機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第十六話 連続決闘! 変動する未来

 翌日、学園中はちょっとしたお祭り騒ぎであり、学年別トーナメントで優勝すれば織斑一夏と付き合えるという噂が流れていた。

 まぁこれもすべてプラシドの予想通りと言えば予想通りではあるのだが、セシリアはその話を聞いて苦笑するのみであるのに違和感を覚える。

 プラシドの机のそばに立つセシリアとルチアーノ。

 

「とんだ噂になってますわね、なぜか」

 

「織斑君も大概だけど、なんでこうなったんだろ」

 

 二人の疑問ももっともだが、プラシドにはわかる。大体野次馬のせいだ。

 盗み聞きとは良くないことだと思うプラシドは、廊下から教室を覗く布仏たちを見て苦笑する。

 向こうはそれに驚きながらも、気づかれているとうなだれた。

 

 そして、シャルルと一夏の二人がやってくると蜘蛛の子を散らすように去っていく生徒たち。

 その意味にまったく気づかない一夏に苦笑を隠せないセシリアとルチアーノだが、二人もすぐに席に戻る。

 チャイムギリギリにやってきたラウラは今日もまたアクションを起こすことはない。というより今日のラウラはどこかおかしく、授業中も涎を垂らして寝ている時すらあったほどだ。運が悪いことにそれは織斑千冬の授業であり、ラウラの小さな頭を容赦なく拳が襲う。

 休み時間はおろか昼休みも寝ていてルチアーノが声をかける隙すらなかったほどである。

 

 

 

 昼休み中、なんやかんやあって決闘(デュエル)をすることになったプラシド。

 いつものメンツで一夏、シャルル、セシリア、箒、鈴、ルチアーノの五人の中で、プラシドと決闘(デュエル)をしたことがないのは箒と鈴の二人。

 なぜかそんな話をしていたらプラシド本人がルチアーノと決闘(デュエル)することになり、現在屋上に立つ二人。

 開始五分足らずで流れたプラシドとルチアーノの戦いに、数々の生徒たちが決闘(デュエル)を見に来ていたがその中にはラウラの姿もあった。

 

「バトルフェイズに入るよ!」

 

 決闘(デュエル)もラストスパート。

 しかし問題なのはプラシドとルチアーノのフィールドに機皇帝ワイゼル∞と機皇帝スキエル∞がいるからだとかじゃない。一番の問題はもっと他にある……。

 

「ヒャッハハハハハッ! いけぇ、機皇帝スキエル∞!」

 

 決闘(デュエル)を始めた途端、彼女がISを駆るときの彼女になってしまったことだ。

 もうプラシドの中の彼を含めてみんなドン引きであるが、誰もが何も言えない立場にある。単純にあのルチアーノを相手にするのが恐いからだ。

 

「ワイゼルGの効果発動!」

 

 スキエルの攻撃はワイゼルGに引き寄せられ、爆発。ワイゼルの右腕が無くなるが。ダメージが通ることはない。

 お互いにライフはすでに1000であり、あと一撃でも攻撃を通したら負けである。それでもプラシドは笑みを浮かべていた。まるで策はあるというふうに……。

 

「ターンエンドだよ!」

 

 ルチアーノの宣言を聞き、プラシドは決闘盤(デュエルディスク)のデッキの上に手を添える。

 静かにデッキを見ながら上のカードを―――引き抜く。

 彼女のフィールドには機皇帝をなすための五体のパーツ。

 プラシドのフィールドにはワイゼルGが無いため、四体のパーツである。

 フィールドに魔法、罠はおろか伏せカードは一枚も存在しない。攻撃が通ってもスキエルGに攻撃を寄せられ次のターンにプラシドは終わる。

 ドローしたカードを、そっと見るプラシド。

 

「フッ、勝利の女神は俺に微笑んだようだな」

 

 そんな言葉に、驚愕する周囲の面々だが、プラシドの手札には今引いたカード一枚。これからどうやって勝つというのか?

 簡単なことだ。プラシドには今引いたカード一枚により“光差す道”が見えた。

 ―――頭の中に遊星テーマが流れる俺はデュエル脳だな。

 

「俺は機皇兵ワイゼル・アインを召喚する!」

 

 現れるのは簡易的なワイゼル。これにより機皇帝ワイゼル∞の攻撃力は『ワイゼル』と名のついた機皇兵ワイゼル・アインの攻撃力である1800が上がり4300。

 機皇兵ワイゼル・アインの効果により『機皇帝』と名のついたモンスターは一ターンに一度の貫通効果を得ることができるが、ルチアーノのスキエルGを破壊すれば勝ち、と思ったがそうはいかない。

 スキエルC3がルチアーノのフィールドに存在しているが、そのモンスターもまた攻撃を無効にすることができるのだ。

 

「二度の攻撃を無効化されればもう勝つ術はない。ボクの勝ちだ、ヒャッハハハハっ!」

 

「その程度のことを考えていないとでも思ったか、俺はレベル1のワイゼルC、ワイゼルA、ワイゼルTで―――オーバーレイ!!」

 

 驚愕するルチアーノ、それと共に機皇帝ワイゼル∞から離れる三つのパーツが光となり地面に渦巻く小さな銀河へと吸い込まれる。

 

「三体のモンスターで―――オーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 その小さな銀河からあふれる光。それと共に現れる一体のモンスター。

 

「エクシーズ召喚! 現れろ、ベビー・トラゴン!」

 

 プラシドの叫びと共に現れたモンスターに、ギャラリー含めてルチアーノはキョトン、とせざるをえなかった。

 そのモンスターは小さく、愛らしい表情の小さな虎のモンスター。大きな顔と大きな耳に、女子生徒たちはワンテンポ置いて黄色い声援を送る。

 

「くっくくっ……ひぃやっははははっ! プラシド、そんなモンスターでどうしようっていうんだよ。エクシーズ召喚とは驚いたけど、攻撃力900?」

 

 笑うルチアーノを見て、プラシドはその顔に笑みを浮かべた。

 

「ベビー・トラゴンの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことにより。自分フィールド上に表側表示で存在するレベル1モンスター一体をこのターン相手にダイレクトアタックが可能にする!」

 

 そんな言葉に、驚愕するルチアーノとギャラリーたち。固唾を飲んで見守るセシリアはプラシドが負けるわけがないと確信があった。彼女は知っていたのだ。

 そのコンボをこの学園で最初にくらったのは彼女だが、それを知る者は二人だけである。

 エクシーズモンスターというのは(この世界では)最近出たばかりのカードだが、それを使いこなせるだけの技量が、プラシドにはあった。

 

「なにぃっ!?」

 

「スキエルGとスキエルC3が防げるのはモンスターを対象にした攻撃のみだ! さぁ、行け機皇帝ワイゼル、その力で機皇帝最強を証明しろ!」

 

 機皇帝ワイゼル∞の胴体だけがスキエルの脇を抜けてルチアーノの前に現れる。

 機皇兵ワイゼル・アインが変形し、機皇帝ワイゼル∞の左腕部分につくと、その刃がルチアーノを襲う。

 1800のダメージにより、ルチアーノのライフは0になり、決闘(デュエル)は終了した。

 ギャラリーたちの声援を受けながら、プラシドは彼へと戻りルチアーノへと歩み寄ると片腕を差し出す。

 

「良い決闘(デュエル)だった。見せてもらったよ、お前の力と、その可能性を!」

 

 そう言って笑いかけると、ルチアーノは顔を赤くして俯いてしまった。元の彼女に戻っているのだろう。

 疑問を覚えるプラシドだが、彼女はその手をとることはなく前髪を急いで元に戻すと一人で立ち上がる。

 駆け寄ってきた一夏を見てプラシドは親指を立てた手を向ける。

 

「あぁ!」

 

 一夏も同じく親指を立てた手を向けてくるが、なんとなくだろう。

 ギャラリーたちもすぐに去っていき、残ったのはいつも通りのメンツばかり。

 ルチアーノも大丈夫なようですぐに普通に戻る。

 

「そういえば、私プラシドをボコボコにするって言ったのに約束を果たせてなかったわね!」

 

 そんなことがあったようななかったような。たぶんなかった気もするが当初彼女に喧嘩を“プラシドが売っていた”ので彼は覚えていた。

 まぁそのうちと返事をして軽くスルーすると鈴がなにか文句を言うがそれもスルーである。

 この学園に来てスルースキルが磨かれた自分に惚れ惚れしてしまいそうになる彼は自制してルチアーノを見た。

 当然のように機皇帝スキエルを使っていたが、これは何か言うべきだったのだろうかとも思う。

 

「まぁ、今更か」

 

 そう言うと笑ってプラシドはギャラリーの中、混ざって立ちながら寝ていたラウラを思い出す。

 どこまで夜ふかしをしたのかわからないが、終わった直後に起きて少し混乱していた姿を思い出し、吹き出しそうになるもおさえる。

 まったくもって悪くない子であると、心底思う。

 だが今日はあの日、自分が動くわけにはいかない。なぜなら今日セシリアと鈴はラウラに重傷を追わせられなければならないのだから……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 そして時間は進み放課後。

 プラシドは現在―――混乱していた。

 やはりセシリアと鈴を見捨てられなかった彼は、急いでアリーナまでやってきたわけだが、現状がまったく理解できない。

 目の前に広がる光景は……まるで不思議と言うより、混沌としていた。

 プラシドの中の(ホセ)にとってはプラシドの本来居た世界。破滅の未来を見たときよりも恐ろしい衝撃であった。

 

「な、なんだこれはっ!」

 

 後ずさり、驚愕に表情を歪ませる。

 その場にいるのはラウラ、鈴、セシリアの三人……そして鈴が叫んだ。

 

「必殺、黒炎弾!!」

 

 ISバトルなんて、あるわけもない。セシリアはただ見ているのみであり、ラウラと鈴はその体にISをまとわずにただ腕に決闘盤(デュエルディスク)をつけて……決闘(デュエル)をしていた。

 まったくもって謎というより、もはや恐怖すら感じる光景であり、プラシドはただただ歴史を書き換えたく思った。

 イリアステルの技術。願わくば今欲しい。

 ラウラがソリッドビジョンの真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)の攻撃を受けて、ライフポイントが0になった。

 ―――ISでの戦い。私闘とセシリアと鈴が重傷を負う事件はどうなった!?

 

『フハハハハッ! ずいぶん古典的なカードだが、最強の決闘者(デュエリスト)の一人と呼ばれる城之内克也のカードだな』

 

 プラシドの言葉など頭に入ることもなく、プラシドは足早にセシリアの隣に立つ。

 なにか話しかけてくるが、まったく頭に入ることもない。わけがわからないという風のプラシドの隣に現れたのは鷹月静寐であり、彼女はプラシドの肩に手をポン、と置く。

 

「なんでこうなったか、でしょ?」

 

 頷く。説明せずともわかってくれてありがたいと何度か頷くと、どこか遠くを見て、呆れたような表情で静寐は話をはじめる。

 彼女が、学年別トーナメントに参加するために練習しようとしていた時のことのようだ。

 鈴とセシリアがアリーナにいるのを見てほかの場所でしようとしたが、少し楽しそうなので見ていた時のこと……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 アリーナにて立っているセシリアと鈴。

 

「あたしは学年別トーナメントにそなえて練習しようと思ってたんだけど」

 

「あら私もまったく同じですわ」

 

「優勝は私がもらうわよ」

 

「別に一夏さんと付き合う気はないので決勝で会うことがあれば“勝ちをゆずって”差し上げますわよ。貴方がプラシドさんを倒せれば、ですが」

 

 いささか挑発的だったセシリアだが、悪気はない。赤き龍の翼の痣を持つシグナーはおそらく天然挑発体質であるのだ。だからこそ、鈴はセシリアを睨みつけるが、それがわけもわからずとりあえずセシリアはセシリアで鈴を睨みつける。

 額に青筋を浮かべながらも、鈴はまだ手は出さない。

 

「古いだけが取り柄の国のISにこのあたしが負けるわけがないじゃない!」

 

 明らかな挑発に、セシリアも額に青筋を浮かべて笑顔を浮かべる。

 

「あらぁ、弱い犬ほど良く吠えるという奴ですわ!」

 

「決着をつけるしかないようねぇ!」

 

 売り言葉に買い言葉。とうとう戦いに発展しようという瞬間、彼女たちはどこからか何かを出して腕へと装着する。

 ISの戦いかと思い、見ていた静寐が内心わくわくしたのにも関わらず。その行動一つでげんなりとした。

 腕につけた決闘盤(デュエルディスク)が展開。

 

「こんなところで私闘を行って怪我なんて目も当てられませんわ!」

 

「すなわち残る決着の付け方は……!」

 

決闘(デュエル)!!』

 

 とんだ決闘脳であり、決闘者(デュエリスト)たちである。

 

「先行はチャレンジャーである貴方からどうぞ!」

 

「ならお言葉に甘えて、ド―――」

 

 瞬間、セシリアと鈴の間を弾丸が駆け抜けていった。

 二人が行動を止めて弾丸が飛んできた砲口を見る。黒い巨体には白銀の髪の少女が搭乗している姿、間違いない。

 ドイツの第三世代IS。

 シュヴァルツェア・レーゲン……鈴にとっては昨日見た機体だが、ラウラの様子は少しおかしい。

 

「ふん」

 

 彼女はISを粒子化して両足で地面につくと、右腕に持ったそれを左腕につける。

 間違いなく―――それは決闘盤(デュエルディスク)であった。

 それを装備したラウラがデッキをウエストにつけられたホルダーから出し、セットする。

 

決闘(デュエル)だ!」

 

 ―――ラウラ、お前もか。

 ブルータスに裏切られた気分の静寐はもうどうにでもなれと思いながらなぜだか隠れてみているのがバカバカしくなって出てから背中を壁に預けることにした。

 それからしばらくしてからだ。プラシドがなぜか急いだ様子でやってきて、呆然としていたのは……。

 多分だがどこかで三人がいた話を聞いて心配してきたのだろうけれど、そんな必要は一ミリもない。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 げんなりとしたプラシドがため息をついてラウラと鈴とセシリアを見る。

 なんだか三人して先ほどの決闘(デュエル)の話をしているが、実に微笑ましいと思うプラシドは何度も頭の中で『これで良かったのか?』と疑問を繰り返す。

 微笑ましい。しかしこれではいろいろと不味い。正史から離れすぎて未来が変わりかねない……そうなれば破滅の未来の可能性すらでてきてしまうと、(ホセ)は焦りを感じ始めていた。

 

「あんた良いカードはあるんだから、あとは回数積んで慣れるしかないでしょうね」

 

「そ、そういうものなのか?」

 

 ラウラは自分のデッキを持ったまま小首をかしげる。よもや“あれ”がある前にこんな微笑ましい光景を見れるとは思わなかったと思ってから『あれ』とはなんだったかと悩んだ。

 ―――記憶がとんだ? それとも憶えてなかったか……どういうことだ?

 混乱する彼だったが、彼の中のプラシドはわからんという風にため息をつく。

 

『なんだ、奴らが怪我をしなかったのがそんなに嫌なのか?』

 

 ―――そういうわけじゃないさ……ただ正しい歴史が。

 

『ふん、まぁ俺には関係ないことだ』

 

 ―――関係ないって、お前のせいでもあるんだぞ?

 

『まだなにも起きてるわけじゃないぞ』

 

 そんな風に乱暴に答えると、プラシドはそれ以降彼の言葉に返事をしなくなる。

 どうやら怒らせてしまったようだが、この程度は慣れていた。それでも久しぶりなので若干なりとも驚いたが、すぐに気持ちを切り替えた。

 ここで鈴とセシリアはラウラに一方的に攻撃されて……ラウラはその行為によって叫ぶ一夏を笑う。

 しかしそんなことはここでは無い。ただ単純にラウラと鈴が決闘(デュエル)をして、やはり経験の差やらなやら故にラウラが負けて、なぜ負けたかなんてものをセシリアが教えたり……。

 

「平和だが、違う」

 

 そう、違うのだ。願わくば歴史の修正すら行いたい彼。

 静寐はすでに去っていて、アリーナにいるのは自分を含めた四人。

 

「よお、なにやってるんだ? ってラウラ!?」

 

 一夏と箒とルチアーノが現れて、ラウラを見た一夏が『げぇっ!』と数歩下がって怯む。

 そんな一夏を見て、睨むラウラ・ボーデヴィッヒ。その眼は間違いなく転校してきた日と同じく憎しみを込めた瞳だった。それを見て安心してしまう自分に、なんだか嫌気がさす。

 だが正しいのだ。場に緊張感が奔るが、そこはなんとか自分が止めるしか方法はあるまい。

 

「やめろラウラ」

 

「ならプラシド・イリアステル、決闘だ!」

 

「あらボーデヴィッヒさん、私を倒してからそういう事は言ってくださる?」

 

「ボクもね!」

 

 ルチアーノとセシリアが名乗りを上げるが、ラウラは初心者。セシリアも初心者だがここ数日でかなりの戦いを経験しているのでレベルが違う。

 だからこそ、ラウラは一夏を睨むだけだ。いま行動に移すことはできない。

 このままでは不味いと、プラシドはここで自分が行動を起こす。

 

「ラウラ、一夏との決着なら学年別トーナメントでつけろ……それで構わないだろう?」

 

決闘(デュエル)で勝つことすらできない私には、それしかないか……織斑一夏、絶対に叩き潰してやる。正々堂々とな!」

 

 強行してこないだけありがたいと、プラシドは心の中で安心する。

 ラウラはピリピリとした雰囲気を纏いながら踵を返して去っていくが、思うことはなんだか決闘者(デュエリスト)並に正々堂々としてしまったなと若干なりともやつれそうになる。

 やはり、良いことだとは思っても心の中では『正史』を思ってしまう。ところどころ抜けている記憶だがここは間違いなく違う。

 

「さて、プラシド。私と戦ってもらうわよ!」

 

「フン、貴様如き相手にならん!」

 

「なんですってプラシド! てかあんたあたしに対してちょっと喧嘩売りすぎじゃない!?」

 

「さぁムシケラめ、この俺が機皇帝で踏み潰してやる!」

 

「あたしの真紅眼(レッドアイズ)で吹き飛ばしてやるんだから!」

 

 プラシドと鈴が睨み合う。

 ―――おいプラシド、変われや!

 

『貴様、俺の決闘(デュエル)を邪魔しようと言うのか!!』

 

 心の中で言い合う二人。だから静かにしているプラシドだが、そんなプラシドを置いて話は進んでいく。

 

「プラシドさんと戦う前に私との決着をつけてもらいましょうか、鈴さん?」

 

「いい度胸じゃないの!」

 

 プラシドが黙っている間に、鈴とセシリアは額をぶつけ合いながら話しを続ける。

 しばらくプラシドと話しをしていた彼が意識を覚醒させたときには、すでに目の前に巨大なソリッドビジョンが展開されていた。

 驚きのあまり声も出なかったが、そんなことおかまいなしに一夏が鈴とセシリアの二人を応援して、箒は興味深そうに見ていて、ルチアーノぐらいだ。プラシドを心配していたのは……。

 だが、目の前の戦闘にすぐさまプラシドは魅入っていた。

 

「レッドアイズとレッド・デーモンズ……」

 

 二体の龍が対を成してフィールド上に揃っている姿は圧巻と言えるだろう。

 攻撃力は違えど同じぐらいの迫力はある。

 セシリアと鈴はISスーツのまま戦っているのが、まぁプラシドにとっては目の保養であった。

 鈴のターン、彼女は手札より魔法カードを発動する。

 

「魔法カード『黒炎弾』を発動するわ。私のフィールドの真紅眼の黒竜の元々の攻撃力分のダメージを相手のライフポイントに与えるわ!」

 

 セシリアのライフは残り600で、この2400のダメージが通ればおしまいだ。

 比べて鈴のライフは3600もあるという余裕ぶり。

 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)の口から文字通りの黒い火球が、セシリアへと放たれた。

 だがセシリアは口元にえ身を浮かべて、決闘盤(デュエルディスク)のボタンを押す。

 

「二歩先を行きますわ。リバースカード、オープン! 『クリムゾン・ヘルフレア』!!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンが雄叫びを上げ、その口から灼熱の炎を吐き出した。それは黒炎弾を弾き、さらにその黒い炎も一緒に押し返す。

 驚愕する鈴だが、セシリアは人差し指と腕を伸ばし、真上に上げる。

 

「自分フィールド上にレッド・デーモンズ・ドラゴンが存在するとき、相手のダメージを与える効果を無効化し倍にして返して差し上げますわ!!」

 

「な、なんなのよそのインチキカードは!!」

 

「喰らいなさい、黒竜の炎も共に……灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!」

 

「きゃあぁぁぁっ!!」

 

 爆発。鈴を中心に爆煙が巻き上がり、それによりセシリアは勝ちを確信する。

 いや、すでにライフポイントがゼロになる音が聞こえて勝者はセシリアだと確実だ。

 彼女は人差し指を天に突き上げたまま宣言する。

 

「私のデュエルは常にエンターテイメントでなければいけませんわ!!」

 

 高笑いするセシリア。爆煙は晴れてソリッドビジョンも消えると、鈴は悔しそうな顔でセシリアを睨むのみだ。

 だがそんなセシリアも今だに一夏とプラシドには勝てていないのである。ルチアーノとは戦ってすらいないから微妙だが、今のままでは勝てないだろう。

 

「だぁ~! 負けた負けた負けたぁ! くやしぃぃっ!!」

 

「セシリアに勝つのは並大抵のことじゃないさ」

 

 そう言って鈴の隣に立つのは箒。彼女もセシリアに負けたからこそわかることなのだろう。

 箒と鈴は同時に頷く。

 一夏のダブル幼馴染は見事にセシリアに倒された。

 そして今度こそISの訓練でもと思った途端、アリーナに雪崩のように入ってくる女子生徒たちと、それの先導をするように逃げてくるシャルル。

 

「どうしたシャルル?」

 

 一夏がシャルルの背後の女子生徒たちに若干引き気味に聞くと、わたわたしていて答える暇などないというような感じだ。

 

「どうしたんだみんな?」

 

 彼の疑問ももっともだが、わかっているプラシドは即座に頭の中で状況を整理する。

 

「これ!」

 

「え、なにこれ?」

 

 シャルルと一夏は女子生徒たちが出した学年別トーナメント申請用紙を手に取った。

 書いてある内容を朗読しだす一夏。

 

「今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。直、ペアができなかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締切は……」

 

 そこまで読んで一夏とシャルル、そしてプラシドは猛烈なアタックを受ける。

 

「みんな悪い! 俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

 両手を合わせて謝罪する一夏だが、それにより女子生徒たちはシャルルと一夏から離れてプラシドの周りに集まることとなった。

 残り一人の男子である彼、プラシド・イリアステルは女子と組むことは必須。ならば女子生徒は決して食い下がることなくプラシドへと近寄るのみ。

 ちゃっかりその女子生徒群の中にセシリアとルチアーノが混ざっているが誰もツッコミをいれない。

 

「俺は組みたいやつがいる! よってこれにて散るがいい!」

 

「え~! 誰!?」

 

「すべては大いなる神のみぞ知る。こいT・666!」

 

 プラシドが跳んで、女子生徒たちを抜けて立つ。すると自動運転で走ってきたプラシドのD・ホイールが現れた。

 それにまたがったプラシドはすぐさまその場から去っていく。

 ちなみに今表に出ていたのはプラシド本人ではなく彼であり、プラシドのふりをしただけだ。

 彼は組みたい相手などは居ないが、学年別トーナメントに参加することを特に決めていない。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 自室に戻ったプラシドだが、彼の自室にはなぜか先客が居た。

 

「待っていたぞ」

 

 ―――どうしてこうなった。

 先客とは、ラウラ・ボーデヴィッヒであり……彼女はまっすぐと彼の瞳を見つめながら眼帯を外した。

 オッドアイのその眼で見つめられたプラシドはひるむことなくその眼に魅入るのみ。

 

「私と組め」

 

 そう言って出された申請用紙。

 

「なぜ俺と……」

 

「簡単なことだ。私は織斑一夏と戦わねばならない!!」

 

 そんな言葉に、彼は困っていた。トーナメントに出てみたいとは思うが、正史を再現できない。

 頭を抱えたくなる思いを遮って直、彼はその場で悩み、何も言えずにいた。

 だが何も言わない間はずっとラウラは待っている。

 

『馬鹿馬鹿しい』

 

 ―――どういうことだ?

 

『なにが正しい歴史だ。そもそも未来がまちまちにしかわからないお前が今更そんなことを言ってもすべて無駄。俺は自らが思うように進んできた……運命は己が剣で切り開くのみ!』

 

 ―――……何言ってんだお前。

 

『ふん、ホセもそうだ。計画外のことがあってもそれを含めて破滅の未来を回避できればその先のことを……希望なんてものを求めてやがった。お前はどうなんだよ“ホセ”』

 

 ―――プラシドのくせに偉そうに。

 

 彼はどこかふっきれた様子でその表情に笑みを浮かべるとその用紙に手をかける。

 ラウラは口元に不敵な笑みを浮かべるが、プラシド(ホセ)も同じく笑みを浮かべると……お互いがこの場で用紙にクラスと名前を記入した。

 これによりお互いが組むということを承知して、プラシドとラウラは組むこととなったのだ。

 誰にも教えることもなく。この場で二人だけが交わした契約……この組み合わせを彼や彼女たちが知るのはまだまだ先のことになるだろう。

 

 ―――運命(さだめ)は己が手で切り開くプラシド。

 

 ―――ならば俺は、己が道をその足で疾走するのみ。

 

 

 

 

 

 




あとがき
今回はあれでござるな。決闘描写が多い挙句……決闘描写をところどころ飛ばしているでござる。
まぁISがメインの話しなのでこれで問題はないのでござるが、細かく描写するのもまた面d(げふんげふん
学年別トーナメントをラウラと組むことになったプラシドは一体どうなるのか!
そしてセシリアや鈴、箒やルチアーノは誰と組むのか!?

最近実戦の決闘で始めてハルバート・キャノンを使えて感極まっている作者はどんなテンションで小説を書き進めるのか!?

お楽しみにしていただければまさに僥倖!!
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