ウルキオラさんがTS転生していく話   作:鉄パイプ

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に、日曜の夜だから…(震え声)

とりあえず前回の訂正も入れます。
訂正内容は前話の後書きに書いときますんでそこだけ読んでみてください。

ちなみにお気付きかもしれないが、書き方模索中です。
「こんなんいいんじゃね」みたいな作家の書き方をテルミー。


ウルキオラさん、悪魔接触

「よーし荷物も片したし、帰ろっか!!」

 

「…進路カードは出したのか?」

 

「うん、出したよ!!」

 

「…鞄の横ポケットから飛び出しているそれはなんだ」

 

「……あれ?」

 

「……」

 

「んぅー?出さなかったっけな…私」

 

「…着いて行ってやるからさっさと出してこい」

 

「うーん、ありがと。…美咲ちゃんは私と同じ所を志望してるんだよね」

 

「ああ、駒王学園だ。近くて学力が高くて学びたい学がある」

 

「前から気になるって言ってたもんね、駒王学園」

 

「……まぁ確かに色々気になるな」

 

「しかし、女子校だったのに共学になるんだもんね。あの三人組が入れるのは良いことなんだけど…みんな学力大丈夫かな?」

 

「あの三人組は今日も家で勉強会だと言っていたから意欲的には問題ないだろう。問題があるのは…」

 

「入る動機、かな?勉強してる最中の形相が凄かったもん、それに呟く言葉が『チチ…シリ…フトモモ…』って…」

 

「……そうだな」

 

 

 

 

中学3年生、晩秋。

生い茂らせた葉を地面に撒き散らした木が寂しげに皺だらけの素肌を晒す時期。

中学に通って三年目を迎える今年の今の時期は学校生活の周辺が妙な空気が漂っている。

黙って参考書に向かう普段は饒舌な学生。

塾のテキスト片手に話し合う髪を染めた女生徒。

見張りをする軍人のような面持ちの教師。

そしてその他が静かになった事に気付かず、声が周りから浮き上がっている不真面目な不良学生数人。

 

前世でも今世でも未だ感じたことの無い不思議なベクトルの緊張の糸が中学校とその周辺に張り巡らされていた。

 

「今年はまだ暖かいね」

 

学校から十分程歩いた帰り道、隣で井上が緊張感も無く呟いた。目に見える範囲に防寒具を付けずにいるその姿にはもうすぐ冬が来るようなイメージは全く浮かんでこない。

吹き付ける風はめっきり乾燥していているがその風が確かに若干温いと感じられる程には温暖な気候だ。

 

「これから間違いなく寒くなるだろうな」

「空気が乾燥していなかったら一年中ずっとこのくらいの気温であってほしいよ…」

 

また緊張感の無い様子で両手で頬を擦り合わせる井上。

そんなモノは地球の公転を止めようとでもしない限り無理だ。

 

「お願い美咲ちゃん!!地球を止めて!!」

「馬鹿か」

「頼めるのはアナタくらいしかいないの!!」

「阿呆か」

「そして私を救ってほしいの!!」

「茄子か」

 

子供の喧嘩にも劣る稚拙な掛け合い。

井上がまた話そうとした瞬間、それを遮るように一陣の風が吹いた。

突然の突風に井上が小さく、きゃ、と声を出す。

自分も思わず立ち止まり、目を閉じて乾燥した風に紛れた塵をやり過ごす。

突き刺すような風に煽られる事、約二秒半。

まだ暖かかった筈の空気が急に冷たくなった気がした。

 

「…美咲ちゃん、さっさと帰ろっか」

 

風に掛け合いの阿呆らしさを指摘されたようにでも感じたのか、そしてそれを恥ずかしく思ったのか井上は俯き、早歩きで進み出した。

恥ずかしがるのなら最初からやらなければいいというのに。

 

「ほらほら、早く早く」

 

仕方ないなといった様子の彼女が小さく手招きをしている。

 

「…帰るのはいいが俺はそこの十字路を左に曲がるぞ」

「え、なんで?美咲ちゃんの家も私の家もコッチなのに」

 

十字路を右に曲がろうとしていた井上が咄嗟に疑問を口に出す。確かにそこを右折すれば家はすぐ近くだ。

 

「駒王学園に少し寄ってくる」

 

そう言いながら角を左折し、井上に背を向けて歩き出す。当然ながら後ろから駆け足で走る音が聞こえてくる。

 

「今から行くの?学校見学」

「…そうだな」

 

彼女自身も当然、といった風に横に追い付いてきた。もしかしなくても着いてくる気なのだろう。

 

「んーでも何でこのタイミングで?」

「…少し用事がある」

「用事があって行くならさっさと行っちゃった方がいいよね。最近は日の暮れが早いから心配されちゃうよ」

 

気を取り直したのか、彼女は俺の歩幅に合わせて早く歩きながら隣で鼻唄を歌い始めた。

 

…この用事というのは裏の事情についての事がメインなのだが、まあ縛りはしない。

忌々しい事に、今の俺には多少の相手なら彼女を護りながらでも闘える戦闘力が存在しているのだから。

 

 

虚閃に虚弾、響転に探査回路。

今から約一年前のあの戦闘以来、前者2つは制限はあるものの使うことが出来るようになり、後者2つはより精度が増した。今虚閃を使ってもあの夜の頭のイカれた天使を消し飛ばした時程の威力は何故か出せない。それは筋肉の活動限界のように脳が自然とセーブをしている感覚とどうにも似ているようだった。

「護れる力がある」などと言えば聞こえは善いが、実際にはそんな便利な力ではない。

一年前、初めて虚閃を使い、初めて殺害をした日より徐々に胸の孔の痕の線が濃くなっているのだ。それも、虚の力を使った日はそれが目に見えて変化している。酷い時は発作のような症状が胸の孔の痕を中心として起こることがあった。

それはまるで、自分の中で『人間』が『虚』に喰い潰されているかのような感覚。孔の奥から湧き上がる何かに精神を揺さぶられる感覚。

これは間違いなく前世の技の数々を使っていく事による反動であり、そして――

 

(――恐怖、か?)

 

人間でありたい、そんな願いが殺した天使の血で静かにじくじくと塗れていくようなイメージ。

今の人間である自分は、虚であった頃の自分を恐ろしく感じているのだ

 

『面倒になったのなら、壊してしまえばいい』

 

何故、そんな思考が出来たのか。

人間の常識が自分に理解できているかなど気にしたことも無く、実感したことも無かった。だが約一年前のあの日以来、再認識した。

自分には、隣を歩く彼女を指一本で殺せる力を持っているのだと。彼女ら、『人間』を塵のように扱い、喰らっていた事を。

気付けば、それが『人間』の自分には恐ろしく思えた。

 

護らなくては、彼を、彼女を、彼等を。

 

 

「美咲ちゃーん、足止まってるよー」

 

掛けられた言葉にハッとする。

目の前で事もなさげに顔を覗き込む彼女。

そう、これが多い。妙な考えで固まる俺に彼女が意識を呼び掛けるパターン。

呼び掛けられたが早いか、さっさと早歩きで彼女を追い抜く。

 

「もー、なんかボケっとするのが癖になってない?」

「気のせいだ」

「いや、だって駒王学園が見えたって声かけてもちっとも反応してくれないし…」

 

そう言われてまた気付く。ランニングで見慣れた道に、見慣れた校舎。前方で長い間変わらない、西洋風の建物がどっしりと身を晒している。

駒王学園。有名私立進学校一覧のリストに名を連ねる学校がそこにあった。

 

「何回見ても大きいね…ホントに私ここに行けるのかな…」

 

井上が圧巻されたように立ち止まって呟く。

 

 

俺が今日ここに来た理由、それは『悪魔』という存在について考察をした為であった。

『天使』、『堕天使』などという空想的存在。そんな存在に憧れる大人が、子供がどれだけいる事だろうか。そしてそんな彼等が実際にその『天使』と『堕天使』が存在していると知ったら何を思うだろう?おそらく、一頻り騒ぎきった後に『悪魔』は存在しないのか、と疑問に思う筈だ。実際、今の自分は「存在していてもおかしくは無い」と考えている。

では、「存在している」とおける場合の問題は何か。

単純明解。奴ら、『悪魔』の倫理観だ。

本来、『悪魔』とは悪を象徴する、神に敵対する者として神話に描かれている。欲望に導かれるがままに暴虐を尽くし、人の大敵として在り続ける。一部では、『悪魔』と『堕天使』を同一視しているものもあるが、今は気にせずとも大丈夫だろう。今気にすべきは奴等が『天使』と対を為す、真逆の性質をもった存在という点。人を救済すべく、天の神より遣わされた善の象徴たる『天使』。その『天使』がアレだけイカれているのだ。

ならば、『悪魔』とはどれ程イカれた者逹だというのか。

 

この町にいる間に何回か捉えた『天使』でも『堕天使』でも無い霊圧は、この目の前の学園からよく感じ取られる。ならば、それが『悪魔』であれ何であれ、確認するのが道理ではないか。

 

 

「今歩いてる人達は皆、帰宅部かな」

 

校門からは十数人の女子生徒が幾つかのグループになって出てきていた。真っ白なワイシャツに燕尾服をモチーフにしたかのような胸元の開いた灰色のビスチェ、そしてその灰色に一部を覆われながらも個性を放つ紅色のプリーツスカート。胸の大きさを強調するため、近所に住む男性は目のやり場に困ると言うことで評判だ。一部からは性的な意味で評判を受けているようだが。

 

「…あれってあんなに胸浮き上がっちゃうんだね、恥ずかしくないかな」

「お前は胸が大きいが…慣れはあっという間に来る」

「いや、慣れるまでが恥ずかしいんだよ…」

「だからあっという間だと言っている。制服の他の箇所にも目を向けろ」

「うー?…じゃあ、あの首元のリボンとか――」

 

井上と数ヶ月後に着ることになるであろうあの制服について話しながら、校門へと近付く。中からは陸上部らしき女子生徒がブルマーのような前時代的な体操服を着て、列を作ってランニングをしているのが見えた。

試しにその集団に探査回路を集中させてみる、が特に変わった様子は無いようであった。

続いては偶然視界に入った体育館らしき施設に探査回路を集中させる。中からはバスケットをしているらしい集団の健康な魂の波長を感じ取った。

 

「美咲ちゃん、ここからどうするの?校内に知り合いがいないなら誰か適当に声かけてみる?」

 

井上が駒王学園の表札をぺちぺちと触りながら問い掛けてくる。中に入りたくてうずうずしているようにも見える。

 

「…声を掛けるといっても、誰にだ?」

「そうだね…」

 

今一度、校舎に目を向ける。人気はまだ全然あるのだが、校門の近くへ近寄ってくる生徒はなかなかいない。遠目に1人や2人制服姿の人影が見えないこともないが、ほとんどは部活動に励み、こちらに気付く様子は無い。帰宅部の集団も先程のグループがちょうど最後だったのかもしれない。

 

「んーもう入っちゃわない?違う制服来てたらお客さんだって分かるだろうし、入っちゃダメって事なら学校から出ればいいし」

「…それは」

 

あまり賛成はできない。井上の目的は学校見学で中に入る事だが、俺の目的は『悪魔』の存在の確認と調査で何も無理に入らずとも達成できる事だ。もし悪魔が予想通りの残虐性を持った生物なら今の自分達は『巣に入ってきた餌』も同然だ。この門を越えたが直後、視界にいる人間全員が術で操られて襲い掛かってくる事も――

 

「じゃあ入ろう!!うん、多分大丈夫!!」

「おい、待て、ちょっと待て」

 

俺の思考も待たぬままに井上は校門を越える。その後ろ姿に迷いは無い。自分も、渋々その背中に付いてゆく。

 

本当に大丈夫なのか、こうして無用心に入ればすぐにでも――

 

 

「この学校に何の用かしら?」

 

 

…ほら、来た。

 

その人物を知覚したのは先ほど校舎を見渡した時。何か厳しい表情でこちらを見つめていた眼鏡を掛けた淡い桃色の目をした女性。その時は大して気にも留めなかったが、段々向こうがこちらに近付くにつれてその霊圧の違いに気がついた。限りなく人間に擬態しているとでもいうのか。

 

「その制服…近場の中学のものね。ちゃんと入る許可は貰ったの?」

 

妙な威圧感を纏わせながら腕を組むその人物。まるで一般人がこの場に来ることを心の底から拒むようなその態度。隣で井上が息を詰まらせて後退りをするのが見える。自分も、体は自然体のまま戦闘をする準備をする。

 

「確かにそろそろオープンキャンパスは開く予定の筈だけど…フライングね」

 

両手をぱしり、と合わせ、急にあくまで優しく諭すかのような口調で語る。その一つ一つの動作がこちらを品定めしているかのように思える。殺気は無い、最低でも捕らえるつもりだろうか。

 

「ああ、ごめんなさい。私は生徒会に所属している――」

 

その人物はゆっくりとこちらに手が届きそうな距離まで来ると、微笑みながら手を差し出し――

 

「――支取(しとり) 蒼那(そうな)です、よろしくね」

 

そう名乗った。

 

 

###

 

 

その二人を見かけたのはただの偶然だった。

何気なく昇降口の前を通ったときに見えた他校の制服。近付いて見れば年下の、まだ中学生らしい女の子が二人困ったように話し合っていた。

何か問題があったわけでも無さそうだったが、ふと片方の女の子から目が離せなくなった。

その表情には限りなく感情が浮かばず、すべてのことが興味無い、とでも言うような憮然とした態度。その身体に詰め込まれた一般人とは一線を画した魔力量。学校の中を隅から隅まで観察するような怪しい態度。もう片方の女の子は、何かしろの会話に表情を輝かせたり、頬を膨らませたりするなど魔力からもいたって普通の少女に見えた。だが妙な魔力を持った少女はそんな彼女と裏腹に、どこまでも冷たく、どこまでも機械的に、この地を探っているように見えた。

 

(…少し、注意をしてみようかしら)

 

今はただの書記だが、来年にはこの駒王学園生徒会副会長という重要なポジションになる。夕方とはいえ、こうも敵かもしれない人物に校内を視察されては上位悪魔としての面子が潰されている。こういう気になった事にはしっかり対応をしなくては。

下駄箱の横を抜け、正面へと出る。夕日が顔に射して少し眩しく感じたが、手で遮って校門前の二人に視線を飛ばす。と、そこで妙な魔力を持った少女と目があった。鮮やかな翡翠色の目が一直線に私の顔を睨んでくる。

 

(…綺麗な色ね、それに彼女の魔力、何か感じたことのあるような…)

 

そんな事を考えていると、快活な方の少女が学園内に入ってきた。それに少し慌てた様に付いて来る怪しい少女。これは、また怪しくなってきた。

そう思い、使い魔に『怪シイ人物二名ノ侵入ヲ確認、応対スル』といった旨を伝え、生徒会室へと飛ばした。これで不測の事態があればすぐさまに増援が来てくれるだろう。

一つ、深呼吸をして息を整える。

自分がこの学校に入学してから関わった大きな事件はほぼ0に等しい。だが、油断をしてはならない。この学校の生徒会として、秩序を守る存在として堂々としていればよい。

並んで歩く二人に正面から近付き、声を掛けた。

 

「この学校に何の用かしら?」

 

まずは、軽く威圧を含めながら。敵対者ならば、これで挑発されていると気付いて何らかのアクションを起こしてくる筈だ。

二人とも、私の声に同時に固まった。だが、その二人の反応の意味はまったく違う。片方は驚いて動きと表情まで固めて動かない、もう片方は即座にこちらを再び睨みつけ、全身から力を抜いた自然体で固まった。まるでこちらとの戦闘に備えるかのように。

 

(これは、もしかして…クロじゃないかしら)

 

この頃の三勢力間はやけにピリピリしている。天使の勢力からの偵察というのはあまり有り得る事ではないので堕天使の勢力の者か。それともしつこいまでにこちらを敵視してくる先代魔王の者か。なんにせよ、もう少し反応を探ってみる必要がある。

 

「その制服…近場の中学のものね。ちゃんと入る許可は貰ったの?」

 

続いては威圧をもう少し込めた注意を飛ばす。しかし、この言葉に一般人らしい女の子が少し怯えたように後ずさってしまった。少し罪悪感がわいたが、もう片方の少女の反応を見て気が変わった。

敵意を飛ばしてきたのだ、軽く片手の拳を握り締めながら。

 

(クロ、いやクロに近いグレーにしておきましょう)

 

彼女が何らかの敵対勢力に属していると認識した所で、今度は少しフレンドリーに近づいてみる。

 

「確かオープンキャンパスは――」

 

彼女自体は人間のように見えるし、可能性としては邪教に属してしまい、その上の者から何か命令を受けたか、それとももしくは彼女自身に暗示が掛けられているか。

その中で後者は可能性が高いと見よう。

根拠は彼女の中に渦巻くその魔力、彼女自身のものとは少し性質が違ったものが混ざっている。特殊な神具を持っていて、それ自体が固有の魔力を持っているならば別だが、鉄砲玉扱いの少女にそんなものが宿っているとは思えないし、彼女自身からは神具の気配を感じないのでその点は切り捨てよいだろう。

不安を解かせるために、怯えたほうの少女に笑顔と自己紹介を載せて握手を求める手を伸ばす。

 

「支取 蒼那です、よろしくね」

「え、えと、はい。でも私たち…」

 

握手に応じた少女が急に言葉を詰まらせて、しゅん、と暗くなる。私が勝手に学校に入ったことに対して怒りを抱いていると思っているのだろうか?悪いことをしていたのが見つかった小型犬のような可愛らしい反応に思わず微笑が漏れる。

 

「…そ、その…来年駒王学園を受験しようと考えてるんです」

 

しおらしい態度でそう伝えてくれた。そしてその言葉に、翡翠の目の少女から視線を感じた。来年にはこの二人が後輩になっているかもしれない、ということらしい。その子に横目で微笑を見せながら問いかける。

 

「そう、じゃああなたたちの名前を教えてくれないかしら?もし来年、この学校に入学したなら声も掛けやすいし、ね?」

 

そう言うと、翡翠の目の女の子の視線がより刺すように強くなった。この子が小型犬なら、あの子は狩に慣れた狼といった所か。

 

「私、井上真紀っていいます!!入学したらよろしくお願いします、支取先輩!!」

「フフフッ、気が早いわよ?井上さん、これでもここはそれなりにレベルの高い高校なんだから」

 

照れたように顔を俯かせる彼女との間に柔らかい空間が広がる。もし、この子が入学したなら仲良くやっていいけそう。

だけど問題は、もう一人の方。

 

「ほらー美咲ちゃん!!この人絶対良い人だよ!!ほら、早く早く!!」

「…元浜です」

 

無理をして敬語を使っている感が否めないが、一応紹介はしてくれた。だが、その綺麗な目は未だ、鷹の目のようにこちらを鋭く睨んでいる。が、名前だけを話すと、彼女は踵を返して、去ろうとした。

 

「ちょっと美咲ちゃん、学校見学はー?」

「今度の機会に来る」

「そんなー」

 

どうやら彼女は退く事にしたようだった。危険を感じたからか、それとも命を受けたからか。

置いていかれかけた少女、井上さんに諭すように告げる。

 

「井上さん、これから案内すると遅くなっちゃうし、改めて来てくれないかしら?その方がもっとお話できるし、ゆっくりできると思うわ」

「うーん…分かりました。じゃあまたお会いしましょうね、支取先輩」

「フフ、次からは下の名前で呼び合えるくらいの仲になると良いわね」

 

そういうと、井上さんはこちらに手を振りながらバックで走り始めた。危ない、どう考えても危ない。そう注意しようと思った矢先、同じようなことを元浜さんから注意されていた。あわただしい女の子だ。

そうして、二人の姿が見えなくなった頃、使い魔が帰ってきた。ぱさぱさと飛ぶ使い魔は、私の手の上に着地すると、そのまま羽を休めるように眠ってしまった。

 

「…元浜美咲に井上真紀、ね…まぁ、注意しておいて損することは無いでしょう」

 

その旨をリアスの方へ伝えておくことも忘れないようにしないと。

薄い紫色に染まってきた空の下、薄寒い空気から逃げるように校舎の中に入る。

 

「『絶対良い人』…か」

 

あの元浜とかいう少女には途轍もない皮肉に聞こえたことだろう。

 

「来年の一年生は、なんだか騒がしそうね」

 

生徒会室へと向いながら、そんな事を思った。

 

 

###

 

 

「感づかれただろうな、恐らく」

 

時刻は0時を回ったあたり、ベッドに転がって呟く。

あの女は間違いなく『悪魔』だろう。あまり重要なポジションでは無さそうだが、あの駒王学園全体が『悪魔』の管理下にあるならば、俺の事は一応程度には伝わっただろう。失ったものは俺の存在と名前と、強さといったところか。まあデメリットは当然あった。

 

「得た物…は、一応あるか」

 

一つは奴らがそこまで直情的な勢力ではないところ。

挑発などを何回かしてみたが、ほとんどが流され、逆に挑発され返される始末だった。口ぶりからして、人間へ対する積極性も存在している。あの時のサイコパス天使と比べたら、遥かにあの悪魔の方が社交的に見える。

二つ目は、彼女らがそこまで積極的に人間を襲おうなどと考えていないこと。

あの後、数人の駒王学園生徒に探査回路を集中させたが大した細工は無かった。校内の彼方此方から妙な霊圧は感じたが、その程度で『いきなり建物内の人間から生気を強制的に搾り取る』といったことはできなさそうだった。

 

「にしても、注意するに越したことは無い」

 

今更、進路を変えようなどといったら井上に泣かれそうなのでその流れは勘弁願いたい。

 

そんな事を考えていると、喉が渇いてきた。

ベッドから下りて唾を飲み込む。飲むものは水で良いだろう。

特に悩むことも無く、部屋から出る。すると、隣の部屋から物音が聞こえた。

そう言えば、今日は愚弟が兵藤と松田の二人を家に泊めているのだった。今の時間まで勉強をしているのかもしれない。そうならば感心だ。

何気なく、愚弟の部屋の前で聞き耳を立ててみる。きっと中からは鉛筆やシャーペンが紙を擦る音が――。

 

 

『――あ―っ――駄目―――の―――大き―――イ―う―イ――ぅぅう―――!!』

 

 

思わず、ドアを蹴り開いた。どがん、とドアから鳴ってはいけない音が鳴ったが気にはしない。

 

「「「だァーッ!!???」」」

 

中では三人が三者三様の反応をしていた。

愚弟は普段見たことも無いようなスピードで四角形の箱をベッドの下に投げ込んだ。兵藤は手に持ったリモコンで、ついさっきまで見ていた肌色一色のテレビ画面をスイッチを切ることで黒一色に染めた。松田は叩き割るかのような強さで明かりのスイッチを殴った。

そして、急に運動したことにより三者の口から漏れる荒い息。

 

………。

 

「姉ちゃん!!ノックくらいしてよ!!」

「そ、そうっすよ」

「あ、危うく…」

 

掛ける言葉が見当たらない。

いや、とりあえず。

 

愚弟(ゴミ)兵藤(クズ)松田(カス)

「「「…は、はい」」」

 

 

「 寝 ろ 」

 

「「「…はい」」」

 

 

 




…勘違い、させたかったんや。
という訳でウルキオラさんがソーナさんと接触しました。
いやーなかなかキャラ難しい。

次の話は入学デース。木場君が出るよ。

それにしても、前回の訂正個所の「沸→湧」って結構重要なフラグなんですよ。
それを忘れてどうする、鉄パイプ。


【今回の要約】
駒王学園は悪魔の楽園でした。
まあでも皆キ○ガイじゃなくて内心ホッとしたウルキオラさん。
…ロックオンされてますよー?
あと三馬鹿の呼び方がゴミクズカスになった。

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