機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第十二話 孤高の巨帝! 機皇帝グランエル

 機皇帝スキエル ∞ (インフィニティ)

 そして―――機皇帝グランエル ∞ (インフィニティ)

 これまで、最強の機皇帝であるグランエルは今だ、真の姿を見せてはいなかった。

 

 だが、今日ここで機皇帝グランエル ∞ (インフィニティ)は真の姿を見せることとなる。

 そのオレンジ色の巨体にて、地響きをならせながら現れた機皇帝は最強の名を冠すにふさわしいものだった。

 

「さて―――このやり方は束では無いようだな」

 

 彼、ホセはそのグランエルの体のままそう言うと、左手のキャノンを黒いISもどきに向けた。

 その黒いISもどきはやはり中身が無いのだろう。その射線上から機械的に避けるとグランエルへと空中から強襲をかけようと肩のビームを撃つ。

 連射性の高いそのビームが上空からグランエルへと襲い、その周囲を砂煙が覆う。

 

「やられてんじゃない!」

 

 離れた場所から見ている鈴がそう言うが、一夏はただ笑みを浮かべてその方向を見ているだけだ。

 圧倒的なその雰囲気に、一夏はホセが倒されるというビジョンは一切見えていなかった。

 常に一緒にいて、何度も言葉を交わして、何度も刃を交わせた自分だからこそわかる。

 初めてみるホセのあの姿だが、負けるはずが無い―――。

 

 直後、砂煙を見下すように浮游している黒い機体がピク、と動く。

 だが遅い。

 砂煙に巨大な穴が開き、そこから放たれた白銀のレーザーは黒い機体の左腕を吹き飛ばす。

 直後、風が吹き砂煙が吹き飛ぶと、そこにはただオレンジ色の機体が、傷一つなく―――存在していた。

 

「ふん、この程度か……この 俺 (グランエル)の装甲を貫くには程遠いか」

 

 グランエルが、突如動きだした。

 だが動きだしたにもかかわらず、グランエル()は黒い機体に近づくわけでもない。

 グランエルは地上にてホバー移動で不規則に動く。

 黒い機体はなにかを感知するようにグランエルをロックする。

 それはもちろん彼にもわかることで、ほかのIS同様やかましいアラームが鳴るが、特に何もいうこともなく、彼はゆっくりと左腕を持ち上げた。

 

「消え失せるがいい」

 

 黒い機体が残った片腕を構える。並のISなら一発くらっただけでも充分致命傷なほどの威力のあるそれ相手に、彼は避けることなく対峙しようという。

 だが、離れている一夏はただ笑っているだけだ。隣の鈴がなにか言っても傍観するのみ。

 黒い機体が、腕の高火力ビームを放つ。

 だが同じように機械であるからか、グランエルは一切の同様も見せることもない。

 

「グランド・スローター・キャノン!」

 

 左腕から放たれるのは、黒い機体から放たれた攻撃よりもよほど高火力な白銀のビーム。

 それは黒い機体を飲み込み、さらにはるか背後の空の雲を蹴散らす。

 白銀の砲撃が消えたとき、すでに黒い機体は影も形も消え失せ、その場にはただ静寂が残るのみ。

 

「終わったか……」

 

 グランエルから声が響くと、空から白いISが降りてくる。

 

「ふん、おせーよホセ」

 

 白いISを装着しているプラシドがそう言うと、グランエルが粒子になって消え、同時にプラシドが纏っているワイゼルもまた粒子となった。

 アリーナに降り立つプラシドの表情は少し優しい。

 つまりは、中身がプラシドではなく(ホセ)だということだろう。

 

「ふぅ……どうにか、こうにかか?」

 

 そうつぶやいたプラシドが空を見ると、空から黒い機体が落ちてくる。

 黒い機体は、そのまま一夏の上へと落下。激しい砂煙を上げるそちらを見てため息。

 ―――ルチアーノのやつ、派手にやらかすなぁ。

 多少呆れをふくみながらもそう思ったプラシド。

 だがこれにて一件落着―――となるだろう。だがプラシドにとってはなにも終わっていない。

 これが篠ノ之束の仕業でないならなんだというのだろう。

 なにか、危険な予感がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 彼女、セシリア・オルコットが目を覚ませばそこには知らない天井。

 まだ痛む体に鞭を打ってなんとか起き上がると、思い出す。

 今日の戦い。

 

「痣は……」

 

 右腕の痣はすでに消えていて、跡すらない。

 周囲を見渡すが、カーテンで遮られていてなにも見えない。

 一体今が何時なのかもわからない。

 そんな時、外からなにか言い争うような声が聞こえてきた。

 

「一夏は私の幼馴染なんだから!」

 

「それを言うなら」

 

 間違いない。声の主は凰鈴音と篠ノ之箒。

 それだけで充分察することができた。きっとカーテンの向こう、隣のベッドには織斑一夏がいるのだろう。

 彼も怪我をしたのだろうか、まぁ無事なようでなによりだと、セシリアは息をつく。

 

「お前らは少し静かにしてくれ、隣にセシリアが寝てるんだぞ!」

 

 そんなプラシドの声が聞こえた。先ほどからいたのだろうか?

 たぶん口調的には優しい方、つまりはセシリア・オルコットが惚れた方のプラシドだ。

 彼の怒ったところなんて見たことがないだけに、嬉しくなり顔がにやける。

 にやける顔を押さえていると、突如カーテンが開いて夕陽が差し込んだ。

 

「お、起きたのか」

 

 安心したようにそう言って笑うプラシドは、横から当たる夕日によっていつも以上にセシリアの視線を釘付けにする。

 すでに言葉すら出ずに、見とれているセシリアは突如、顔を真っ赤にして視線を落とす。

 

「どうした……あぁ」

 

 彼はそう言うと開いたカーテンの向こうにいる一夏を見る。

 セシリアは気づいていないが、プラシドは一夏を見てセシリアが顔を赤くしていると思った。

 とりあえずという形で、プラシドはセシリアの寝ているベッドの横に椅子を出して座る。

 

「ふむ、とりあえず今日よく頑張りましたってことで、全員分だ」

 

 ベッド横の台を移動させて、その上に片手に持ったビニール袋の中身を置いていく。

 それを見て、目を輝かせる面々。

 並べられたのは学食に売っているプリンなのだが、少し違う。

 

「こ、これは学食に売ってるプリンの横にいつも売ってる学生が手を出すには少し躊躇する程度の値段の、あのプリン!」

 

 一夏が怪我をしているにも関わらず激しく興奮する。

 

「あ、アイスで例えるならハーゲ○ダッツ! 学生には少し手の出しづらい程度の値段の、プリン!」

 

 鈴がくわっと表情を変え、今にも食いつかんという表情。

 

「(ぷ、プラシドさんが私にご褒美をくれるなんて!)」

 

 全員がそれぞれ喜ぶ中、箒が少し悩むような表情を見せていた。

 その表情の意味がわかるプラシドは、笑ってその頭を撫でる。

 なんだかそれは、兄が妹にやるようなそれに似ていた。

 

『プラシド君、君にとっては箒ちゃんは妹になるわけだね!』

 

 学園に来る前に言われた束からの言葉である。

 別に束と籍を入れる気も無ければ付き合う気もない……今はない。と自分に言うプラシド。

 箒は箒で昔姉に褒められたりしたことを思い出す。

 

「とりあえず、お前の声援があったからこそ一夏が勝てたんだ」

 

「その通りだ」

 

 そんなプラシドと一夏の声に、箒は薄らと笑みを浮かべて頷いた。

 プラシドはもう一度セシリアの横に座り直す前に、椅子をあと三つ出して置く。

 座るのは箒と鈴と……。

 

「あっ、お待たせ」

 

 入ってきたのは、ルチアーノだった。

 彼女も今回の戦いの功労者、なのだが……。

 

「織斑くん、ごめんなさい!」

 

 頭を下げる。

 理由は戦闘状態だったにしろ一夏の怪我に貢献した一人でもあるから、だろう。

 事故だから、という理由で一夏も笑ってすますと、残った椅子に座るルチアーノ。

 ちょっと高級なプリンで合計六人は小さく乾杯。

 祝勝会といったところだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、晩御飯も食べた後に俺は自室にて鍵をかけて、机に座る。

 通信機を起動して、束との連絡を図るが、出るのが遅い。

 いつもはすぐさま出てくるというのに……。

 

『はいはい束さんですよ!』

 

 まったくもって頭が良くない返事が聞こえる。

 

「ふぅ、今日の学園への乱入者の件だが……」

 

『私がやろうと思ってたんだけどねぇ、やられちゃった!』

 

 まぁ、もしもやったとしても一気なのだろう。それを知っているからこそ安心できる。

 これが束の仕業じゃないんだとしたら心おきなく調べて、相手を徹底的に“破壊”できるのだから……。

 

『近場にあった私の秘密基地パート1がバレちゃってねぇ、急いでほかのところ行ったから束さんの大事な無人機が盗まれちゃったんだよ』

 

「わかった。とりあえずお前は無事なんだな?」

 

『もしかして心配してる~?』

 

「……また今度連絡する」

 

 そう言うと、俺は容赦なく通信を切った。

 まぁ無事なら安心、俺の心労もこうして一つ無くなったわけだな。

 さて、寝るとするか……。

 

「お~いプラシド!」

 

 そんな時、ノックの音と一夏の声が聞こえた。

 俺の安眠の邪魔をするというのか、おのれ織斑一夏、今日一日は安静にしていればいいものの……。

 機皇帝グランエル∞の姿で戦った日というのは疲労が酷いから早く寝たいのだが、さもなくばまたプラシドが授業を受けたりすることになる。

 まぁドアの向こうで俺を呼ぶ一夏を無視するわけにもいかず、俺はドアを開いた。

 

「どうした?」

 

「よう、俺とデュエルだ!」

 

 片手にデッキを持ち、片手にデュエルディスクを付けて宣言する一夏。

 ほう、良かろう……。

 

『早く俺に変われ!』

 

 ―――待てプラシド、夜は長い。

 

『……チッ、さっさとしやがれ』

 

 ―――物分りが良いな。

 俺は一夏を部屋に招き入れる。

 すると、ドアを開けた時には気づかなかったが、制服のベルト部分にいくつかホルダーが入っていた。

 ほう、やる気まんまんということだなぁ、この野郎……。

 

「今夜は寝かせないぜプラシド」

 

「良いだろう。この戦いの行方は大いなる神のみぞ知る……」

 

 俺も静かにデュエルディスクをつける。

 さすが俺のライバルだ。良いだろう、さぁモーメントを輝かせるが良い!

 あ、違う。俺までプラシドみたいになってる。

 

『みたいとはどういうことだ!』

 

 俺の心の中で文句をいうプラシドだが、さっさと終わらせて変わってやるとしよう。

 フッフッフッ、俺のデッキの恐ろしさを思い知るがいい。

 俺は“アクセルシンクロ”で“満足”させてもらうぜ?

 

 ―――決闘(デュエル)!!

 

 

 




あとがき
さてさて、最近更新遅れてる拙者が通りますぞ。
まぁとにかく今回は特に特記するべき場所はないでござるな。
グランエルが出たぐらい?

では、次回はダブル転校生でござるよぉぉぉぉ!
次回をお楽しみにしていただければまさに僥倖!!
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