機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

10 / 27
最後に重要なアンケートござるよ!

ホセ「黙ってアンケートに参加するのだ……このアンケートの行方は大いなる神のみぞ知る」

ということで、参加してくだされば助かったりするのでござる!

ホセ「HAHAHA☆」ガションガションガション


第九話 運命の対決! そこにある二つの心

 第二アリーナにて、プラシドのワイゼルとルチアーノのスキエルが動きだした。

 ISにしては随分形がおかしな二機の期待は激しく似通った場所が見受けられる。それが胸部アーマーの中心、そこに装飾された∞のマークは確かに二機とも同じだ。

 そしてこうしたものをつくれるのは篠ノ之束ぐらいのものである。

 

 地上をホバー移動する二機。先に攻撃をしかけたのはプラシドで、左腕のブレードを振るうがスキエルことルチアーノが飛び上がりその刃を回避した。

 ―――チッ、面倒な機動性だ!

 心の中で悪態をつくプラシドがスキエルを追うために飛び上がった。

 空中にてスピードの早いスキエルはプラシドのワイゼルを引き離し、止まる。

 

「もう諦めたか!」

 

 そう言って表情に余裕の笑みを見せるプラシドだったが、振り返ったルチアーノがプラシドに左手を向ける。

 一瞬輝くルチアーノの左手に、巨大なキャノンが装備され、その二つの砲身がプラシドを捉えた。

 

「なにぃっ!?」

 

「ひゃっはははは! 死ねぇ!」

 

 ―――殺す気かよ!?

 プラシドの中の彼がプラシドの中で叫ぶ。

 楽しそうに笑いながら、ルチアーノの装備したの縦二門のキャノンからはビームが放たれる。

 回避行動を取ろうとするがすでに遅い。放たれた巨大なビームは、プラシドの胴体部分を狙って放たれたものだ。

 そんなものを喰らえば間違いなくエネルギーバリアはゼロになるだろう。

 だがそのビームはプラシドの前で角度を変えて、プラシドのワイゼルG(ガード)だけに直撃する。

 

「なにぃっ!?」

 

 驚愕しているルチアーノ。

 そんなルチアーノめがけて、ワイゼルGが破壊されながらも接近する。これで切り裂けばかなりのダメージだろう。

 しかし、目の前でルチアーノはその可愛らしい表情に狂気の笑みを浮かべる。

 プラシドたちが見慣れた。

 その表情で考え全ては否定される。

 

「なんてねぇ!」

 

 ルチアーノは素早く体を横に回転させた。それと共にスキエルの尻尾部分がプラシドを吹き飛ばす。

 

「ぐぅっ!」

 

 吹き飛ぶプラシドだがすぐさま体勢を整えて右手にワイゼルG3を装備する。

 これでガード性能はかなり変わった。

 ルチアーノは再び腕に装備したキャノンを放つ。先ほどより隙もすくなく威力も低い。

 プラシドはそのビームを避けて、ルチアーノへと飛ぶ。

 

「ばぁか、こっちにだって接近戦ぐらいあんだよ!」

 

 そう言って、彼女は右手に盾を装備、そこからビームによるバリアーが張られてワイゼルの刃を止めた。

 舌打ちをして、プラシドが刃に力を込める。

 徐々に削れていくバリアだが、ルチアーノの尻尾がプラシドへと狙いを定める。

 

「ひっひっひっ、これで、終わりだぁぁ!」

 

 その鋭利な尻尾の先がプラシドへと突撃しようとするが、その先端をプラシドが右手のワイゼルG3で受け流した。

 驚くルチアーノをよそに、プラシドが笑みを浮かべる。

 

「ワイゼルA4!」

 

 そんなプラシドの声と共に、ワイゼルAが爆発を起こした。

 

「なっ!」

 

 再び驚愕するルチアーノ、ワイゼルAの爆発により破壊されたバリア。

 そして、吹き飛んだ左手パーツ部分に再び粒子が集まりそれらが新たなパーツ『ワイゼルA4』を形作る。

 それは通常のISの手と言っても良い。鋭い爪、機械チックな手のひら。

 ただ手首から体にかけてはただのワイゼルAである。

 

「へっ、同じようなISすんなよ!」

 

 我を取り戻したのか、ルチアーノがそう言って左手のキャノンを撃つ。

 しかしその程度の攻撃はワイゼルG3によって防がれる。

 

「その程度の攻撃を俺たちに当てることなどできないということを知れ!」

 

 ワイゼルA4の手首からなにか長方形の端末が落ちた。

 それを掴むと、その端末からはビームでサーベルが現れる。

 これがワイゼルA4の能力の一端。

 

「ワイズ・ブレード!」

 

 叫びと共に、刃が振られて、ルチアーノへとダメージが通る。

 エネルギーバリアーを削られて距離をとることを選んだルチアーノは地上へと降下していく。

 それを追うプラシドはルチアーノと同じように下降していくも、ルチアーノは寸前で急停止してアリーナの壁際へと背をつける。

 

「くそっ! お前、ぶっつぶしてやるッ!! スキエルA3ィ!!」

 

 ルチアーノの左手に装備されたキャノンが形を変えた。

 ワイゼルがルチアーノと同じく、地上スレスレで止まってスキエルへと飛ぶ。

 スキエルのキャノンがチャージされていき、ワイゼルはスキエルへと接近していく。

 どちらの攻撃が先かはまだわからない。

 だが、それを確かめる前に戦いは終わりを迎える。

 

「貴様ら、止まれ!」

 

 そんな言葉と共にプラシドとルチアーノの間に現れたのは、織斑千冬であった。

 彼女が素手で持った雪片弐型がワイゼルA4を止め、ルチアーノはすぐさま砲身を真上に向けた。

 千冬の鋭い目が、プラシドとルチアーノの二人を射抜く。

 

「ふん、まぁ良い」

 

 そう言うと、プラシドはISを解除していつもの制服のまま地に降りる。

 プラシドたちのIS“機皇帝”の待機状態である剣を手に持ち、それを鞘へと収めるプラシド。

 遠くを見れば一夏たちが見え、彼が千冬に雪片弐型を借したというのを理解できた。

 

「ちくしょう! お前、絶対ぶっつぶしてやるからなぁっ!!」

 

 叫ぶルチアーノを見て驚いた表情を見せる一夏たち。

 

「模擬戦は構わん、だが私怨での模擬戦はやめてもらおうか……怪我に関わる。今度の学園別トーナメントで決着をつけろ、異論は認めない。そしてそれまでお前たち二人の戦闘は一切禁止だ」

 

 そんな言葉に、ルチアーノは舌打ちをしてISを解除する。

 落ちたことによってオールバックが崩れ、前髪がしっかりと下に落ちた。

 彼女は『しまった!』という表情を浮かべて、走って去っていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ルチアーノが去っていったことにより、俺たちの前にいる織斑先生はため息をついて雪片弐型を一夏へと投げる。

 粒子化する雪片弐型。それと共に俺のそばへと寄ってくる一夏、箒、セシリア、静寐の四人。

 それよりも、俺たちの中の問題はルチアーノだ。

 

 ―――俺たちと同じか?

 プラシドの中で聞く。

 

『いいや、俺たちのことを見てそれほど驚いた様子もなかった。別人だろう』

 

 二人の中では、結果ルチアーノは別人であり、ただの似た人になった。

 これだけできれば充分だろう。これでプラシドも彼女に余計なことはしないようなので安心だ。

 だがルチアーノに“スキエル”を送った彼女のことは一発げんこつぐらいぶちこみたい。

 

「イリアステル君、謝るって!」

 

 静寐がプラシドのことを責めるような眼をする……つまりは俺が責められてるってことじゃねぇか!

 ―――クソがっ! この馬鹿プラシドのせいでっ!

 

『貴様いい加減にしろよ』

 

 ―――お、ま、え、が、し、ろ!!

 ちくしょう、どういうことだ。俺の学園での立場が危うくなってきやがった。もともと危ないけど!

 

「ふん、確認はすんだ。もうやつに戦いを挑むこともない」

 

 そう言ったプラシドを、少し疑うような眼をする鷹月静寐。

 ―――とりあえず俺に変われ。

 プラシドは大人しく俺に変わる。

 体のコントロールが俺に戻ると、俺の雰囲気が変わったことに気づいてか少し安心した顔になる一夏とセシリア。

 

「悪い。今度はしっかり謝る」

 

 申し訳ないということが顔に出たのか、俺を見た鷹月さんは驚くも、頷いた。

 ルチアーノを追うためかアリーナから去っていく鷹月さん。

 ため息をつく俺のそばに寄ってくる一夏。

 

「どうしたんだよいったい」

 

「いや、本当に俺の知り合いじゃなかったかの確認だ……」

 

 その言葉に、首をかしげる面々。どうやら織斑先生は去っていったようだ。

 結果は? と聞かれて首を縦に振るとわかってくれたようで、一夏は俺の隣に立って軽く俺の肩を叩いた。

 まったく状況もわかっていないくせによく俺に向けて『お前は悪くない』って視線ができるんだ。

 とんだお人好しの甘ちゃんで、そんな奴は“あちらの世界”にも居ないと断言できる。

 

「さて、俺に付き合ってくれんだろ?」

 

 一夏の言葉に、苦笑して頷く。

 

「すまん、今日はISを使う気になれん」

 

「なら仕方ないな。今度何かあったら言ってくれよ、俺にできることならなんでもすっからさ!」

 

 そう言うと、一夏は嬉しそうに頷く。

 まったくもって屈託無い笑顔で頷く一夏を見ると、俺が危機感を抱かざるをえない。

 コイツは自分の重要性をまったく理解していない。

 今の世の中男でISを使えるのは一般人が核ミサイルを撃てるようなものだ。桁は違えど意味は同じ。

 呆れるようにため息をついて、俺は一夏に背を向けたまま歩く。

 

「あっ、私も!」

 

 セシリアがそう言うと、俺の後をついてくる。

 まったく、一夏のそばにいなくて良いのか? よもや俺についてくるとは、なんと心優しい子か……。

 原作の三倍は優しいな、やはり男二人がこの学園にいるというのは変わってくるのだろうか?

 まぁ、良い子になっているぶんには何の問題もないのだがな。

 

 アリーナを出て、寮に向かって歩いている最中に意外なものを見た。

 道の端にて、二人の少女が結構な範囲を取って遊んでいる。

 まぁその遊びが意外なものなのだが……。

 

決闘(デュエル)か……」

 

 俺は近づいていって二人のソリッドビジョンを見ながらつぶやく。

 二人の女子生徒、二人共一年か……その二人が俺に気づいて驚いたようだ。

 

「い、イリアステル君!」

 

「ま、負けられない!」

 

 やはり誰かに見られている場だと負けられないという精神は同じ決闘者(デュエリスト)として負けられない。

 二人の生徒がつけているデュエルディスクは束が作った後期生産型で、わかる人風に言えばGXのものだ。ほかにも色々なタイプのデュエルディスクが売っているが、そういうのは『専門店』に行かなければ買えるものでは無いだろう。

 まぁそんなことはともかくとしても、デュエルをこの学園で見たのは今日が初めてで、少し驚く。

 隣のセシリアは俺を一目見て笑う。

 

「えっと、マジック&ウィザース……たしかデュエルモンスターズでしたか」

 

 これは意外だな、セシリアが知っているとは。

 

「わ、私だって世界的に有名なゲームを知らないほどではありません」

 

 つい声に出してしまっていたようだ。

 だが本当に意外だった。てっきりセシリアのことだから『低俗な庶民の遊びなんてしませんわ! オホホホホ!』と笑うものだとてっきり。

 けれど、口ぶりからしても、決闘(デュエル)を見ている表情からしても、詳しく知っているわけではないようだがな……。

 そう言えばこの世界にはスタンディングデュエル、つまり通常の決闘(デュエル)しか確率されていないようだ。

 まぁ、さすがにライディングデュエルは対象が絞られすぎるか……。納得である。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 私、セシリア・オルコットとしたことが……まさかプラシドさんのように大人な雰囲気の方がこんな遊びに興味があるとは知りませんでしたわ。

 プラシドさんは初めて見たようですが、この学校でデュエルモンスターズをやっている生徒は沢山いるようで、何度もやっている所を見たことがあります。

 これを覚えればプラシドさんと一緒に遊べるのでしょうけれど……はあッ!? そう、私はやりかたがわからない。

 

「ぷ、プラシドさん?」

 

「ん、どうしたセシリア?」

 

 はぁ、何度聞いてもプラシドさんの呼び捨ては私の心を……なんて言っている暇はありません!

 

「私に、こ、この……で、決闘(デュエル)を教えてください!」

 

 い、言ってしまいましたわ……。

 プラシドさん。これで私と貴女の二人で時間を共有して、手とり足取り、ですわね!

 でも、了承してくれるでしょうか?

 言ってしまったのは良いんですが、教えるのが面倒なんて言われたら……。

 

「良いぜ!」

 

 嬉しそうに言うプラシドさん。

 ここまで嬉しそうな顔をするプラシドさんは初めてではないでしょうか、きましたわー!

 もしかして私一歩前進? いえ、十歩は前進しましたわ!

 私はプラシドさんから顔を背けて嬉しさから真っ赤になってしまった顔を冷やし―――もう一度プラシドさんに向き直りま……。

 

「良いだろう、貴様にデュエルというものを教え込んでやる! フッ、円舞曲(ワルツ)を踊るがいい!」

 

 まさか、一夏さんに放った台詞がこんな形で帰ってくるなんて……これもすべて私への罰ですか?

 私が教えてもらいたいのはプラシドさんですぅ、貴方じゃない方の!

 本物のほうのプラシドさんに教えてもらいたいんです。

 貴方は怖いから偽物!

 

「やった勝った!」

 

 どうやらデュエルは終わったようで、プラシドさんは私の肩を片手をポン、と置いてそちらを見る。

 ひぃっ、逃亡不能ですの!?

 

「負けちゃったよイリアステルく~ん」

 

「いい負けっぷりだった」

 

 プラシドさんは敗者の方にねぎらいの言葉(?)をかけると私の肩に手をかけたまま私の方を見る。

 そして“本物のプラシド”さんなら絶対しないような凶悪な顔で笑いを浮かべた。

 心底恐ろしいですわ。

 

「さぁいくぞセシリア・オルコット。貴様に真の決闘(デュエル)を教えてやる!」

 

 あぁ、プラシドさんに手を引かれるなんて、なんと嬉しいことでしょう。

 問題は彼が彼であって彼でないこと、私が手を引いて欲しいのはこんな強引な人じゃなくて、もっと優しくて紳士的なあの方なのに……。

 早く彼がプラシドさんに戻ってくれるのを、私はただ願うだけですわ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 地球の極東、日本はすでに日が沈み、日本の領海内にあるIS学園もまたしかり……。

 すでに日が暮れ、時刻は八時を回ろうとしている。

 食堂はピークを越し少し空いてきていた。

 そんな時に、IS学園で二人しかいない男子生徒のうちの一人、プラシド・イリアステルは食堂へとやってくる。

 彼のとなりにはイギリス代表候補生であるセシリア・オルコット。

 最後に一般生徒に目撃された彼女はプラシドに片手を掴まれたまま複雑な表情で連行される彼女。

 

「うふふ、どうしますプラシドさん?」

 

 だが、彼女はやけに嬉しそうだった。

 

「(まさか、デュエルモンスターズを教えていただいている最中に本物の方に戻っていただけるなんて嬉しい誤算でしたわ!)」

 

 実際彼女のいう“本物”が“偽物”なのだが、それを彼女が知る由もなく、優しい方のプラシドが本物だと信じ込んでいるのだった。

 だが、今の表に出ている総時間で言えばプラシドよりも彼の方がずっと長いのだから間違っているとも言い切れないだろう。

 彼が変わったのはプラシドがあまりにも教え方が下手だったからだ。

 ルールを守って楽しくデュエル。彼にとってはよほど大事なことらしい。

 

「うふふ」

 

 楽しそうに笑っているセシリアはプラシドと共に晩御飯を受け取る。

 席を探すプラシドが何かに気づいたようで、そちらへと足を進めていく、セシリアも無意識の内についていくが、無意識なのでなにもわかっていない。

 プラシドが見つけた席は、二人の女子生徒が座っていた席だった。

 その席に座っていた二人はプラシドを見て驚く。

 

「ルチアーノ……さん」

 

 席に座っていたのはルチアーノと静寐の二人だ。

 少し驚き、わずかに怯むルチアーノだが、プラシドの雰囲気を察してか少しだけ警戒心を解く。

 相席良いか? と聞くと、静寐はルチアーノを見て、彼女は恐る恐る頷いた。

 丸いテーブルを囲むようになっているソファに腰下ろすプラシドに続いて、セシリアも腰を下ろす。

 

「ルチアーノさん、申し訳なかった。俺も君と同じ感じなんだ」

 

 おそらく、その一言でわかったのだろう。二重人格、にしてはすこし違和感を感じるような謎の現象。

 自分じゃない自分が勝手に発言して勝手に動く。

 その言葉を受けて、ルチアーノは静寐を見たが、おそらく……といった感じで頷く静寐にルチアーノはプラシドを見る。

 なら避けるわけにもいかない。とわかってくれたのだろう。

 

「これから、よろしく」

 

 そう言って軽くお辞儀をしてくる可愛らしい小さな同級生。

 どうしてこうなったかは若干ながらしくまれた偶然。と言わざるをえないが、これもまた良い出会い。

 プラシドがやわらかく笑みを浮かべると、ルチアーノも嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

『あのガキとは大違いだ。すぐ調子に乗りやがるしな』

 

 ―――あの歳の子供とはそういうものだ。俺にも覚えがある……。

 

『お前、今の台詞無意識だったろ?』

 

 否定できない彼は、完全に無意識だったということだろう。

 彼はそろそろホセという存在であるということが随分板についてきたようで、ホセの台詞を自然に出してしまった。

 結構、彼にとってはショックのようで心の中でわずかにショックを受ける。

 そんなことを忘れるために、食事にしようという一言と共に四人は食事を始めた。

 無意識のセシリアも少しして意識を取り戻し、なぜこんなことになっているかわけがわからないという風に食事を続ける。

 

「ちょっと良いかな?」

 

 そう言って現れたのは、新聞部の副部長、黛薫子だ。

 会ったのは一夏のクラス代表就任祝いの日以来、だろう。

 彼女がなぜ現れたかなんてものは、プラシドを見つけてついでに今日転校してきた一年生を見かけたからというだけで充分である。

 彼女は楽しそうにしながらセシリアのとなりに座る。

 取材開始ということらしい。

 

 食事が終わるまでしばらく取材に付き合っていたルチアーノだが、食事を終えたことに気づいた薫子は大人しく立ち上がる。

 

「いい判断だ。引き際をわきまえている記者という者は好感を得られるぞ」

 

『またホセのような物言いだな』

 

 そんな心の中の声も無視して言うと、薫子は頷く。

 ルチアーノも軽くお辞儀をして去っていき、静寐もそれに続いて去っていく。

 一方、セシリアはプラシドの隣で止まっている。

 それに気づいて歩きだそうとしたプラシドだが、薫子に止められた。

 

「なんか一言!」

 

「欲しがりだな。じゃあ俺のことはプラシドって呼んでくれって新聞に書いといてくれ、苗字で呼ばれるのが慣れないんだ」

 

 そんな一言、それで充分という風にその場から去っていく薫子の背中を見送ると、プラシドは食器を片付けて部屋に戻ろうと食堂を出る。

 数人の生徒が行き来しているが、特に気にするほどでも無いだろうと思いセシリアに話しをふろうとしたその時、セシリアが廊下の先を指差していた。

 その指をたどって先を見てみると、そこには見慣れた赤髪。

 駆け足で寄ってきた彼女は頑張って作った睨んだ目つきで言う。

 

「これから仲良くしていきたいけど、学年別トーナメントではしっかり倒すからね!」

 

 それだけ言うと走り去っていくルチアーノは、曲がり角にて一度だけプラシドを見て可愛らしくウインクをして去っていった。

 ロリコンでもなんでもない彼だったが、グッときてしまい自分の右頬を一度叩く。

 隣で驚いているセシリア。

 

「ど、どうしましたの?」

 

「いや、なんでもない。なにかおかしなものに心を奪われそうになっただけだ」

 

 そんな言葉に、セシリアは頭を使って考えてみる。

 

「昔、母にこんなことを言われましたわ……」

 

『なにセシリア? 飼い犬のジョニーが人形をくわえて離さない? それは無理矢理引き離そうとするからよ。逆に考えるのよ“あげちゃってもいいや”と考えるのよ』

 

 ―――なるほど、どこかで聞いたことがないこともない気がするがきのせいだろう。

 プラシドは自分の中で考えを整理する。

 きっと言いたかったのは“逆転の発想”だろう。

 つまりは、たまにはああいうロリ体型な女の子を魅力的に思うのも悪くない、と……。

 セシリアは自ら首をしめることになったということは知らない。

 

「で、プラシドさん、このあとデュエルについてもっと詳しく」

 

「いや、ほら夜だし……」

 

「構いませんわ!」

 

 そこまでの決闘(デュエル)への情熱に、プラシドと中の彼は心を動かされた。

 女性と一夜を共にする。そんな言葉はどこかへと吹き飛んで、今はただ“決闘(デュエル)への情熱を持った一人の決闘者(デュエリスト)との熱い師弟関係”という構図だけが浮かびあがり、若干舞い上がる彼。

 プラシドはただ戦う相手が増えるというだけで喜んでいる。

 

「いくぞセシリア! しっかりついてこいよ!」

 

「はい!」

 

 走っていくプラシドとそのあとを追うセシリア。

 二人が途中で織斑千冬に見つかりげんこつを落されるまで時間は数分とない。

 だがこの間二人は何もかも忘れて自分の世界に入り込み、馬鹿になって熱くなっていた。

 

 この一日は長く感じたと後の彼は語っている。

 ルチアーノとの敵対、そして仲直り、セシリアとの一夜詰めデュエル教室。

 楽しくも忙しい一日だが、まだ始まったばかりだ。

 

 こんな一日はまだまし忙しさだったと、いつか彼は言うことになるだろう。

 あんな毎日が続いてくれる方がマシだったと……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ―――織斑一夏の情報を得るためだ。

 

 ―――しかし、あのAIの調整はまだ……。

 

 ―――むぅっ、ならば一刻も早く完成させるのだ。

 

 

 

 世界は誰の予想にも反して進んでいく。

 

 

 

 




あとがき

みさなま、アンケートでござる。
結構ストーリーに関わる重要なことですので投票だけでも感想にてしてくだされば僥倖!!
次のヒロインでござるが、一夏から分けるので二択ということで、下の二択でござる!

1,シャルロット・デュノア

2,ラウラ・ボーデヴィッヒ

上記二名のどちらかをプラシドのヒロインに入れるという企みで候。
ということでアンケートを答えてくだされば拙者、感謝感激感無量!
では拙者これにて、また次回もお楽しみにしてくだされば……まさに僥倖ォッ!!

PS,良いお年を!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。