Fate/staynight――BloodyDragon 作:Saika
――浅い眠りの中俺は昔の過去を思い返していた。
―不幸な少年―
それが周りから自分に与えられた印象だったらしい。
夢を見ている。俺が小さい時の過去の記録。昔の夢だ。
夢に出てくるのはいつも同じ、16年前の業火の夜。俺はその時たしか幼稚園かそれぐらいだったと思う。
その業火に
それを忘れられない。漂う焼死体の臭いが、目を焼く炎が、きっと強烈すぎたのだろう。幼い俺のココロに、深く刻み込まれている。
恐らくそのとき自分がなにも失わねければそれはただの強烈な記憶なだけだっただろう。
しかし、俺はこの時に二度と戻らないものを失った。両親の命という子供には必要なものを――
脳がそのシナプスを失おうと、魂は、心は覚えている。17年前の出来事を夢に見る程度には、それは強烈だった。
ただ、かの日少年の目に映った物は火事に焼き殺されている両親の姿ではなかった。
少年の目に映ったのはイキナリ
両親の
幼いながらにも、いや、幼いからこそ理解に及んだのかも知れない。魔術師の家系でなければ気付きさえしなかったかも知れない。
いま自分の目の前に写っている光景が人外が生み出した地獄だと。
――両親が死んだ――
燃え盛る炎の中にある剣が刺さったままの両親の死体。心はそこにいけと叫ぶのに体は動けない。
外には現れない矛盾、心の隙間。
厳しくも優しかった父と母、毎日浮かんでいたその顔が少年の中で消えて行く。
それはあまりにも理不尽な暴力だった。なんの理由もなく人を救いに行ったかれの両親が死に絶えた。
―――助けたいと思った。
燃え盛る炎の中から骸だけでも父と母を救いたかった。
だけどそれは叶うはずもない。
そのとき俺は魔術刻印すら持たぬ幼子で、その炎は極上の呪いより出でたものだった。
飛び込めば、死は必死。だから俺はその様子を見守るしかなかったのだ。火の粉が飛び退う夜風の中で。
あの中で死んでいるのは自分の両親だけではないのだろう。あの中では自分と同じ年端の子が、灼熱の腕に抱かれている。
―――だからきっと、そのときだった。
俺は魔道の道を覚悟した。俺が進むのはあのような道で、決してあれを作ってはいけないと理解した。
少年の心の中にあるのは硬い決意、そして凄まじいまでの憎悪。
それは幼子にしては、出来すぎた決意だっただろう。でも俺は、脳ではなくココロでそう感じた。
俺は言葉ではなく、何か別のものでそう覚悟したのだ。
「――そうか、逝ったか。」
後ろから声が聞こえた。かれの祖父の声だ。
その声には悲しみと迷いが混同されていて彼には不理解に響く。
祖父はかれに泣き顔でもない顔を見せて言った――
「あれが憎いか、紅龍?」
――その言葉で少年は自分の中に渦巻くこの感情の正体を自覚した。
少年は頷いた。それをみて祖父は『ならば今より強くなれ』と言った。
そして少年の右腕の服の生地を破り、何かをつぶやいて、彼の腕を強く握った――
――直後に走る激痛。視界が酩酊する。しかしその痛みはすぐに引いた。
痛みの残滓で右腕を握る彼は違和感に気づく。右腕に何かあるきがするのだ。
少年の右肩から指先にかけて広がる奇怪な文様。それはまるで絡み合う龍のように紅い、紅い光を放ちながら夜闇を照らす。
これは何?とたずねる少年に祖父はただ『お前に必要な武器だ』とだけ言った。
幼い彼には何故この模様が武器なのかわからなかったが、ただ『ありがとう』といった。
祖父は何故か悲しげな顔をしたが、それ以上口を開かなかった。
少年が自らの右腕に刻まれたそれが貢藤家に伝わる魔術刻印だというのを知るのは、もう少し後だった。
前唱
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次回:少年の日常