忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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割と展開に悩んだ。自分でも少し無理があるかなと思ったが、諦めた次第()


第一〇話 ―惹きたくて―

「いい加減に捕まれこのガキ!!」

 

「捕まってたまるかってばよ!」

 

霊夢はブチキレていた。目の前の、同じクラスメイトである悪ガキに対して――。

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は数時間前に遡る。

目立つ特徴的な金髪を揺らしながら、彼、うずまきナルトは今日も今日でまた悪事を働いていた。

基本的には顔岩に落書きをしたりと言うのが常だったのだが、今回は違う。そう言った悪戯の類は全て、迫害される自分から脱するため、「里の皆の気を引きたい」という気持ちから来ていたものだったのだが、今回は少し違った。

 

博麗霊夢。

自分が勝手に設定したライバルであるサスケを更に超える存在、それが博麗霊夢という少女だった。しかも、彼女はサスケを倒しても一切鼻に掛けたりはしなかった。

そんな彼女を、彼は異性、としててではなく、また勝手な「ライバル」として気にかけ始めていた。

しかし、彼女は自分に何も興味を示していないように見えた。そして、何か彼女には声をかけ辛かった。どこか彼女の纏うオーラが、人を拒絶しているように思えてしまったからだ。それは、サスケが発するとはもっと違う、「なにか」だった。

実際は彼女はナルトを遠くから観察していたりしていて、少なくとも他の男子よりもずっと興味の対象になっていたのは事実なのだが、それを彼が知る由はない。

 

サスケだけでなく、彼女、霊夢の興味も、また惹きたかった。

そして彼は今日、その興味を惹く作戦を決行した。してしまったのだ。

 

彼の作戦は極めて単純だった。博麗神社に落書きしてやればいいのだ。いつもと同じく。

いつも通り授業を抜けて、走って博麗神社へ向かう。里の街を抜け、博麗の参道へ入る。森を抜けた先にあるのは長く続く石段。

これを見越して彼は今日は軽いスプレー缶を用意していた。水性なのがちょっとした優しさ、と言ったところなのだろう。

 

長く続く石段をなんとか疲労困憊になりながらも上り切ると、目の前に現れるのは鳥居。上に掲げられている「博麗神社」の板を見てここであっていると再確認する。ここで間違って別の神社に落書きしていたら間違いなく殺されると思っていた。今思うと間違えていた方が良かったのかもしれないと後悔するが、今更遅い。

 

 社の中にも誰にもいないことを確認した。タイミングがいいのか悪いのかは分からないが、神奈は里へ買い出しに向かっており不在だったのだ。

 ナルトの顔が歪んだ笑みに変わってゆく。

 カバンからスプレー缶を取出し、神社の社へ向ける。

 

 それが、地獄の始まりだということは、その時のナルトに知る由はない。

 

 

 

 

 

 アカデミーでは担任のイルカが頭を抱えていた。ナルトが授業を抜けたはいいが、いやよくないが、いつもの行動パターンを示さない。つまり、顔岩に落書きがいつまで経っても入らないのだ。

 そのため捜索も難航し、結局授業が全て終わるまでに見つけることは出来なかった。

 

「くっそ、何してんだあいつは!」

 

 持っていた赤ペンがキシキシと軋む。相変わらずナルトのテストの点は0に限りなく近いものだった。いい加減ストレスで胃がやられそうだ。

 しかしそのようなイルカの不安と苛立ちを余所に、ナルトは博麗神社の落書きを続けていた。

 

 

 

 今日も一日授業が終わった。んん、と軽く声に出しながら霊夢は伸びをした。

 今日は珍しくナルトが授業が終わるまでに帰ってくることがなかった。少し不安に思われたが、これほどで大事になるような主人公じゃないと思い、彼女は特に気にせずにいた。

 

 彼女は登下校時は基本ずっと空を飛びショートカットして神社へ帰っている。空を飛べばかなり速く移動できる上、「惰性」が使え体力温存にもつながるのだ。

 よってかかる時間も、アカデミーからかなり離れているにも関わらず非常に短く済んでいた。

 そしてそのことを、ナルトは頭に入れていなかった。時間はかなりかかるだろうから余裕だと思っていたのだ。

 

 いつものように、博麗神社へと向かいすぐに到着した霊夢。軽い足音と共にスタッと着地したのだが、そこで彼女は1つの人影を認めた。

 よく見ると特徴的な金髪で、白い木の葉の渦巻きがプリントされたTシャツを着ている。間違いない、ナルトだ。

 

 こんな所で何をしているのかと思いつつふと社の方に目を向ける。そこにあったのは、青やら黄色やら赤やらで柱や瓦などを色濃く落書きされ、見るに堪えない姿になった博麗神社の社、のようなものだった。

 更によくナルトを見てみると、手元に何かスプレー缶のようなものを持っているではないか。

 

 まさか。

 

 一歩、ナルトに向かって足を進める。

 石畳に靴音が響く。その時初めて、ナルトは後ろに誰かがいるを察知した。後ろを振り向く。そこには満面の笑みを浮かべたこの神社の巫女、博麗霊夢の姿があった。

 

 ヤバい。

 

 ナルトの思考が一気にそれで染まった。

 

 逃げなくては、殺される。

 

 なぜこんな時間に博麗神社にいれるのか謎だが、それどころではない。全力で逃げなければ。

 

 行動に移すのは速かった。即座にスプレー缶を置いて、全速力で走りだした。

 

「あっ、ちょっと待ちなさいナルト!」

 

 霊夢の制止の言葉なんぞ誰が聞くものか、返す言葉すらなく一目散に霊夢の横を通り過ぎて、鳥居の方向へ走る。そしてそのまま石段に並行に設置されている森の中へ走り込んだ。

 

「待ちなさいって言ってんでしょうが!!」

 

 霊夢もそのまま浮上し、石段に沿って猛スピードで斜め下向きへ加速する。しかし、ナルトは相変わらずこういうところに限っては賢った。

 森の中に入られると、彼女の空を飛ぶ能力も無力化される。しかしナルトの方は坂道の傾斜に従い適当に下って行けば里に着くことができる。里に着けば人ごみの中に紛れ込んでそのままフィニッシュだ。

 翌日学校で締められるという発想はナルトにはなかった。とりあえずこの状況を打破する策が必要だった。

 

「どこいったあのガキ!」

 

 霊夢も霊夢で焦っていた。口調が無意識に軽く前世の物に戻っているのが何よりの証拠である。いや前世でもここまで酷くなかった。

 彼女は里の参道分岐部分付近上空で様子を見ていた。

 森の中に入られ手詰まりだったのだ。翌日学校に行けば無条件で捕まえられるが、ただでさえ参拝者の少ない神社だ、一刻も早く捕まえて消させなければ商売に関わる。

 

「あーもうどうしてくれんのよ!!」

 

 むしゃくしゃして右手に持っていたお祓い棒を無茶苦茶に振りまわすが、状況は好転しない。完全に手詰まりな状況だった。しかし、里の中に入られると見つけられる可能性は限りなく低まる。

 この追いかけっこは、ナルトの勝利のように思われた。

 

 しかし、霊夢には第三の能力と言えるものがあった。母親譲りの、「勘」である。

 

 

 

 ナルトは里の中への侵入へ成功していた。

 

「へへっ、ここまで来ればもう安心だってばよ」

 

 その時見せた慢心。その一瞬の慢心こそが、すべてを狂わせた、とも言える。

 

「見つけたわよナルトォォォ!」

 

 嘘だろ、そう思いつつ恐る恐る後ろを向くと、そこにいたのは、人ごみの上から猛スピードでこちらへ接近してくる霊夢の姿だった。

 その時の顔の表情は――思い出したくもない。

 

 彼女は数分前に時間的にもそろそろ里の中に入ったところだろうと思い、自身の勘に任せ辺りを捜索していたのだ。そうしたらこれだ、持ち前の勘はこういうときにも十分に生かされた。

 

「やっべ」

 

 ナルトもまた全速力で走り始める。

 

「いい加減に捕まれこのガキ!!」

 

「捕まってたまるかってばよ!」

 

 霊夢の怒気しかない叫びにも怯えず走り続けるナルト。しかし既に体力が底を突き始めていた。

 そもそも長く続く急な下り勾配を全速力で下っていた時点で、彼の足には相当な負荷がかかっていた。

 明らかに速度が落ちる。しかし、彼女の接近してくる速度は変わらない、それどころか更に速くなっている。

 

 だめだ、殺される。

 

諦めて目を瞑る。

 

「覚悟しなさい!」

 

 その直後、霊夢の右腕から勢いよく振り下ろされたお祓い棒がナルトの頭にクリーンヒットした。

 

 その瞬間、とてもお祓い棒と頭がぶつかった音とは思えぬような鈍い音が、里中に響いたという。

 

 

 

 

 

「ほら、さっさと消す!」

 

「き、鬼畜巫女」

 

「ああ!?なんか言った!?ていうか口を動かす暇があるなら手を動かしなさい手を!」

 

「ヒッ、わ、分かってるってばよ……」

 

 呆気なく霊夢に捕まったナルトは、激昂する彼女の監視の下、社の清掃に追われていた。しかし、消しても消しても終わらない。数刻前の自分の行動を後悔せざるを得ない。

 

 一方霊夢はナルトの行為に怒る他に、不思議にも思っていた。

 なぜ、誰も来ない、里の外れにある博麗神社に落書きなんてしたのか。目立ちたいのなら、顔岩にいつものように落書きすればいいのに、なぜ――。

 

「……ねえ」

 

「ん?なんだ?」

 

 夕暮れ、空が茜色で染まる。

 社の前に臨時で設置した椅子に腰掛けたまま、彼女はナルトに話しかけた。

 

「なんで、うちの神社に落書きなんてしたのかしら?顔岩にすればよかったのに、いつも通り」

 

 単に疑問を直球で投げかけただけだったのだが、その質問にナルトは中々答えようとしなかった。

 ナルトと霊夢の間に、しばらく静寂が流れる。しかし、彼女は解答を急かすことはしなかった。そして数分後、ついにナルトが口を開いた。

 

「知ってっと思うけど、俺、里の皆に化け物だとか言われて嫌われ者にされてさ、誰も俺に構ってくれないんだ。アカデミーでもそうだ」

 

 ナルトの言葉に対し何も言わず聞く霊夢。彼は続ける。

 

「顔岩に落書きしてるのはさ、そういう里の皆から少しでも目立ちたくて。そうすれば、少しは皆から構ってもらえるかなって、そう思ってさ」

 

 彼自身も、なぜ霊夢に対しこんな率直な気持ちを話せるのか分からなかった。しかし、口から自然に本音が漏れ出てしまう。

 

「俺は、サスケが羨ましかったんだ。頭脳明晰で、体術にしろ手裏剣術にしろ他でも色々、全くかなわねえ。だからこそ、俺は勝手にライバル視してたんだけど……」

 

 そこで一旦言葉が止まる。彼なりの覚悟を、決めなければならなかった。しかしその覚悟は、思いのほか早く決まった。理由は分からないけれども。

 

「そんな中、サスケに圧倒的に勝った奴が現れたんだ。霊夢、お前だってばよ」

 

 表情一つ変えず、その言葉を受け取る霊夢。しかし、ほんの少し、眉が動いた。

 

「サスケと同じだ。俺は、お前もその時から、勝手にライバル視してた。俺に構ってほしかった。だから、お前に構ってもらうためだけに、こんなことをしたんだってばよ。すまねえ」

 

 静かに、しかし本音を全て、言い切った。言い切ってしまった。いくらライバル視しているとはいえ、あまり素性の知れない目の前の鬼のような巫女に。

 しかし、何故か話していいように思えてしまった。何故か、受け止めてくれる気がした。何故か――。

 

「……そう」

 

 ただ一言、霊夢はそれだけ答えた。しばらく黙りこむ2人だったが、霊夢が先にその沈黙を破った。

 

「……まあ、あんたがライバル視しようがしまいが、私には関係のないことよ。私はあんたの事は別にライバルとも思ってないし、これからも思わないわ」

 

 その言葉に、更にぐっと黙り込んでしまうナルト。

 

――やっぱり俺は、嫌われ者でしかないのか――

 

 その絶望が、心を漆黒に染め上げていく。

 

「けどね、あんたが化け物扱いされていようが、されていまいが、それも私には関係ないことね」

 

「えっ……」

 

 信じられないことを聞いたと言わんばかりの顔で霊夢へ振り返るナルト。その透き通った碧眼が、霊夢の瞳を貫く。

 

「あんたがどうして化け物扱いされてるのかは知らないし、あんたのその差別を救う、なんて英雄ぶったことを語る気もないわ。けどね」

 

 さりげなく嘘を言ったが、気のせいだ。ここで化け物の正体を暴露するなんて、愚かにもほどがある。

 

「私は、あんたを『ナルト』として見るわ。それ以上でも、それ以下でもなく」

 

 そう言った途端、霊夢の頬が軽く朱に染まる。

 彼女自身、らしくないことを言っているのは分かっていた。今更だが、気恥ずかしい。しかし、彼女も鬼ではない。

 「彼」としての人格が相当剥離され、「博麗霊夢」としての人格がかなり出来上がり定着していたのだが、少なくとも、人間関係についての考え方については前世での考えも多分に受け継がれていた。

 少しだけ、救いの手を差し伸べたいと思っていたのは確かだった。観察だと言いナルトの事を遠目で見守っていたことも、彼女の奥底にある心理はそれであった。救えなくとも、立つ手助けくらいは――。

 そこにあるのは、普通の「博麗霊夢」ではなく、「彼」としての「霊夢」だった。

 

 一方で、ナルトの方はその一瞬の絶望から一転、一気に喜びを感じていた。

 自分のことを、「人」として見てくれる人が現れてくれた。しかも、自分よりもはるかに強い、憧れのような、目の前の女の子が。

 

「へへへ……」

 

 ニヤケが止まらなかった。それだけ嬉しかった。他人から自分を「人」として認識してくれただけでも、それだけ嬉しかった。

 

「何笑ってんのよ」

 

 少し不機嫌そうにナルトに言い放つ霊夢。しかしそれは、明らかに照れ隠しのものだった。この辺りはやはり、「博麗霊夢」である。

 

「霊夢!俺はぜってーお前を越える!」

 

 そう、満面の笑みを浮かべて彼女に向かってナルトは誓う。しかしその笑みの奥に見えるのは、確かな「決意」。

 その言葉に、霊夢はフッと少しだけ笑った。

 

「ま、あんたには無理だと思うけどね」

 

 そうナルトを煽っていく霊夢。その言葉にナルトは即座に反抗する。

 

「へっ、今はそうかもしれねえけど、こっから一気に強くなって、俺はぜってー火影になる!お前なんてすぐ抜かしてやるってばよ!」

 

 意気揚々と、更に霊夢に向かって高らかに宣言した。

 

――なるほどな――

 

 心中で霊夢は納得した。

 マンガの中だけだと、紙面からしかその行動は伝わってこない。しかも彼女は原作を読んだことはなく、なぜナルトという少年がここまで皆に「夢」を持たせる存在になれるのか、分からなかった。いや、分かるのだろうが、所詮綺麗事だと思っていた。

 しかし、こう実際に触れ合ってみると、確かに伝わる。彼の中にある希望が。

 憎しみをものともせず、希望へ向かっていくその意思が。彼のその顔から確かに感じ取れる。威勢が良すぎてこちらが疲れることも多々あるが。

 

 そんなナルトを前に彼女はまた溜息を吐いた。しかし、その溜息に込められた意は普段とは少し違っていた。

 

「ま、それじゃ私もあんたに抜かされないようにしないとね」

 

 そう、相変わらず輝かしい笑顔を向ける少年に向かって、少し参ったとやる気なさげに呟いた。

 

 

 

 

 

「それはそうと、火影になるならまずはこの神社はピカピカにしなさいね」

 

「うっ」

 

 しかし、それでも相変わらず彼女はやはり「博麗霊夢」であった。

 その後、日が暮れるまで博麗神社を清掃させられ、ナルトはヘトヘトになりながら帰っていた。

 

――やっぱりこの女には敵わないのではないか――

 

 そう自信なさげに思いながら。




10話にしてついに主人公との交流。そして、この世界の霊夢としてのアイデンティティの確立がメインのお話でした。
ナルトがサスケに絡んでいったのはただサスケが強いだけでなく、おなじ「闇」を抱えているというのが主な理由だったのでこう簡単に霊夢と交流させていいものかと悩んだのですが、まあいいや(適当)

そして、これでようやくだいたいのキャラ交流の下準備が終わりました。これより、時は加速していきます。そもそもNARUTOの二次創作なのに10話で戦闘シーン1回ってなんなの
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