忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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波の国編やるべきかどうか迷ったんですけどねー、やっぱり入れておきます


波の国篇
第二〇話 ―波の国へ―


 春下がりの昼。徐々に季節が夏に近づき、昼も暑くなってきたなと感じる今日も霊夢たちが所属する第九班は任務に追われていた。

 

「は? 次は犬の散歩?」

 

 役所に設置された任務受理室に、霊夢の呆れたような声が響き渡る。

 

 任務と言ってもそれは大それたものではない。そのほとんどが里の中で完結してしまうものであり、飼い動物の捜索や子供の世話、今回のような散歩の代わりというものすらある。里外に出てもおつかい程度。

 「忍者」というものを軽蔑しているとしか思えない依頼内容だが、かといってまだ実力が十分に備わっていない下忍に里外に出る任務を就かせるというのも危険な話なのだ。

 里外に出るとどうしても途端に治安が悪くなる。山賊などがあちらこちらに蔓延っている状況であり、いつ飛びかかられてもおかしくない。それに対して速やかに、かつ冷静に対処できる程度の力・判断力を付けなければ里外の任務は難しいのだ。

 なので実際の所、下忍になったばかりの彼女たちが主に行うのは鍛錬・修行である。生活についてはまだ幼いため親が養うか、親がおらずとも生活するには十分な量の生活費が里から支給されるため、アカデミーを出たばかりの下忍にとってこのような任務は「小遣い稼ぎ」という意味合いが濃い。いくら第九班の面子でも各々のスキルは高いとはいえど、実戦で動けるかとは別の話である。やはりまだまだ未熟な点も多いのだ。

 しかし、霊夢だけは例外だった。既に持ち合わせるスキルは規格外、また実戦で一回殺されかけるという、その可憐な見た目とは裏腹に中々に壮絶な人生を送っている彼女にとって、任務は勿論修行も手持ち無沙汰なものでしかなかった。修行内容も過去に神奈から指示されていたものに比べれば生温いものであり、ただでさえさほどやる気がないのに更に加えてやる意義すら感じられない。

 

 とはいえど、カクルにとってもどうしようもないことだった。

 霊夢の扱う力は忍術とは根本的なところから全く違い、また彼女の師も他界してしまい博麗の生き残りが彼女唯一人ということで、どう修行をつければいいのかが一切不明なのだ。実際、未だに彼女の能力について完全に把握できている訳ではない。もっとも、それについては霊夢が実力を隠し続けているからと言うのもあるのだが。

 そのうえ他の体術なども「空を飛ぶ」という特殊スキルを持つということで自分たちとは基本的な戦略から異なる。では基礎的な体術スキルについて修行させようにもそのあたりは既にほとんど申し分ないということで、はっきり言って教えるべきことがなかったのだ。

 結果的に彼女は暇つぶし程度にカクルを相手取って実戦演習を行いつつ、時には他の2人の相手もするということで収まったわけだが、とは言ってもこれもすぐマンネリ化する。結果やはり刺激が足りず霊夢の不満感は徐々に募る一方だった。平穏が好きだと言っても、ずっとそうなのはそれはそれで面白くないのだ。

 

「ちょっと三代目、もうちょっと歯応えのある任務ないの?」

 

 そしてその不満は、既に臨界点を迎えていた。霊夢の顔には少しいらつきの表情が浮かび上がっており、暴れてもおかしくない、腹を空かせ機嫌を損ねた猛獣のような様子ですらあった。

 

「だよなー、いい加減修行とやりがいのない任務ばっかりで飽き飽きだぜ」

 

 そしてその不満に魔理沙も同意する。彼女もその性格がゆえ、あまりに単調な昨今の生活が鼻に付いていた。彼女としても、そろそろ「一暴れ」をしたいと常々思い続けていた。

 言葉にこそ出していないがヒカルもそれは同様だった。実際今の力がどれほど通用するのか、それは彼自身も気になっており、外見上は何も反応は見せなかったものの内心では2人の言葉に強く同意していた。

 

 その二人の様子を見て三代目火影・ヒルゼンとその隣にて書記職務に就いていたイルカが困惑の表情を見せる。

 2人の気持ちも分からなくないのだ。2人も第九班の実力――特に霊夢――の高さは理解していたし、そしてそろそろこのような文句が出てくる頃合いだとも薄々感じていた。イルカがその2人を諌めている状況であるが、表情は頑なに変わらない。いつこの不満が更に爆発するかも分からない。

 

 そして、ここにある班が混じり、更に2人を悩ませることとなる。

 

「ん、九班じゃねえか」

 

「ナルトか。久しぶり、かしら?」

 

そこに乱入してきたのは第七班の面子だった。飼い猫の捜索任務に当たっていた、白髪のマスク男、はたけカカシ率いる彼らも、こちらもこちらで一人一人の個性が強く、特にナルトあたりからいい加減不満が出るのではないかと予想していた。そしてそれは見事に的中することとなる。

 

「もうちょっとコシのある任務はねえのォ!?」

 

 やはり不満の音を上げたのはナルトだった。里の長に向かって荒々しく願い請うその態度に対しカカシが拳骨を振るい、またもやイルカが声を荒げて説教をし始めるが、それでも彼は引き下がろうとしない。

 更にそれに乗じてここぞとばかりに第九班のくノ一2人組もそうだそうだと便乗して野次を飛ばし始める始末である。そしてそれにまたナルトも乗っかり更に反抗し始める。

 無限ループで場が混沌として来ており、最早収拾がつきそうにもない。

 

 一種のストライキに似たそれを受けて、ヒルゼンも唸ってしまう。

 はてさて、どうすべきか。少なくともこのままでは彼女たちは引き下がってくれなさそうだ。とはいえ、やはりDランクより上の任務――Cランク任務に就かせるのには経験が浅い。危険が伴う。

 特にこの第七班と第九班の面子が色々と問題だと言うこともある。尾獣を腹に宿すナルト、イタチを除けば唯一の写輪眼を所持しうるうちはの生き残り、サスケ。そして博麗の生き残り、九尾事件で散った命の忘れ形見である霊夢。どれ一人でも、万が一亡くしてしまうと激しい損失、更には脅威にすら成り得る。どうしても慎重にならざるを得ない事情があった。

 

「人ってのは、ある程度無理をしないと成長できないもの。違うかしら? 三代目」

 

 そうどうすべきか悩んでいるとふと少し高めの声がかかった。

 考えを中断し聞こえた方へ目をやるとそこにいたのは、先程と一転、真剣な眼差しこちらに向ける霊夢の姿だった。その深く紅く光る瞳が、ヒルゼンを一直線に貫く。

 そしてその言葉は、とても若干十二歳の少女が発したとは思えぬ、まるで「全てを見透かした」かのような、そして「昔懐かしい」ものだった。とても予想だにしていなかったその言葉に、電流が流れたような衝撃を受けつつ驚いてしまう。

 

 面白い。

 

 彼の口角が僅かに釣りあがる。なるほど、そこまで言うのであれば――いいだろう。その意気込み、買ってやろうではないか。

 

「よし分かった! そこまで言うのであれば2班合同でやってもらおう、Cランク任務を!」

 

 そのまさかの決断に、場にいた全員の表情が、大小あるものの一瞬驚愕のものへ変わる。

 

「しかし三代目!!」

 

「そう言うなイルカよ……少し、試したくなってしまっての」

 

「三代目……?」

 

 ヒルゼンの目に映るのは、その決断を聞いて驚き呆れたり、喜んだりと様々な反応を取っている子供たちと、そしてその中に混じる霊夢の姿。

 

(まるであやつそっくりじゃな……あの言葉)

 

 ヒルゼンの脳裏にて偲ばれる、昔懐かしき思い出。霊夢のその言葉でその箪笥の鍵が外れ掘り出て来た、いまやセピアがかかってしまうような記憶。

 

 

――「ある程度無理をしないと成長できないものです! 三代目様!」

 

 

 霊夢の母、命が下忍になってしばらくして言い放ったその言葉。当時は才に恵まれず、まるで今のナルトのように闇の中を必死にもがいて力を掴みとろうとしていた、あの時の命の姿が想起される。

もっとも、彼女はそのまま無茶をしすぎて倒れることもよくあったものだ。今となってはすべて懐かしく、微笑ましい思い出だが。

 

(子は親に似る、か……性格は真反対と言えど)

 

 やはり不思議なものだ。そして、興味深い。運命付いたものを感じる。霊夢の姿を傍目で捉えつつ、記憶の箪笥の引き出しをしまい、パイプから口内で溜まっていた煙を吐き出した。

 ふわふわと、灰に濁った吐息が宙へ舞ってゆく。

 

「……護衛任務じゃ。ある人物の護衛をしてもらう、入ってもらえますかな?」

 

 そのヒルゼンの呼びかけに応じ、後ろの引き戸が開かれた。その場にいた全員が反応し、扉を開けた主のもとへ視線が殺到する。どこで待機していたのかと強く疑問に霊夢は思うが、それについて一々考えるのは野暮な物だろうとその疑念を胸底にしまう。

 そこに入ってきたのは、酒瓶を片手に持ち常にそれを浴びるように飲んで、顔がほのかに赤く火照っている中年の男性だった。髪は色素が少し抜け落ちたようなくすんだ灰色で、肩にはタオルがかかっている、はっきり言って浮浪者のようなみすぼらしい姿だ。更にはアルコール依存症の典型というその姿には憐れみの念すら抱いてしまう。

 

「なんだあ? 超ガキばっかじゃねぇかよ。特にそこの一番ちっこいアホ面、お前それ本当に忍者かぁ!?」

 

 そしてその明らかに怪しい中年男性の、最初の一言がそれだった。誰が一番小さいかと見回してみるとナルトということが発覚、そして分かったや否や「殺す」などと喚き始めた。護衛対象を殺してどうするのか、コントでもやっているのかと軽く呆れつつ眺めてしまう。しかし酔っているのか、面と向かって殺すと言われているのにも関わらずそれに関して彼は特に何も気にかけているような素振りは見せなかった。

 

「ワシは橋作りの超名人、タズナというもんじゃ! ワシが国に帰って橋を完成させるまでの間、命を懸けて超護衛してもらう!」

 

 とても上から目線なのが気にかかったが、まあ酔っているし仕方ないのだろう、誰もそれに関しては何も食ってかかっていくことはなかった。

 

 その後準備の為出発は明日ということとなり、2班はそれぞれ明日の朝まで解散となった。

 

 

 

 

 

 

 翌朝10時、「あん」と書かれた特徴的な大門の前に第七班と第九班の2班は集合していた。

 霊夢としてはしばらく神社を留守にしてしまうのが気掛かりだった。戸締りなどは問題ないけれども、誰も境内を掃除しないので必然的に境内が散らかってしまい、参拝客数の低下が懸念されてしまう。賽銭箱からお金を盗まれても誰も咎める人間がいないのも困り所だが、どうしようもなかった。札分身を置いていこうにも札分身自体さほど強度があるものではない。時間が経つにつれて込めた霊力が霧散していき、ただの札に帰してしまうので結局のところ意味がないのだ。こればかりは参拝客の良心を信じるしかない。参拝客がそもそも減るほどいるか、というのは別の話だが。

 

「ん? 今日は陰陽玉はいいのか?」

 

「バカね、忍と戦うわけでもないのにそんなものいるわけないでしょ?」

 

 魔理沙の問いかけに対しバッサリと霊夢は切り捨ててしまう。

 今回は陰陽玉は持っていかないことにした。そもそもCランク任務は戦うことはあっても相手は山賊などの忍以外の人間なことが前提のものだ。霊夢の実力からして、その程度の相手に陰陽玉をも用いる必要性はない。それどころかそれが荷物となって邪魔になってしまう可能性すらある。

 

 しかし、霊夢は見逃さなかった、その魔理沙との会話を聞いた直後、依頼主タズナが僅かにだが肩を震わせて反応したことを。

 

 思い過ごしであればいいのだが――。 

 

 しかし嫌な予感がする。彼女の直感が反応しているのだ、どうにも引っかかってしまう。

 けれど、とは言ってもこの状況で問い詰めても何も出てこないのは明らかだ。確たる証拠があるわけでもない。しばらく様子見するのが一番だろう。何もなければ、それでいいだけの話だ。

 

「よーし! 出発だー!」

 

 どちらかというと、この威勢だけ良すぎる金髪の少年の方が不安の種だった。彼以外の全員が呆れた目で見つめているが、それに彼は全く気付く素振りを見せない。本当にこれで護衛任務が成り立つのだろうか――甚だ怪しい所だ。タズナもこんなんで大丈夫かと担当上忍の2人に疑ってかかっている。まあこればかりは仕方ない。

 

 しかし、この依頼主も得をしたというものだと霊夢は思う。流れと決まりだからだとはいえ、Cランクの依頼で上忍が2人も付いてくるのだから、そのコストパフォーマンスの良さは計り知れないと言える。少なくともこの2名がいれば、たとえ忍者が襲い掛かろうと相当な腕を持ち合わせていない限り返り討ちに遭うのは確実だ。この時点で彼の身は相当保障されている。

 頼み込んでCランク任務をもらったのはいいが、このままだと結局出番がなくなってしまうのではないか。そう少し不安に思いつつ、ナルト達の後ろを追いかけ目的地、波の国へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 道中は基本的に雑談しつつの徒歩での移動となる。雰囲気は護衛というよりは遠足に近い。

 ただ2班合同と言うことではあるが、どうしても話す相手は同じ班の面子となってしまい、自然と二分化される。霊夢としては第七班には過去に負かしてしまったプライドの塊、サスケと彼女を明らかに嫌っている節があったサクラがいるので少し近寄り難かったのもあるのだが。

そういった少し心理的にも少し距離の置かれた状況の中、前を歩いていた七班のサクラがタズナに対し波の国に関して尋ね始めた。九班の面子もここは自分たちも聞いておくべきだろうと前に歩み寄り自然と会話に加わった。

 

 波の国は小国だ。また「橋の建設」からも伺えるように島国であると言い、他国からの干渉を受けにくい。

 この世界には「軍事船」のような海上兵器となるようなものはあまりなく、特に大国はまずほとんど所持していない。よって別の島へも忍戦力を遣る必要があり労力がかかるが、そこまでするメリットもこの国にはない。それゆえに敵がおらず、「忍」という特殊な軍事力を持つ必要性もつまりないのだ。最小限の国防のための兵力はあるのだろうが、あってもそれだけだ。

 カカシが言うにはCランク任務で他国の忍との戦闘はないということでまわりの面子は皆安堵した表情見せていたが、霊夢だけは安直にそうは感じられなかった。やはり先程のタズナの反応が引っかかって釣り針のように取れないでいるのだ。

 

 そう少し悶々としつつ歩いていると視界に一つの水溜まりを認めた。特に皆はそれに対して何も気にかける様子はなかったが、流石に上忍と言ったところか、カカシとカクルはそれを見逃さなかった。そしてまた霊夢の勘もそれに対して反応し始めた。

 

(水溜まり、ねえ……)

 

 天気雨でも降ったのだろうかと思ったが、それにしてもここにだけ水溜まりがあるのは少々不可解に感じたのだ。しかしまだ霊夢は実地慣れしていないがゆえに、それを深刻には受け取らず杞憂かとそのままスルーしてしまった。ここにまだ埋まらぬ上忍と下忍の経験値の差が顕現化していると言える。

 

 そして考えを投げ捨てた次の瞬間、背後に人の気配を感じ取った。

 ふっと霊夢が後ろに振り返ると、そこにはチェーンで繋がれたまま空中を滑空し、こちらを狙いに定め飛びかかろうとしている1人の忍の姿があった。チェーンの繋がる先には更にもう1人の忍。

 そしてチェーンは考える間もなく最後尾にいたカカシと、そしてカクルのまわりを囲い、そのまま纏わり彼らの身体をキツく縛り上げ、そのままそのチェーンは無慈悲にもその身体をただの肉片へと帰させてしまった。

 人間「だった」モノが地に次々と落下していく。

 

 突如として起こったそのあまりにグロテスクな光景に呆気を取られてしまう下忍たち。そして動揺してまんまと隙を見せてしまった彼らに更なる牙が襲い掛かる。

 次の標的はナルトだった。一瞬で金髪の少年の背後まで移動し次の獲物にせんとまたもチェーンが襲い掛かる。恐怖で身動きが取れないナルトにそれを防ぐ手立てはない。

 死を覚悟した。

 

 しかしとうとう、その縛り上げられる感触がやって来ることはなかった。

 

「はあっ!」

 

 2人が同時に動いていた。空を切りゆらゆら蠢くチェーンへまず霊夢が即座に飛び上がり、右手に握られていた大幣を霊力を纏わせた上で最小限のモーションで投擲する。それはそのチェーンに横から激突し、破断させることなくそれらを巻き込んだまま地中へ深く突き刺さり2人の動きを束縛した。

 

「サスケ!」

 

「分かっている!」

 

 しかしこの束縛も一時的だ。鎖を切られたらすぐ解放できてしまうわけで、ここからの迅速の対応が求められる。

 よって動きを抑えた片方はすぐに対応できる地上にいるサスケにそのまま任せることにした。サスケの力があればこれくらいなら対処できるだろうという判断だ。

 そして大方霊夢の予想通りチェーンを外して2人は別々の行動に出た。そのうちの1人はサスケが足止めしているからいいが、しかしもう1人の方は障害物もなくタズナのもとへ向かっている。どうしようかと霊夢は考える。亜空穴を使えば余裕で間に合うのだが、ふと更に真下の方を向いてそれを中断させた。

 

 「何もする必要がなさそうだ」という判断に至ったからだ。

 

 

 

 タズナを取り囲むようにして3人の下忍たちが各々武器を持ち、迫りくる敵から依頼主を護衛するために立ちはだかる。

 サクラ、魔理沙、そしてヒカルの3名だ。サクラは怯えつつもクナイを逆手に持ち迎撃態勢を取り、魔理沙も少し臆しながらも同様にクナイを逆手に持ち相手の動きを注視している。そしてヒカルは長刀、楼観刀を両手で握り締め魔理沙と同じく急接近している相手へ最大限の注意を払っている。

 確かに相手の動きは速い。少なくとも下忍の彼女たちにとって、その速度での攻撃は「普通なら」未だ体験したことのないものだった。しかし、第九班の面子にとってそれが対応できないものかというとそうではない。 

 霊夢との演習がこれ以上に鬼畜なのだ。手加減しているらしいのだが、それでもとても同期の下忍と戦っているとはとても思えない激しいものだった。古くからの付き合いである魔理沙にとってみればまあ慣れたものではあるのだが、ヒカルにとっては改めて「博麗霊夢」という少女の規格外さを思い知らされるものだった。

 

 実戦は初めてだが、その演習を基に、基礎に忠実にやれば問題ないはずだ。

 

 金属でできた、鉤爪のような武器を手に施した男が、タズナの首を獲らんとまず3人の前へ迫り来る。まずは男であるヒカルを標的としたらしい、首をを掛けた突きを彼は間一髪でしゃがんで避けると、そのままカウンターとばかりに反撃に出る。

 隙が多いとヒカルは感じた。というより、技のバックアップがなっていない。下忍にとっては速い速度だろうし、実際並みのそれだとまず首を掻っ攫われて即死だと思ったが、その思い込みこそが油断に繋がっている。

 避けられてしまうと終わりなのだ。あまりに単純な攻撃がゆえ、決まらなかった時のリスクが大きい。霊夢と戦っているときと比べてみれば、命の駆け引きという要素があるとはいえ、攻撃自体はとても生温い。

 

「はあっ!」

 

 相手の身体の下へ潜りこんだヒカルは楼観刀の持ち方を逆手に変え、お返しというように相手の心臓目掛けてそれを勢い良く突き出した。しかし、後一歩及ばずと言ったところでそれは緊急離脱され不発に終わってしまう。

 後ろへと咄嗟に飛び上がり串刺しとなるのをなんとか避けた相手だったが、しかしそれも悪手だった。

 

「術式・マスタースパーク!」

 

 緊急離脱し後ろに下がった彼に見えたのは、何か小さくて茶色く色付いた箱型の物体を、腕を伸ばしこちらへ向ける金髪の少女の姿。そしてそれを認知した直後、虹色に輝く、全てを跳ね除けるような純白の光の洪水が彼の視界を染め上げた。

 

 

 ――「――常に場をよく見るのよ。行けたと思っても絶対に油断しない、相手の動きを予想し後手後手を考えて行動するの。私はそれを怠ったから、結果こうなったわ――」

 

 

 親愛なる、一番の友が敵に襲われ命の危機に瀕した後、その余りに痛々しい傷を見せながら自分に対し忠告してくれた言葉だ。実際にその応酬を受けた彼女の言葉だったからこそ、石碑の言葉のように身に沁みて心の中に刻まれた。

 今回はその実践だ。回避された時のことを考え、すぐ撃てるように、ヒカルがその相手の攻撃を避けたと同時にポケットから八卦炉を取り出しチャクラを充填させておいたのだ。

 そして実際相手はヒカルの攻撃を避け切った。ここで自分の出番がやって来る。撃ったタイミングとしては自分の中ではまあよくできた方だとは思う。

 

 その魔理沙のマスタースパークを相手は避け切れなかった。当然だ、迫り来る速さは音速に近い。上忍でも避け切るのが厳しい攻撃なのだ、この賊のような忍に避けられるはずがない。

 それをマトモに受けてしまった相手の忍は死にはしなかったものの、全身に深い傷と火傷を負い意識を失って倒れ伏してしまった。

 

「よし!」

 

 パンッ、笑顔のヒカルと魔理沙のハイタッチが響き渡る。アドリブでの突然との戦闘だったが上々な出来なのではないだろうかと2人は考察する。

 同時に、その様子を上空から見物していた霊夢も地上に降り立った。彼女も万が一のために霊力を込めた針を数本生成しすぐに投擲できるように構えていたのだが、結果的に杞憂に終わった。

 

「どうだよ霊夢、私たちの連携、なかなかだっただろ?」

 

 少し威張った表情を無い胸を張りつつ霊夢へ向ける魔理沙。しかし霊夢の評価は手厳しい。普段の無表情の一点張りで総評を告げる。

 

「まあ悪くはなかったと思うけど、他に敵がいないかまで注意を払わないとねえ」

 

「うっ、それは……」

 

 もっとも、あまり霊夢が言えたことでもない。実際過去にそれで殺されかけたことがあるのだ。今となってはそれを教訓として二度と同じ過ちは繰り返さぬよう、会話している今もまわりに気を払っているのだが。

 

「お疲れ。よくやったな、お前たち」

 

 そこに、どこで隠れていたのだろうか、切り刻まれたはずの上忍二人がどこからともなく、呑気に歩いてやってきた。その姿を見て敵はいないのだろうと霊夢は判断し、警戒を解いた。

 

 彼らは水溜まりを見てすぐに敵襲が来ると確信していたが、あえて下忍たちの実力を測るためにやられたという演技を見せて手出しをしなかったのだ。このような下手な隠れ方をする忍な以上、その実力も大したことはないだろうという判断だ。当然、危なくなったら出てくる算段だったが。

 

 しかし、それにしても成長しているなと、特に九班の担当であるカクルは感じた。あの缶蹴り合戦の時も霊夢指揮の元まんまと作戦に嵌まりやられてしまったが、今は霊夢の指揮がなくとも2人の判断だけである程度動けるようになっているのだ。今回霊夢に関してはチェーンを固定しただけで、それ以外は特に何もしていない。やはり、見込みは当たっていたのだろうと改めて確信する出来事にもなった。

 

 一方七班については何もできなかったナルトに対し更にサスケの煽りが入り、少々険悪なムードに包まれていた。

 

「ケガはねえかよ、ビビリ君?」

 

 その言葉に対し、ナルトは何も反抗できない。何らかの形で動いた5人に対し、1人だけ何もできなかったのだ。そしてそこにこのサスケの言葉、屈辱感は計り知れない。霊夢とサスケに助けられ外的なケガこそないが、心には大きく爪痕を遺すものとなる。

 

 結果としてこの一連の数十秒の戦いは、各々の戦力や成長の「殻」を、否応なしに叩き割って露呈させるものとなってしまった。

 

 

 

その後この忍二人を縄で木に括り付けた後、依頼主のタズナに対し、「契約違反」の尋問が行われることとなる。

 




相変わらず戦闘描写は難しい……
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