忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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ランキングによく食い込むようになってて嬉しい限りです。


第一一話 ―巻物争奪戦(上)―

霊夢少女、11歳。

 

特に大した出来事もなく3年が過ぎ、気付けばアカデミーの卒業まで1年を切る時期。最終学年ともなると、授業の内容もより実戦的なものにシフトしていた。

彼女にとっても、それは嬉しいことだった。分かり切った算数だとか、子供騙しな国語とか、知ってどうなるんだという歴史をやらされるくらいなら、外で活動できる方がずっと有意義だと思っていた。

 

「今日は、先週予告したように実戦演習を行う!」

 

 朝礼で、壇上に立ち今日の授業内容を発表するイルカ。

 

 今日もその実戦系統の授業だった。しかし、今回は規模が大きい。

 とある小さめの演習場を丸々一つ使い、その中に設置された巻物数個をツーマンセルで争奪戦をする、というものだった。勿論殺さない程度で。少々危険なようにも思えるが、まあ最高学年にもなればこのような演習もおかしくはないだろう。

 巻物については、誰かに取られた時点で青く光るようになっており、服の下隠していてもバレる、というものだ。無駄によくできているものだと霊夢は軽く呆れながらに感心した。

 

「班についてはこちらが決めさせてもらったから、呼ばれた者は前に!」

 

 やはりそうか、霊夢の表情が少しだけ曇った。こういうツーマンセルを組ませる授業で知らない人と組まされるのは、やはり少々やり辛いのだ。特に告白を断った男子だったりするとそれはもう、とても気まずい。本当に勘弁してほしい。

 そう不安に思いながら彼女は班のメンバー分けに耳を傾けていた。

 

「次、博麗霊夢と……」

 

 どうやら自分の番が来たらしい。誰がペアとなるのか、注意して聞く。

 

「霧雨魔理沙!」

 

――どうやら今日は当たりらしい。魔理沙となら気楽に組めるというものだ。席を立ち、前に向かって歩く2人。

 

 霊夢の成績も魔理沙の成績も、総合的には中間程度だった。

 霊夢は忍術が未だに大の苦手だった。まあ初歩的な忍術についてはなんとか使えるようにしたが、それでもやはり評価はかなり下だったため、結果的に中間に。

 魔理沙は霊夢の忍術ほど極端ではないが勉強が苦手だった。その代わり他は――それも霊夢ほどではないにしろ――好成績を収めていたため中間という評価になっていた。

 そのため、霊夢と魔理沙のコンビというのも案外よくあった。実際の所、戦力のみを見れば両者ともかなり上の方を行くのだが。

 

「足、引っ張るんじゃないわよ」

 

「引っ張ってそのまま私が手柄を取ってやればいいんだな?」

 

「あら、言うようになったわね」

 

そう言い軽く笑い合う2人。相変わらずなんだかんだで仲は良かった。

 

 その他のツーマンセルメンバーも発表された後、演習場まで全員で向かうことになった。演習場に到着後は、各班まわりに設けられている入り口に分かれ、時間になったらスタート、ということだった。

 

 この演習場は、場所こそ木の葉の里から離れているが木の葉のまわりに設置されているものの中でも非常に簡素で安全なもので、危険生物もいない。基本的に森が中心のシンプルな演習場だった。アカデミー生や、忍者になりたての下忍などが使う場所なのだろう。

 

「しかし、巻物争奪戦と言ってもまず巻物の置いてあるヒントがないんじゃあなあ」

 

 そう、門の前で時間まで待機していた魔理沙が腕を組んで唸った。

 

「本来の任務とかならまずヒントとかはないから仕方ないんでしょ」

 

「けどなあ……」

 

「発想を変えてみればいいのよ。巻物の探索は他の生徒に任せて、持ってる相手を倒して奪うっての」

 

「なるほど、その方法があったか」

 

「はっきり言って他の班じゃ私に勝てるわけないし、そうした方が確実よ」

 

 まさに「納得」と言った表情で魔理沙は霊夢を見つめる。

 

「ま、規模は大きいけど簡単よ」

 

 霊夢の力量は既に中忍を軽く超えるものだった。元より、その華奢な身体に秘めているとは思えない破格の大きさを誇る霊力の器に加え、霊力コントロールも既に完璧に近く、原作の霊夢が使える、夢想封印を始めとした様々な術、更には弾幕までもだいたい使えるようになっていた。

 しかも、弾幕については神奈は一切教えていないし、そもそもここの博麗の技の中に入っていない。彼女自身が、自分のセンスと勘だけを頼りに完成させた、オリジナルの広範囲攻撃である。

 

 そして極めつけは、万物の事象から、そして理からも「浮く」、本当の最終奥義である「夢想天生」。物理特殊心理など、どんな攻撃であろうと受け付けない無敵状態。

この状態になると、たとえ五影クラスでも、相当な対策をしない限りは霊夢に打ち勝つは不可能となる。

 最強の盾を持ち、ジリ貧に持ち込める三代目雷影などは別であるが、それでも打ち勝てる人間は相当に限られるというものだ。

 

 しかし、彼女は夢想天生については相当なことがない限り使わないと決めている。最終兵器を見られるのは「死」に近い、それが彼女の、変わらぬ考えだった。

 夢想天生を使うのは、本当に、命に関わるほどの難敵、状況に当たったときのみ、最小限に。それが、彼女の理念。この世界で生き残る為に、この力を無駄にしない為に設けたルール。強すぎる力は災いを呼ぶ。力を抑え、隠さなければいつか身を滅ぼす。

 この里も同様だ、うちはの皆殺し事件やナルトの扱いからも察せる。力を見せつけすぎると、何者かに消される。

 

(……難しいものね)

 

 ただ一言、そう心中で呟いた。それ以上、どう表現しようもなかった。難しい、残酷な世界である。

 

「どうしたんだよ、思いつめた顔して」

 

 魔理沙が心配そうに顔を覗きこんできた。この世界の不条理を何も知らない、純粋で穢れの知らないような表情で。

 

 一瞬、霊夢の表情が悲しいものに変わりかけたが、それを抑え、いつもの表情に戻す。

 

「いや、何でもない」

 

 そう、気取られぬように無表情で答えた。

 

 

 

 午前10時、争奪戦開始。開始の合図として、中央付近から煙が上がった。午後まで続く、巻物争奪戦の開始である。

 

 しかし、霊夢と魔理沙は特に派手には動かなかった。中央付近まで移動した後は木の上に登り、その上でしばらく様子を見ることにしたのだ。

 戦略は変わらない。巻物の発見は他人に任せ、それを奪うだけ。白眼を持つ日向の姫、ヒナタや嗅覚が異常なまでに鋭いキバなどが見つけてくれるだろうと思っていた。

 そして、通り掛かった巻物を持つ班を適当に奇襲し、強奪。奪えば後はいくらでも何とでもなる。

 

「しかし、思えば卑劣だよな」

 

 木の上で、幹に背中を預けて寛いでいた魔理沙がふと霊夢に話し掛けた。

 

「卑の意志を無駄にしないのよ」

 

「なんか発音違わないか?」

 

「気のせいよ」

 

 二代目の武勇伝は神奈からよく聞かされていた。そしてそれを聞いた霊夢がまず思ったのがそれだった。何が火の意志だ、と。そういえばネットで昔見たような気がする、懐かしい。改めて詳細を聞かされて納得してしまった。

 

「しかし、ほんと暇だな」

 

「じゃあ暇つぶしに歩く?」

 

「……そうするか」

 

 そう会話すると2人は木から飛び降り、適当に、勘の思うがままに森の中を彷徨っていった。

 

 

 

 

「どう考えても勝ち目ねーだろ……」

 

 そう、森の中で肩を落としてトボトボと歩きながらシカマルは弱く言葉を吐いた。

 シカマルとペアになったのはいの。シカマルはアカデミーでは霊夢以上に手を抜いていて、成績は下の方だったので、同じ度合いで上だったいのがペアとなった。もっとも、いわゆる親の「コネ」が働いた結果でもあるのだが。

 

「何言ってんのよシカマル!巻物ゲットできたじゃない!」

 

 そう励ますいのだったが、シカマルはそれに応じなかった。彼の服の下からやんわりと青白い光が放たれている。

 彼は、この演習場の配置、教師の意図、思惑などを汲み取り整理、推理して巻物をいち早く入手していた。本来は手に入れると格好の敵の的になるので終わる直前まで控えたかったのだが、相方が取れとうるさく、取らざるを得なかったのだ。

 

「けどなあ……、これでもしサスケの班とか霊夢の班とかと鉢合ったら終わりだぞ」

 

「うっ、まあそれはそうだけど……」

 

 横目を逸らすいの。その姿を見てシカマルは溜息を吐いた。全く、無責任な女だ。

 

「まあ、けどそんな都合よくあの班に当たるとは到底……」

 

「それ以上言うなよ」

 

 言霊ってのは怖いぜ、とシカマルは付け加える。

 

「はあ、今すぐこの巻物を投げ捨てたいわ」

 

「ちょっ、それはダメよ!」

 

 相変わらずシカマルはシカマルだった。それを止めるいのも一苦労と言ったところだろう。

 実際の所、外から見れば非常に相性がよさげに組み合わせだった。

 

 

 

「……どうする?」

 

「どうするつったってよ……」

 

 霊夢と魔理沙は、また木の上で様子を見ていた。獲物を見つけたのだ。しかし、その獲物が問題だった。

 

「うーん……」

 

 下にいるのはいのとシカマルの班だったのだ。シカマルの胸のあたりが青白く光っているから、間違いなく巻物を持っている。しかし、流石に自分たちとの付き合いが特別長い2人の班だ。奇襲するのは流石の霊夢でも少し気が引けた。

 

「まあけどこれ見過ごして次いつ来るかも分からないぜ。ここは申し訳ないけど……」

 

「ま、そうね」

 

 なんだかんだですぐ決定した。運が悪いとしか言えないが、これもまた運命。

 

「じゃ魔理沙。一発『アレ』お願い」

 

「なんだよ、お前は動かないのかよ」

 

「別にいいけど、どうせなら」

 

 そう言い笑顔を向ける霊夢。全く気持ちの入っていない笑顔である。

 魔理沙は魔理沙でどうせってなんだよ、とぼやいたが、言うことは聞いた。出番があるのは嬉しいらしい。

 

 ポケットから出したのは、ミニ八卦炉。そう、この世界の魔理沙もミニ八卦炉を有していたのだ。

 そのことを霊夢が知ったのは2年程前の事だった。霧雨家は道具屋を営んでいるらしいのだが、その霧雨家が代々受け継いだ一品なのだという。しかしこの八卦炉、チャクラ適性のようなものがあるらしく、家族の者は誰も扱えなかった。しかし魔理沙だけはこの八卦炉を扱うことができたのでそのまま勝手に使わせてもらっている、とのことだった。

 見かけも原作の物と同じ。性能も、魔力がチャクラに置き換わっただけ。チャクラを充填し、増幅させて、ビームとして発射。最初見たときは興奮したものだ、魔理沙に白い目で見られたことも含めて懐かしい。

 

 破壊力も抜群だ。全力でやられると単純な火力なら霊夢の夢想封印と互角。しかも軌道こそ単純な直線であるが速度が尋常でない分、夢想封印よりも強いかもしれない。流石は速度パワー厨だけはあると内心で感心していた。

 しかし、魔理沙自身この八卦炉にまだ慣れていない。チャクラを充填させる前に印を組まなければならないのだが、その速度は遅いし、充填してからも放つまでにラグがある。そして全力で打ち放つと幼い身には堪えるらしく、一発でもヘロヘロになるという。なので、まだ実戦で組み込むには難があった。こういう奇襲時や、仲間のサポートがあって初めて成り立つ術であった。

 今回の奇襲もチャクラ量は少なめで行く方針だ。そもそも本気でやると簡単に相手が死ぬ。

 

 ゆっくりと、確実に印を組み、八卦炉にチャクラを充填させ、獲物のいる下へ向ける。そして、叫ぶ。

 

「術式、マスタースパーク!」

 

 その瞬間、特徴的な効果音とともに、穢れのない純白の、細い光線が、木々の枝などの障害をものともせず、シカマルといのに圧倒的な速度で襲い掛かった。

 

「忍術は、火力だぜ」

 

 

 

 一方で、魔理沙が放つ直前になって、漸く上方の気配にシカマルは気付いた。そして、この場を離れようといのの手を引いた途端、白い光線がいのの方向に向かってに襲いかかってきたのだ。

 

「ッ!?」

 

 なんとか持っていたいのの腕を強く引っ張り、直撃を避けるシカマル。ついさっきまでいのがいた場所は黒焦げになっていた。

 急に腕を力強く引っ張られた影響でいのはバランスを崩し転倒していた。シカマルは腕は引っ張るだけ引っ張ったがその後手を放し迎撃態勢に入っていたからだ。

 

「くそっ、本当に来やがったか……」

 

 シカマルがクナイを逆手に持ちながら舌打ちをしたと同時に、木の上から2人が飛び降りてきた。今、自分たちが最も相手をしたくなかった2人組。

 

「ま、運が悪かったってことね。素直に諦めなさい」

 

 悪魔の囁きだった。冷や汗が、彼の頬を滑る。

 

「ま、そういうことだな。大人しく渡してもらうぜ」

 

 悪魔2人目。右手には八卦炉が握られている。冷や汗が、地に滴り落ちる。

 

「絶体絶命ってのはこういうことを言うんだろうな」

 

 自嘲するように、言葉を吐き捨てるように呟くシカマル。

 

「これは、本格的にヤバいかも……」

 

 立ち上がったいのも珍しく弱気だった。

 2人とも自分よりも強く、コンビネーションも抜群。猪鹿蝶としての連携にも確かに自信はあったが、連携力もよく見積もって同等。

 まさに、「どう足掻いても絶望」だった。

 

「仕方ねえか」

 

 そう言い、シカマルは服の懐から青く光る巻物を取り出し、霊夢へと投げた。それをキャッチした霊夢は少し不服そうな表情をして、シカマルへ文句を言い放った。

 

「つまらないわね」

 

「何言ってやがる、やっても瞬殺だろうが」

 

「まあね」

 

 そういい霊夢は笑みを向けた。相変わらずプラスの方向の物を一切感じられない悪魔の笑みだと、シカマルといのは思う。無理していえば何も知らない男なら落とせるだろうというほどに無駄に整っているくらいだ。

 

「サスケを潰した奴だからな、俺でなくとも皆同じ反応を示すだろうぜ」

 

「うーん、面白くないわね」

 

 これでも力相当抑えてるのに、そう本当につまらなさそうに言う霊夢。言っても問題ない面子しかいないから言えることだ。

 

「サスケなら別だけだろうけどな」

 

 そう魔理沙がニヤニヤしながら言った。反応を面白がっているのだろう、分かりやすいものだ。

 

「それはそれで勘弁して、頭が頭痛状態になるわよまったく……」

 

 そう額を抑えながら霊夢は頭を横に振り、一方で魔理沙はハハハと笑った。とても争奪戦中とは思えない和んだ雰囲気である。

 

 

 

 

「で、本当にもらっていいのかしら?これ」

 

 雑談も程々に、脱線した話題を元のレールに戻す。

 

「いいよ別に、成績なんてどうでもいいし」

 

「ちょっと、それ私が巻き添えになるんだけど!?」

 

「俺と当たったのが運の尽きだよ、諦めろ」

 

 シカマルの完全なる諦め宣言に対して反抗するいのだったが、やはりその言葉は彼には通じない。

 霊夢にしてみれば、シカマルの影真似といのの心転身があれば普通に巻物は取れそうだがな、と思ったが、それを口に出すのも野暮なものかと思い口には出さなかった。

 

「ま、じゃあもらっていくぜ」

 

「おうよ、まあ応援なんていらんと思うが頑張れよ」

 

「私がこんなもので『頑張る』と思ってるのかしら?」

 

「相変わらず性格わりぃ女だな、おい」

 

「似た者同士なのによく言うわね」

 

「へっ、似てるなんて言葉死んでも御免だ」

 

 いつもの慣れたやり取りだ。実際の所霊夢とシカマルの思想は、よく似ていた。こんな授業で彼女らが本気になるわけがないのだ。

 理念に反するから。何より面倒だから。それは両者よく分かっていることだった。

 

 しかし、彼女、霊夢はまだ知らない。今から、本当に「力」を出さなければならなくなることを――。




マスパはそのままにしました。漢字にしようにもセンスがないので
ただマスパをそのまま使ってしまうと下手すれば夢想天生なし状態の霊夢さんより強くなってしまうので制限をば、というところです。

さて、次回は本格的に戦闘です
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