機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

16 / 27
第十五話 満たされぬ魂、決闘の意味

 翌日、特になんのアクションも起こさないラウラを不審に思うクラスの面々。いや、アクションを起こさないからだけではない。彼女が目元にくまを浮かべている挙句、休み時間の度に机に大量のデュエルモンスターズのカードを並べていろいろと見ているからだった。

 昨晩見かけられた『ラウラ・ボーデヴィッヒがカードパックを大量に抱えていた光景』は噂や都市伝説ではなく実話だったことがわかる。そしてその原因を作ったのがプラシド・イリアステルであると知っている人間はいない。

 正直な話、彼自身もそれが自分のせいだと気づいていないのだ。

 訝しげな顔をしてカードとにらめっこをするラウラ・ボーデヴィッヒに今日始めて声をかけたのは、意外にも気弱なルチアーノだった。

 

「ボーデヴィッヒさんもデュエルモンスターズやるの?」

 

 ―――や、やった! さすがルチアーノ!

 というのがクラスメイトたちの総意であった。よもや昨日転校初日にこの学園一のモテ男である織斑一夏にビンタをかまして一日無愛想で仏頂面だったあのラウラ・ボーデヴィッヒに声をかけるというのはそれほどに凄まじい行為である。そこにシビれる憧れるのだ。

 声をかけられたラウラは、ルチアーノへと視線をやると難しい顔のまま頷いた。

 

「そっか、この学校でもやってる人は沢山いるし声をかけてみてもいいかもね、ボクもいつでも挑戦待ってるからね!」

 

 すっかり学園内でも有名になってしまったデュエルモンスターズというカードゲーム。購買の方でもカードの入荷数が日に日に増えていき、挙げ句の果てには決闘盤(デュエルディスク)まで売っている始末だ。

 この学園もだいぶ決闘(デュエル)に染まってきている。

 

「これは、織斑一夏もやっているのか?」

 

「うん、一夏君は結構強いみたいで」

 

「それだけ聞ければ良い」

 

 無愛想にそう答えるラウラだが、苦笑しながらルチアーノが携帯電話を取り出してラウラに見せる。

 気づいていなかったのか驚いている表情だ。

 

「もう、昼だったのか……」

 

「うん、一緒にいかない?」

 

 それに首を横に振る理由が、無いわけではない。ラウラ自身この学園の生徒ほとんどが気に入らないのだ。

 ISをファッションかなにかだと勘違いしているような、浮ついた態度のこの学園の人間たち……だが、プラシド・イリアステルだけは違う。あの男だけは完全に“戦う者の眼”をしていた。

 あの眼光は自分と同じく戦場にいたような人間がするような……。

 

「ボーデヴィッヒ、一緒に食事でもどうだ?」

 

 本人ことプラシドが声をかけてきたことによりラウラは思考を中断する。その誘いに乗るべきか乗らざるべきか、しかしどちらにしろプラシドとは戦うことになるのだから大人しく今は付き合っておこうと思う。

 ラウラは机の上に並べたカードを一つにまとめて、頷く。それを見たプラシドはわずかに笑みを浮かべたので、敵相手になにを……と思いながらもラウラは大人しくついていくことにした。

 

 

 

 食堂に移動したプラシド、ルチアーノ、ラウラの三人だったが、すでにセシリアがテーブルをとっていて四人でテーブルに座ることになってしまう。

 やはり付き合うんじゃなかったと思う反面、端からルチアーノ、ラウラ、プラシド、セシリアなので話す機会がないわけじゃないと安心する。

 いつもなら簡易的な食事で済ますものの、ルチアーノがあまりに押すものなので買ってしまった天丼。食べたことなどないが一応食べてみようと思う。

 

「箸の使い方わかる?」

 

「む、この程度は訓練してきている」

 

「そっか」

 

 笑顔で頷くルチアーノだが、そんなルチアーノを見て意外そうな顔をしたのはプラシドだった。

 やはり同じく“ロリ”だからお姉さんぶりたいのか、と思う。

 だが、実際そうなのだろう。なぜか世話を焼いているところを見るとお姉さんっぽく見えないでもない。

 

「ところで、なんでまたデュエルモンスターズをやろうと考えたんだ?」

 

 そう聞くプラシド。

 

「織斑一夏を倒すならまずは貴様からだと言っていただろう」

 

 ―――プラシドが言ったな、そう言えば。

 思い返す彼は、ため息をつきたくなるも押さえる。どちらにしろ素人なんかに負ける自分ではないと思っているし、いざとなれば彼は自ら『本気』のデッキでラウラと戦うことだろう。

 この学園に来てから一度も出してはいない本気だが、それを出せる相手が現れるというのも悪くない。

 ―――あれ、俺ってとんだデュエル脳?

 思うも、きっと気のせいだと思い込む。

 

「プラシドさん、勝手にそんな約束をしたんですの!?」

 

 突然怒り出すセシリアに困った顔をするプラシド。

 

「なぜお前の許可がいる!?」

 

「それはもちろん私がプラシドさんに勝ってないからですわ!」

 

『なるほどそれも一利ある』

 

 ―――ねぇよ!

 突如納得してしまう自分の中のプラシドにツッコミを入れながらも、プラシドは冷静に『ない』と返す。

 なんだかんだで最近は彼自身もセシリアの扱いになれてきた節があるのか、適当にあしらうということを覚えた。それでもあまりほっとけないのはそれはセシリアがセシリアだからだろう。

 ずいぶんセシリアをデュエル脳にしてしまった気がしないでもないが、これで良かったのだろうかとたまに不安になる。

 

「待っていろ、お前に勝ってみせるからな!」

 

「ふん、ムシケラごときにこの俺を超えられると思うなよ!」

 

「なにおっ!」

 

「勢いよく立ち上がったら飲み物こぼすよラウラ!」

 

 突然変わったプラシドのせいでラウラを怒らせたようだ。ルチアーノがラウラを注意するがそのようなことにも耳を貸さずにプラシドを睨みつけるラウラ。

 すぐにプラシドは彼へと戻る。目つきが鋭いものから変わると、ラウラが首をかしげる。それを感じ取るということは感がそれなりに鋭いということだろう。

 静かに座ったプラシドが『すまん』と言うとラウラはわけがわからないという風に座って食事を続ける。

 いつの間にかラウラを名前呼びしているルチアーノだが、ラウラの方も気にしていないようだ。

 

「さて、私は先に教室にもどるぞ!」

 

 少ししてそう言うラウラを見て、ルチアーノも食事を終えたのか一緒に食堂を出ていった。セシリアと話をしていたプラシドの食事はあまり減っていない。

 まだ10分も経っていないことに気づき、ずいぶん急いでいるな、と思うがそこまで急ぐこともないだろうとセシリアと話を再開するプラシド。

 

「やぁプラシド」

 

 再開して間もなく、シャルル・デュノアと織斑一夏だった。

 

「いいかい?」

 

「どうぞ」

 

 そう返答するとシャルルと一夏が座る。

 

「遅い昼食なんだな?」

 

「ああ、一夏と決闘(デュエル)しててね」

 

「昨日の見たけどやっぱりシャルルは強いよ」

 

 そう言って笑う一夏だが、お互いベテランなのだからそこまで気にする必要はないとプラシドは笑う。

 むしろこの短期間で急成長したセシリアにプラシドは驚きを隠せない。完全にあの使いにくいレッド・デーモンズ・ドラゴンを使いこなしている。

 攻撃しなければ破壊される効果など恐ろしくてプラシドには使えない類である。

 それにしてもプラシドにもう一枚の機皇帝ワイゼルを使わせたというシャルルには驚きで、(ホセ)もシャルルの決闘(デュエル)には興味が湧いていた。

 

「で、どっちが勝ったんですの?」

 

 このセシリア、興味津々である。どっぷりデュエルモンスターズに漬かった者の脳であるセシリアにも慣れた一夏が自慢げな顔で自分に指を指す。

 さすがと言わざるをおえないが、最近は一夏のデュエルを見たことがない。スターダスト・ドラゴンを使うらしいがどのパックで当たったのかも聞く機会はないし別に使う予定もないので聞くこともない。

 それに関してはセシリアも同じくだが……。

 ―――まさかこの二人はシグナー?

 そんなことあるはずがないと脳内で完結するプラシド。

 

「一夏は強いや、引きが強いね」

 

「デッキは信じれば答えてくれる!」

 

 まるで、プラシドの好敵手とも言える彼のようなことを言うと、プラシド(ホセ)は笑った。

 

「プラシドはなんだか、昨日と雰囲気が違う感じがするね?」

 

 そんな言葉に、沈黙しながら固まるプラシドと、突如笑い出すセシリアと一夏。

 なぜプラシドが固まったのかは、状況が悪いからだろう。しかしシャルルがわからないのは一夏とセシリアの二人が笑っていることだった。なぜだかおかしそうに笑う二人。

 ほかの生徒たちはプラシドたちの座っているテーブルを見ているが、おそらくメンツのせいだろう。

 

「そういえばそうだな、もう慣れてて全然気にしてなかったけど、プラシドはたぶん二重人格的なやつだよ」

 

「え、そうなの?」

 

「あぁ、そうも言えなくはない……記憶があったりなかったりするが」

 

「時たま変わるんですのよね……ま、まぁ私はこっちのほうがす、好きだったり……」

 

 最後の方はボソボソと言ってしまっているせいで誰にも聞こえることはない。

 シャルルは新事実に驚愕を隠せない。それは意外と深刻なことではないかと思うも、プラシド自身もそこまで深刻そうな顔をしていないので良いのだろうと思うが、ここで一つ疑問を覚えた。

 記憶があったりなかったり? つまりは……。

 

「昨日の決闘(デュエル)って、プラシド記憶あるの?」

 

「あぁ~いや、それが……無いんだ。すまない」

 

 素直に謝る彼だが、謝る必要など無いと言う。昨日のプラシドはやけに強かったが、こちらのプラシドもやはり強いのだろうか?

 デッキが同じではないのは薄々感づいてはいるが、どんなデッキを使うのだろう。やはりシンクロキラー? などと想像すればキリがない。

 

「じゃあまた決闘(デュエル)してよ。今度は記憶があるうちにね?」

 

 そう言って笑うシャルルに、笑顔で返すプラシド。こうして約束されたわけだが、次の戦いも結局はプラシドが勝つのだろう。彼はまだ一度もこの学園に来てから本気を出していない。

 彼が扱うのはTG(テックジーナス)デッキ。だが“彼ら”の本質は機皇帝にある。つまりはそういうことだ。

 それからデュエルモンスターズの話やISの話をしながら、昼を越していった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 放課後、アリーナにて一夏がシャルルにライフルの扱い方を教えている途中、ざわざわとしだすアリーナ。

 そちらに目を向けた一夏とシャルル。そして訓練に付き合っていた鈴と箒が見たのは自らの専用ISを纏っているラウラ・ボーデヴィッヒの姿。

 先ほどプラシドやルチアーノと昼食を取っていた時とはだいぶ違う目つきで、一夏を睨みその名をつぶやく。

 

「なんだよ」

 

「貴様も専用機持ちらしいな、ならば話は早い。私と戦え」

 

 驚愕する一夏の隣のシャルル。

 

「嫌だ、理由がねぇよ」

 

 そう言って顔を逸らす一夏だが、そんな態度に目つきをさらに鋭くするラウラ。

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

 絶対的な理由、彼を憎むに値する理由が、彼女にはあった。

 

「今じゃなくても良いだろ、もうすぐクラスリーグマッチなんだから。その時で」

 

 あくまでも拒否する一夏を無理やりにでも戦わせるため、ラウラは肩部についたキャノンを一夏へと向ける。

 

「止まれラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

 そんな声と共に、現れたのは白いIS機皇帝ワイゼル∞を纏ったプラシド。そして蒼いIS機皇帝スキエル∞を纏ったルチアーノだった。

 楽しそうに笑うルチアーノと、冷静に現状を理解してラウラを止めるプラシド。プラシドの中はホセの方のようで気性もそこまで荒くなく、戦いを止めようとする。これがプラシド本人だったなら余計に厄介なことになっていただろう。

 

「クククッ、おいプラシド。ボクはいつでもやれるよ?」

 

 ISを纏い性格が変わっているルチアーノだが、無理矢理戦闘などをしたりしないぶん“プラシド”よりだいぶましと言える。

 学園の眼帯三人組が集まったわけだが、一夏はようやく自分は銃口を向けられていたと整理して武器を構えるが、すでにシャルルは構えていた。

 状況が悪化するだけだと、ラウラの眼前に着地して振り向くとシャルルと一夏を見る。その眼で理解できたのか、二人は武器を収めてISも解除する。

 

「ラウラ……お前はなにもわかっていないな」

 

「なに!?」

 

 プラシドの言葉に、動揺するラウラ。

 

「ヒャッハハハハっ! プラシドなんかに言われてやんの」

 

 そうして煽るルチアーノだが、ラウラはそんな言葉は頭に入っていないようで、ただ驚いたような表情でプラシドを見るのみだ。

 彼はISを解除して制服に戻るとワイゼルの待機フォームである剣を鞘に収める。

 

「ルチアーノ、ラウラが余計なことをしたら頼む」

 

「プラシドに命令されるのは癪だけど、まぁいいよ」

 

 そんな返答をするルチアーノにも驚くラウラ。二重人格のバーゲンセールか何かかと思うが、この二人だけだろうと思う。いや信じる。

 そしてラウラはプラシドの言っている意味の答えが出せないでいた。だからこそ、ISを即座に解除して一夏の方に視線を向ける。

 

「今日のところは引いてやろう」

 

 そう言って、ラウラはその場より走り去っていった。早く彼に答えを聞かなければならない。

 だからこそ急いで去っていったのだ。

 一夏へと走り寄る鈴と箒。

 

「どういうことだ一夏!」

 

「アイツとあんたに何があったのよ!?」

 

 詰め寄る二人だが、一夏の方もわからなかった。なぜ初日に叩かれたのか、なぜ恨まれているのか……。

 あとのことはプラシドに任せるしかないと思いながらも、息をつくだけしかできない。

 まさに意気消沈、なんだかブルーにすらなってくる一夏だったがすぐ目の前にブルーの装甲が降りてきた。

 

「なぁに落ち込んでんだよ似合わない」

 

 余計なお世話であると思いながらも、ヘタのことを言えばこの鬼っ子に仕留められかねないので黙っていることにする。

 それが正しいと思いなんでもないと返事をした。シャルルはまた二重人格が現れたと混乱しているようだ。

 今日はこれ以上の訓練はやめておこうと、一夏は頷いた。

 

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒはプラシド・イリアステルを見つけ、走ってその腕を掴んだ。

 立ち止まったプラシドが振り返ると、その目を見てラウラははっきりと言葉を、疑問を口にする。

 

「私にわかっていないものとはなんだ! なにがわかっていない!」

 

 だが彼は答えることはない。つまりは自分で見つけろということだ。

 それに気づきながらも、ラウラは目の前の疑問の答えが見つからないことが歯がゆくて仕方がない。早く答えろと言わんばかりの視線でプラシドを睨みつけるが答えはでない。

 プラシド自身も答えを言う気は無かった。それは彼女が見つけるか……“織斑一夏”が示すものだと思っているからだ。

 

「答えろプラシド・イリアステル。私にわかっていないものとは」

 

「言ったはずだラウラ・ボーデヴィッヒ! 一夏の前に俺を決闘(デュエル)で倒せとな! 答えは決闘(デュエル)で通じ合い、出せるものだ。それもわからんような小娘に俺や一夏たちを相手にする資格などない!」

 

 ―――なにいってんだこの男っ!!?

 驚愕しているのは、彼の中のホセだ。今の言葉もすべてプラシド本人が発した言葉である。大事なシーンで台無しにしてくれたものだと思うホセだが、彼が『決闘(デュエル)で通じ合い』など言ってくれるとなんとなく嬉しくなる……が、それとこれとは話は別である。どうせなら本当に二重人格ならホセとがよかったとぐらい思うホセだが、もう何も言うまい。

 なるようになれであとはプラシドに任せることにした。良いフォローを期待していたのだが、プラシドはラウラの手を振り払い背を向ける。

 

「来い、T・666!」

 

 携帯端末を操作して自らのD・ホイール(バイク)を呼んだプラシドはそれにまたがり走り出す。

 まったくもってフォローも何もない。ただ言いたいことだけを言っただけ……彼の中のホセは『もうどうにでもなれ』とつぶやいて意識を眠らせることにした。

 今日はもう起きない。起きたくない。願わくば一発だけ、プラシドの頬を張りたかった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 それから少しして、夕日があかね色を空に差す頃。

 学園内の広い広い敷地のその一角にて、ラウラ・ボーデヴィッヒは今まで言えなかったことをその人物に話していた。

 だが、その相手『織斑千冬』はラウラの言葉を聞きながらも、受け入れる気は無いと言った様子だ。

 それを覗く一夏にさえも、それは理解できた。

 

「お願いです教官。我がドイツで再びご指導を! ここではあなたの能力は半分も生かされません。大体、この学園の生徒など、教官が教えるにたる人間ではありません」

 

 彼女がこのIS学園に来た目的の一つでもある、織斑千冬を連れ戻すということ。

 

「なぜだ?」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている」

 

 ラウラは許せないのだ。世界を変えた兵器であるISがこんなにも軽いものとして見られている。

 楽しくわいわいと、へらへらと扱われている……自らの運命を変えたこのISと千冬がこんな風になっていることが許せないのだ。

 

「そのような程度の低いものたちに教官が時間を割かれることなど!」

 

「―――そこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ!」

 

 その圧力(プレッシャー)に怯むラウラ。冷たく鋭い織斑千冬の目を向けられたラウラは、いつもの織斑千冬と違う感覚に焦っていた。そう、彼女の本来の姿はこうで正しいのだという反面、動揺を隠すこともできない。

 小娘―――そんな言葉が頭の中をループする。

 何も知らない、わかっていない。だからこその小娘という言葉。

 

「……も……ないから、ですか?」

 

「ん?」

 

 ラウラにしては小さな声に、千冬はそちらを見て疑問を抱く。

 俯くラウラが、その小さな手に握りこぶしを作っている。

 

「私が決闘(デュエル)もできないから! そう言うのですね教官!」

 

「え、あ……うん」

 

 千冬は混乱していた。自らが教えた部下がなにやらわけのわからないことを言っていると……。

 

「やはり、私は軍の中でしかものを知らない。いわば“井の中の蛙”……決闘(デュエル)もできない小娘は誰も相手になどしてくれやしない。わかりました、ならば私はこの学園で誰よりも強いであろう教官に勝って、また我がドイツでご指導をしていただきます!」

 

「あ、ああ……」

 

「失礼します教官!」

 

 そう言うとなにか決意を固めたのか、ラウラは表情を引き締めたまま千冬が言うまでもなく寮への道を走っていく。

 なぜか声をかけられた挙句、話に置いていかれた千冬だがこんな経験は始めてだと焦らずにはいられない。

 だからこそ、とりあえずカッコ悪いところを見せるわけにはいかないので一応言っておく。

 

「そこの男子。盗み聞きか? 異常性癖は関心しないぞ」

 

 この学園で三人いる男の内の一人、弟である織斑一夏に声をかける。

 これで教師の面目は保たれただろうと安心するも、若干不安が残っていた。さすがにもうラウラの教官ではないと言えど、元教え子がどこか道を外れているのではなかろうと心配になる。

 後々のケアはしっかりしようと決めて、千冬はとりあえず久しぶりの弟との水入らずを少しばかり楽しむことにした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、晩御飯も食べ終え、セシリアやルチアーノと決闘(デュエル)をした後に部屋へと戻るプラシド。

 表に出ているのはもちろん(ホセ)の方で、楽にいろいろと進んでいったがさすがにTGでルチアーノに勝つのは苦戦したというものだ。セシリアはまだまだ詰めが甘いのでなんとかなるものの……。

 晩御飯にシャルルが来なかったのは、おそらく“一夏にバレた”のだろう。だがこれにより正史に近づいたというものだ。自分というイレギュラーを加えながらもなんとか軌道修正をしなければいろいろと支障が出るかもしれない、否、すでに出ている。

 だが徐々に直せては来ているのだ。

 

「だが、計画は順調に進んでいる。懸念すべきことも徐々に減らしていけばいい」

 

 そう言うと、プラシドは自らのデッキを出してカードを並べていくのだった。

 電気をつけながらそうしていると、やはりこういう時一人部屋というのは便利だと頷く。

 沢山のカードを並べてみるが、そのどこにもスターダスト・ドラゴンもレッド・デーモンズ・ドラゴンもない。

 並べられたカードを整理してデッキを並べるとそこには四つのデッキ。

 一番上のカードはどれもプラシドしか持っていないであろうカードばかり。

 一つがブレード・ガンナー。

 一つが機皇帝ワイゼル∞。

 残り二つは未だ見ぬドラゴンともう一体の機皇帝。

 そして最後に置かれたカードが一枚。そこに描かれていたのは、謎のモンスター。

 

 ―――彼はそれらを一つ一つ丁寧にデッキホルダーに入れるのだった。

 

 これを使うときはおそらく来ないだろうと思いながらも、期待している自分がいることに気づきながら……。

 

 

 

 

 




あとがき

お久しぶりで候。まぁ前回のあとがきで書き忘れたのでござるが、予告はなんとなくで次話とはまったく関係ないでござるよ(キリッ
ラウラが見事に勘違い。千冬混乱。いろいろと惨事になっていることに気づいていないプラシド。
これはいよいよという感じでござるな、次回はアニメでセシリアと鈴がフルボッコにされる部分。

どうなっていくのか、お楽しみにして頂ければまさに僥倖ぉっ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。