機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス 作:王・オブ・王
ISだけを楽しみたい方は飛ばしちゃっても大丈夫ですよ!
プラシド・イリアステルとシャルル・デュノアの二人が居た。
織斑一夏が職員室に呼び出されたということで男子二人、一夏を待つことになったのだが、思った以上に会話がない。
問題はプラシドの方にあったからだろう。
セシリア・オルコットの料理を食べた昼休み以降、彼が起きない。
五限目、六限目を受けた後のプラシドがなぜ一夏を待つ気になったかといえば、それは間違いなく束からの要望のためだ。
織斑一夏が強くなるまでは守るという役割もあるプラシドにとっては面倒ながらもラウラが来た以上離れているわけにはいかないと判断した。
「ねぇプラシド、君はなんでISに乗れるの?」
「織斑一夏にISが乗れるか聞いてみろ」
シャルルからの質問に答えるには答えるがその答えは適当なもので、答えとも言えなかった。
だがそれ以外の答えはないのだろう。
それからシャルルはまた黙ってしまう。
気まずそうに苦笑するシャルルは、なんとなくプラシドが昼と雰囲気が違うことに察しがつく。
「シャルル・デュノア……お前に聞きたいことがある」
そんな質問に、シャルルは嬉しそうな顔をした。
はじめてのプラシドからかかってきた声だ。
「貴様はなぜ男の格好をしてまで織斑一夏のデータがほしい」
その言葉に、凍りつくシャルル。
あたりには人っ子一人いないからこそ、すぐに状況を整理してシャルルは笑う。
「な、なにを言って」
「俺にわからないとでも思ったか……」
嫌な汗が背中に伝っていることに気づいたシャルル。
こんなところで“父の命令”すらクリアできないままこの学園を追放され、IS学園に見放されるのか?
否、そんなわけにはいかなかった。
彼に、彼女にとっては父こそが唯一の肉親なのだ。
捨てられれば全て終わり、自分の生きる意味もすべて無くなってしまう。
「お、お願い……言わないでっ!」
「条件がある。俺を“満足”させてもらおう」
即答、なにを考えているのだろうか……しかし男を満足させるならばやはり、やり方は一つだろう。
「わ、わかったよ。君を満足させればイイんだろう? 男の人を満足させる方法なんて一つだよね……どこにする?」
緊張しながらも聞くシャルルだが、プラシドは不敵な笑みを浮かべるのみ。
考えているのだろうとわかり、シャルルは気分を凹ませる。
よもや自分が大切にしていたものがこんな男に奪われるなど屈辱でしかない。
「ならば貴様はデュエルディスクとデッキを持って屋上にやってくるんだな!」
そんな声と共に、プラシドは去っていった。彼は完全に一夏の護衛のことをほったらかしだが、まぁいいのだろう。
残されたシャルルはわけがわからないという風にしていたが、突如両手で顔をおさえる。
耳まで真っ赤になっているシャルルは走ってその場を去っていった。
◇◇◇◇◇◇
十数分後、校舎の屋上にてプラシドとシャルルが数メートル離れた状態で立っていた。
「なんでまた
シャルルの言葉に、プラシドは表情に笑みを浮かべながら手を振る。
「俺が満足するためだ! そして、この戦いに貴様が勝てば貴様の願いを一つだけ聞いてやる」
この男はシャルルのような美少女を見ても揺れることはない。それは生涯決めた恋人が一人いるからだろう。
それはともかくとして、シャルルは『ボクがデュエルモンスターズをやってなかったらどうするつもりだったんだろう?』と思っているが、そんな時はきっとIS勝負だった。
プラシドは懐から何かを取り出すと、デュエルディスクにつけてそこから伸びる縄を回してシャルルの方に投げる。
それは手錠で、シャルルが腕に装着しているのデュエルディスクにはまると取れることはなくなった。
「さぁ、受けてもらおうか……
かつてプラシドの中の彼がおふざけで作ったものなのだが、まさかこのように実際使われることになろうとは作った彼自身も思っていないだろう。
彼は『伝説のチームサティスファクション』の大ファンなのだから仕方がない。
「この手錠はデュエルが終わるまで外れることはない!」
爆発するシステムまで付けなかったのは正解だっただろう。
二人ま視線を合わせる。
すでにこれ以上の言葉はいらない。
あとは
―――
◇◇◇◇◇◇
IS学園の三人の男の内の二人の美青年の戦い。
それは光のごとく素早さでIS学園全体に広まった。
IS学園にてよく注目を集めるプラシドと今日やってきた新たな男子生徒、シャルル・デュノア
だがその大衆に組み込まれる人物には身近な人物たちもいた。
一年一組にて、セシリアが自分の席から勢い良く立ち上がった。
「えっ、プラシドさんとデュノアさんが
しかも、この学園ではセシリアと一夏ぐらいしか見たことがないプラシドのISと同じ名『機皇帝』を冠すデッキ。それを使っているというのだから驚きでセシリアは腰を抜かしそうになっていた。
その情報を持ってきた目の前にいる少女、鈴も驚いているようだ。
彼女もプラシドとは
「一体、どうして……」
「そんなことより早く行くわよ、箒はもう言ってるから!」
それを聞いて、急いで立ち上がるセシリアは鈴と共に走って屋上に向かうのだった。
これにて、教室は誰もいなくなる。
廊下を走るセシリアは昼ぐらいからプラシドが『恐い方』になっていたことを思い出す。
どうしてだろうと思うも、今は急ぐことにした。
学園の屋上にて行われている、プラシドとシャルルの
あたりにはギャラリーたちが押し寄せていて、場所をとっていた箒の隣にセシリアと鈴が到着する。
そこから少し離れた場所にはあのラウラ・ボーデヴィッヒの姿すら見えた。
今は目の前の戦いを見ることに集中することにした。
「フハハハハッ! さぁ、合体せよ、機皇帝ワイゼル!」
プラシドのフィールドに現れる一機のロボット。
そのフォルムはまさしく彼のISである機皇帝ワイゼルだった。
驚愕する“それを見たことが無い”面々だが、セシリアはただ静かに固唾を飲むのみ。
それにやられたことのあるセシリアだからわかる。
すでにシンクロモンスターを召喚しているシャルル・デュノアは―――負ける。
「見たことのないモンスターッ!?」
驚愕するシャルルだが、すでに遅い。
彼女のフィールドにいるシンクロモンスターはすでに“機皇帝”の標的だ。
「機皇帝ワイゼル∞の効果発動……忌まわしきシンクロモンスターを吸収しろ!」
そんな言葉と共に、機皇帝ワイゼルの胸の∞の装飾が開き、そこから無数の触手が飛び出した。
無数触手は飛び出すと同時にシャルルのシンクロモンスターを捕える。
「ボクのヴァイロン・シグマが!」
シャルルのモンスターであるヴァイロン・シグマはワイゼルに吸収された。
「そして機皇帝ワイゼルはそのシンクロモンスターを装備カードとしてその元々の攻撃力分を得る!」
攻撃力は機皇帝ワイゼルの攻撃力、2500にヴァイロン・シグマの攻撃力である1800の値がプラスされ、攻撃力は4300にまで上がる。
それにはこの決闘を見ているすべての生徒が驚いていた。
未知の能力、シンクロモンスター吸収。
彼の言うシンクロキラーとは、まさしくシンクロを抹殺するための力。
「けれど、ボクは負けるわけにはいかないんだ!」
シャルロットは叫ぶ。
「ヴァイロン・シグマがフィールドに居なくなったことによって、ヴァイロン・シグマに装備されていた装備カードである『魔道士の力』『ヴァイロン・マテリアル』が破壊されるよ」
ソリッドビジョンで表示される、フィールドにある二つのカードがバラバラに砕け散る。
だがシャルロットは口元に笑みを浮かべるのみだ。
「ヴァイロン・マテリアルの効果発動! このカードが破壊された時、デッキからヴァイロンと名のつくカードを手札に加えることができる。ボクが選択するのは、ヴァイロン・マターだ!」
手札に加えられるカードだが、プラシドは今だに笑みを浮かべるのみだ。
別に今更装備カードが手札に加えられたところでどうということはない。
「機皇帝ワイゼル、シャルル・デュノアを踏みつぶせ! バトルフェイズだ!」
ライフポイントはお互いまだ4000だ。
だが、このダイレクトアタックを喰らえばシャルルは一撃で終わる。
そんなわけにはいかないと、シャルルはデュエルディスクのボタンを押す。
「リバースカードオープン、和睦の使者。これによってこのターン、ボクが受けるダメージは0になる!」
このターンはどうすることもできないことを悟り、プラシドは舌打ちをする。
「俺はカードを三枚伏せターンエンド」
そしてシャルルのターンが始まるが、目の前の機皇帝ワイゼルを見てシャルルは苦しそうな表情を見せた。
目の前のモンスターはシンクロキラーであり、自分が勝つ方法はかなり限られてくる。
だが、諦めるわけにはいかない。今ここで負けてしまえば父からの期待に応えられない。
あの父が唯一、ようやく自分に期待を抱いたのだ。こんなところで負けるわけにはいかない。
シャルルはデッキの上のカードに手をそえると、しっかりと眼前の敵『機皇帝ワイゼル』を睨みつけた。
「ドローッ!!」
大きな動作と共に引き抜いたカードを、そのままデュエルディスクに置く。
「ボクは『ヴァイロン・プリズム』を召喚!」
放たれたモンスターは雷を身にまとう機械天使。
天界から地上を見下ろす
だが、目の前の攻撃力4300の機皇帝ワイゼルに勝てるほどではない。
「プラシド・イリアステル。君に負けるわけにはいかない!
「
怪訝な顔をするプラシドを、強い眼差しで見るシャルル。
「手札からさっき引いた『ヴァイロン・マター』を発動『墓地の装備カードを三枚デッキに戻して』二つの効果より一つを選ぶ。ボクは一枚をドローする……お願い、来て!」
カードを引き抜き、それを見ると同時に笑みを浮かべてそれを発動する。
「ボクは手札からフォトン・リードを発動、効果により手札からレベル4以下の光属性モンスターを特殊召喚するよ。ボクが召喚するのはシャインナイト!」
レベル3の光属性モンスター、シャインナイトが召喚された。
攻撃力400、守備力1900のモンスターを“攻撃表示”で召喚したシャルルに、プラシドは警戒を強める。
口元に笑みを浮かべたシャルルは、胸の前に手を置く。
チューナーモンスターとモンスターが揃った、そしてレベル7だ。
「ヴァイロン・シグマか……こりないな」
「いや、ボクの
そう言って笑うシャルルが、次の瞬間表情をひきしめた。
「母さんがくれたこのカードで君を倒す!」
ギャラリーたちもプラシドと同じように、息を飲んだ。
目の前に立つシンクロキラーモンスター。機皇帝ワイゼル∞相手に、勝機を見出したというのか?
答えは間違いなく次のターンまでにわかるはずだ。
「レベル3のシャインナイトに、レベル4のヴァイロン・プリズムをチューニング!」
再び行われるシンクロ召喚に、プラシドは目を細めた。
「リミッター解放レベル7、世界の平和を守るため、正義と力がドッキング!」
激しい機械音と共に、現れる巨大な機龍。
その姿はプラシドの中の“彼”が意識を“取り戻していれば”ずいぶん久しいものだろう。
片腕のドライバーが激しく回転すると共に、独特の咆哮と共に現れた機械の龍。
「シンクロ召喚、起動せよ! パワー・ツール・ドラゴン!」
金色の龍は叫びを上げて現れる。
「そしてシンクロ召喚に使用したヴァイロン・プリズムの効果が発動するよ。このカードがモンスターカードゾーンから墓地に送られた時、500ライフポイントを払い、場のモンスターに装備することができる。ボクが指定するのはパワー・ツール・ドラゴンだ!」
パワー・ツール・ドラゴンの背中のウイングに白銀と金色の装甲が追加された。
「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動、デッキからランダムに装備カードを……引く!」
シャルルがデッキからカードを一枚引き抜く。
そのカードを手元にて見ると、表情に笑みを浮かべた
プラシドはその表情に何かを感じて、警戒を強める。
「ボクは手札より、装備魔法『ブレイク・ドロー』を発動、誰に装備するかは言わなくてもわかるよね!」
装備されるのはシャルルのフィールドに唯一いるモンスター。
「まだまだ、ボクの高速切替デッキの装備カードは半端な数じゃないよ。手札より『魔導師の力』をパワー・ツール・ドラゴンに装備、ボクのフィールドの魔法・罠の数だけ500ポイント攻撃力が上昇!」
これによりパワー・ツール・ドラゴンの攻撃力はさらに上昇していく。
その数値は2300から『魔導師の力』により攻撃力が1500ポイント上がり3800にもなる。
「そしてボクは手札のカードを一枚捨ててこのカードを発動するよ」
さらにパワー・ツール・ドラゴンの両手に装備される二振りの剣。
「『閃光の剣トライス』か!」
驚愕する様子のプラシド。
笑みを浮かべているシャルルはすでに勝ちを確信しているのだろう。
本来ならば『閃光の剣トライス』は攻撃力を500下げて二回攻撃を得るのだが、魔導師の力を装備しているパワー・ツール・ドラゴンはデメリット無しで装備することができる。
そして、シャルルの手札はあと一枚のみ、状況はバトルフェイズへと以降した。
「行け、パワー・ツール・ドラゴン! ツインソード・ブレイク!」
攻撃力は500違うにも関わらず、攻撃をしかける。
「ここで装備カード扱いになっているヴァイロン・プリズムの効果発動、攻撃力は1000上がる!」
「なにっ!」
片方の剣を振るパワー・ツール・ドラゴンだが、攻撃は機皇帝ワイゼルの右腕だけを切り裂く。
「ワイゼルGの効果により攻撃対象はワイゼルGへと以降する!」
守備表示のワイゼルGが破壊されるが、プラシドにはダメージはない。
「ブレイク・ドローの効果によってボクは一枚ドロー! 次の攻撃は通すよ、行けパワー・ツール・ドラゴン!」
唸りを上げるパワー・ツール・ドラゴンがふた振りの剣を振り上げて、機皇帝ワイゼル∞を襲う。
4800のパワー・ツール・ドラゴンの攻撃に、プラシドは舌打ちを打つ。
「リバースカード発動!
攻撃力が500増加する機皇帝ワイゼル∞の攻撃力は4800。
相打ち―――しかし、シャルルは笑みを浮かべて手札のカードをプラシドに向ける。
「ダメージステップ、ボクは手札から速攻魔法『リミッター解除』を発動!」
手札から放たれた速攻魔法『リミッター解除』の効果により、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は装備カードでアップした分、4800アップする。
これにより機皇帝ワイゼル∞との差は4800であり、これが通ればライフポイント4000のプラシドの負けだ。
「リバースカードオープン!」
だが、プラシドは動く。
「『リミッター解除』を発動する!」
「えっ!?」
プラシドもシャルルと同じカードを発動。これにより二体のモンスターの攻撃力はまた同じになった。
驚愕するシャルルと正反対に、楽しそうな笑みを浮かべているプラシド。
そして、『機皇帝ワイゼル∞』と『パワー・ツール・ドラゴン』がぶつかり合い、爆発。
9600の二体のモンスターは相打ちという形でフィールドから消えた。
「機皇帝ワイゼル∞がフィールド上から消え去ったことにより『ワイゼルA』『ワイゼルT』『ワイゼルC』が破壊される」
「パワー・ツール・ドラゴンの効果によって装備カードを墓地に送ることでパワー・ツール・ドラゴンは破壊されない。ブレイク・ドローを破壊!」
ただ一体、パワー・ツール・ドラゴンだけがフィールドに残されると思われた……。しかし、その場には―――機皇帝ワイゼル∞が立っていた。
驚愕する面々。
真っ白な装甲を輝かせ、そこに立つは機皇帝。
「なっ!?」
「どういうことですの!?」
鈴とセシリアが言葉を出さざるを得ないほどの驚愕を見せるが、プラシドもシャルルも騒がしいギャラリーを気にすることはない。
表情に笑みを浮かべているプラシドと驚愕に言葉も出ないシャルル。
わけがわからないという状況のギャラリーとシャルルに説明するために、プラシドはデュエルディスクに置かれているカードを手に取り、見せる。
「俺の機皇帝ワイゼルは二種類あってな、五枚のモンスターが先ほどのように合体する『機皇帝ワイゼル∞』……そして今フィールドにいる『機皇帝ワイゼル∞』は単体である『機皇帝ワイゼル∞』だ!」
だがそれだけでは召喚条件が成立したとは言えない。
「俺の機皇帝ワイゼル∞、そして全てのワイゼルのパーツが破壊された時、俺はリバースカードである『リミット・リバース』を発動してワイゼルGを召喚した。そしてワイゼルGはフィールド上に『機皇帝』と名のつくカードがなければ破壊される……それにより手札の『機皇帝ワイゼル∞』の効果『自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが効果によって破壊され墓地へ送られた時のみ手札から特殊召喚できる』が発動した」
つまりは、再び目の前の巨大なモンスターを相手にする必要が生まれた。
だが、まだ終わるわけにはいかない―――シャルルはバトルフェイズを終了すると手札から魔法カードを発動する。
「ボクは手札からブラックホールを発動する!」
ワイゼルを残して吸収されれば負ける。
だからこそこのカードで二体を破壊する方がましと考えたのだろう。
だが―――無駄だ。
「『機皇帝ワイゼル∞』の効果発動、一ターンに一度だけ魔法カードの発動を無効にして破壊する」
唯一勝てるかもしれなかったカードもこのザマであった。
モンスターを召喚する方法も、手札すらももう無い。
「ターン……エンドッ」
そう言わざるをえない状況で、プラシドは笑みを浮かべていた。
心底楽しいと言わんばかりの表情であり、そんな表情の彼はかなりレアだ。
「ふん、まさか俺がこの『機皇帝ワイゼル∞』を使わされるとはな……織斑一夏やセシリア・オルコット、凰鈴音すらもなしえなかったことだ」
そう言う彼に、驚くシャルル。
「俺のターン、ドロー!」
引かれるカード。
「貴様の高速切替デッキ、なかなかのものだ。相手が悪かったな! ワイゼル、パワー・ツール・ドラゴンを吸収しろ!」
先と同じように触手が伸ばされ、パワー・ツール・ドラゴンは機皇帝ワイゼル∞に吸収される。
こうしてワイゼルは再びパワーアップし、パワー・ツール・ドラゴンの装備カードすべては破壊。
「バトルフェイズ!」
フィールドには攻撃力2500に2300がプラスされた攻撃力4800の機皇帝ワイゼル∞。
再び降り出しに戻った―――否、シャルルのフィールドにはカードが無い。もちろん、手札にもだ。
「機皇帝ワイゼル∞のダイレクトアタック!」
そして、機皇帝ワイゼル∞はシャルルの目の前へと高速移動し、巨大な腕を振り上げる。
攻撃力4800のワイゼルが、ライフポイント3500のシャルルへとダイレクトアタックをしかけた。
勝者―――プラシド・イリアステル。
ソリッドビジョンは消え、手錠も外れ、プラシドはシャルルへと歩み寄る。
苦笑するシャルルは、すでに言うことはないという表情だ。
初めて見た時より、ずっと表情も雰囲気も“尖っている”が、どこか優しさもあるように見える。
「“ホセ”風に言うならば『満足した』と言ったところか、貴様の決闘は十分一夏たちに通じるな」
笑うプラシド。
それを見て、シャルルも、笑う。
デュエルを通して理解して、今ので確信を持つことができた。
プラシドは別に言いつけるつもりなど無かったのだろう。
まったくもって人騒がせであると、シャルルは胸をなでおろす。
「さて、アイツが寝ている間に何事もなかったかのようにしておくとするか」
そう言うと、踵を返すプラシド。
「あの、ありがとう!」
背中を向ける彼に向かってそう言うが、プラシドは何も答えず去っていってしまった。
彼とはいい友達でいれそうだと、シャルルは安心する。
久しぶりの緊迫したデュエルだったと、自分もなんだかんだ楽しかったことを思う。
―――戻ったら一夏にも聞いてみよう
プラシドが寮の部屋に戻ると同時に、プラシドの中の“
それにより、表に出ているのは彼の方だ。
カバンを置いて、背中を伸ばす。
「ふぅ、セシリア……あそこまで脂濃いものを大量に出すとは」
疲労ゆえに眠っていた彼はそこまでの疲労を溜めた相手であるセシリアを心の中で少しばかり恨む。
それにしても一夏の護衛をプラシドに頼んでおいたにも関わらず、なぜかここに普通に帰って来ていたのはなぜかと疑問に思う彼。
実際はプラシドが一夏のことを忘れて帰ってきたのだが、特に気にする必要もないと彼は頷く。
確かにラウラ・ボーデヴィッヒは一夏を恨んでいるが、IS勝負でもない限りそこまでするはずはないと確証があるからだ。
「まぁことが終わればラウラは一夏に惚れるからな」
『あれが織斑一夏に惚れるだと?』
「意外だろ、俺もそう思うけど……まぁ一夏だからな」
納得せざるをえない状況なのだが、一夏をそれといって理解せず、恋愛面などにおいても疎いプラシドはいまいちわかっていないようだった。
それでよく恋人などできたものだと言いたいところだが、まぁ気にする必要もないだろうと彼は言葉を飲み込む。
だがそんな時、扉をノックもせずに開けるものが居た。
「ん、誰だ?」
そう言ってそちらを見て、彼は驚愕に表情を変えた。
現れたのは銀髪をなびかせた少女、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。
警戒心を強めて彼女を見るプラシド。
『変われ』
その言葉と共に、彼はプラシドと変わる。
「あれが
「そうだ」
―――あれ? おい、なんの話だ。
プラシドの中で疑問を浮かべるホセを無視してプラシドはラウラと会話を続ける。
見上げるラウラに見下ろすプラシド。
「あれに勝てば、貴様は私の邪魔をしないんだな?」
「ふん、そういうことだ」
そう言うと、ラウラは踵返して去っていった。
そしてその場に残るのはプラシドとホセの“二人”のみ。
―――で、プラシド……
―――馬鹿かお前は!
「なにおう!」
―――あれほど余計なことはするなと言ったのに、お前は本当にいうことを聞かないやつだな!
本来のホセの気持ちが痛いほどわかる彼はプラシドの中で深いため息をついた。
だがそれでも、彼は反省の兆しなど一切見せることなどない。
「ふん、貴様のいうことを一々聞いていたら動くことすらできなくなりそうだ」
―――あぁもう、お前がそんな勝手だからホセの忠告も聞かずに腹筋崩壊したんだろうが。
「貴様言ってはならんことを!」
―――事実だろ。
「クッ、貴様と
―――こっちのセリフだ!
ずいぶんな大喧嘩になっているが、これも全部よくあることである。
束のところにいたときからしょっちゅうこんな調子なので、最初はおもしろおかしく見ていた束はその内飽きて―――その内、構うのを止めた。
結局この喧嘩は夜まで続き、晩御飯を誘いに来たセシリアが独りで叫び続けるプラシドを止めるまで続くことになる。
最初に見たのがセシリアで無ければ、今頃『一人で叫び続ける男』というひどい噂が流れるところであった。
「プラシドさん、なにがあったんですの?」
「いやなんでもない」
「そんなことよりプラシドさん、明日も私、丹精こめてシンクロ弁当を!」
「気持ちだけで一杯だ!」
「えぇ!?」
もしかしてセシリアは自分に気があるんじゃなかろうかと本気で思い始めたプラシドだが、すぐに頭を振る。
まさかそんなことがあるはずはない。一夏のそばにいるからよく話しかけられるだけだろう。
そう考えてプラシドは歩き、セシリアはその後ろをついていくのだった。
その日、デュエルモンスターズのパックを両手いっぱいに抱えて歩くラウラが見られたという。
あとがき
はい、シャルルの高速切替デッキはヴァイロンとパワー・ツール・ドラゴンの装備魔法デッキでござる。
まぁこれが拙者が考えた『高速切替デッキ』でござる。
感想で書いていただいた『剣闘獣』もソレ良い! とは思ったものの、やはり武装を高速切替するシャルルを思い装備カードを高速切替するデッキにしたでござる。
まぁデュエルがメインの話じゃないので適当な感じでござったが……まぁいずれはしっかりとしたデュエルも書きたいなぁ、とか思う所存で候。
では、次回もお楽しみにして頂ければ僥倖で候!!