Fate/staynight――BloodyDragon 作:Saika
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舞い上がる砂は、もはや弾丸となって襲い掛かる。それは老若男女分け隔てなく襲い掛かる暴力だった。この土地特有の乾燥した気候の影響で、土というよりも砂に近い。それが昨今の異常気象の影響だろうか、凄まじい突風で舞い上がり、降り注ぐのだ。
びしびしと窓ガラスに砂粒が降り注ぐ。
しかし砂の弾丸もこの家の中にまでは届いてこない。士郎が強化の魔術で家を強化して耐久性をまさしている。
ここはある種の結界とも言える。この砂嵐は自分たちを守っている代わりに自分達は外へは出れない。ある意味ではここは牢獄とも入れるだろう。
「なあ遠坂?」
「なに?士郎?」
士郎の声に応えるのは凛とした声、遠坂凛だ。
「俺たちはさ、この紛争を終わらせるのが目的でここに来たんだよな?……なのに、自分達の力じゃどうしようもない。
結局この紛争を中断させたのは…自然の猛威。
結局さ、何もしなくても良かったのかもって気になっちまって。俺なんかがいくら足掻いても、無意味なのかなーって思ってしまった。」
「あんた今更そんなこと言ってるの?そんなこと言ったらアーチャーに殺されるわよ?アーチャーにあんたとは違うと思ったからこそ反発して啖呵切ったんでしょ?」
「……そうだな遠坂。ごめん今日の惨状みて少し意気消沈してたのかもな」
士郎は服の中に収まっている紅い宝石のペンダントを覗き見る。これは士郎が遠坂凛に命を救われたさいの宝石だ。彼はそれを生涯の宝物としてずっと身につけている。
「遠坂、この砂嵐いつぐらいに止むと思う?」
政府側の追撃を止めたこの砂嵐であるが、逆に言えば士郎達もまた動きを封じられているのである。
「そうねえ…早くて明日。悪くて二日は続くでしょうね…」
凛の顔は憂鬱だ。彼女とてなにもできないのは歯がゆいのだ。
「そうか。なるべく早く止むべきなのか、ずっと続いて闘いがやんだままが良いのか…」
高校を卒業して外国の紛争地域などを点々としてきて士郎は迷い続けている。
迷い――それはどちらが正義なのか?という点についてである。この国で起きている革命と内戦。国土全土を巻き込んだこの内乱。ここは首都、最も激戦に曝されている地区だ。毎日何人もの人が殺戮され、犯される。ここはそういう場所なのだ。
自らの自由のために戦う政府側と革命派。果たして彼らのどちらが正しい
のか?それはどこの地でも士郎を悩ます疑問である。
士郎達に取れる選択肢は主に2つ。一つ目、まず理想的なのは内乱の終結。可能な限り平和的な解決を模索し、可能な限り血を流さない終結。
両陣営のトップが話し合いで解決すること。その場をセッティングする努力を二人は厭わない。
二つ目、最悪の形が暴力的な解決である。片方の陣営を戦闘続行不可能な状況まで追い詰めること。武器・兵站の破壊で済めばいい。
しかし時には殲滅を行わなければならない事態もあり、――幾度かそれを実行した。
今は砂嵐が二つの勢力の矛を収めさせているから最悪の手段を取る必要はないが、もしもの時は――やらなければならない。
「まあ今は休もうぜ遠坂。この砂嵐の間は」
ここ最近動き詰めのかれらにはある意味では一つの幸運となる。
しかし、いつなる時も幸運とあは長くは続かないものである。
その少ない休息も凛を襲った痛みで唐突に終を告げる。
遠坂凛にとっては、一度体験した痛み。焼鏝を押し付けられたかと思える程の熱さと痛み。
しかしそれは一瞬のことらしく、びくりと反応しただけでそれ以上痛がることは無かった。その代わりに尾を引くのは、彼女の戸惑いの表情。
何かに突き動かされたかのように、自身が纏っていた民族衣装の袖をまくる。士郎にとっては死角となり、彼女の行動の意味が分からない。
「?…遠坂、どうした?」
「……そんな…ありえないわ。」
士郎は座っていた椅子から立ち上がり、彼女の背中に近づく。そして背中越しに見たそれに、目を見開く。
「な――令呪だ…と、そんな…なんで?」
そう、それは間違いなく令呪。士郎は前回の聖杯戦争では、彼女のそれを見ることはなかった。しかしそれでも断言できる。
この赤い三画の紋様と、凝縮された魔力の気配は、間違いなく令呪のそれだった。
「なんでだ!?俺たちの聖杯戦争でセイバーが『約束された勝利の剣《エクス・カリバー》』で跡かともなく吹き飛ばしただろう?
なんで今更、令呪が遠坂に…?」
「そんなの知らないわよ!私が聞きたいくらいよっ!」
「まてまて、落ち着こう。……令呪が再び与えられたということは、だ…」
凛も同じ結論に至っているのだろう。彼女はゆっくりと頷く。
「あの史上最悪の争いが、幕を開ける。そういうことでしょうね。」
どこへ向けたものなのか。彼女の目には憎悪とも憤怒ともいえない色が宿っている。しかし口元には笑み。引きつったその笑みは、おそらくは自嘲の笑みだろう。
「遠坂。こうしちゃいられない、冬木に戻ろう。」
「当然よ。あれがもしもヤバイ連中の手に渡れば、それこそ世界の危機よ。」
二人はて早く自分の荷物をまとめる。もっともあまり荷物など持ってきていないのでそれはすぐに終った。
そしてむしろ、砂の猛威に耐えるための装備のほうに時間をかけた。今や二人とも、素肌を見せている部分なんて無い。
顔は木乃伊のように布をまきつけ、目には特殊部隊然としたゴーグル。手には糸で装飾された皮製のトランク。日本ならば職務質問を免れない珍妙ないでたちだ。
凛は家主にかけていた暗示を解く、そうすると家主は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。魔術のため少し気絶が長引くかもしれないが、危険はない。
そして目が覚めたときはこれまでいた同居人のことなどさっぱり忘れて自分のせいかつサイクルに戻れるだろう。
「急がないとな……飛行機は――無理か」
「そうね。まずは陸路で国の統治下からでてから飛行機で成田まで飛びましょう」
「分かった。……日本に戻るのは久しぶりだ。桜、元気だろうか。」
「心配ならもう少し頻繁に返ってあげなさい。」
二人は砂嵐の中を歩む。道すがら、令呪が宿った訳について議論するが――議論の余地などない。
冬木の町に、再びあの聖杯が降臨する。その選定のための戦争。即ち聖杯戦争の火蓋が、再び切って落とされた。
凛は此度もマスターに選定され、殺し合いに身を投じる。
――これ以外の解答など、ありはしないのだった。
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長い陸路を辿り、隣国へ渡り、航空機で日本へ渡る。言葉で表せば易いが、実際はかなりの強行軍だった。
それでもこの過程を3日でこなしたのは、偏に彼らの行動の早さだろう。
空はまだ明るい。久しぶりの日本の空気は、何だか少しだけ暖かい気がした。
“まぁ、あの天候と比べれば当然か”
日本は実に生活しやすい国だ。単に生まれた土地というだけではない。
大きな内乱もなく、熱砂に焼かれることもない。一度国外へ行くと分かるが、本当に過ごしやすい国なのだ。
――こうして一人、日本にマスターが集う。
どうでしたでしょうか?感想があれば遠慮なく書いてくださいヽ(●´ε`●)ノ ホスィ。
次回『第1話:不幸な少年』