それはそうと早速まさかのお気に入り数1000突破!こんな早くに達成できてしまうとは思いもしなかった!
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「ししょー、ちょっときゅーけー……」
「……はあ」
2人の女性の声が境内に木霊する。1人は少女、1人は老婆。
博麗霊夢と博麗神奈、彼女たちは誰も来ない忘れ去られてしまったような神社の境内にて「博麗の力」を磨くための修業を行っていた。行っていたのだが――。
「全く、あの時の覚悟の目はどこへやら」
「うるっさいわねー……」
完全にバテて社の縁側でだらしなく寝転ぶ霊夢とそれを呆れた表情で見つめる神奈。今に始まったことではない。修行を――「技」の修行を始めてからずっとこの調子だ。
持っているセンスがセンスなだけに、こればかりがとても勿体ない。しかし神奈のその無念さを含んだ視線は残念ながら霊夢に伝わりはしない、いや伝わっても答えようとはしてくれない。神奈は頭を抱えていた。
1か月前に遡る。
霊夢が空を確かに飛べることが分かったその翌日から霊夢への修業が始まった。しかし、最初のうちは技の練習などはしない。まずはその技の「力の源」を発現させなければ事は始まらないのだ。
「そもそも博麗の力の源は他とは根本的に異なります」
「……というと?」
神奈の切り出しに早速霊夢が疑問を述べる。神奈の説明を要約するとこうだ。
このNARUTOの世界での忍が使う力の源は一般に「チャクラ」と呼ばれる。このチャクラは身体エネルギーと精神エネルギーの2つを練り合わせることにより生成され、そして術ごとに定められた「印」を組むことにより術が発動する。
しかし、博麗の力はそうではない。そもそも博麗の力は忍術ではない。忍術とは全く別の独立した発展形態を辿ってきている。
博麗の力の源は「霊力」と呼ばれている。この霊力の源は自然に溢れている力、いわば自然エネルギーである。そして基本的に「札」をキーとして技を発動させる。忍術と比べかなりスピーディーであり、隙が少ないのが利点と言える。
また、自然エネルギーと言っても「仙人モード」になるために必要な「仙術チャクラ」とはまた違う。それとはまた少し違ったタイプのエネルギーを吸収するのだ。
しかも、仙術チャクラは精神を集中しなければ吸収することはできないが、霊力の器を持った人間はいわば「適応体」であり、そんなことをせずとも吸収することができ、実質的には普通のチャクラと同じような扱いをすることができる。そのかわりチャクラは微量しか使えないほか、霊力とチャクラ同士の変換などは不可能。
忍術に関しては分身の術だとか、変わり身の術だとか、そういう基礎中の基礎の術しか使えない――ということだった。
「なるほどねえ」
霊夢は、口では納得したようにそう言っているが、内心では少し意外に思っていた。
霊力とチャクラに互換性がなく、チャクラの器は小さい――簡単に言うが、なかなかに鍵となることだと霊夢の直感はそう告げていた。
忍術でも当然役立つ術は多い。攻撃系の術はまあいいにしろ、サポート系の術――例えば影分身の術や傷を癒す掌仙術、物や動物を呼び出す口寄せの術等――はたとえ博麗の力を使えたとしても大変魅力的で、使えて損はない術である。
彼女は確かにこれらの術の存在は知らないが、忍術がほとんど使えないという短所は少々痛手だということは勘が教えてくれたのだ。
「とりあえずまずは貴女の霊力の器を確認しなければなりません。博麗の家系であれば、精神を集中すれば力が漲るのが自ずと分かるでしょう」
「そんな簡単に分かるものなのかしらねえ……」
「まあ、やってみなさい」
そんな精神を集中したくらいで分かるものなのか、それくらいなら既に分かっていそうだがと思ったが言葉には出さなかった。信憑性の低い話ではあるが、それをやらずに言うのは間違いだ。
縁側で座禅を組み精神を集中させる。
どれくらい精神を集中し続けただろうか。1分かもしれないし、30分、1時間、それ以上かもしれない。彼女の才能は、既にこの時点から開花し始めていた。
それは「極限まで集中する」能力。
一時的でしかないが、それだけ一気に深く、集中することができる。それも、他の干渉を受け付けない「空を飛ぶ程度の能力」からの恩恵だった。
実際にはほんの数分しか経っていない。しかし、神奈はその霊夢に宿る霊力に既に驚愕を隠せずにいた。
(これは……なんという霊力……)
霊夢の中に、霊夢の霊力の器に、見る見るうちに貯まっていく霊力。自分の肌でも感じられる、それほどの量。
それはすでに自分の器の量を凌駕し、留まることを知らぬような勢いで更に充填されてゆく。
確かに彼女も既にある程度歳を取っており、全盛期に比べると大分器の大きさは小さくなっていた。しかし、霊夢に集まりゆく霊力の量は、既にその全盛期すらをもはるかに上を行っていた。
(これはもう、霊力の器を伸ばす修業は要りませんね……。既にほぼ完成されてる。なんて娘よ……)
心の中で感嘆せずにはいられなかった。既に器の時点で規格外。先代の遺した唯一の娘は、本当に大変な「モノ」を持っている。彼女の最期の意に答えるためにも、絶対に無駄には出来まい。
「……よろしい。もう分かりました、霊夢」
ようやく集まりゆく霊力の流れが収まった。神奈のその言葉で霊夢は集中を解く。
どうやら一時的に極限的な集中状態に陥っていたため、霊力を知覚することすらままならなかったらしい。集中を解いたと同時に溢れだし、全身を駆け巡っていく「力」を、彼女は知覚した。身体から、この博麗霊夢の身体から、霊力が漲ってくる。
これが「博麗霊夢」としての力の源。
自分でも恐ろしく思ってしまう。この身体に眠っている力の強大さを。
「で、どうなのかしら?私の『霊力の器』とやらは」
ただいつものように尋ねたつもりだったし、実際言葉自体に強い語気はない。6歳らしい可愛らしい言葉遣い、とはとても言えないけれども。
しかし、その溢れ出る霊力によりこの少女の物言いがどこか威圧的感じられてしまう。それほど霊夢の中で眠っていた力は恐ろしいものだった。
「……私の器をはるかに上回るくらいに巨大なものです。やはり、私の読みは当たっていましたね」
しかし、所詮幼女は幼女。そんな威圧に負けるほど、伊達に彼女はこの世界を60年も生きてきたわけではない。表情は一切崩さず、余裕の笑みで答える。
「そう、やっぱり?正直自分で言うのも何だけど、明らかに『霊力』ってのが中で大量に蠢いてるのは分かったわ」
この力を今すぐにでも開放させたい、という風に掌をわしわしと動かしながら話す霊夢。しかし、そんな霊夢を焦るなと神奈は宥める。
いくら器が大きいとはいえ発現したばかりである。まずは大技などではなく基本的な小技でその力に馴染むのが最適だと彼女は考えていた。
基礎が出来ていなければ応用は成り立たない、何事においても通用する常識である。
「まずは、これから始めましょう」
博麗霊夢の基本攻撃、それは体術を除くといわゆる「ショット」と呼ばれるものである。夢符、霊符の選択状態でそのショット形態や威力などは変わってくるのだが、基本的には「札を放出して攻撃する」という点において変わることはない。
手から札を霊力で生成し相手にぶつける、これが「博麗霊夢」における全ての基本である。
そしてそれはこの世界でも同様であった。まず神奈が指示したことはその札を霊力にて作り出すこと。その生成こそが、すべての技に繋がっていく。
「とは言ってもどーやって作ればいいのよ……、ただのエネルギーから無機物に変換って無茶苦茶よねぇ」
幼い掌を見つめながらすでに諦め気味につぶやく霊夢。
「そんなこと言っていたらこの世界生きられませんよ?水のない所で信じられないほど水をチャクラで作り出す忍もいますし」
「ただの嘔吐じゃないのそれ」
「失礼な!あの2代目様の事ですよ!」
呆れ顔で言う霊夢に対し少し怒ったような表情で答える神奈。
2代目火影、千手扉間。彼は木の葉隠れの里の創設者の一人でかつ初代火影である千手柱間の弟であり、水遁のエキスパートと言える人間だった。その他多数の現代にまで伝わる強力な忍術を開発しており、その多くが禁術指定されていることがその何よりの彼が頭脳的で、そして多大なる術のセンスの持ち主であった証拠と言える。
神奈が全盛期だった頃はそんな彼が里を統治していた時代だったこともあり、霊夢のちょっとした雑言にも反応してしまったようである。
「ご、ごめんって……。でさ、これ、コツとかあるの?」
どうも軽い地雷を踏んでしまったらしい、軽く謝罪してすぐ話題を元に戻す。
「んーそうですね、やはりこういうのは『イメージ』ですよ。札を作るようにイメージするんです」
こんな風に、と付け足すと同時に神奈の手から札が3枚ほど出現した。そのうち1枚を霊夢に手渡し、この札をイメージしてみるようにと促す。札をまじまじと、その大きな瞳で見つめ、そして目を瞑り頭の中でイメージする。どのような大きさで、どのような紋章が入っているか――。
イメージし終え、手に霊力を込める。霊力を紙に変換するというあまりに漠然とした行為で具体的にこれ以上何をすれば分からないが、とりあえず力を込めれば出てくるだろう。
そして次の瞬間、手に明らかな感触の変化が起きた。バッと目を見開く。その視線の先には、確かに札が5枚、重なって霊夢の右の掌に置かれていた。
「おおおおおお!」
思わず喜びのあまり歓声を上げる。一週間ほど前まで超能力の存在が完全に否定されていた自分が今、確かに博麗霊夢の力を行使できている。初歩中の初歩であるけれども、その喜びは生半可なものではない。空を飛べたときの感動も中々の物だったが、今の気持ちの高ぶりも勝るにも劣らない。
一方で神奈はまた少し動揺していた。「イメージしてみろ」とは言ったが普通札を生成するだけでも初心者はまず1日はかかるものなのだ。現に自身がそうであった。そもそも、1日でも早い方らしい。
目の前で大喜びしている少女を見つめる。
しかしそれを彼女はたった1回でクリアした。自分が一日でなんとかできたことを、たった数秒で――、恐ろしい娘だ、何度目か分からないが改めて実感させられてしまう。
「まさか1回で成し遂げるとは驚きましたね……。霊夢、その札、さらに増やせますか?」
「やってみる」
再び手に霊力を込め、先ほどと同じ要領で札を生成しようとする霊夢。しかし、今度は2枚しか出ない。もう一度やってみても3枚。どうもまだ霊力のコントロールに難があるようだ。初日でそこまで求めようとするのが間違いであるが。
「なるほど、流石にそこまでうまくいきませんか、うまくいかれたらいかれたらで困るんですけれども」
まずは霊力のコントロールが課題か、問題点が分かった神奈はそれを改善すべく更なる課題を出す
「霊夢、次は――」
そして1か月修行を続けていたわけだが、その結果が冒頭である。
霊力コントロールはこの1か月でかなり上達していたのだが、どうもそれと同時に怠け癖も出現してしまったらしい。
彼女は気付いていないし気付くことはできないのだが、彼女の中でこの1か月、霊力コントロールの修行で能力が高まっていくとともにあるものが具現化していた。それは博麗霊夢の「性格」である。
身と心は常に相互に作用しあっている。彼女がこの世界に転生してきた時こそ色濃く前世の性格が受け継がれていたが、1か月間「霊夢」として生活し、博麗霊夢の力も徐々に現れていくにつれて、彼女の性格も段々と「博麗霊夢」と化していたのだ。
一般に心理学では人の根本的な「性格」が変わることはないとされている。しかし、中身がそのまま身体だけが劇的に変化したこと、そして何より「空を飛ぶ程度の能力」が性格にまで干渉する能力である故、その常識が打ち崩されてしまっていた。流石浮世離れしている博麗の巫女だけはある、とも言える。
たった6歳でこの才能とこのだらけよう。一体彼女はどう成長していくのか、皆目見当がつかない。
期待と不安が混じった神奈の溜息は、しかしとうとう霊夢に届くことはなかった。
二代目は水遁より卑遁の方が上手く使えそうですけどね
さて、霊力その他諸々についてはこちらの独自解釈、および忍の世界と合わせるための帳尻合わせなどで盛り沢山です。
Q.チャクラと霊力を別扱いにした理由は?
A.
霊夢さんがこれ以上強くなるのを防ぐためです。
多分忍術も使い始めたら世界潰れちゃいます()
メリットないしめんどくさいのでできても絶対やりませんけどね。
霊夢は霊力の器こそ巨大なものですがチャクラの器に関しては器(笑)くらいしか持ち合わせていない設定です。
こちらもある程度は考えましたが全てにおいてこの設定がうまくいっているとは思っておりません。その他、設定などでご質問などがありましたら感想の方でよろしくお願い致します。
追記1
「憑依転生の意味はあるのか」という感想が来ましたのでここでも触れておこうかと思います。
第一話のあとがきでも述べたのですが、憑依転生にした最大の理由はいわば心理的なクッションにするためです。原作の霊夢がそのまま人殺ししてしまうことに対するショック(?)を和らげるために、姿性格はだいたい霊夢、ただし中身は現代人、という設定を取ったわけです。
ただ、憑依転生という形を取った以上は、ある程度それにちなんだ展開にしようとも考えております。
私も書いていて「んー誤解されそうだなあ」と思っていたのですがここに書くのを忘れておりましたので、改めて書かせていただきました。ご理解のほどよろしくお願い致します。
追記2
活動報告にてちょっとしたアンケートを行っておりますので、こちらもよければご協力ください
http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=70379&uid=97098