War Story   作:空薬莢

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兵器の役割は明確であるべきだ。
何故ならば、汎用性を追求した兵器は全てにおいて中途半端であり、軍事費の浪費に他ならないからだ。

※改訂版

※Ⅱ)推奨BGM

SideⅠ=《Firing pin》or《ストーム・バンガード》

SideⅡ=《Flight of the Wyverns》or《Quick Silver》

SideⅢ=《9》


ReportⅥ ~Double Stand Sturm&Защита~

 

 

A.C.3021 July.10 A.M.2:55 東欧連邦領 旧ベラルーシ ボルコブイスク上空

『バルド隊、作戦開始時刻です』

「了解した」

オペレーターの声に、短く返答。

機体システムを通常モードへと移行。

――System……ReStarting…………Complete

灯る計器。

ディスプレイに映る、暗闇と、小隊各機。

『バルド8、準備完了です』

『バルド9、準備完了……です』

『バルド11、準備完了』

『バルド10、準備。いつでも行けるぜ』

『バルド12、行けるぜ!』

次々と届く、小隊員の無線。

全員、準備は良いらしい。

「よし……。バルド2、よりバルド1へ。第二小隊はこれより降下を開始する」

『了解した、バルド2。こちらはもう少しかかりそうだ。露払いは頼む』

……了解だよ、クソ野郎。

無言で無線遮断。

灰と白の世界へとダイブする。

後続の小隊各機が降下するのを確認しつつも、視線はレーダーとディスプレイへ。

尤も、レーダーは赤く染まっているが。

敵基地上空なのだから当然であり、お出迎えは対空砲(AAC)地対空ミサイル(SAM)

「バルド2から砲兵隊へ。支援砲撃を始めてくれ!」

『了解した。既に装填作業には入っている。暫し待て』

「急いでくれよ、対空火器の餌食にゃなりたくねぇ」

軽口を叩く余裕ぐらいはあるから……まだ、大丈夫。

『『『Feuer(発射)!!』』』

数秒を遅れ、無線越しに聴こえる、砲兵の声。

地上に咲く、火炎の花々。

黒やオレンジしか、バリエーションは無いがな。

『『『再装填開始!お客さんを待たせるなよ!!』』』

――高度、3000。

――警告 対空砲火。直ちに回避してください。

してるさっ!!

制御システムの合成音声に対して、若干苛立ちつつも、ブースタを断続起動。

直撃弾を回避していく。

現状、小隊員の脱落は無い。

全機無事に降下できると良いが――

と、思った矢先、

『フォーゲル3、被弾!被害は……クソッ!!主翼と格納庫!高度維持不可能、並びに輸送対象の全滅を確認。Entlastung(脱出する)!!』

バルド1を含む、第一小隊が対空砲火の餌食となった。

(何してやがる、あの野郎っ!!)

戦場で道草食ってばかりいたツケが回ってきたか、高学歴だけが取り柄のモヤシ野郎!!

「バルド2より第二小隊各員へ。第一小隊は全滅した。ほぼ無傷の基地戦力をブン殴る事になるから、気を引き締めていけ。さもなくば、彼の世行きだろうから」

――高度、800

――警告 対空砲火、増大。直ちに回避してください。

味方の返答に重なる、警告。

鬱陶しい。

砲兵や前線部隊は仕事してんのか?

悪態を吐きつつ、ブースターの制御とレーダーに集中。

――高度、300。

そろそろだな。

「地上が近いぞ。着地も考えろよ」

『分かってるよ、オッサン』

『戯れ言ほざく口は閉じな、バルド12。死にたいなら、構わねぇけどよ』

『……高度、150』

『対空砲火、更に拡大しています。皆さん、注意してください』

返答は様々だが、バルド12は相変わらず口が悪い。

――高度、100。

ブースタを垂直噴射。

落下速度を緩め、火器管制システム起動。

左手が握るトリガーユニット付きスティックを操作。

連動する左腕武装である150㎜半自動散弾砲《EA AS04-A》。

手近な対空砲と地対空ミサイルランチャーをロック。

躊躇わず、フォイア。

吐き出された圧縮マテリアル弾頭の雨は標的を捉え、破壊する。

通常、散弾は装甲目標等のハードターゲット相手には向かないが、それは従来の散弾が鉛、或いは鉄製の球形弾であった為だ。

まぁ、現行の散弾でも、圧縮マテリアルの強度と質量で押し潰しているに過ぎず、戦車や重装MAには効果が薄いのだが。

――高度、5……着地。

――脚部バランサーチェック……問題なし。スタビライザーチェック……問題なし。

「攻勢に出るぞ!前線部隊の分も食ってやれ!!」

『『Ja!』』

『Jawohl』

『『ヒャッハー!開戦だぁ!!』』

こうして、俺達の攻勢は始まった。

 

 

同時刻、東欧連邦領 旧ベラルーシ ボルコブイスク地上――

『バルド隊が降下した。俺達も行くぞ。ヴァント隊各員準備はいいな?』

『『『Jawohl!!』』』

反響する味方の声に顔をしかめつつも、俺――カール・クリストフ一等兵――は手にした6.5㎜突撃銃《CEI AG85》の安全装置を外す。

Gehen(行け)Gehen(行け)Gehen(行け)!!』

そして、東欧連邦の前線基地へと侵攻開始。

既に幾つかの歩兵部隊が先行。

MA《ノート》も交戦中。35㎜突撃砲が喧しく騒ぎ、大量の空薬莢が弾き飛ぶ。

何人かの兵士が頭上から降る空薬莢によって、死傷。意味を持たない血肉に変わっていた。

上空、後方、正面からのMA投入。

長距離からの榴弾砲。

MA随伴の主力戦車と歩兵部隊。

敵基地は多方向からの膨大な戦力に自戦力を割く事を迫られる為、こちらにとっては、多少やり易くなるはずだ。

犬死にする気は更々無いが、俺達も急がなければ。戦績が減っちまう。

先行していた主力戦車の背後に回り、前方を伺う。

(……基地正面にはバリケードと簡易トーチカ。それに、主力戦車数台か)

あまり分散していないな。少しは潰しておけよ、砲兵の奴ら……。

《AG85》をスリングで肩へ。

代わりに、背負っていた120㎜対戦車擲弾筒《EEI PzR-79》を手に持つ。

弾薬はさほど持っているわけじゃない。

補給兵とは距離がある。

だが、トーチカや主力戦車を吹っ飛ばすには工兵の爆薬、砲兵による支援砲撃もしくは、携行型の対戦車擲弾等が必要。……MAによる上部装甲狙い、という点もあるが――

《ノート》の一機が胸部に大穴を穿ち、転倒。周辺にいた友軍歩兵が圧死する。

残骸の周囲に広がる、血の池。

(なりふり構ってられねぇ!!)

トーチカからと思われる重機関銃の弾幕が止んだ所で、身を乗り出し、《PzR-79》をトーチカに向けて発射。

軽い反動と共に、白煙を引いて飛ぶロケット推進式擲弾。

主力戦車の砲口が俺の方に向く。

擲弾がトーチカを破壊する様を確認せず、掩体としていた主力戦車から離れる。

「うおぁっ!?」

直後、背後で爆発。

主力戦車が破壊され、弾薬は誘爆。

吹き飛ばされた俺は、

「ごふぅっ!?」

朽ちかけたコンクリート壁に背中を打ち付けた。

「大丈夫か?」

助け起こそうと、友軍兵士の一人が近付いてきた刹那――

ソイツが鮮血と共に吹き飛んだ。

「クソッ!主力戦車の増援だ!!対戦車擲弾(PzR)!誰かPzRを撃――ぐあぁっ!?」

布を引き裂くような音と、苦痛に呻く友軍。

主砲同軸機関銃と、対空/対人機関砲が唸りを上げて、外敵を蹂躙している。

だが、朽ちかけたコンクリート壁や塀が掩体となり、敵は俺を捕捉していないようだ。

(やらなきゃ、進めねぇし……じっとしても遠からず、死ぬ)

なら、足掻くだけだ。

握り締めて放さなかった《PzR-79》に予備弾頭を装填。

掩体から顔を出し――即座にトリガーを引く。

そして走る。

爆発音と、機銃の唸り。

止まれば死ぬ。

規則的に走っても死ぬ。

(クソッタレ!)

一両はやったはずだ。その前に、数両を友軍が破壊している筈。

でも、砲火は衰えていない。

既に、友軍主力戦車は破壊されつくし、MAも半数が大破炎上。基地正面が開けた平地であるが故に、正面きっての対戦車戦となり、MAは体の良い的にしかならない。

元よりMAは強襲、奇襲用の特化型兵器だ。

(戦況最悪じゃねぇか!!)

友軍歩兵も、掩体に雪隠詰め。

下手に顔を出した奴からミンチに変わっていく。

なんとか別の掩体に隠れた俺は、《PzR-79》をリロード。

予備弾薬はもう無い。

補給兵は……クソッ!弾薬持ったまま、路上のど真ん中でくたばってやがる!!

「ヴァント24からヴァント隊へ。何人生き残ってる?」

無線で味方の数を確認するが、聴こえるのは、耳障りな雑音。

「おい、聴いてんのか!繰り返す!ヴァント24からヴァント隊へ。何人生き残ってるやがる!」

されど、聴こえるのは雑音だけ。

「クソッ!」

俺以外、全員逝きやがった!!

「クソッ!クソッ!!」

砲兵仕事しろよっ!!

砲兵を呪いながら、様子を伺い――

数分後に機銃の唸りが止まる。

(よしっ!弾薬が切れたっ!!)

掩体から半身を出し、主力戦車の横っ面に向けて《PzR-79》を発射。

友軍も同調するように、《PzR-79》を撃つ。

次々と着弾するHEAT弾だが、半数は正面装甲への着弾であり、撃破には至らない。

とはいえ、側面に着弾した物が確実に損害を与え、数両が撃破される。

残りは――二両。

「後は二両だけだ、畳み掛けろ!!」

「弾は……わりぃな貰ってくぜ!」

再び攻勢に転じた友軍が味方の死体から《PzR-79》の予備弾薬を奪い、残る主力戦車を撃破していく。

俺も同調し、補給兵の死体から120㎜擲弾を拝借。

《AG85》に持ち替え、走る。

眼前に動いている装甲目標は無い。

いるのは、数分隊程度の歩兵。

小銃の弾薬はたっぷりある。

まずは、撃破された主力戦車の裏へ。

隙を伺い……顔を出す。

素早く狙いを定め、指切りによる点射。

胴体の致命部位を撃ち抜き、無力化。

隠れる。

すると、軽い音を立てて転がった手榴弾。

掩体の向こうに投げ返す。

爆発音。

苦痛に呻く声。

数人殺ったか?

掩体越しでは分かりづらい。

「正面ゲート制圧!内部の制圧に移るぞ、Gehen!Gehen!!」

「「「「「「Ja!!」」」」」」

波に乗るように、俺も掩体から出て、正面ゲートを抜ける。

すると、黒煙を上げる崩壊した格納庫と、撃破された東欧連邦製MA。そして、機動格闘戦中のMA――バルド隊――の姿。

『ヒンメルより残存歩兵部隊へ。歩兵部隊は司令部の制圧を行え』

「了解。各自、無線周波数を共用に変えろ!」

指示通り、無線周波数を共用の周波数へ。

基地内部に敵歩兵の姿はほぼ見えない。

前線に出張ったのか、重要施設の死守に回っているのか。

後者の可能性がやや高いか?

気を引き締めないとな。

俺達は司令部と思われる建物に近付く……前に、

『窓を撃てっ!』

正面から見える窓と言う窓に向けて、6.5㎜ライフル弾を叩き込む。

待ち構えるならば、狙撃を行ってくる可能性も高いから。

「Granate!」

更には、突撃銃の銃身下部に取り付けられた擲弾射出器(グラナーテ・ヴェルファー)も使われた。

『突入するぞ!』

窓周辺を破壊した後、先行する兵士が扉のノブを斜め上方向から散弾銃で射撃。

閂を破壊し、蹴破る。

直後、同兵士は鮮血を撒き散らして絶命。

待ち伏せされていたか。

俺は腰に提げていた手榴弾を掴み、ピンを抜く。

二秒間持ち続け、室内に投擲。

爆発。

「Gehen!Gehen!」

雪崩れ込むように、突入。

「ぐあぁっ!?」

機関砲の掃射音と悲鳴。

舞い散る肉片と鮮血。

流れ弾でノロマ共が逝きやがった。

司令部内も地獄なら、外も地獄だ。歩兵が殺れるMAは準戦闘体勢か、砲撃姿勢中等の無防備な状態に限られる。

余程の腕が無ければ、対戦車擲弾筒をブチ込めないからだ。走行中の高機動車を弾速に劣るロケット砲で破壊する事が難しいように。

鮮血と煤に染め上げられた室内を走り、階段を駆け上がる。

その背後で鉄製のテーブルが蹴り倒され、

『俺達はここで外を警戒する』

数人の友軍がテーブルを盾に、外を睨む。

気にせず、上階へ。

やはりと言うべきか、敵兵の待ち伏せ。

苛烈な銃火を手榴弾で黙らせ、突発的に現れる奴は6.5㎜ライフル弾で射殺していき、

Halt(動くな)!!」

司令室に雪崩れ込む。

しかし、そこは蛻の殻。

「どういう事だ?」

と、思った矢先――強烈な爆発が俺達を襲った。

 

 

A.C.3021 July.10 Fri A.M.4:21 東欧連邦領 旧ベラルーシ ボルコブイスク近郊

「目標破壊」

無骨で狭いコクピットの中で、男性――エヴォギニー・ヴィッツ少佐――は呟く。

ヘルメットに付属するディスプレイ(HMD)の中央には、黒煙を上げる建物。

「アホートニク1から各員へ。我らが基地に土足で踏み入った温室育ち共を地獄に叩き落とせ。俺が援護する」

『『『『『Да(了解)!!』』』』』

視界の中で、動き出す11機の無骨な多目的装甲。

その姿を一瞥し、ヴィッツは手元にあるスティックを握り直す。

HMDに、上部を欠いたT字上の照準線が現れる。

選択中の武装は320㎜汎用大型砲。

弾種、CMB-APFSDS(装弾筒付翼安定圧縮マテリアル徹甲弾)

基地内で動き回る一機のMAに狙いを定め――トリガーを引く。

轟音。

数秒後に、同MAが胴体に大穴を開けて、倒れ伏す。

『ボリス隊、敵MA部隊と交戦開始』

『グレゴリー隊、敵砲兵部隊と交戦開始』

「了解した。援護が必要ならば言え」

部下の状況方向に答え、再び別のMAを狙う。

次は――汎用大型砲持ちだな。

周囲を警戒している一機の重装MAに照準を合わせる。

発射。

しかし、同時にMAがブースタを吹かし、サイドステップ。

射出した320㎜CMB-APFSDSはコンクリートに大穴を穿っただけだ。

(もう位置が割れてるな……移動するか)

操縦棍とフットペダルを操作。

移動を開始する。

向こうとの比嘉の距離は10㎞近くあるが、すぐに追い付かれるだろう。

(最悪、近接戦闘も考えないと駄目だな……)

この機体では、厳しいだろうが。

元いた地点から5kmほど移動。

砲撃姿勢へ移行。

各脚部アンカー展開。

広域指向性レーダー起動。

長距離砲撃火器官制システム、起動。

操縦棍を握り直す。

再び、HMDに映る照準線。

今度は基地正面ゲート前を確認。

数機のMAが侵攻中。

照準修正。

発射。

破壊。

再装填作業中に照準を修正。

作業完了と同時に、トリガーを引く。

破壊。

残りは三機。

マガジン内のCMB-APFSDSは6発。

残弾は充分……とは言い難いな。

残マガジン数的にも、余裕は無い。

『グレゴリー リーダよりアホートニク1へ。敵砲兵部隊を殲滅。ボリス隊の援護に回ります』

「待て。ボリス隊、現状は?」

急ぎ過ぎては行けない。

『敵は風前の灯火だ。援護は必要無い。グレゴリー隊は基地奪還を頼む』

『…………グレゴリー リーダ、了解。支援砲撃を頼みます』

「了解した。正面ゲートの敵MAを優先的に破壊しろ」

指示を出しつつ、操縦棍とペダルの操作。

旋回し、基地内に居座るMA小隊を視界に収め、

(さぁ、狩りの続きだ)

砲撃姿勢への移行状況を確認しながら、ヴィッツは敵を見据えた――

 





以上、ReportⅥ~Double Stand Sturm&Защита~でした。
勢いに身を任せて、深夜テンションで書いたら、こうなりました。
個人的には歩兵サイドが力を入れ過ぎた感があります。……まぁ、元々歩兵戦の描写の方が経験はありますからね。
機動兵器だけが活躍する戦場は、現実的にはあり得ませんし。
では、今回はこの辺で。推奨BGMが分からない方は直接メッセージで。
拝読ありがとうございました。

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