機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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いやはや、前回のアンケートにご協力くださってありがとうございますで候!
結果はもう、ラウラ圧勝ワロタでござる。

サテライトのクズ野郎「やはりロリは最高だな!」

まだラウラが出てくるのは先になりますが、お楽しみにしてくださればまさに僥倖!
では本編をどうぞ!!


第十話 シグナーの輝き 誇り高きレッド・デーモンズ

 あの日から、少しばかりの日がたったが、セシリアはさすが天才だ。

 デュエルモンスターズを教えれば飲み込むまでが恐ろしく早い。

 彼女は、プラシドにとってはまったくもって教え甲斐のある少女であった。

 徹夜づけで決闘(デュエル)を教えた日はいつの間にやら一緒に寝ていて……なんてこともあったが語る必要はないだろう。

 

 さて、現在プラシドは自らのD・ホイール。T・666(テリブル・オーメン)にまたがっている。

 目の前に立っているのは、ルチアーノだ。

 ISを纏っていない彼女は赤い長髪をした可愛らしい少女。ちなみにボクっ娘という特典付き。

 

「どこに行くの?」

 

「少しな……一夏にも今日は付き合えないと伝えておいてくれ」

 

「あっ……う、うん」

 

 そんな返事を聞くと、プラシドは一度だけ頷いてヘルメットをかぶる。

 T・666のグリップをしっかりと握りしめて、プラシドはその縦三輪の不思議なバイクを走らせた。

 静かに手を振るルチアーノは、プラシドが見えなくなると同時に踵を返して軽く駆けていく。

 風に揺れるスカートと赤い髪、同じルチアーノでも少し違うだけでだいぶ違うのだと、どこぞの誰かは心で思う。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 その数十分後、今日の待ち合わせ場所である第五アリーナに到着したのは鷹月静寐である。

 彼女は友人であるルチアーノと一夏との模擬戦を見にきたのだが、バリアで遮られた向こうに見えるルチアーノは少し緊張しているようにも見えた。

 彼女がISを使えば性格が豹変してしまうのはわかっているが、昨日の放課後にプラシドは言ったのだ。

 

『明日はルチアーノと模擬戦をしろ』

 

 なにを考えているのかはわからないが、セシリアも一夏も彼がなんの考えも無しにそんなことを言うはずがないと信じてやまない。

 自分から言わせてもらえればそこまでの信頼を彼に寄せられる彼女たちはあまり理解できない。

 突然性格が豹変して乱暴者になったと思いきや、突然大人しくなって人当たり良くなる。だがそこだけならばルチアーノとは変わらない。

 なら、なぜ自分は彼を信用できないかと、不思議にすらなる静寐だった。

 

 

 

 アリーナの中央にて、白式を装備する一夏を視線に入れながら、ルチアーノは自らのISの待機形態である腕輪に触れる。

 それと共に、ルチアーノが光に包まれて件のISスキエルを装備した。

 独特なフォルムを持つそのISはやはり何度みても、一夏からはワイゼルと共通する点がいくつも見受けられる。

 青いISを身につけた彼女が、そのスキエルのゴツゴツとした手で髪をかきあげた。

 

「ひゃはっははは!」

 

 狂ったように笑い、顔を上げるルチアーノ。まったく違う人物に見える理由は目につけた端末や上げた前髪だけじゃない……と思う一夏。

 額に嫌な汗が伝う感覚を感じるのは目の前からのプレッシャーのせいだ。

 だが、邪気は感じない。感じるのはむしろ無邪気さだ。

 

「ボクがお前をぶっつぶしてやるよ、プラシドの言いなりになるのはほんとは癪なんだけど、付き合ってやるよ!」

 

 楽しそうに笑うルチアーノが両翼をはためかせて飛び上がる。

 空中戦ということで、一夏も同じく飛び上がるがすでに空中のルチアーノはスキエルA(左腕)にキャノンを装備して一夏に向けて構えていた。

 それに気づかない一夏ではない。

 

「まずはお手前拝見ってとこかな?」

 

 放たれたビームだが、出力は低く隙も少ないタイプのようだ。

 一夏はルチアーノに飛びながらもその攻撃を回避して、接近していく。

 動かずに何度かその後ビームを撃つルチアーノだが簡単に回避していく一夏。

 その回避能力はプラシドの戦いの時と比べればかなりの成長が見えるものだ。

 

「ハッ、幼馴染が見てるからって必死かい?」

 

 見下すように言うルチアーノだが、一夏は笑ってルチアーノの懐に入った。

 

「幼馴染だけじゃないさ、みんなが……友達が応援してくれてるから強くなれるんだ」

 

 雪片弐型を横一閃に振るう一夏だが、ルチアーノは縦に回転してそれを避け、回避ついでにその尻尾で一夏の胴体を叩く。

 吹き飛んでいく一夏が、地上すれすれで体勢を立て直すが、スキエルことルチアーノはそのスピードをもって接近。

 一夏の目の前まで飛んだ素早くその右手に握ったビームサーベルを振るうが、一夏は雪片弐型でガードして、即座に蹴りを撃ち込む。

 

「なにぃっ!?」

 

 驚くルチアーノ。これがプラシド(ホセ)直伝の敵のリズムの崩し方だ。

 突然の反応力に驚愕したルチアーノはすでに一夏、いやプラシドの策略にまんまとはまっているということである。

 しかし接近戦でなら一夏の有利であることは当たり前でもあった。

 

「やりやがったな!」

 

 悪態をつくルチアーノに追撃をかけようとする一夏。

 だが、彼女は瞬時加速(イグニッション・ブースト)にてその攻撃を回避して距離をとった。

 まずい、と思う一夏だがすでにルチアーノは一夏を撃つ準備をしている。

 

「スキエルA3!」

 

 彼女の左手のカノンはまったくの別物へと変わるが、それに大したタイムロスも無く一夏は無防備なままだ。

 向けられた銃口から、先ほどの出力とは全く違ったビームが放たれる。

 なにもできないままその攻撃を食らって一夏は終わりかと思われた。

 だが瞬間、一夏の右腕が輝く。

 

「ウオォォォッ!!」

 

 一夏の叫びと共に発動した瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 彼の体が異常なスピードにて上空へと移動する。

 普段の瞬時加速(イグニッション・ブースト)の比ではないスピードのその加速力に、ルチアーノはおろか一夏すらも驚愕の表情を見せた。

 そして一夏は自らに右腕を見る。うずくその右腕の装甲を貫き、その疼きの正体がわかった。

 

「これは……」

 

 装甲すら関係無く、右腕に浮かび上がったのは―――赤い痣だった。

 

「赤い……龍の尾?」

 

 右腕の装甲を消した一夏はその疼きの正体、赤い痣を目視する。

 それは間違いなく彼の想像通り『赤き龍の痣』であり、その部分は『尾』であった。

 赤き龍の痣に疼き以上の何かを感じて、一夏は考える。

 だが、一夏は完全に油断していたせいで、目の前の脅威を忘れていた。

 

「どこ見てるんだ、ばぁ~か!」

 

 いつのまにやら目の前に現れたルチアーノの尻尾に叩かれる一夏だが、すぐに体勢を整えてルチアーノを視界に入れて再び接近していく。

 ルチアーノからの射撃を回避しながらも、当たりそうになるものを雪片で切り裂いた。

 まだ終わらない。

 こんなところで負けるわけにはいかないのだ。

 

「なんだか知らないけど、力を貸してくれ!」

 

 一夏の右腕の赤い輝きがどんどんと増していく。

 それと共に一夏の動きは先ほどより素早く、キレを増す。

 何度目ともわからない異常といえる一夏の動きの変化に、ルチアーノは自らのスタンスを崩されていく。

 接近を許したルチアーノに、一夏が雪片弐型を振る。

 その斬撃を直撃したルチアーノのシールドエネルギーが削られるがお互いがお互い、一気に勝負を決めることができない。

 それは“力を借りた現在の一夏”の戦闘力とルチアーノの能力が均等しているからである。

 中々決まらない戦いは、まだ続くようだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 現在、プラシドはどこかわからない暗い場所に座っていた。

 すぐそばに座るのは篠ノ之束。彼女は沢山のモニターに囲まれながら沢山のキーボードを素早く叩いていく。

 何かを作っている様子だというのは理解できるが、並の人間ではそれすらも理解できないだろう。

 それだけ“普通”とは違うのだ。

 

「それにしても、突然“こんなもの”を作ってだなんてねぇ」

 

「今日中にとは頼まない、俺はすぐに帰るさ。今回は近場にいてくれて助かった」

 

「え~束さんは悲しいよ!」

 

 まったくもって我侭なお嬢様であると、プラシドは笑みを浮かべた。

 いつも通りの、自分たちにだけ見せるような仕草の彼女を可愛らしく思うも恐ろしく思うプラシド。

 自分たちを含めた織斑千冬と篠ノ之束と織斑一夏。

 それ以外の人間には興味がなくもはや視界にも入れないほど、なのだ。

 

「束……ッ!?」

 

 プラシドは左腕を押さえる。そこに浮かぶのは一夏のような赤い痣。

 赤き龍の痣は、龍の頭。

 一夏とは違う形だが間違いなく『同じ類』だということは間違いない。

 突然輝きだしたその痣を見て、プラシドは笑みを浮かべた。

 

「俺の痣が共鳴している……誰だ?」

 

 つぶやくプラシドの声に反応した束が、その痣を興味深そうに見る。

 

「これが前話してくれた?」

 

「そうだ、最近突然現れた俺の……シグナーとしての証」

 

「なるほどなるほど!」

 

 興味深そうに頷いた束は、再び作業に集中しなおす。

 プラシドは自らの左腕にて輝くその痣を一度撫でると、笑みを浮かべた。

 

『かつてシグナーと戦った俺がシグナーになるとはな……』

 

 なんとも因縁深いことに、痣の形は彼が殺そうとまでしていた不動遊星のものだ。

 だが、プラシドの中の(ホセ)はなにか運命的なものを感じていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 第三アリーナにて、鷹月静寐はバリアの向こうの戦いを最初はワクワクとしながら見ていたのだが、途中から座ってただただ無心で見ていた。

 突然動きが変わった織斑一夏とルチアーノとの戦闘も最初は楽しかった……けれどさすがに……。

 

「しつこい……」

 

 謎の転校生VS織斑一夏。

 多くのギャラリーが集まっていたのにもかかわらず、ずっと均衡した戦いを見続けるのは飽きたのか帰ってしまった生徒が沢山いる。

 まばらに残っている生徒もいて、それでもかなりまばらだ。

 それに気づいているのか気づいていないのか、楽しそうに戦う二人が静寐の視線の先に見えた。

 

「はぁ……」

 

 ため息をついて座ると、横がいささか騒がしい。

 視線を横に向ける静寐。少し離れた場所はまったくISが関係ないことをやっている二人。

 セシリア・オルコットと篠ノ之箒の二人が、それぞれ『デュエルディスク』を腕につけて決闘(デュエル)を始めてしまっていた。

 しかも、デュエルはもうラストスパートのようだ。

 そもそもプラシドの弟子であるセシリアがデュエルモンスターズに目覚めたことがことのはじまりだった。

 織斑一夏とルチアーノの戦いをよそに、静寐は二人の決闘(デュエル)の方に視線がいっていた。

 どうやらセシリアがラストスパートをかけるようだ。

 

「私はターンエンド、さぁヤリザが相手だ!」

 

 青いモンスター『六武衆―ヤリザ』がフィールドに一枚。

 箒は絶望的だろうけれど、セシリア・オルコットのフィールドはゼロ枚、手札が一枚。

 これは絶望的だろうと、あまりデュエルモンスターズに定評のない者でもわかることだ。

 これからどうやって逆転することができるのだろうと、静寐は目を細めて見ている。

 

「私は、セシリア・オルコットはこんなところで負けませんわ!」

 

 そう宣言した瞬間、セシリアの右手に赤い痣が浮かび上がった。

 見ている静寐も、箒も驚愕し、その右腕に視線を集める。

 セシリアがデッキからカードを一枚、引き抜く―――そしてそのカードを見ることなく、セシリアはそのカードをデュエルディスクに置く。

 

「気高きプライドを潜め、現れよ。バイス・ドラゴン!」

 

 引き抜いたカードはバイス・ドラゴン。

 かのモンスターを特殊召喚し、セシリアは左手の手札を右手に持ち替え唯一のカードをフィールドに召喚する。

 

「現れなさい、クロック・リゾネーター!」

 

 時計のような形をした調律者が、フィールドに現れた。

 不気味な笑みを浮かべながら、黒き龍と共にヤリザの前に立ちふさがるクロック・リゾネーターに、箒は額から汗を流す。

 チューナーモンスターとレベル5のモンスター。

 ―――ラストのドローカードでこの状況にしたッ……そんな、私のライフはあと1500、オルコットのライフは200ッ、私が手札のバーンストライクをヤリザに装備して攻撃、それですべてが終わるはずだったのに……。

 篠ノ之箒は勝ちを確信していただけに、絶望的な気分を味わう。

 

「レベル5バイス・ドラゴンに、レベル3クロック・リゾネーターをチューニング!」

 

 クロック・リゾネーターとバイス・ドラゴンが光となって輝きを放つ。

 それは高貴なる輝き。

 

「王者の鼓動、今ここに列を成す! 天地鳴動の力を見せてあげますわ! シンクロ召喚!」

 

 二つのモンスターは一つとなり、ソリッドビジョンの派手な爆発と共に紅の龍が姿を表す。

 その気高きプライドを象徴する龍はその巨腕をにぎりしめて、眼前の敵に吠えたける。

 

「高貴なる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンは口から荒く息を吐き、眼前の的を“見下し”ながら腕を組む。

 圧倒的能力差。攻撃力3000の壁が立ちはだかる。

 ―――いや違う。あれが壁なんじゃない“私”が壁なのか……ッ。

 箒は今、負けを確信した。

 プライド、高貴なる魂。それらにふさわしい王の風格をもった龍を目前にして、箒は両腕を下ろす。

 

「とどめですわ。アブソリュート・パワー・フォース!」

 

 セシリアの宣言と共に、紅の龍はその腕を解き、片腕を引く。

 その手に集まる獄炎が一瞬だが大人しくなる。

 爆発力を持った火というのは一瞬おとなしくなる。

 それはすなわちバックドラフトのようなもので―――瞬間、巨大な炎がレッド・デーモンズ・ドラゴンの手から放たれ、箒のヤリザを破壊してそのままダメージを箒に与えた。

 

「ぐあっ!」

 

 仮想ダメージにより体勢を崩す箒。

 ライフポイントは0になり、ソリッドビジョンは消えて、同時にセシリアの右腕に浮かび上がっていた赤き龍の―――翼の痣は消えていた。

 セシリアは箒に手を差し出して笑みを浮かべ、片手で髪を払う。

 

「良いデュエルでしたわ」

 

 驚愕する静寐と箒“あの”セシリアが他人に手を差し出すなんてそんなことがあるはずがない。

 だが目の前でこうやって相手を讃えて『良いデュエル』だと宣言して手を差し出した。

 頑固でプライドが高い、あのセシリアがこうも変わる。

 プラシド・イリアステルとは一体何者なのかと、静寐と箒は内心戦慄すら覚えた。

 

「あ、ああ……こちらこそ」

 

 そう言って笑みを浮かべるとセシリアの手をとって立ち上がる箒。

 

「まぁ私やプラシドさんにはかなわないのは当然のことですけれど、なかなかやりますわね」

 

 なんだかセシリアが普通の決闘者(デュエリスト)になっている。

 静寐の予感では、敗者を見下しながら『おほほほほ! 踊りなさい、死の円舞曲(ワルツ)を!』ぐらい言うと思っていた。

 まさかこんな風になるとは……。

 

「あ、デュエルやってたんだ」

 

 この場の三人以外の声が聞こえて、そちらに目を向ける三人。

 そこに立っていたのは赤い髪をなびかせる年齢以上に幼く見える少女、ルチアーノだ。

 バリアの向こうを見ると、そこではすでに別の模擬戦が始まっていた。

 

「トレントさんもこのセシリア・オルコットに挑戦いたします?」

 

「あぁ、ボク負けないよ」

 

「私だって負けませんわよ。なんたってプラシドさんの“弟子”なのですから!」

 

 なぜだかわからないけれど、静寐は二人の間になんだかわけのわからない雰囲気を感じ取った。

 敵対関係? いや、それにしてはなにか違う雰囲気が漂ってくる。

 まったく意味がわからない。

 

「なに、俺がどうした?」

 

 そんな場所に現れたのはプラシド・イリアステル。

 静寐の感によれば、この原因はきっとプラシドだ。

 静寐はプラシドに、織斑一夏を見習って紳士でいて欲しいと思う。まぁラッキースケベなのはいなめないけれど……。

 

「なんでもないよ」

 

「そ、そうですわね! 今日もデュエルですわプラシドさん!」

 

 赤い顔をしてわざわざことをごまかす二人だが、プラシドは気にしていないようだ。

 先ほどあんなことを言ったのは確かだが、一夏との共通点がわかった。

 唐変木なのだ。

 そしてセシリアとルチアーノの二人の違和感もなんとなくだが、理解できた。

 

「これは修羅場の予感」

 

 最近読んでいる良い意味でジョークのきいた本。それを思い出してクスクスと笑う静寐。

 とりあえずは楽しそうでたまらない。

 今後はプラシドの周囲も見ておこう、一夏はダブル幼馴染に現在板挟み中。これはこれでまた楽しそうである。

 さて、自分もセシリアと箒を見ていたらその熱気に当てられたようだと、笑う。

 

「(久しぶりにデミスDDBでも出そうかな)」

 

 そういえば最近の禁止カードなども確認しておかなければと、背を伸ばして一人寮に帰ることにした。

 結局、残されたのはプラシドとセシリアとルチアーノと、おまけ程度に箒。

 なんだか自分が場違いな気がしてきた箒だが、そんな時に救世主がやってくる。

 

「ふぅ、終わった終わった」

 

 やってきたのは一夏で、崩した服装で現れたがそれもまたイイ絵になる。

 

「そういや箒、セシリアに負けたんだって?」

 

 突然そんなことをいう一夏。きっと言ったのは静寐だろう。

 今度少しお話する必要があるようだ。

 ISの模擬実習とか起きないかと思う。

 

「とりあえずヤリザを抜くところからはじめる」

 

「そうか、まあいつでも相手になるぜ箒!」

 

 くわっとした表情で一夏につめよる。

 

「ほ、本当だな!」

 

「ああ同室だしお安い御用だ!」

 

 そういう一夏に、嬉しそうに頷く箒。

 それを少し離れた場所から見るプラシドは怪訝な顔をする。

 まったくもって罪な男だと……一夏を爆発させたい気持ちを押さえていると、ふと自分の感覚が変わるのを感じた。

 間違いなく、自分が裏方に回ったのだろう。

 

「織斑一夏、ならば俺と戦え!」

 

「えっ! いや、今日は待ってくれよ。最近デッキ編集もしてないんだ」

 

「ならば明日だ! お前を俺の機皇帝で踏み潰してやる。セシリア・オルコットのようになぁ!」

 

 そう宣言するプラシドは心底嬉しそうだ。やはりマジック&ウィザース(デュエルモンスターズ)が好きなのだろう。

 だからこそまったく右も左もわからなかった世界に来てもやってこられたし楽しめた。

 今でこそいろいろな楽しみ方もあったが、あの頃は……。なんて考えるがやめる。

 彼は内側からプラシドのやることを見ているのも今では楽しみだ。余計なこともするけれど。

 

『おいホセ』

 

 ―――なんだよ?

 

『シグナーがどこにいるか感じれるか?』

 

 ―――わからん。

 

『ふん、貴様は運命に縛られるだけの男ではないからな、ほかのシグナーから離れていてもおかしくない』

 

 褒めているのか貶しているのかわからない言葉遣いではあるが、別に責めているわけではない。

 だが事実、プラシドのいるとおり同じ赤き龍の痣をもつシグナーを探さなければならないと思っている彼。

 赤き龍の痣、シグナーが選ばれたということはこの世界にそれなりのことがある。ということと考えられた。

 ―――だが、赤き龍に選ばれたシグナーなんてどこに……案外近くにいたりするのか?

 今は体の感覚がない自分、その左腕の痣がわずかに疼いた。

 ―――幻想痛覚(ファントムペイン)

 

 すぐそばにあるそれに気づかぬ彼たちが、それに気づくまではそこまで時間を要さないだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 その夜、セシリア・オルコットは寮の屋上にて怪訝な表情をしていた。

 彼女の前に立つ一機のISは間違いなくブルーティアーズ。なのだが、その空ににあう青が真っ赤に染まっている。

 なにをした覚えもないセシリアだったが、部屋にてイヤリング状態であったブルーティアーズが赤く染まっていることに気づいたからこそ、こうして確認したのだが、真っ赤なことには変わりがない。

 その色はまるで―――。

 

「―――レッド・デーモンズ・ドラゴン?」

 

 その赤いフォルムはつい最近“いつの間にかデッキに紛れ込んでいた”カードにそっくりである。

 自らの右腕に浮かぶ痣もなにもかもわからないことばかりで、不気味な雰囲気を体中で感じていた。

 国家を代表したこの機体をこんな風にしてしまったと考えれば、体中の毛穴が開いて涼しい夜にもかかわらず嫌な汗が吹き出す。

 イギリス代表として考えてその焦りを体中が表現するが、心の中でこのブルーティアーズの姿には妙な安心感を感じていた。

 

「私に、なにを語りかけるつもり?」

 

 赤いブルーティアーズに右手を触れると、その右手の痣は輝き出す。

 それで全てを理解したのか、頷くセシリアが微笑むと、その赤い機体は元の青に戻る。

 

「えっ、せっかく赤いブルーティアーズ、否レッドティアーズを受け入れようと思った矢先にこれですの!?」

 

 青い機体ブルーティアーズを撫でるセシリア。どうやっても赤くなることはない。

 なんだか残念な気もするがこれで良かったのだろうと頷く。

 ただ、自らのデッキを腰に下げたポーチから出すと、その上から一枚を引き抜く。

 赤き龍、レッド・デーモンズ・ドラゴンが自ら引き抜いてそのカードに微笑む。

 まるで『これからよろしく』と言っているかのように微笑んで、ブルーティアーズをイヤリングに戻すと、セシリアはそのてにレッド・デーモンズ・ドラゴンを持ったまま踵を返して歩き出した。

 その耳のイヤリングは、一瞬だけ―――赤く染まる。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ―――決行日は?

 

 ―――無論、織斑一夏が閉鎖された空間にいる時、篠ノ之束のラボを襲えばそれなりの“モノ”も手に入るだろう。

 

 ―――では、正しき世界のために!

 

 

 

 影は徐々に濃さを増して、いずれ形あるものへと変わる。

 

 

 




あとがき

今回ちょっとグダグダだった気がしないでもない。しかし全部意味のあること!
伏線はすべてバラ撒き申した。さぁここからが新たな戦いの始まりでござる。
ISがしっかり続いていればここまでオリジナリティ満載の話しでなくてもよかったもののぉっ!
イズルしっかりするでござるよ。
では、次回をお楽しみにしていてくだされば感激でござる!!
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