忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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初めまして。4年ほど前ににじファンで二次創作を書いていたのですが気づけばサイト自体が無くなっていまして……。
昔のリベンジと言うことで、こちらにて書かせていただく事にしました。稚拙な文章ですがどうかよろしくお願いします。

2015/12/9追記
あひょ様から挿絵を頂きました! 本文の当該箇所に掲載させていただいております。
感謝してもし尽くせません、ありがとうございました!


幼少期編
第一話 ―異世界へ―※


「まったく……」

 

 夕刻、とある若い一人の男の呟き。その小さな、儚い呟きは、まわりの様々な騒音によってすぐかき消され、誰にも聞こえることはない。

 

 公園のベンチでぼーっとしているその男は、すでに人生に絶望を抱えていた。

彼は、一流私立中学、高校と進学し、大学受験にも成功。有名国立大学に入学することもできた。いわゆる「勝ち組」というやつである。

 そのような彼がなぜ絶望を抱えているのか。

 

(……大学入って就活、成功したとしてもその後の生活なんて……)

 

 それは「勝ち組」ゆえの悩み。

 社会人になった後の生活。エリートとして入社、上司に媚を売り、同僚を欺き、蹴り飛ばしての昇進しなくてはならない世界。

 「自分に正直にいられる」今の大学生活から「自分に嘘を憑き続けなければならない」生活へ。一般人からしてみれば嫌味に聞こえてしまうかもしれないが、彼はこの将来図に多大なる不安を感じていた。

 自分に嘘を憑きつづけなければならない人生。多分、「生きて」は行けるだろうが本当にその人生に意味があるのか。多分ある程度自由になれるときにはもう若くない。出来ることも結局限られる。これくらいなら自由奔放に生きた方が「人生」をうまく歩めているのではないか。考えれば考えるほど胸がきつく縛り上げられる心地がする。

 しかし、もう、この「道」に立っている以上選択肢というものはないに等しい。起業なんぞ大博打だ。そのような賭けに乗ろうなどとはとても思わない。

 「現代日本」という国、時代に生まれてしまった以上、どうしようもないことだった。

 

「子供はいいよな、ほんとに」

 

 見つめる先にいる、遊具で騒いで遊ぶ子供たちを見てまたそう小声で呟く。

 子供に憧れいている時点で情けないものだな、とも思ってしまうが、それでもやはり羨ましいものだった。

 昔、彼が子供の時代は「大人」というものに憧れていた。誰しもがそうだっただろう。自由に、親の制約も受けずなんでもできる。かっこいい存在だ。身長も高く、雰囲気も自分たちとはかけ離れている。誰もが皆そのような「大人」に憧れていただろう。

 

 そして彼はそのような「かっこいい大人」になるべく様々な面で精を出してきた。はずだった。

 その結果がこの有様だ。本当に皮肉なものだ。これくらいでもう絶望していてこの先生きていけるのか、本当に情けなく思われる。自己嫌悪のサイクルである。

 

 

 

 しかし、彼のその絶望を一時的にだが掻き消してくれるものがあった。

 2次元である。この時点で既に情けなさの塊みたいなものだな、と彼は自傷気味に思うけれど、それでも絶望を掻き消せるものがあるだけマシか、とも考える。

 

(この世界はいいよな、本当に気楽そうだ)

 

 そう軽く呆れ気味に見つめる視線の先にあるのは、光り輝くディスプレイ。

 その画面に表示されるのは、大量の点がうごめく世界。「弾幕ゲー」というやつだ。儚くも霧散していく、しかし力強い輝きのある光球が、彼の心の「闇」を照らしてくれていた。

 

 「東方Project」。日本でもトップレベルに知名度が高い同人ゲーム。ただの、まあ少しルールが変わった弾幕ゲームであるはずなのだが、多彩なキャラ、そこから展開される二次、三次創作により爆発的な人気を獲得してきた。彼もそのファンの一人だった。

 

(死んだ後にこの世界に行けますよ、とかこのキャラになり代われますよ、とか言われたら全力でこの人生を全うするんだがな)

 

 人は目標があるから努力できる。彼も昔こそは憧れの為に努力してきたのだが、いつのまにか目標は絶望へと変化していた。そしてその悪魔はもう目の前にまで迫ってきている。今の彼にはその悪魔に打ち勝とうと思う気力がなかった。別に死のうと思っているわけではない。大金を使って名門学校に入れてくれた親の事もあるし、別に友達もいる。彼女はいないが。

 しかし、悪魔の荒波を、さらに越えていこうという情熱のスイッチが折れてしまっているのだ。

 

(こんな風に、超能力で遊べる世界に行ってみたいもんだ)

 

 軽い現実逃避。この世界に行ったところで、力が持てるという確証も、物語に干渉できる確証も、何処にも一切ないけれどしかし、こういう世界に行きたいという思いは強く持っていた。どうしようもなく、やり場のない、ゴミ箱に捨てることしかできないような思いであるけれど。

 

 気付けば時計の針は12を指していた。

 自己嫌悪もいい加減飽き飽きしていた。気分を一旦リフレッシュするためにも、今日この辺で切り上げてちゃんと寝よう。そう思い彼はゲームを中断し、電気代節約の為にPCの電源を落とし、ベッドに向かった。

 誰もいない空間で、足音と時計の音だけが響く。

 

 彼はもう親元から離れて下宿生活を続けていたが、流石に無茶苦茶な生活は避け、ある程度ではあるがリズムに沿って生活している。彼の少しずさんな性格によって、そこまでキッチリとしたものではなく2時間程度バラつきのあるものにはなっているが。

 

 ベッドに倒れ込むようにして寝転び、目を閉じる。

 また一日、悪魔が襲い掛かる日が近づく。そのことに心の中で大きく溜息をついた。そしてその悪魔から隠れるように、逃げるように、彼は布団にもぐりこんだ。

 

(このまま、別世界にでも連れていかれたら面白いのにな)

 

 そんなことあるはずがないということは分かっていたけれど、万が一、億が一、いや兆が一でも、もしかしたらそのようなことがあるかもしれない。その可能性に信じて、彼は薄れゆく意識の中で願う。

 

 大きな、意識が沈みこむような力を感じながら――

 

 

 

 

 

「ん……」

 翌朝。目に差し込む朝日によって彼は起こされた。しかし、なにかおかしい。まずさっきの声の時点で既に違和感があった。

 声が、高かったのだ。

 おかしかった。彼は割と声が低い方だ。寝起きとはいえそこまで高い声は出ないはずだった。

 そしてその直後また異変に気付き、眠気が一掃された。

 

(なんで……天井が木で出来てんだ!?)

 

 彼の下宿先は普通の小さいマンションの一角。天井は無機質にペンキで塗られたように思われる白だった。

 

 彼は上半身をすぐに起こし、状況を確認しようと努めたが、人というのは意味不明、理解不能なものに対しては「理解力」というものが失われてしまうらしい。

 彼の下に敷かれていたのはベッドではなく敷布団。

 ただの寝室で寝ていたはずなのに、目に入ってきたのは一面畳張りの、少し広めの和室。

 おかしい、既に意味が分からない。彼の頭はパニックに陥っていた。

 誘拐でもされたのだろうか?未だに夢の中なのか?どちらにせよ、まずは状況の確認をするのが先決。とりあえず左右の状況を確認しようと首を左にひねる。

 その視線の先にあったのは長く、畳すれすれまである姿鏡だった。

 そして、その姿鏡の中にいるはずの「もう1人の自分」により、ついに彼は思考停止寸前にまで追いやられた。

 

 

 

 鏡の中の「幼女」が、驚愕の目と表情をして、自分と同じ体勢でこちらに視線を向けていたのだから――

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

「……」

 

 彼、いや「彼女」は全く動けなかった。もう既に、理解力を吹き飛ばすには十分な状況であったのだ。

 そんな中鏡の中の「彼女」も静止を続けている。他に誰もいない空間で、沈黙が数十秒流れる。

 その中で、なんとか少しだけ理解力を取り戻した彼女はとりあえず鏡の中の幼女に対して手を振ってみることにした。既にこの選択をしている時点でパニック状態なのが丸わかりであるが、そのようなことが彼女に分かるはずもない。

 腕を上げ左右に軽く振ると、鏡の中の「彼女」も同じ動作をしてくる。

 

(……い、いやまだ何かのいたずらの可能性が……)

 

 昨夜の寝床とは全く別の空間におり、少なくとも「おかしなことがおきている」ということは認めざるを得ない状況だったが、とりあえず「俺が女になった」というふざけたことだけでも破壊してしまおうと思い、鏡の「彼女」に対して様々なポーズを仕掛けてみる。

 鏡と思っていたら鏡じゃなかった、という限りなく0%に近い展開を願い、たまにはフェイントなどをかけて見ながら色々やってみたが結果は惨敗。いや、引き分けなのだろうか。どちらにせよ、彼女が切望していた展開になることはなかった。

 

「……ていうか鏡の中の俺を見るより直接自分の身体を見た方が早いじゃないか」

 

 数分してようやくその当たり前すぎる事実に気付く。少しづつ、少しづつだが理解力を取り戻しているらしい。しかし未だに続く理解力の欠如などに悲観している場合ではない。自分の声にとてつもない違和感を感じながらも視線を下に向ける。

 

 小さく、少しでも負荷をかけるとおれてしまいそうな細くか弱い手先。

 健康的な、少し桃色を帯びた肌。

 白い、和装束のような寝間着。

 短い手足。

 鏡をもう一度見ると、つぶらな、大きい紅の瞳に整った口、鼻。明らかに「美少女」と言われる、いや明らかに将来美少女になるような整った、際立つ可愛らしい顔立ち。

 

 もう、逃げることはできまい。

 

 彼改め彼女は自分が女であることを、やっと戻ってきた理解力を以って、諦めるように認めたのであった。

 

 

 一拍置き、深呼吸して覚悟を決める。自分がどうやら幼女になってしまった、というあまりに非現実的な事態をまず脳に受け入れるために。

 昨夜寝る真際に願ったことが、本当に実現してしまっていた。まさか本当に実現するとは思わなかった。複雑な気持ちでいっぱいになる。

 

 しかし、まだ問題は山積みである。というか「自分が女性である」ということはこの状況の変化の中のほんの一部分でしかない。まだ、気持ちとか云々どうこうしている場合ではない。まだ一歩も歩いてすらいないが直感で分かる。

 まずは、自分がどのような名前なのか、親は誰なのか、ここはどこなのか――、それを知る必要がある。

 

 そう思った彼女は、昨日までの身体とは正反対のとても細い、華奢な脚で布団から立ち上がり、部屋の襖を開け放った。




さて、後書きにて先に突っ込まれるだろうことについて答えておこうと思います。
Q.なぜ「転生」系にしたのか。別に幻想郷の霊夢を引っ張ってくればいいのではないか
A.
「霊夢」というキャラの中身が破綻してしまいそうだったんです。NARUTO世界は殺すとかが普通です。いくら妖怪退治している霊夢とはいえ人間は話が違ってきます。そういう意味で「霊夢」という存在を壊したくなかったので中身を転生者にすることにしました。
原作の霊夢はやはり幻想郷でのやり取りで映えるとも思っていますし。

Q.寝たら異世界にいたって強引だなおい。どういう理屈なんだよ
A.
神様転生よりかはいいかなと思いました。昔流行っていた「神様が間違えて殺しちゃったチート上げるよ」みたいな展開はどうしても後々マンネリ化すると思いましたし(4年前書いてた小説はこっち系だったんですよね)。
まあ、「魂が乗り移った」と思っていただければいいのではないでしょうか(ここら辺について詳しく物語にて追求する予定はありません)。

Q.第三者視点なのはなぜ?
A.
主人公視点は書くのが非常に難しいからです。こういう転生者系の小説は主人公視点で書かれたものが多いですが、少なくとも自分の腕では内容がペッラペラなものになりかねません(第三者視点でもそうだろとか言わない)。
初心者は第三者で書け、といろいろなサイトでも言われていますしね。

それはそうと、どれくらい文字数書けばいいんでしょうかね?今回は3500字強だったのですが、分量は少ないでしょうか。何せ4年前に書いて以来で覚えていないのですよ……。


久方ぶりの執筆で至らぬ点が多いかと思いますが、これからもよろしくお願いします。
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