ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか二次 -ガティマハ帝国と七神竜- 作:3×41
駆け出しの冒険者から九山八海にまでその名を轟かせる英雄までがひしめく冒険者の街オラリオ。
その街角の一角を、団員1名という規模では超弱小ファミリア、ヘスティア・ファミリアの唯一の冒険者、
ベル・クラネルは、冒険者事務所を目指して、ソーマファミリアのリリルカ・アーデとともに歩いていた。
その目的は言うに及ばず、この三日間にわたるダンジョン探索禁止令が解かれるのがまさに本日だったからである。
だがまずは冒険者事務所の事務員であるハーフエルフのエイナに会って、
ダンジョン探索の計画や、
直近のダンジョンの状況について相談しておくのがベル達の習慣だった。
駆け出しの冒険者であるベルにとっては、エイナからもたらされるダンジョンの情報は、ダンジョンを探索する上で不可欠といってもよく、
それがなければ今頃ベル自身もダンジョンの片隅で人知れず墓標を立てることとなっていただろうことはベル本人の想像にも難くないことだった。
「しかしベル様、なんだったのでしょうね。ここ最近のダンジョン探索禁止令は……
リリは長らく冒険者様たちのサポーターをつとめてまいりましたが、このような措置がバベルの神々たちから下されることなど聞いたことがありません」
ベル達が歩くオラリオの街の事務局へと続く道はにぎやかな雑踏でひしめいていて、
二人はその雑踏をかき分けるように事務局をめざしながら、
ベルはリリの質問に、少し空を見上げるようにして考えてから言った。
「リリにわからないなら、やっぱりボクにはわかりそうにないよ。でもボクにも今回の措置が異例の事態だったことはわかる。
ダンジョンは本来すべての冒険者にひらかれているはずのものだってことは、すべての冒険者の不文律みたいなものだしさ」
「たしかにベル様のおっしゃるとおりです。ダンジョンへは、入ろうと思えば老人だって、子供だって入ることはできます。
まさしく老若男女、その強さの別も問わず、ダンジョンは一切の不平等なくすべての冒険者に開かれているものです。
もっとも、ダンジョンにみあう力のないものは、その日のうちに命を落とすことになるでしょうが」
「ハハハ、それ、ボクもちょっと心当たりがあるかも」
ベルはリリの言葉に、弱弱しく笑いながら空を仰いだ。
その動きにつられるように、リリも歩きながら、小さな体で空を見上げながら、目を細めた。
「ただおそらく、あの空に浮かぶ“アレ”が関係していることは、ほぼ間違いないのでしょうね。
街のどこに言っても“アレ”の話で持ちきりです」
「ああ、一体このオラリオになんのようがあるんだろうね。なんていったっけ、たしか西方の帝国のなんだよね?」
「はぁ。リリはベル様の致命的なまでの人のよさにも驚かされますが、そのものの知らなさ加減にも腰をぬかしてしまいます。
まるでそこらの農民上がりの駆け出し冒険者のようではないですか」
「まるでっていうか、そのとおりなんだけどね」
リリは軽妙に笑うベルに、もう一度軽いため息をついて話を続けた。
「そうです。あれは西方の大軍事帝国、ガーティマハール帝国の第三飛空挺団を擁する飛空艇です。
あの船の名前は確か“ダグラム”といったかとリリは記憶しています」
リリがそう言うと、二人は同じ角度で街の雑踏から空を眺めた。
すると二人の視線の先には、オラリオの空の1/4ほどを多い尽くすような、巨大な飛空挺の底が、まるで街自体を圧殺するかのようにそこに浮遊していた。
海ではなく、空に浮かぶ巨大な船である。
ガーティマハール帝国の軍事戦略においても非常に強力な軍事力として位置しており、彼の数多の戦争をになってきたらしい。
その飛空挺は、今もガーティマハール帝国、通称ガティマハ帝国の第三飛空挺団を満載していて、
指揮官が号令を発せば今にも陸戦部隊や、ペガサス空挺部隊が攻め入ることができるに違いなく、
その空に浮かぶ巨大の飛空挺の船底からは、
空対地の迫撃砲の砲門がいくつものぞいてみえた。
それらの意味ではまさしく実際的な軍事的圧力がこのオラリオにのしかかっているわけでもあった。
「ふぅーん。おっかないなぁ。もしかしてオラリオに戦争でも仕掛けにきたのかな?」
「物騒なことを言わないでくださいベル様」
「じゃぁ連休を利用して観光に来たとか?」
「あまりにのんびりしたことを言わないでください。ただの観光でガティマハが飛空挺を出してくるわけがありません」
能天気なベルの言にリリは深刻そうに眉間を指でおさえた。
「もしガティマハの軍人たちがその気なら、とっくに宣戦布告がなされているハズです。
リリが思うに、あの飛空挺がオラリオを覆ったのが5日前、
そしてダンジョン探索禁止令が下ったのが3日前、
おそらく今回の異例の措置は、空の“アレ”に関わっていることだと思いますし、
そういう予想が容易にたつからこそオラリオの冒険者たちも暴動のような過激な抗議を行わずにすんでいるということもあります」
「ぼ、暴動って…… ボクたちが飢え死にしそうになってる間に大変なことになってたんだな」
「確かにもっとも危機的だったのはリリ達だったとは思いますが、
実際にかなりピリピリしてる冒険者たちも少なくはないんですよベル様。
ですから今回晴れてダンジョン禁止令が解かれることはリリ達だけの問題でもなく、
けっこう街全体としても朗報になると思います。
もっとも、なぜダンジョンの探索が禁じられたのかまではリリも確かな情報を得られませんでしたが」
「その辺のことも、エイナさんに聞けば何かわかりかもしれないよ。
今日は久しぶりのダンジョン探索になるから、8層から10層くらいまで、慣らしでもぐってみようか」
「リリは慣らしにしてはどう考えても深層すぎると思いますが、言っても無駄ですから、わかりました。リリはどこまでもお付き合いいたします」
二人はひとつのポーションもなく、一人は軽防具に二本のナイフ、もう一人は背中に空のバックパックを担いで、
一路冒険者事務局を目指したのだった。