忍の世に降り立つ博麗の巫女   作:しゅれー

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いやそら第三話投稿した途端お気に入り数が飛ぶように増えて800越えしたら誰しも驚きますよええ本当に。ありがとうございます。
こんな駄文にお付き合いいただけること、本当に感謝しております。
これからも当小説をよろしくお願い致します。


第四話 ―その意志を―

彼女は驚愕していた。

彼女の名は博麗神奈。霊夢のいわば「養育・教育係」であり、親のいない彼女を赤子の頃からほぼ自分の手だけで彼女をここまで育て上げてきた。半分霊夢の祖母であり、母親のような存在である。

そして、その彼女の視界に入ってきているのは、空で浮遊している、自分が手塩をかけて育ててきた少女の姿。

 

彼女の脳裏によみがえるのは、「あの時」のこと。6年前、九尾の妖狐が木の葉の里に襲い掛かり、里が滅亡寸前にまで追いやられた、あの時の事。先代博麗の巫女、霊夢の母親である博麗(みこと)が、亡くなった時の事――忘れはしない。

彼女が死地へ向かう前に言われた言葉が自然に思い出される。――この子は絶対に強くなる。それも博麗歴代の中でも一番強くなるかもしれない……その才覚に溢れてる。女の勘というやつだけど、これは確信したの。どうか、この子の才能を、開花させてあげて――

 

 その時はいわば親バカのようなものだとばかり思っていた。

 確かに気持ちは分かる。生まれたばかりの愛する我が娘だ。しかも自分はまもなく死ぬのだから、後を引き継ぐ娘にそういう期待をしたくなるのも理解できる。しかし、とはいえ「博麗歴代最強」なんて冗談にも程があるものだと、そう軽く呆れながらにして思っていた。

 けれども同時に、なにか気にかかってもいた。生前の命の勘は、いつも鋭かった。

彼女の勘は百発百中……とはいかないが、それでも予言しているのではないかと思えるほどに的中率は高かった。先の大戦でも幾度となくその「勘」は発揮され、木の葉へ有利に働いたのも紛れもない事実だった。

 そんな彼女の遺した最期の「勘」。これが完全に間違っている、と決めつけるのもそれはそれで違和感があった。

 そして6年間、軽いジレンマの中霊夢をここまで育て上げてきたのだが、これがどうだろうか。今目の前で、その若干6歳の命のたった一人の娘、霊夢が空に浮上しているではないか。

 

 神奈は確信した。命の最期の勘も、ズバリ当たっていたのだと。

 霊夢は、とんでもない才能を持っている。彼女ですら、この光景を見てそう思わざるを得なくなった。まったく命にしろ女というものは末恐ろしいものだと、彼女は改めて思い直す。自身も女性であるはずなのだが。

 

 彼女に多大な才能があると分かったのなら、神奈がやることは一つだった。

命のあの最期の言葉に従って、この娘を強くする。全力で。13代目博麗の巫女、あるいは「歴代最強」として相応しい存在へ昇華させるために、彼女の遺した「勘」と「才能」を、絶対に無駄にしないように――。

 

 決意は、すぐに固まった。

 

 

 

 

 

 一方、霊夢は焦っていた。

 博麗霊夢としての「空を飛ぶ程度の能力」が確かに使えることが分かり、嬉しさで気持ちが満たされていたのも束の間、早速神奈にこの姿を見られてしまった。はてさて、どうこれを釈明すればよいだろうか。

 いや、ここは前世とは違う、「超能力」が普通の世界だ。多分、これが生まれつき持っていた能力なんだと言えば普通に納得してもらえるかもしれない。その能力をこの歳で開花させること自体おかしなことかもしれないけれど。

 とりあえず逃げても意味はないし帰るところはここしかないので、下りるしかない。それは決定事項である。

 スーッとなめらかに下向きに加速していく。重力に身を任せるのは危険なので少し浮力を発生させながら、あとついでにスカートも押さえる。地味にこのスカートの扱いをどうにかするのも課題なのかもしれないと心の中で苦笑する。今はそんな場合ではないはずなのだが、どこか心にはゆとりがあった。これもこの超能力が当然な世界の、もしくはこの「博麗霊夢」となったことによる特権なのかもしれない。複雑なものである。

 

 音も立てず、勢いを極限まで殺し優雅に着地する霊夢。それを見る神奈の目は、先ほどの驚きの目とは少し変わっていた。

 何か、理解したような、軽く諦観が入っているような、そんな目。

 

 

 

「えっと……」

 

 対面する2人のうち最初に口を開いたのは霊夢の方だった。しかし、言葉を発してみたはいいもののそこから先どう言うべきなのか分かり兼ねる。それ以上の言葉は出てこない。向こうの反応待ちだ。

 

「霊夢」

 

「はい」

 

 短く、単純に。その呼び声には、いつもとは異なる重みが感じられる。

 雰囲気が、少し重々しくなる。

 

「それが……さっき空を飛んでいたのは、貴女の能力なのですね、霊夢?」

 

 静かに、しかし逸らさず単刀直入に。その真剣な視線と言葉は、確かに霊夢のその目を貫いていた。

 嘘を憑けなくさせる、老婆だからこその威厳。嘘を憑く気は毛頭なかったのだが、それでも改めて気を引き締められる。

 

「うん。……どうやら、これが私の能力(チカラ)みたい」

 

 霊夢も、それに応じる。簡潔に、彼女の目を見て、正直に。隠すことはない。堂々と行けばいい。

 それこそが「博麗霊夢」。他人の干渉を受けない存在として。

 

 その言葉の聞いた神奈は、少し溜息を吐く。呆れ、もあるのだろうが、観念したという感じの方が近いと霊夢は感じた。

 

「まったく、命様は本当に恐ろしい人よ……最後の最後にこんな途轍もない娘を置いていくなんて……」

 

 小さくそうつぶやいた神奈の、呆れと感心、そして畏敬が混じったその言葉は霊夢には届かない。

 まだ、届かせるには、幼すぎた。

 

「なるほど。そうですか」

 

 神奈は瞳を閉じる。

 

――命様、やはり貴女は――

 

 天に念じたその言葉は本人に届いているだろうか、それは分からない。けれど、そう思わずにはいられなかった。

 一息おいて、神奈は瞳を見開く。自分の反応に少し戸惑っているのだろう。霊夢の、困惑の意志がうっすらと見えるその瞳を見据えて、彼女に伝える。

 

「貴女には、明日から修行をつけます」

 

「……え?」

 

 予想外の展開で、霊夢の瞳の困惑の色が強まった。

 まあ、ある程度は受け入れてくれるとは思っていたが、ここまでスルスルと行くとは思わなかった。いつ発現したんだとか、どこまで飛べるんだだとか、そういうことを訊かれると思っていたのに、彼女の口から飛び出した言葉はそれを飛び越して斜め上を行っていた。

 

「その貴女の中で眠っている『才能』、それをフルに引き出すのが本来の私の役目です」

 

 先ほどとは一転、本来の穏やかな表情で述べる。彼女の優しい「光」が、困惑した霊夢を照らしてくれる。

 

「確信しました。霊夢、貴女には多大なる才覚がある。それを無駄にするわけにはいきません」

 

 あなたの母親の為にも、喉まで出かかった言葉を胸に沈める。まだ彼女にそのことを言うのはやはり早い。

 霊夢の表情が、微かに険しくなる。しかしそれは反抗ではない、覚悟の物だと、神奈には一目で分かった。

 

「みっちり修行をつけさせてもらいますからね、覚悟してください」

 

 彼女のその覚悟が本当か、もう一度念押してみる。しかしその表情に、揺らぎはない。

 

「ええ、望むところよ」

 

 いい返事だ。

確信が、さらに強固なものとなる。これなら、いけるかもしれない。

 

 久々に動くことになりそうだな、そう神奈は意気揚揚に、楽しみに思ったのだった。

 

 

 

 

 

「ふむ」

 

 空高くに上がった下弦の月が社を煌々と照らす中、縁側で一人、霊夢はそう呟いた。

 あの後二人はそのまま社に戻り、何事もなかったかのように夕食についた。

 そしてその食事が終わった後彼女は縁側で、半分に欠けてしまった月を拝みながら、その小さな頭で思考を巡らせていたのだ。

 

 さて、どうしたものか。

 

 彼女が縁側に着いてまず初めに思ったことは、それだった。

 物事はいい方向に動いている。それは分かっている。

 忍の世界でまず必要なのは力だ。この世界の事をほとんど分かっていなくても、それくらいは分かる。そして今日のテストで確かにこの身体には「博麗霊夢」としての力が宿っていることが分かった。早くから活用しない手はない。

 先手を打つのは重要なことだ。先手必勝という言葉があるように、基本的に戦術など、何事においても先手を打つことに越したことはない。

 そういった中で「修行をつけてもらえる」というのは、彼女にとってこの上ないことだったのだ。

 

 彼女にとって問題はそこではなかった。神奈のあの反応。どうも滑らかに受け入れられすぎな気がしてならない。

 

 彼女は自身が「彼」の時代はずさんな性格だった。ある程度の事はちゃんとするが、ベッドから投げたゴミがゴミ箱に入らなくても無視したり、アラームが鳴っているのにそのまま寝てみたり等。

 しかし、この世界に来てから彼女は物事に対して少し敏感になっていた、いや敏感にならざるを得なかった。当然である。こんな無茶苦茶な世界に連れてこられてずさんな性格でいれるわけがない。

 特に今はまだこの世界に来て一週間も経っていない。敏感でなければやっていけないというものだ。

そんなこともあって、彼女はその神奈の行動が気にかかっていたのだ。

 

 自分の思いすぎなだけならいいのだが――霊夢は思う。しかしどうしてか、その「しこり」は消えてくれない。

 敏感であるとはいえ、普通はその多くが考えすぎな場合が多い。杞憂というやつだ。

今考えていることも、多分その杞憂なのだろうとは自分自身でも思っていた。

 別に、そんなもの個人の捉え方によるだろう。自分はこの能力は驚愕の価値があるものだと思っていても、相手がそうであるという保証はどこにもない。まあここの世界の博麗の巫女が全員自分のように空を飛べた、とも到底思えないが。

 

 しかしなにか、どうも引っかかりが取れない。何故かは自分でも分からないけれども、何か大切な物の様な気がする。

 これがいわゆる「女の勘」というやつなのだろうかと、女になってしまった自分の服装を改めて見て少し苦笑する。自分にもすでに「それ」が育ってきているのかもしれない。そもそも育つものなのか疑問だが。

 

「まあ、けどこんなこと考えても仕方ないわよね。あの人が何を思っているかなんて、私には分かりもしないし、知る義務もないわ」

 

 徐々に慣れてきた、「博麗霊夢」らしい口調で、自分に言い聞かせるように語る。いくら思考を巡らせたところで、一緒に過ごして一週間も経たない彼女の考えを読むなど浅はかな考えでもあった。

 

「やっぱり、考え過ぎなのよ。今の私は」

 

 更に強く、自分にそれを押し付けるように、「しこり」を無理やり押し潰すように、しかし静かに、言葉を続ける。

 「考え過ぎだった」と無理やり思考を押し込め圧縮し、記憶の中のゴミ箱に放ってしまう。これくらいにしよう、明日から修行だ。

 

 立ち上がり、己の片割れを失くした月に別れを告げ、少女は自室へと戻ってゆく。

 その縁側に、何か、大切なものを――「博麗霊夢」としてではなく、「霊夢」として大切なものを――忘れてしまったようなどこか後味の悪い心地も、強引に捻じ伏せて……。

 

 

 

 

 




今回は区切り上少し短めです。

少しずつ、物語は進んでいきます。
まだまだ原作開始まで時間がかかりそうではありますが……。

それはそうと一応サブタイトルをつけてみました。しかしサブタイトルって言うのは難しいですね。文章を数字で要約しないといけないって。

あと霊夢の服装はゲームによって差異があってどれを想像すればいいのかという話なんですが、こちらでは特に指定をする気はありません。
視聴者様の好きな形の霊夢を想像していただければいいかなと思います。
ちなみに私はにがもん氏の霊夢MMDモデルをぐへへー(^p^)と想像しながら執筆してたりしてます。
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