。

丁度、その引っ掛かりが何なのか考えている時だった。

「話は終わったかな、そこの少年くんと少女ちゃん?」

変に高めの男の声。あの、子供っぽい顔つきの赤髪を思い出す。

まさか–––

「バロン!?」

「嬉し〜な〜、覚えててくれたんだ。何時間ぶりかな、暁月 薫くん?フハハ」

バロンは、宙に浮いた状態でそう笑った。

「お前ぇ、どうやって仮想空間に入って来れた!」

「いやね、あっちとこっちの境目に、少し強めの結界が貼ってあったから入って来れなかったんだんだけど。どこかの馬鹿な訓練生龍刃師くんが、中に案内してくれたんだよ」

「………俺の、事か?」

「そそ、首筋のところ見てみなよ」

バロンに言われるがまま、俺は自分の首筋を見た。

「–––––––––!?」

赤く光っていた。

「それね、俺らの部隊が開発した術式なんだよ。いつ、いかなる時でも、決してどこであろうとも、何が隔てて有ろうとも、それを関係なく、術式をかけた場所付近に転移できる。ありがとね。馬鹿な少年くん?」

「………………」

あの時、バロンに殴られた時にかけられたものだろう。不覚だった。俺のせいだ。

自分を責め始めた俺を見たバロンは、面白そうに笑いながら、言った。

「おやおや、反省してるのかな?じゃ、しっかり責任とるんだね、龍刃師として。フハハハ」

パチンッ、とバロンは指を鳴らした。すると、仮想空間の膜をすり抜けて、赤、青、黒、白、もっともっともっと多くの鬼人が降ってきた。

「これも君の責任だよ。さぁ、ファーストステージ、最後の試練だ。今降っている鬼人の数は二千体。これを倒してまた会う時は、セカンドステージだ。待ってるよ、《勇者》くん」

時空が歪み、その歪みの中にバロンは消えていった。俺は、その歪みを睨み続けた。

「……雫、ごめん、俺のせいだ。二人でこの量はダメだよ。雫、援軍を呼んできてくれ、頼む」

「いやです」

「雫、何言ってんだよ」

俺は、さっきのミミさんと同じ事を言っている。結局、俺はどうしたいんだ。今の自分ならできると信じ込み、思い上がり、こうして雫に迷惑をかけてしまった。結局俺は–––。

「私は、自分以外の人の方が大切。薫くんもその一人。多分、薫くんの言う『自分以外』の中にもあたしがいる。あたしが薫くんを、薫くんがあたしを、それぞれが支え合わなきゃいけない。今がその時」

「そう、だね」

「それに、そろそろ二人ではなくなりますから………勝てますよ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

地面が揺れ始めた。

だんだんと揺れが強くなる。

雫は、ニッコリ笑い俺の手を引いた。

「来ますよ」

「誰が?」

「三神石“第三の石”。《神地石》を持つ《舞龍人》–––––冬華さんです」

「え、じゃ、あの時ミミさんが呼ぶって言ってた“あの子”って………」

『朽ち果てなさい……《地譜・葬樹》!!』

 

ドゴォォォォオン!!!

 

地下から声がきこえたとおもうと、大きな音を立て、今の今まで俺の立っていた場所から、大きく半透明な“翠の龍”が飛び出してきた。そして、鬼人軍団の中にも突っ込んでいったと思うと、その尾を乱暴に振り回し、三分の一の鬼人を次々とドス黒い煙へと変えていった。

翠の龍は一仕事終えると消え去り、翠の龍がいたそこに、真っ赤な制服を着る一人の龍刃師が現れた。

遠目に見てもわかる。俺の実姉、またを鬼姉である、冬姉だ。

こちらへ歩いてくるが、残った鬼人たちは冬姉を全く襲わない。それもそうだ、襲えないのだから。

地面から不自然に生えた樹が、鬼人たちの動きを封じている。

凛々しい顔つきの冬姉を見たのは初めてだが、ただカッコよかった。初めて目にする冬姉の強さに、俺は嫉妬すら覚えた。

「どーしたのよ、薫。ぼーっとして………」

「い、いや、冬姉がカッコよく見えて……」

「それどうゆうこと?いつもはそうじゃないと?」

「違う。違いますぅ、ごめんなさい」

「ぷっ、ウフフ」

今まで黙っていた雫は、俺たちを見て笑った。

「姉弟、仲が良いですね」

「よく、ないで、すよ」

冬姉にプロレス技をかけられるなか、俺はなんとか返事を返した。

 

「そんな事より、冬姉が《舞龍人》だったなんて」

「あたしは、選ばれし者だからね」

「あれ?」

「どうしました、薫くん?」

雫は俺を心配して声をかけてきた。

「そういえば冬姉さ、俺が初めて《ヴァンドラ》行った日、龍ヶ崎さんと話ししてたよね。あの時、俺の方見て、後継者がなんとか言ってなかった?」

「言ってたよ。あんた、自分が《舞龍人》になれる可能性があるって知らなかったの?」

「え?知らないよそんなの!」

全く龍ヶ崎さんは大切な事をいつも言わない。やめてほしいよ。

「組織長らしいですね」

「あの人、そうゆう所がなければ良いんだけどね」

雫と冬姉が声をそろえて言う。なんだかんだ言って、この二人はいつも息が合う。

『グルウゥゥ………』

鬼人たちの唸る声。冬姉は立ち上がると、俺たちに言った。

「そろそろ《地譜》の術式が解けると思うわ。三人で協力してやるわよ」

「うん!」

「はい、任せてください!」

「じゃ、行くわよ………GO!」

この後、俺たちは三十分間の交戦の末、鬼人二千体を撃破した。《ヴァンドラ》へと帰還した俺たち三人は龍ヶ崎さんに鬼人のことを話し、少しの休暇を取った。

二週間後、俺の手元に一通の手紙が届く。

 

《昇格書》

龍刃師:【暁月 薫】

解放値:【第二フェーズ】

ランク:–––

【訓練生龍刃師】から【隊員龍刃師】への昇格を認める。

 




ご観覧ありがとうございます。

見ての通り、残りはエピローグとなりました。まだ早いですが、ここまで読み進めてくださりありがとうございます。
二章目からも、自分なりに頑張るので、ぜひご観覧ください。

それでは、また………
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