折角の春なんだしもう少し投稿したい気もする。
今回やっと原作キャラが一人出ます。
そう原作キャラがね(ゲス顔)
買ってから三ヶ月が経ち、既に新品と言うにはおこがましい白いジャージに腕を通す。首元に入ったセミロングと言うには微妙に長くロングと言うには微妙に短い髪を両手で掴み、外に放り出す。ジャージを両手で伸ばし、体の前面に付いた細かい皺を無くした。
そしてそのままの流れで前のジッパーを勢いよく引き上げた。準備完了。
肩をぐるぐると回しながら自室のドアを開け、腰を左右に捻りながら玄関までの短い廊下をゆっくり歩く。
玄関マットの上で最後に大きく腰を捻るとちょうど下駄箱横に存在している等身大の姿見に自分の身体が写っているのを確認し、その体勢で固まったまま姿見の中の自分を見つめる。
「また髪が伸びている」
体勢を戻し、姿見の正面に立つ。
以前切ったのは、確か一ヶ月前だったような気がする。
俺が人間として生活してまだ
毛を指先で摘んで弄りながら鏡を見つめ続ける。
この名残が現れたのは最近霊力が少しずつ上がってきたからだろうか。いや、そもそもそんな名残が本当にあるのか確定していないのだが。
現在、俺の霊力の量は当初の俺の予想である『下級死神と同量』をほぼ達成していた。半年で増える量がこれ程なのだからこの体が一通り成長しきった頃には大体低く見積もって
ちなみに現状、霊力が増える要因は二つ存在している。
一つ目は身体の強化、柔らかく言えばランニングである。
この世界には危険は少ないと云うものの自衛の手段が無ければいささか不安要素がある。その為、最低限の手段―――
身体という器を鍛えれば霊力も自然と増えないだろうか、と思い一カ月ランニングと霊力のコントロールを繰り返ししてみたところ、確かにほんの少しだけ増加しているのが分かった。
7、8才という未熟な身体に無理な運動をさせたなら発育が悪くなると聞いたが、一々気にしていては増えるものも増えないだろう。時間を惜しむ事は無いと判断した。
とはいえ、身体を鍛えるだけで大量の霊力が増えるならそこら中のアスリートがみな死神級の霊力を持っている事となる。所詮身体を鍛えることで得られる霊力など微々たるモノなのだ。
鏡に写るジャージ姿の自分。上までぴったりと上げたジッパーを少し下ろして首元を晒す。
裸眼では何も見えないその場所を今度は霊力を眼に集中させながら細めて見る。
首のすぐ下の位置、そこに直径4~5cm程の見慣れたサイズの丸く黒い線がぼんやりと存在していた。
虚の証、心の在るべき場所の欠落を意味する『孔』がそこには存在していた。
二つ目はこの『孔』。
これに気付いたのは、人間の入浴という行為に若干の戸惑いを覚えていた五ヶ月半前。未発達の少女の身体という己の器をどこか痒々しい感覚を抱えつつ、風呂上がりにタオルを使用していた時の事だった。
最初は驚いた。が、その『孔』も正確には切れ目のような線が入っているだけだったので、前世が虚であった証なのだろうと頭を切り替えて流した。
そして、その『孔』に関する霊力の増える要因。
その孔のような黒い切れ目の線、そこからゆっくりと漏れ出ていると言えば正しいのだろう。
自分の中にあるガチガチに鎖や鍵で固められた大きな何かが詰まった箱、その隙間から僅かに出る内包された濃い霊力。
その微量の霊力は日夜、常にこの今の身体の霊力として追加され続けている。
今、話した2つの要因では明らかに後者の方が量は多い。後者が無ければ恐らく生きている内に増加する霊力は1か0かの違い、といった程度になっていた筈だ。
だからと言って素直に霊力が取り戻されてゆくのを喜べ、というのもおかしな話だ。
この『孔』の線、その奥にある過多数のロックが掛かった霊力の籠った箱、他にも幾つかあるのだが、そこまで情報を与えられれば誰でも気付く。
自分はもしかしたら
集中が切れて鏡に映る『孔』が見えなくなるのに気付いて我に帰った。
何時までも自問自答をしようとする面倒な思考を振り払い、ジッパーをまた引き上げ、ため息を一つ。
下駄箱の上にあるスタンド型の時計を見ると、もう既に玄関で10分も立ち往生していた。
「時間の無駄か」
最近は日の暮れも少し遅くなってきたとは言え、夕方なのだから早くしなくては冷え込んでくるだろう。
靴を足だけで履き、玄関を開け、そのまま夕方の春の気候に駆け出した。
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突然だがランニングコースを軽く話そうと思う。
日や時間帯によって走る道は変わるのだがその中でも必ず通るルートというのはある。
1に河辺。
西日が射して川の表面が薄い橙色に染まるのを横目で見ながらゆっくり駆けていく。合計四車線が通る出来立ての橋をいつも通り渡るか、渡らずに別方向に行く、などと気分でコースを変えるのはこの場所だ。
2に商店街。
閉まっている店舗は1つも見当たらない実に賑わいのある場所。珠に店先の爺達が「デパートがもう少し遠ければ」と嘆いているのが聞こえるが無視して駆ける。
3にある女子高校の前。
西洋風の門には『駒王学園』と書かれており、その中にはヨーロッパから直接移してきたかのような荘厳な校舎が佇んでいる。
ここでは気になる事が1つあった。この身体になってすぐ、ランニングを始めたばかりの頃、希に「駒王学園には近付きたくない」と自然に考えさせられた事がある。それに疑問を感じた時、無理に浮かび上がるその場所へ近付かない、という思考を振り払って近付いた所、その学園に謎の結界が張られており、外内の両方に人影が見えなかった。
俺の思考に自然と意識を植え付ける能力と気配を完全に遮断する高性能な結界。
その2つの正体を掴むという意味でもその場所は毎日通るようにしている。
そして最後、公園。
地元民の間では『新公園』と言われており、古びた花壇とベンチしかない『旧公園』とを区別化する為に使われている。文字通り、新設されたばかりなので小児が遊ぶための遊具がたくさんあり、夕方でも人気は尽きない。そう、尽きない。筈だ。
全神経を集中させ、全ての音に耳を傾ける。
いつもなら子供の騒がしい声が聞こえてくる筈の公園に今、響き渡るのは、強めの風の唸り声のような音、木の葉がその風で身を揺らされる音、上空でカラスが風を浴びながら鳴く音、そしてそれらの音の隙間から聞こえる1対1の言い争いの怒鳴り声、破砕音。
新公園の色濃く育つ草影に寝転がって隠れ、上向きのままで見上げる空には薄い紫の今にも暮れそうな色が広がっている。
雑草に当たっても音が立たないようにゆっくりと腕を持ち上げて手首の安物デジタル時計を見ると、家を出た時刻から40分近く経っていた。実際走っていたのはその3分の2程で、残りの3分の1は今、この位置、この体勢でずっと草むらに隠れ続けている。本当なら今すぐにでも走って帰りたい。
だが、奴らのせいでここから出ようにも出られない。
破砕音と怒声の響く方向の草をかき分けて見てみる。
「はっ!よく耐えるじゃない…!」
「汚らわしい堕天使めがッ!さっさと死に絶えろッ!」
カラスのような黒い羽を広げながら、白い杭のような大きな光を飛ばす余裕綽々といった表情の短髪女。
女と真反対の純白の羽を広げて、装飾の付いた槍を熟練した手捌きで扱う短気そうな初老の男。
「アンタも全っ然!懲りてないわね!」
「貴様を滅するまでは私はまだまだ死なんッ!」
その二人が辺りに轟音を響かせながら各々の力をぶつける。
男が霊力(?)を込めた槍を突き出せば、高い風切り音と共に突風が起き、槍を縦に振り下せば、地面に鋭い一本の亀裂が出来上がる。
女が突き出された槍を鋭角的に躱せば、通り抜ける突風が掻き消え、手に持った鋭い光の杭を投げれば、刺さった木々が焼け焦げる。
「ほーうらっ!ファビオ!へばってきたんじゃないの!?はっ!」
「アぁぁビゲイルぅぅ!!その汚い口を閉じろぉぉぃ!!」
あの二人は戦い始めてから何度か互いに名前を呼び合っていたが、どうやら男はファビオ、女はアビゲイルというらしい。
…口汚く罵りあいながら激しく戦っている割に仲が良く見えるのは何故なのだろうか。
草から手を除けると俺は再び空を見上げた。
嬉々としてあの不可解な霊力を使い、闘う白い翼の男と黒い翼の女。
奴等は一体何なのだろうか。
霊体化はしておらず、更にこの世界に虚が確認出来ていない状況である以上は死神に関連しているとは考え難い。
滅却師という人間の肉体のまま虚を狩る輩がいたというのも知っているが、それらは『虚』が存在していない限りは成り立たない。
そうなると奴等の立ち位置として考えられるのは『虚』側でもなく、『虚を狩る』側でもない第三の存在。
………「この世には危険は無い」等という推測はこれでもかという程に外れていたという事か。
アイツ等の闘いを見ただけで分かる。
今の響転すら使えないこの身体程度では敵わない。
成長して虚閃が使える程になればせめて立ち向かう事が出来るだろうが、現状で無用心に飛び出せば簡単に俺は死んでしまう。
やはりとりあえず、あの白と黒が闘い終わるまではこうして待機しておこう。
未だに二人の罵り合いから得られた事は少ないが耳を傾け続ければ奴等の情報ももう少しは手に入る―――
がぎんっ。ひゅるひゅる。どすっ。
「ぬぐぅ!?私のセイグリットギアがッ!!」
「はっ!!やっぱりアンタ衰えてるわ!」
セイグリットギアという単語に疑問を覚えたその瞬間、見覚えのある趣味の悪そうな装飾のついた槍が30cm近くにある木に突き刺さり、自分の視界の一部を遮った。
…これは不味い。
「おい、小娘。そこで何をしていた」
すぐ近くから聞こえた冷めた低い声。反射的に立ち上がり、その声の方向へ向けて拳を握って構える。
が、目の前に人影は無く、気付いた時には的確な痛みが腹と首に走った。
そして俺は強制的に意識を失った。
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「………俺は何をしていた?」
目を覚ますと星があまり光っていない寂しい夜空だった。
自分は何故こんな所で寝ていたのだろうか。
身体を起こすと腹と首に違和感を感じた。ピリピリと痛む。
首を揉みながら腕時計を見ようとするが周りが暗すぎて見えない。
微かに霊力を込めて凝視すると8時、という事は理解できた。そういえば今日は父が休みで家にいる筈だ。
「帰らないと……」
ジャージに付いた土や草をはらい落としてさっさと『新公園』の入り口まで走っていく。
何か重要な事を忘れているような気がするが……まぁその内に思い出すだろう。
「……何であんな下等生物を見逃したのよ?殺してしまえばよかったじゃない」
「お前は堕ちたせいで天使の慈悲の心まで無くしたようだな、流石だ。褒めてやる」
「…それよりもそろそろ解散しない?」
「フム…時間的にはそろそろグレモリーの連中が足並み揃えてやって来る頃だな」
「今回の『わざわざグレモリー領で闘って奴らに迷惑を掛けながらやる模擬戦』は私の勝ちね」
「いいだろう、今回は譲ってやろう」
「アンタのそういう所は変わらないわね…」
「ああ、貴様のくだらない遊びが好きな所も堕ちる前から変わっていないぞ」
「……ねぇ、ファビオ?なんで私堕ちちゃったのかな…」
「知る訳ないだろう。さっさとお前も帰れ」
「うん…またね」
あの後、家に帰ってくると真剣な顔をした父が玄関で待っていた。
そして若干汚れたジャージを脱ぐ隙もなく、居間の畳の上に座らされて帰宅が遅くなった理由を問い詰められた。
素直に『新公園』で寝てしまっていた(?)と答えると、そこから最近は肌寒くなってきたから風邪をひいてしまうだの、怖いオジサンに連れていかれたらどうするだの、30分程注意を受けた。そして気付けば時刻は9時過ぎに。
……風呂に入らないと。
「美咲、まだ話はあるんだ……いや、こっちの話の方が大事かな?」
溜息を吐いて立ち上がるとまた呼び止められた。
いつも通りの苦笑いを浮かべながら手招きしている父は本当に申し訳無さそうにしている様に見える。
もう一度着席し、父の言葉を待つ。
「その…美咲はさ、お母さんに会いたいよね?」
『お母さん』と聞いて、未だに一度も直接目にしていない自室にあった写真の女性を思い出す。
彼女についての考察は実は既に済ませてある。
『あの女』と一瞬でも姿が被ったのだから気になるのも当然だ。
目の前の父や周りの人間は『お母さん』の話になると露骨に方向を変えようとする傾向がある。半年前にこの身体に意識が目覚めた時から一度も会わない『お母さん』。時折、『中村美咲』の友人から聞く「遠くへ行った」の言葉。
これ等の事から「己の母は既に亡くなっている。この世界では霊体を見掛ける事も無いから会う事は無い」との推測を立てた。
父の反応から伺うと、どうやら『中村美咲』には『お母さん』が亡くなった事を隠していたようだ。
無理に問いただす必要性は感じないので放っておいた。
だが……会いたい、とは何だ?
目を逸らしながら父が続ける。
「その……だ、実はだな」
まだ言葉を濁して長々と渋る。
これで話す事が「母は実は一年前に死んでいる」といった類いのモノならば一度―――
「新しいお母さんができるかもしれないんだ」
……何?
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「ほら、挨拶しなさい」
あの言葉から数日後、父は1人の女性と男子を連れてきた。
父曰く、女性は新しい母、男児は同い年の弟になるという。
女性の催促の言葉に内気そうな男児が恥ずかしそうに前に出てくる。
「…えーと、おねえ…ちゃん?」
疑問形にされても困る。
父に目を向けても変わらず温かい目でこちらを見ているだけで、女性は気まずそうに苦笑いしている。
男児がさっきからの俺の沈黙に耐え切れなかったのか、女性の後ろにあせあせと隠れる。
自分の背後に隠れた男児を撫でると女性はこちらに手を差し出してきた。
「美咲ちゃん、これからよろしくね」
近日、母となる女性と握手を交わす。父の表情は依然として柔らかい笑顔だった。
ちなみに父と俺は苗字が変わるらしい。父は感慨深そうにしていたがこの名前になって未だ半年しか経っていない自分にとってあまり感じ入る事は無い。
「そうなると美咲は『元浜美咲』になるね!!字画が少しだけ悪くなっちゃうけど…」
「どうでもいい」
今回出たファビオ君とアビゲイルちゃんですが彼らは元家族みたいな関係でアビゲイルちゃんが堕ちちゃった後も情を捨てれずにお互いの討伐という名目で度々会う仲です。
次回からちゃんと主人公君出ますから安心してください(ゲス顔)
【今回の要約】
ドーモ、ウルキオラ=サン。孔です。
そして謎の二人組、一体どの天からの使いなんだ。でもその記憶を消されちゃった。
ついでに元浜の姉になりました。
追記:この2人、思いつきで後々結構大事なキャラにしちゃったから覚えとくといいでしょう