忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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第一九話 ―第九班発足―

「で、どうするのよこれ」

 

 突然の第2ラウンド宣言がなされた後、いくらチームワークといっても少しは作戦を立てる時間はいるだろうというカクルの計らいでしばらく作戦会議ということになったのだが、当の本人たちにしてみれば展開が急すぎて少しついていけていない節があった。

 とりあえずカクルのいるところから少し離れた木の下に設置した霊夢の防音結界の中で、彼女主導のもとその会議が行われている訳なのだがなかなかその作戦というのがうまく纏まらず、議論は並行線を辿っていた。

 

「やっぱり最初は私のマスパで――」

 

「さっきそれで大失敗したでしょうが!」

 

「ここは俺の楼観剣で――」

 

「近接攻撃に持ち込んでどうするのよ、そんなんじゃあいつ相手じゃ奇襲になんないわよ! 仕方ないわね、ここはやっぱり私の封魔陣で――」

 

「それくらいなら威力もあって速いマスパの方がいいじゃねえか!」

 

「うっ……」

 

 ――本当に並行線だった。出だしからして全く足並みがあっていない。各々が互いの意見を譲ろうとせず、真っ向からぶつかり合い続けているのだ。先ほどのアドリブでの戦闘の方がかえって良いのではないかと思われるほどである。

 しかし、それも仕方のないことだった。そもそもあの上忍に対し奇襲攻撃を仕掛けた所で、それが通用するのかという疑問が彼女たち3人の中で淀みのように、薄くだが浮き上がっているのだ。霊夢も奇襲用の攻撃に関してはさほど有用な物がない。ショット攻撃では少し威力に欠ける。

 ここで一番有用なのはマスタースパークなのだろうがそれも先程まんまと防がれてしまったわけであり、手を拱かせていた。

 少なくとも方針転換すべきだと霊夢はこのやり取りを見てひしひしと感じていた。奇襲はまず避けられる。かと言って真っ向勝負というのもおかしな話である。ここは奇襲を囮攻撃として扱うしかなさそうだ。

 そしてもう一つ考えるべきなのは各々の能力だ。魔理沙は近接戦・体術が少し苦手。中・遠距離戦に回すべきだ。一方ヒカルは近接戦でなければその力を発揮できない。そして霊夢はどのような場面でも基本的に対応できる万能タイプ、支援・サポートもお手の物。この綺麗にまとまった人員構成をうまく活用したい。

 

、どうするかというプロセスを、頭の中で少しずつ組み立てていく。

 はっきり言って霊夢は作戦というものを立てるのが苦手だった。前世でも将棋は苦手で、その場で逐一少しずつその先を考えるという手の方が得意で好みだった。

 作戦と言えば霊夢の頭の中ではシカマルの姿が思い浮かぶ。彼と戦っているときは非常に面白い。全ての手が計算されつくされており、その全てを見透かしたような戦略にいつも驚かされてしまうのだ。

 彼曰く常に何通りもの作戦を組み立て、状況に合わせ選択肢を変えていくとのことだが、簡単に言ってあまりに敵にすると厄介な能力だ。はっきり言って敵わない。そもそもの能力が霊夢の方が遥かに上なので実際の所そう作戦も上手くも行かないのだが、それでも恐ろしい能力だ。戦う場に出るのではなくその裏側――参謀などに回ればその能力は如何なく発揮されるだろう、そんな相手と戦うのは死んでも回避したい。

 

 閑話休題、とにかく霊夢はあまり作戦立てというものが得意ではないのだ。実際、顔が徐々に歪み始めている、頭の中がゴチャゴチャになって処理落ちし始めている証である。その表情を見た2人が心配になって声を掛けるものの、思考回路から溶断され切り離されてしまった霊夢の耳にその言葉は入らない。

 そしてついにピースが嵌まったらしいく、数十秒後突然彼女はふっと我を戻したと思うと、そのまま彼女の考えた「作戦」について2人に話し始めた。

 

「ふう。考え付いたわ、聞いて――」

 

 

 

 

 

 

 一方、カクルは内心これから起こるであろう戦いを非常に楽しみにしていた。

 彼自身、戦闘が好きなのかというとそう言うわけでもない。どうしても戦争時、生きる為に力が必要だったがゆえに修行をしている内に、気付けば推薦されて上忍となっていたのだ。自身の臆病な性格が逆に力を蓄えさせた、皮肉な結果である。

 その性格も修行と戦争で慣れてしまいほとんど消え去ってしまったわけなのだが、とはいえども戦うのが好きとは言えないタチだった。

 

 しかし、今回は違った。これまでで数回、担当上忍として部下を持ったことがあったが、そのどれよりもずば抜けて各々のセンス・能力がいい。アカデミーでは測ることのできない部分でのスキルが発達しており、結果的に書面上での成績が「中間」だっただけなのだとすぐに察することができた。

 そして「チームワーク」というこの試験の本質を即座に見抜いてきた、あの「博麗霊夢」という少女――初めての事だった。今も結界を張って作戦会議をしているようだが、この時点ですでに下忍としての能力の範疇を越えた卓越した能力を有しているのだ。なるほど、あのうちはの生き残りをも圧倒するだけはある。

そんな彼女たちの「本気」を、是非見てみたいと思った。書類では分からない能力を持つ3人だ、実際に手合わせしないと分からぬ事ばかりでもある。

 身体の芯から興奮が染み出て湧き上がってくるのが分かる。上忍になってから、下忍相手に――いや、そもそ敵対する相手にここまでわくわくさせられるのは初めてだ。全く、既に班員には驚かされる。

 はたから見たらさぞ不審な表情をしているだろう、ニヤつきが収まらない。

 

「がっかりさせてくれるなよ、お前らァ!」

 

 口から溢れ出た期待の叫び。それと同時に、四方八方から烈々たる札々の荒波が彼へ襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずは奇襲だ。

 本体と札分身1体、そして陰陽玉2つをそれぞれ四方に配置し、同時にショットを出来る限りの広角で発射。まずはこれを奇襲とする。威力はないものの、当たるとダメージになることに変わりはない。そして量は多く全方向からの物なため結果それは避けざるを得ない。また、四方からの攻撃なので本体がどこなのかが悟られにくい。

 ここで逃げる方向は地中か空中しかなくなる。しかし、地中へは缶を持っていけないためそこへ逃げると缶ががら空きとなってしまう。地中で蹴り手を待つというのも、霊夢の術で飛ばされた場合どうしようもないことは分かっているはず、そのようなヘマはしまい。となると空中しかない。

 奇襲が直接ダメージなどにならないのは分かっている。しかし、それで次へとタスキを渡すことはことはできる。

 

 予想通り、軽々と高く上空へ飛んでその平面的な弾幕攻撃を回避するカクル。しかし上空では簡単に身動きはとれまい。ここでもう一つ駒を進める。

 空中にいるカクルの八方に立方体を形取るように札を投擲すると、それはまるで生き物のように霊夢の意志に呼応して彼の周囲で運動をやめ、直後、それらを頂点とするほんのりと赤く光る結界が作り出される。

 

「こんなもの!」

 

 そういい即座に印を組むカクルだが、そこに彼女たちの「思惑」があった。その一瞬の、どうしても見せざるを得ない隙。それこそが、第一の狙い。

 結界に囲まれたカクルの姿を視認するや否やその方角へ筒を向ける。ぎらぎらとした日の光に当てられ、軽く反射し眩しく輝くそれには既に一定量のチャクラが練り込まれていた。その力を解き放つのに、時間は要らない。ただ、軽く引き金を引くだけでいい。

 

「術式・マスタースパーク!!」

 

 まだ結界を展開して数秒にも満たない時だった。印を瞬時に組み上げ、結界を打ち破ろうと術を発動させようとした彼の視界に突如として飛び込んできたのは、真っ白で七色の光を纏う、穢れのない光の龍。妨げるもの全てを飲み込まんとするそれは、わずか一瞬で霊夢の作りだしたその結界に軽々と穴を空けるほどに接近し、カクルをも吸い込まんと目の前にまで迫り寄る。

 そして彼は、呆気なくその猛龍の喰い飲み込まれてしまった。

 

「ヒカル!!」

 

「分かってる!」

 

 しかし安心はできない。ここからが本番だ、今から接近戦となる。

 はっきり言って、この程度で仕留め切れる相手だとは全く思っていない。必ずカウンターとして何か仕掛けてくる。しかし、とはいえどこから来るとも分からない以上黙って指をくわえている訳にもいかない。それこそ一番危ない。

 霊夢の呼び声を聞く前から彼は地面に十分に注意を払いながら全速力で缶へ接近していた。そして少しでもリーチを稼ぐために楼観刀を引き抜いた。いや、引き抜くかのように思えた。

 

 しかし、それは違った。右手で楼観刀を引き抜くと思わせつつ、引き抜いたのは隠れて左手を添えていた白楼刀の方だったのだ。

 見えぬ相手へのフェイント。霊夢に言われた言葉――場を掌握しているの向こう。すぐ横に敵が潜んでいると思え――その言葉に従った、裏を掻いた攻撃。そしてその短刀を彼は空缶目掛け、大きく腕を振りかぶって「投げた」。

 走る速度に更に腕からの力が加わったそれは、更に疾(はや)く、何も知らぬように突っ立っている銀白に輝く缶目掛けて、地と平行をなしてに迷いなく飛んでゆき、特に邪魔もなく缶目前の所にまで到達した。

 

 しかし、目の前としたところでそれは突如ひょっこりと出て来た小さい土の壁により妨げられてしまう。見上げると、そこには少しだけ服に傷がついているものの目立った外傷はないカクルの姿。

 霊夢の勘が警鐘を鳴らす。3人ともフィールド上に出てしまっている。それだけでなく、成功するだろうと軽く確信があっただけに、少し霊夢以外の2人は茫然としてしまっている。下忍、それもアカデミーから出て来たばかりのひよっ子だとどうしても見せてしまう隙がそこにあった。

 

「2人ともぼーっとしないで! 場を見なさい!」

 

 その忠告を受けハッと我に返る二人だが、時すでに遅し。既に魔の一手はすぐそこまで差し迫っていた。霊夢の脳内でなっていた警鐘のボリュームがさらに上がりけたたましく鳴り響く。

 既に身体は動いていた。勘がやれと告げている。術を発動する暇はないと判断した霊夢は、全速力で未だ空中に滞空し続けているカクルに対し空を切り急接近しつつ、霊力を纏わせ殺傷力を上げた大幣を横に一閃、薙ぎ払った。だが当たった感触はない。

 しかし、そこに確かにカクルの姿はある。大幣が体にめり込んでいるのだ。一瞬その不可解な現象に思考が停止するが、すぐに我を取り戻した。

 

「分身の術! こんな単純な術に!」

 

 分身の術。アカデミーでも最初のうちに習うような超初級忍術。実体のない自身の「幻影」を作りだし相手を攪乱させる術だ。

 一般的にはその上位互換の術、実体のある影分身の術や水分身の術などの方がよく使われ分身の術はほとんど実戦で使われることはないが、ようはそれも使いようによる。影分身だと思わせておいて、触れても消えぬ実体のない「像」を作り出すことで裏を掻き、相手に一瞬だが隙を作らせる。これは分身の術でなくては出来ない芸当だ。

 

 ではなぜカクルがこのような戦略を取ったのか、それは一重に霊夢があまりに厄介な存在だからに他ならない。

 霊夢自身、個人として見てもその能力は中忍すら寄せ付けないほどの秀でた能力を持つ。しかしそれ以上に、「チームワーク」に重きを置かせたこの試験で彼女は状況を冷静に見極め的確な指示を他の未熟な2人に出しているのだ。

 2人はまだ判断能力などについては年相応と言ったところだが、その能力値に関しては秀でているのは先の戦闘ですぐに分かった。

 先程の魔理沙の光線攻撃は既に威力、スピードに関しては一級品と言ってもいいものだ。最初の奇襲の際はなんなく避けることができたが、2回目はいい所を突いてきた。影分身を出し自身を引っ張らせることで回避し、同時に攻撃を諸に受けたように見せかけたものの、身体に軽く傷を負わされてしまった。ヒカルの先ほどの白楼刀を投げるというフェイントも、実際少し意表を突かれていたのは事実。判断能力の欠如をカバーできる司令塔がいると、この2人の能力も見事に覚醒するのだ。

 博麗霊夢、確かに素晴らしい原石だと再認識させられる。いや、もう相当に輝いているだろう。しかし、だからこそそのチームワークを切り崩すような戦略を取る。

 まずはその司令塔を引き離すことから始める。

 

「後ろががら空きだぞ」

 

「ッ!?」 

 

 まずは一人だ。缶に近づいていたヒカルに対し背後から肘打ちをかける。まだ体は子供だ、手加減しているが。

 その肘打ちにヒカルは反応しきれずモロに受けてしまう。動きが止まったヒカルを、取り出した包帯で一気に縛り上げ動きを封じてしまう。ここまでほんの一瞬の出来事だった。

 

「まずは一人」

 

 しかしこの包帯はすぐ取れるように工夫して巻いてある。蹴られた際は解放されるというルールはそのままだ、それに反するのはフェアではない。とはいえ、蹴らせる気も毛頭ないのだが。

 

 続いて二人目だ。魔理沙は体術が少々苦手だったはず。右脚に取り付けたホルスターから手裏剣を数枚取出しこちらへと投げつけてくるが、その程度では上忍・霧乃カクルに対しては牽制にすらなり得ない。ふと上を向くと霊夢がこちらに猛スピードで接近しつつ陰陽玉から針を射出してこちらを狙いに来ている。とはいえこれも威力と速度に欠ける。避けるなんてことはお茶の子さいさいだ。手裏剣をクナイで適当に弾きつつ針の軍団もさらりと避け切ってしまう。

 とはいえ、霊夢が既に復帰してこちらへ向かってきているのはあまり芳しくない。缶を狙おうにも魔理沙が狙われていることが分かっているためこちらへと目標を変えているのだろう、なんにせよ厄介だ。もう少し動くのをやめてもらう必要があるだろう。

 

 印を組み霊夢と視線を合わせる。その瞬間霊夢と陰陽玉の動きが、空中でまるで冷凍されてしまったかのようにピタリと止まってしまった。

 金縛りの術。敵の動きを止めてしまう、これもアカデミーで習う初級忍術の一つだ。非常に簡素な術であるが、その分術者のレベルに比例してその金縛りの強さも変わってくる。上忍レベルともなれば、下忍など簡単に動きを封じてしまうことができる。

 彼自身霊夢に対してはこの術がさほど効果をなさないだろうと予想していた。実際、彼女の固有の能力である「空を飛ぶ程度の能力」は金縛りという外部からの干渉にも効果を発動するのだ。けれども、それでも少しだけ解除に時間が必要だ。

 しかしカクルにとってはその「少しの時間」こそが必要としていたものだった。上空からの攻撃が一瞬でも止んでくれればいいのだ。

 

 瞬身の術とは、便利な術だ。目的の場所まで超高速で移動できる、中等忍術の一つである。

 霊夢の動きを一瞬だけ封じ込めたその間に魔理沙の後ろへ回り込みもう一回、次は魔理沙へ金縛りを掛ける。霊夢には効かなくとも、魔理沙には通じるはずだ。彼の思惑通り、魔理沙はそのまま一切身動きが取れぬ状態でその場で倒れ込んでしまった。

 

「これで2人と――さて、どうする? 霊夢」

 

 一瞬の――霊夢が分身を薙ぎ払ってから、10秒も経たないほどの瞬時の出来事だった。一気に二人が脱落し、残るは霊夢のみとなってしまう。

 この状況、圧倒的に霊夢が不利だった。捕まえられることはない、倒すことも、出来なくはないだろう。しかし、時間が既に少々押している上、この試験の目的が「相手を倒す」ということではなく「缶を蹴ること」だからタチが悪い。下手に缶を蹴ろうとするとトラップにかかる可能性がある。横から術か何かで倒そうとしても、向こうの術と相殺させられるだろう。

しかしそれは、「霊夢だけならば」の話でしかない。

 

「全く、詰みって奴よね」

 

 ぼそりと、俯きつつカクルが僅かに聞き取れるか、聞き取れないか程度の小声で呟かれたその言葉。しかし、霊夢の顔は――微かに笑っていた。根拠のない自信から来たのか? 否。諦めてしまったのか? 否。断じて違う。

 その不敵な笑み、それは勝利を確信したもの。疑いようがなく、笑みが応えきれずに溢れ出たもの。

 

「詰みって奴よねえ、ほんと……あんたが!」

 

 興奮し高ぶったその宣言と同時に、黒い何らかの物体が彼らの視線を一瞬遮った。

 それは、本来有り得ないもの。動いてしまってはいけないはずのもの。

 場を一気に狂わせる、それはいわば「革命」。

 

「なッ、どうして……どうしてお前が動けている――」

 

 カクルから発せられたその驚愕の言葉で、「それ」の顔が歪み、不敵な笑みへと変化してゆく。ふと、「あるはず」の場所へ目を向けると、そこには大量の札が落ちているだけでしかなかった。

 

 全て、このためだった。もしものための第3作戦。カクルに対し裏の裏を掻く。全てを、騙す。

 真実は虚偽へ、虚偽は真実へ。虚実の逆転。全てを逆転させる、たった一つの切り札。

 

 「それ」の脚が、ターゲットへと狂いなく吸い込まれる。勢いよく振り下げられたそれに、目標は吸い込まれていく。

 ガコンッ。中の空気と反響し、震え、放たれた甲高い音が場内に響き渡る。

 

「――魔理沙ッ!!」

 

 全てを裏返す王手の一手が今、切られたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢の思惑は、全てカクルを欺くことにあった。忍とは欺くもの。手品師のようなものだ。その手段は姑息かもしれないが。

 タネは簡単だ。札分身に変化の術を被せる、ただそれだけ。本当の魔理沙には隠れておいてもらう。非常に簡素な手段だが、それでも相手を騙すにはあまりに十分の代物だ。

 札分身に変化の術というのはこれまでやったことのない芸当であり、成功するかは怪しい所ではあった。しかし流石は「博麗霊夢」と言ったところか、その有り余る才能を以ってして見事に成功させてしまった。相変わらずその才覚には恐ろしいものがある。

 

 浮遊する空缶。それを見て霊夢とカクル、両者が一斉に動いた。

 

「はあっ!」

 

「おらっ!」

 

 缶を一気に撃墜せんと振り下げた霊夢の大幣が、それを防がんとし、更には缶を立て直そうとするカクルのクナイと衝突する。缶は彼女たちの更に上空で自由落下を開始しつつある。

 一時的に霊力で活性化させた霊夢の腕力とカクルの腕力は互角と言ったところ。力が拮抗することによる腕の震えは、武器にも伝播しガタガタと音を立てながらも行く手を阻もうと激突しあう。

 

 素直な力勝負では埒が明かないと判断した両者は更なる攻防へと突入する。更なる活性でカクルを弾き飛ばした霊夢は、そのまま次の攻撃へ糸を紡いでいく。しかしそれは弾かれた相手も同じことだ。

 

「霊符・夢想封印!」

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

 霊夢のまわりに生成されるのは、7つの青・緑・赤の様々な色を纏った虹色の巨大な球体。一方カクルの口からは大量の水が吐き出され、それはひとつの龍を形取り霊夢を飲み込まんと牙を剥く。

 そしてその龍と宝玉は互いを蝕み、喰い荒らそうと激しく衝突する。夢想封印が押したかと思えば、水龍も負けじと勢いをぶり返してゆき、互いに一切譲ろうとしない。

 しかし、その芸術的な攻防を霊夢は良しとしない。更なる追撃をかけようと札を生成するが、その生成と同時に霊夢とカクルの真ん中を落ち行くのは一つの小さな物体、自由落下を開始した缶だった。

 

「くっ!」

 

「させるか!」

 

 視界に入った缶をなんとかして復帰させようとクナイを取出し、少しでも滞空時間を伸ばそうと缶のギリギリ底を狙い投擲する。対する霊夢もそれを防がんと巨大な正方形の札を体の両側に生成し、クナイのもとへ向かわせる。間に合うか、間に合わないか。しかしそんなことを考える暇はない。次の一手のことを考慮し、その札の後を追って缶へ迫ろうとするが、カクルからの連続した雷遁チャクラで生成したらしい弾幕攻撃に翻弄され、動きを束縛されてしまった。陰陽玉で相殺させようとするも、威力が低くうまくいかないのだ。

 そうしている最中でもクナイと札――博麗アミュレットは缶へと距離を詰めてゆく。しかし、その勝者はどちらでもなかった。思わぬ横槍が両者ともに弾き飛ばしたのだ。

 

「ヒカル!」

 

「なんだと!?」

 

 その横槍とはヒカルだった。缶が蹴られたことで束縛が解かれた彼は、どこかで仕掛けられるところはないか地表から注意深く観察していたのだ。カクルは霊夢と缶の応対で手一杯で地上まで手が回っていなかったのだ。

 クナイを弾き、札を両断したその長刀・楼観刀をもう一度、キツく握り締める。目標は目の前にあるただの空缶。こんなところでミスを犯すわけにはいかない、一瞬だけ目を瞑り精神を整えてから、大きく振りかぶる。

 

「クソッ!」

 

 これまで全く見せなかった焦り顔でクナイを追加で投擲するが、時既に遅し。

 

「これで……終わりだッ!!」

 

 絶対に終結させる、勝つ。その強い迸る意志を持ったその言葉とともに、缶が楼観刀と接触する。

 ガシャッ、金属同士が激突すると同時に缶がぐにゃりと折り曲がる。鈍い音を響かせながら、それは一直線に血面へ向かって更なる落下を開始した。

 缶はそのままカタパルトのように一気に加速し、先ほどをはるかに上回る速さで空を切ってゆく。

 

 

 そしてそれは、迷いなく重力に吸い込まれ、バキッと音を立て破片を辺りにばらまきながら地に側面から勢いよく激突した。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呆気なかったわねえ」

 

「最後いい所全て持っていったな」

 

 そう呆れて言いつつヒカルに向けジト目で睨み付ける霊夢と魔理沙。

 試験終了後、4人は先程とと同じ場所に集合させられていた。時計は11時ちょうどを指している、時間的にもギリギリだったらしい。

 

「勝てたからいいじゃねえか……」

 

「けど一番頑張ったの私よね、やっぱりあそこは私に譲るべきだったと思うの」

 

「いや、そもそも最初の奇襲が上手くいかなかったわけだしここは私が――」

 

「いや魔理沙はない」

 

「ひでえなお前ら!」

 

「はいはい、分かったからとりあえず静かにしろー」

 

 手柄について言い争う3人を軽くない神で溜息を吐きつつ諌める。この姿を見ていると先程までのあの連携とはなんだと言いたくなるが、これは既に仲が良くなりつつある証拠でもあるのかもしれない。実際、3人ともなんだかんだで顔に笑みを浮かべている。既に冗談を言い合える仲になっているということなのだろう。

 

「まあ、やられたよ。分身に変化とはな」

 

「成功するかは五分五分だったんだけどね。忍術ほんと苦手だし、しかも分身体となると……もし成功してなかったら負けてたわね」

 

 そう振り返る。実際大博打だったのだ。成功していなければ時間切れで終わりだったのは間違いない。

 

「まあけど、その作戦は見事だったよ。チームワークを崩そうとしたのがまさか裏目に出るとはな……。とりあえずお前らは全員文句なしの『合格』、だな」

 

 そのカクルの発表に改めて軽く表情が喜びの物に変わる。少し大人っぽく振る舞おうと全面的にその感情を表だって出そうとはしていないが、しかしやはり少しは溢れ出てしまうものだ。その姿に子供だなあと少し苦笑するが、そうでもないとカクルとしても面白くないのも事実だった。

 カクルにとっても嬉しいことだった。3人とも面白い能力を持っている。成長が既に非常に楽しみだ、もしかしたら彼女たちなら、あの伝説の三忍すら超えてしまえるかもしれない潜在能力を有している。特に霊夢はよもや火影クラスにまで――そう考えると内心興奮が収まらない。「教師」といものの気持ちを今初めて理解できた気がする。

 

 一度深呼吸して息を整えてから、3人に向けて改めて宣言する。

 

「『第九班』、ここに改めて成立だ!」

 




やっぱりこういうの難しいですわ。半分パクリじゃん
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