機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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~IS学園激闘編~
第十三話 新たなる出会い 二人の転校生!


 プラシド・イリアステル。

 IS学園二人の男の内の一人にして、今のところ一学年最強と言われるIS操縦者。

 イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットのデュエルの師でありそして篠ノ之束の元ボディーガード。

 織斑一夏の現在の最も親しい人間でもあり、篠ノ之箒とは友人関係でもある。

 ここまで重要人物と関わり合いのある彼のはずなのだが、上記にあげた人物を“狙う”人物は誰も彼に“アプローチ”をかけようとはしない。

 理由としては彼が軽視されがちというのもあるだろう。

 特記すべき情報も無いのだから、当然なのだ。

 

 

 

「それにしても鈴が来てくれて良かったよ。話し相手少なかったからな」

 

「あ~鈴か……鈴ね……」

 

 一夏のとなりに座って二人でゲームをやっている青年。

 その名は五反田弾、やけにモテる男の隣でずっと友達をやってきた青年で……一夏を狙う人物からそれなりに“重要参考人”扱いされているが、特に手を出されないのは彼が“ごく普通の一般人”だからだろう。

 彼の隣ですべてを見てきた彼は織斑一夏という男の“悪行”をすべて知っている。だからこそ、今ここにいるもう一人の人物であるプラシドとはすぐに打ち解けることができた。

 

「なぁプラシド、一夏って鈴相手にもアレか」

 

「アレだ」

 

「気の毒になぁ」

 

「何の話だよ」

 

 二人の会話に、なにが? と言わんばかりの一夏。

 それをまた冗談で返す弾だが、その二人の後ろ姿をベッドに座って見ているプラシドはふと思う。

 やけにくっつきすぎでは無いだろうか、と……。

 ―――織斑一夏、やはりこの男はホ―――。

 

「お兄、お昼できたよ」

 

 そんな言葉と共に蹴って開けられたドアに、ビクッと反応する弾。

 プラシドは大体予想できていた。

 そこに妹である五反田蘭がやってくることなど……。

 

「さっさと食べにきなさ―――っい、一夏さん!?」

 

 一夏と同じとまではいかないが、かなり美形であろうプラシドに目もくれず一夏を確認する。

 やはり恋は盲目、ベッドの上に腰掛けるプラシドは見えないのだろう。

 急いで壁に隠れて、顔を覗かせると軽くプラシドを見て驚くも、すぐに一夏の方に視線をやって会話。

 弾は少し怒られているようだが、妹が親友に惚れているとはどういう気分なのだろうかと興味深く思うプラシド。

 

「じゃ、二人共飯食ってけよ」

 

「ありがと」

 

「一夏から聞いている五反田食堂の食事か、楽しみだな」

 

「期待すんなよ?」

 

 そんな言葉を聞くと、プラシドは軽く笑って弾と一夏の後を追う。

 

 

 食事をしてみて、率直な感想はおいしいだった。

 食堂というのはやけに多いチェーン店と違い店ごとにまったく味が違うというものだからこそ、嫌いではない。

 群を抜いて美味しいというわけではないが、プラシドにとっては口当たりがかなりいい類であった。

 つまり好きな味なのだろう。

 ちなみに、プラシドは一夏から少し席を離して、弾の正面に座っている。

 一夏と蘭の会話は見ていて片方が気の毒なのであまりきにしないことにした。

 

「そういえばプラシドはやるんだろ、決闘(デュエル)

 

「やるというより、やっている」

 

 そういうプラシドを見て、弾がポケットからデッキを出す。

 言いたい意味がわかり、プラシドの表情がわずかに変わった。

 もちろん表に出ているのは彼なのだが、どこか好戦的な表情に変わる。

 

「昔はこれでもアンティークでブイブイ言わせてたんだ。今はシンクロなんて出たけど、いろいろ強化したし悪くないと思うぜ?」

 

 決闘(デュエル)で絆を深めて……なんて悪くないことであると(ホセ)は思っている。

 むしろそういう熱い友情ものは結構好きな類である彼は静かにデッキを出した。

 デュエルディスクは持ってきたカバンに入っているし問題無しだろう。

 私服のプラシドはそう言って立ち上がると、弾と共に食堂から去っていった。

 残された一夏と蘭。

 

「一夏さん、あの人なんで剣なんてぶら下げて」

 

「聞いてやらないでくれ!」

 

 プラシドのバイクの後ろに乗せてもらってきた一夏だが、腰の剣とプラシドに注目されて恥ずかしかった。

 しかもプラシドが彼ではなく本物の方だったから余計にやっかいだ。

 一夏は帰りもあの気分を味わうのかと思い、深くため息をついた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 そして翌日、ことは起こった。

 普段ならなんでもない日常もはずだが今日はイベントがあったというわけだ。

 教室に座るクラスメイトたち、そして我らが一年一組の教卓、その前に立つ二人の美少女。

 クラスの雰囲気は、なんとも形容しがたい。

 

「シャルル・デュノアです。フランスからきました。皆さん、よろしくお願いします」

 

 そう言って可憐な表情で笑う少年。

 纏っているのは男子の制服であり、彼は男“として”この学園に転入してきた。

 クラスの中の唖然とした空気『男……?』という言葉に反応する少年。

 

「はい。こちらにボクと同じ境遇の方がいると聞いて、本国から転入を―――」

 

 瞬間、凄まじい黄色い声援。

 それに驚愕するシャルル・デュノア。

 男に飢えてるこの学園の生徒からしたら、男の転入生、しかもまた一夏とは違った意味でのイケメンが現れればそうなるさ。

 まぁその気持ちは男だらけの研究所で過ごしていた“シャルロット”にはわからんことだろうが……な?

 騒ぐ中、とうとう織斑千冬が一喝―――瞬間沈黙するクラス。

 

「つ、次はボーデヴィッヒさん! 自己紹介お願いします!」

 

 なぜだか緊張している山田真耶の言葉に、動かないラウラ。

 緊張でもしているのだろうかと思う面々の中、プラシドだけは違った。

 ―――助けるか、助けまいか……いや、ここで助けるわけにはいかん。

 

『確か織斑一夏が殴られるのだったな?』

 

 ―――あぁ、だがここで邪魔をすれば……。

 考えていれば、織斑千冬が促してラウラに挨拶をさせる。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 たった一言の宣言にて、終了。

 だが他に何かを期待しているクラスメイトたち、クラス中の生徒たちの期待を裏切るような沈黙。

 山田真耶が、気を遣いながら発言する。

 

「あの、以上ですか?」

 

「以上だ」

 

 そして視線を動かすと、一夏とプラシドの二人を捉えた。

 まるでその目は獲物を見つけた飢えた獣、たった一匹のはぐれ狼がまぎれこんだ。

 わずかながら流れるプレッシャーに雰囲気がわずかに変わる。

 

「貴様がっ……」

 

 突如、ラウラ・ボーデヴィッヒは歩き出し、一夏の前に立つとその右手を左にもっていく。

 その右手が一夏の頬を叩く―――ことはなかった。

 

「ふん、そこまでだ小娘、俺の許可なしにこの男に手を上げることは許さん」

 

 ―――やだプラシドくんったら男前……ってなにしてくれてんだお前は!

 だが彼の叫びに、プラシドが答えることはない。そしてプラシドはすぐさまに彼へと変わる。

 プラシドの左腕が彼女、ラウラ・ボーデヴィッヒの右手を掴んでいた。

 しかたあるまいと、プラシドはため息をついてその左腕を上げる。

 ―――確かに、俺の親友に手を出されるのはあまり心中穏やかではないな……。

 

「今、クラスメイトに手を上げようとしたのはなぜだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

 小さい身長の状態で、右手を掴まれて上げられたラウラは行動不能―――と思うも飛んでプラシドの顔を蹴ろうとする。

 だがその程度の攻撃を喰らうプラシドではない。顔を逸らして手を離す。

 ラウラが独特の構えと共にプラシドを睨みつけ、プラシドは剣に手を置く。

 

「やめておけ、俺には剣がある」

 

「ふん、どこのどいつか知らんが、剣一本で私が止められると思ったら大間違いだ」

 

「はぁ……やってみるか?」

 

 プラシドの視線、そのプレッシャーにラウラは内心戦慄した。

 目の前の敵の強さがわからないほどではないラウラには、プラシドがかなりの使い手だということがわかる。

 この学園の、このクラスの生徒はこんな男と日々を過ごしているのだと思うと、わずかに脅威に感じた。

 

「やらんでいい」

 

 直後、プラシドの脳天に織斑千冬のげんこつが直撃した。

 

「ぬああぁぁぁっ!」

 

 頭を押さえて蹲るプラシド。先ほどのプレッシャーは拡散して、ラウラは内心驚いている。

 先ほどのプレッシャーが本物なのか、それとも偶然、はたまた何か他の物をそう勘違いしたのか……。

 わからないが、目の前で頭を押さえながら立ち上がった男と先ほどプレッシャーを送ってきた男は違う人間にすら見えた。

 

「まったく……ボーデヴィッヒ、お前もだ」

 

「はい」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒは名前すら知らない男を“邪魔者”と判断する。

 もう一度、織斑一夏の方に目を向けるがせっかく用意してきた言葉をさきの一瞬で忘れてしまった。

 とりあえず一睨みしてから、ラウラは支持された通り自分の席に向かう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 次の授業は二組との合同実習らしいが、プラシドはあまり気乗りはしていなかった。

 とりあえず決まりということで彼も一応、教室を出て校庭へと出る。

 集まった面々の中、セシリアと鈴が山田真耶と戦闘をしたが……それはもうこてんぱんにやられていた。

 一夏がラッキースケベをしたりもしたが、それに関しては鈴だけしか制裁を加えなかったというのは、意外だ。

 とりあえず、今は専用機持ちがそれぞれ生徒たちにISの解説をしているという感じだ。

 専用機が“本来より”二つ多いせいか、一人一人が教える生徒は比較的少なくてすむ。

 

「鷹月か……」

 

「静寐でいいのに」

 

 プラシドの目の前に立つのは、彼と結構関わりのある少女、鷹月静寐だ。

 彼女はプラシドにとってはすぐ後ろの席の少女で、ルチアーノにとっては友達だろう。

 ルチアーノの方に行かなかったのは、意外としか言いようがない。

 とりあえず、気にせずIS実習をすることにした……自分に向けられる“誰か”の視線を気にすることも無く。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 実習が終わるとプラシドは一人廊下を歩く。

 プラシドのIS機皇帝は展開と同時にISスーツを装着できる。

 ならばその技術を応用すれば瞬時にISスーツを展開可能であり、特に着替えに時間を要することはない。

 だからこそ一夏やシャルルよりもすぐに着替えを終わらせ廊下を歩いていたわけだが、アリーナを出た瞬間、背後から殺気を感じた。

 瞬時に振り返ったプラシドが目の前に迫る拳を見た瞬間、左手でその攻撃を弾く。

 

「貴様ッ!」

 

 プラシドが攻撃を弾けば、敵ことラウラ・ボーデヴィッヒは素早く懐に入って軽やかにプラシドにサマーソルトを打ち込む。

 顎に蹴りが直撃し、普通の人間ならば気絶するような攻撃―――だが、普通の“人間”ならの話だ。

 サマーソルトを打ってから着地するラウラ、だがその瞬間その首をプラシドが掴み、上を向いている顔をゆっくりと下に降ろした。

 

「……ッ!?」

 

 その瞳を見た瞬間、ラウラは自らの背中に嫌な汗が出たのに気づく。

 だが瞬間―――その殺気が消えてただ純粋な敵意だけをプラシドから感じる。

 

「これでわかっただろう小娘。貴様はそれなりに強いかもしれんが……俺たちに肉弾戦で勝つのは不可能だ」

 

 ―――特殊な訓練でもしているのかっ!?

 ラウラは内心でかなり焦っていた。それでもこんなところでこの男に邪魔をされるわけにもいかない。

 自分の任務は織斑一夏、ならびに白式のデータ回収である。

 私情も入れるならば、織斑一夏を“始末”して織斑千冬と共にドイツに帰りたい。

 だがそうもいかなくなった。先に潰さなくてはいけないのはこの“プラシド・イリアステル”という男だ。

 織斑一夏に手を出させないことを宣言した後にて、自分に戦慄を感じさせるほどの相手。

 

「貴様は……」

 

 ―――誰だ?

 言おうかと思ったが、口には出せなかった。どう考えたって目の前の男はプラシド・イリアステルでしかない。

 自分はなぜ目の前の人物が先ほどの人物と別人だと思ったのだろうか? と疑問に思う。

 

「ふん、あの女からの指示が無ければ織斑一夏を守る行為など……」

 

 ぶつぶつというプラシドが、ラウラの方を見る。

 

「どうしても織斑一夏に手を上げるつもりならば……」

 

 ―――この状態で交渉? だが、上手くいけば私の一人が勝ちだ……。

 そう思い、どんな条件でも飲むつもりだった。

 織斑一夏を始末できれば自分の勝ちなのだから、それもそうだろう。

 

決闘(デュエル)だ!」

 

 突然、プラシドが制服のベルトにつけてあるホルダーから紙束を出す。ラウラは知らないがそれはデッキ。

 決闘(デュエル)の必須アイテムであり、決闘者(デュエリスト)にとっての剣。

 だがラウラはそれがなんだかわからない。

 敵のフィールドで戦うのは構わないが、知らないことで戦うなどナンセンス。

 

「断る!」

 

「なにぃ!?」

 

 多少の無理はしてでも条件を飲むつもりでいたが、これはだめだ。

 相当驚いているプラシドを見ながらも、ラウラは眉一つ動かさない。

 だが内心ではなんでこんなに驚いているのかと驚いている。

 まるでその『決闘(デュエル)』を受けることがあたりまえ、という風にいう。

 

「貴様ァ……ならば今すぐ去るんだな! IS学園に貴様のような奴は必要ない!」

 

「お前が決めることか!?」

 

 思わず突っ込んでしまうラウラ。

 冷静さを欠いていたと思い、咳払いをすると再び無表情に戻る。

 ―――いかん、相手のペースにもっていかれるな。私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 

「そもそも、その決闘(デュエル)というのはなんだ。聞いたこともない……所詮低俗なゲームなのだろうが―――」

 

「あなた!」

 

 そんな時、声が聞こえた。

 二人の間に入ってきたのは金髪を振り乱しなぜだか肩で息をしながら歩いてくるセシリア・オルコット。

 やけに怒っているようだ、なぜこんなに怒っているのかわからないラウラ。

 だがイギリス代表だかなんだかに興味はない。

 

「イギリスの代表候補生か」

 

「今は一人の決闘者(デュエリスト)です。デュエルを侮辱するなんてとてもじゃないけれど許せませんわ!」

 

 また面倒なのが増えたと、げっそりとしたくなるラウラだが、ここは我慢した。

 

「挑まれた決闘(デュエル)も受けない方に誰かをとやかく言う資格はありませんわ!」

 

 宣言するセシリアだが、そういう彼女も始めたのはつい最近だ。

 そういうところはセシリアらしいが、直したほうがいいなぁと思ったりするプラシドの中の彼。

 しかし、すでにプラシドは蚊帳の外、プラシドは体のコントロールを彼に壌土すると、引っ込んでしまう。

 

「このセシリア・オルコット、圧倒的なパワーで貴女を葬ってさしあげ……ってどこですの!」

 

 最近はそんな役回りばかりである。

 プラシドも周囲を見渡すが、いつのまにやらラウラはいなくなっていた。

 二人が目を離した一瞬の内にだ。まったくもって忙しい娘だなぁ、なんて思いながらも背を伸ばす。

 そう言えばまだシャルルとは話していなかった。

 喋っていたのは一夏だけだ。

 ―――興味を抱くな。

 口元を歪めて、プラシドは歩き出す。セシリアを置きっぱなしにして……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 プラシドの中の(ホセ)がシャルルとの会話をしてみたいなと思いながらも、そんなチャンスがそう都合よく訪れるわけもなかった。

 彼には彼なりに目的があるのだから仕方ない、今はプラシドではなく一夏についていった方がいいのだ。

 だからこそシャルルと自分が話すことはこれ行こうそうはないと思っていたのだが……そうでもなかった。

 昼休みの屋上、ルチアーノとセシリアに腕を引っ張られやってきたプラシド。

 不味い時にきてしまったと若干後悔している。

 なぜこの時のことを忘れていたのかと……。

 

「どういうことだ……」

 

 不機嫌というより、もう呆れ半分の篠ノ之箒がそういう。

 セシリアとルチアーノは一夏から『一緒に屋上で食べようぜ!』ということしか聞いていなかったようだ。

 本来の箒の計画であれば二人きりだったのだろうけれど、今回は凰鈴音に運命が味方したようである。

 

「大勢で食った方が美味いだろ。それに、シャルルは転校してきたばっかで右も左もわからないだろうし」

 

「そ、それはそうだが……」

 

 そう言って鈴を見る箒。二人の間に飛び散る火花が見えるようだ、とプラシドは苦笑する。

 だがどうにも、セシリアは参加していないようだと疑問を持つ。

 なんだかルチアーノと火花を散らし合っているのはなんでなのだろう。

 なんとも言えない空気のまま、プラシドの隣のシャルルがそのとなりの一夏を見る。

 

「えぇと、本当にボクが同席して良かったのかな?」

 

「いやいや、男子同士仲良くしようぜ。今日から部屋も同じなんだし!」

 

 笑顔でそういう一夏に、シャルルが笑顔を見せた。

 

「一夏って優しいね」

 

「えっ!」

 

 ―――なに顔赤らめてんだ。

 思うプラシド。

 

「なぁに照れてんのよ、あんたぁ」

 

「べ、別に照れてねぇぞ」

 

 鈴の指摘が図星なのだろう、明らかな動揺を見せる一夏。

 怪訝な顔をしたまま、鈴は自ら持ってきた弁当を開く。

 

「お、酢豚だ!」

 

 反応を見せる一夏に、鈴は今朝作ったと言う。

 ドヤ顔などをしないあたり、純粋に食べてもらいたいと思ったのだ。

 ただ箒に負けたくないという気もあるのだろうけれど……。

 

「んっん!」

 

 咳払いが聞こえると、セシリアの方に視線が集中する。

 

「私も、今朝はお弁当を作ってきましたのよ!」

 

 ―――ヤバイ! 殺されるぞ一夏!

 叫ぼうとするプラシドだが、そんな失礼なまねをするわけにもいかない。

 十数秒の時間が、かなり長く感じ、その間葛藤していたが現状から一夏を助け出す方法が見えなかった。

 そうとも知らず織斑一夏は期待している。

 ―――メシマズの国になにを期待しているのか、ただセシリアは見かけだけは優雅に作る女だ。

 そう、目で楽しむという点ではセシリアはプロだろう。

 

「どうぞ!」

 

 セシリアが出した弁当の蓋が開くと、その中には大量のいろいろなおかず。

 しかも問題としてはほぼ他国の料理ばかり、申し訳程度にフィッシュ&チップスが入っているだけだ。

 彼は『これはひどい』と口にしそうになって止まった。

 

「これがセシリア・オルコット特製、シンクロ弁当ですわ!」

 

 そんな発言に、プラシドは震えそうになる声を押さえて聞く。

 

「な、なぁ……優雅さと気品さは……」

 

「料理は見かけも大事ですがそれだけが大事なわけではありません、もっと必要なものがありますわ!」

 

 ―――そうだ。そのとおりだ……それがわかっているならば、セシリア!

 

「殿方を満足させるだけの量! いわゆるパワーですわ!! だからこそ今回は優雅、気品を捨ててみました!」

 

 ―――捨てんな! とは言えないプラシドは大人しく、している。

 あんなものを食ったあかつきには……とゾッとした。

 だが神はプラシドに優しくは無い。

 

「召し上がれ、プラシドさん!」

 

 ―――あぁ、神よ。

 もしかしてだが、疑いながらも、セシリアが自分のことを好意的に見てくれているのではないか?

 などと思うプラシドだが今はそんなことで悩んで困っている場合ではない。

 全員、どこもかしこも複雑そうな表情……否、一夏と鈴と箒はそれぞれ弁当でイチャイチャしている。

 ―――おのれリア充、俺が機皇帝で踏み潰してくれようか……。

 心の中で自らが守ろうとした友人を恨む。

 

『ホセらしい、微妙に違うが』

 

 目の前に満面の笑みで差し出される弁当。

 俺は自ら持ってきた箸を使ってその弁当の中身、まずはエビフライを掴んで、口へと運んだ。

 噛み締めるが……普通のエビフライだ。

 味が普通だったことに安心できるかと思いきや、そうは行かない。

 目の前の弁当は減る気配を見せない。

 

 ―――このプラシド・イリアステル。IS学園の中でセシリアの設定を忘れたッ!

 

 辞世の句と共に、プラシドはほぼ無意識のまま箸を進めていた。

 無心のままなら怖くない。

 結局弁当は、昼休みが終わるまでには食べ終われなかった。

 

 

 

 

 




あとがき

キリがいいのでこのへんで!
続きをこのあと入れると恐ろしく長くなりそうだったので、今は前半って感じでござるね。
本番は放課後に続くでござる。


<予告>

セシリア
「えっ、プラシドさんとデュノアさんがデュエル!?」

シャルル
「プラシド・イリアステル。君に負けるわけにはいかない! 高速切替(ラピットスイッチ)デッキで倒す!!」

プラシド
「こいシャルル・デュノア! 俺の機皇帝で粗挽き肉団子にしてくれる!」

セシリア
「次回『男の戦い 脅威の高速切替デッキ!』ライディングデュエル、アクセラレーション!」


てな感じにやってみたはいいものの、こうISメインの小説でデュエルをがっつりやってしまうものかどうしたものかという感じでござるなぁ。
今までのように軽い感じがいいのでござろうか……難しい。
しかしとりあえず上の次回予告……本気にしちゃダメでござるよ?

では、次回をお楽しみにしてくださればまさに僥倖!!

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