機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス 作:王・オブ・王
プラシド・イリアステル。
世界でISを使える男の二人の内の一人だが、それだけでは別に誰も疑問に思わない。いや、織斑一夏に向けている疑問と同じ疑問しか向けないというだけだ……だが、プラシド・イリアステルはまったくどの国にも情報が無いのだ。
報道機関ですらも彼の実態をつかめていない。
どこで生まれたのか、いつ生まれたのか、そしていつから篠ノ之束と共にいたのか……。
どこの国も彼の情報が欲しかった。
「……またですの?」
『はい、プラシド・イリアステルの情報が迅速に欲しいというのが国の要望であります』
深夜、セシリア・オルコットはため息をついて画面の中の女性に視線を向ける。
女性は事務的に、無表情でただありのままの事実を伝えた。セシリアは要望を受ける側であちらは頼む側なのにも関わらず、あちらはあくまでも立場が上ということであり、セシリアが逆らうことはできない。
彼女とて貴族であり、御上の威光には逆らえないのだ。それがわかっているからこそ、今までは国の上の要望は大人しく聞いていたセシリアだが“彼”が関わればさすがに我慢の限界も早い。
「正直言って気に入りませんわ! 上司の方々にお伝えください。私たちはもう同じものを見ていないと!」
『それは命令を背くということですか?』
「いつから命令する立場になったのですか? 私はただ自分の正しいと思ったことのために生きる!」
画面に映る女性は目を伏せる。ただ、愚かと言わんばかりの目を開いてセシリアに向けると、無表情のままに言葉を続ける。
『高貴な家に生まれ、代表候補生となった貴方の宿命です。これは』
「宿命など関係ありませんわ。自分のすべきことは、私自身で決める!」
『これ以上は無駄ですか、では上司にはそう伝えておきます』
通信が切れると、セシリアはその場、寮の屋上にて制服の長い袖をめくる。ISの訓練でもない限り滅多に出ないセシリアの素肌。その白い雪のような肌の右腕には、紅い痣が浮かび上がっていた。
しかしその赤き龍の翼の痣は痛々しいものでもなんでもなく、セシリアもそれが嫌なものだとは思っていない。
なぜか感じていた。それは誇り高きものであり、その痣はいずれ必要になる力であると……。
◇◇◇◇◇◇
その日の朝、寮の食堂で一夏とプラシドの二人は食事を行っていた。珍しく二人だけの光景でセシリアも箒も鈴もルチアーノもシャルルも居ない。この“学園に二人だけの男”同士で朝食である。
やはり男二人でテーブルを囲んでの食事というのは珍しい。テーブルを囲むようになっているソファに座る二人は同じような日本の和食を食していた。
―――やはり朝の和食は良い。
『くそっ、こんなことしてる場合か……学年別トーナメントはもうすぐなんだぞ、イリアステルの三皇帝として負けることは許さん。もちろんルチアーノも簡単に負けやがったら……』
―――あのルチアーノは関係ないだろ。
『機皇帝を使う以上はしっかりと働いてもらう必要はある……それに、機皇帝を倒すというのもやぶさかじゃないしな』
プラシド、いやホセは心の中でなんとなく納得した。かつての未来での機械との戦争、それは機皇帝とまったく同じ機械たちとの戦いであり、そして今では愛着のある相棒。なんと皮肉なことだろうと思いながら、それはそれでプラシドも割り切っているので良いのだろうと思う反面、彼の方がモヤモヤとした気分になってきた。
そんな時、声がかけられ横を見れば目の前に一夏の顔。
「ぬおっ!」
「大丈夫か? ぼうっとしてたってよりなんか悩んでる感じだったけど」
心配するような一夏の顔を離して、フッと笑う。
「いや、大丈夫だ。気にするな」
「気にするなったって……心配もするって」
ちっともドキっとしないプラシドだが、女性がそんな言葉を一夏のような男にかけられればそれはもう惚れてしまうだろう。そんな天然ジゴロのところが数々の女子生徒を虜にしているのかと何度か頷くプラシド。
結局学園内でもプラシド人気より一夏人気の方が高い。プラシドがちょくちょくプラシドになるからなのが問題なのだが、プラシドの中の彼が女子生徒からの好意に気づいていないので直さなくても直しても同じだと思っている。
「ありがとう一夏」
「ははっ、なんかくすぐったいな」
恥ずかしがりながらそう言う一夏が食事を再開するので、プラシドも食事を再開することにした。
あたりから『プラシド×一夏』だとか『プラいち』だのと声が聞こえるが無視する。
―――誰得だ。
『なんの話だ?』
―――気にするな。
そう言うとプラシドは黙るので珍しく素直だな。と思いながらも安心する。そんなことを説明されては確実に胃が痛む。
プラシドことホセは急いで朝食をかき込んで完食すると急いで席を立った。まぁ一夏も急いでついてきたのでまたそこでこそこそと声が聞こえてきて、なんて負の連鎖を繰り返しながらも今日が始まる。
女性ばかりのIS学園に男二人。一夏もだと思うがその倍は疲れている
◇◇◇◇◇◇
『セシリア・オルコットを国に呼び戻すと?』
『彼女はまったく立場というものをわきまえていないように思う。代表候補生として我々の要望は絶対と認識されなくては』
『ならば新たな代表候補生を送り込みますか?』
『いや、代表候補生を一学年に二人も送り込むのはさすがに難しい』
『しかし代表候補生以外ではこちらの要望に応えらえられるか……それにセシリア・オルコットに目をつけられれば並の人間では』
『だからこそ呼び戻したい』
『しかしIS学園にこちらの手を伸ばすのは』
『だからこそ、我々がここにご参加させていただいているというわけです』
『……貴方は』
『さぁ―――ビジネスの話しをしましょうか……この一人の天災に弄ばれた世界にて、我々男が上に立てる数少ないビジネスを……』
◇◇◇◇◇◇
昼休み、IS学園の購買にておもしろいものを発見したプラシドが興味深そうにそれを見ていた。
それを見ていたのはプラシドだけでなく、一夏やセシリアやルチアーノや箒、シャルルや鈴、ラウラもだ。
数々の生徒たちがそれを見て騒いだりしている中、ただ真剣な表情でそれを見ているプラシドと一夏たち。
『学年別
その文字を見た者たちははしゃいだりしているが、ただ静かな
ただ賞品に目を取られただけの生徒たちとは確かに違う雰囲気を放つ数人の生徒たちはまごう事なく強者である。プラシドをはじめとした一夏たち。それに最近はじめたばかりのラウラに鷹月静寐。学園の生徒会のメンバーや教師も何人か……。はしゃぐ生徒たちの中、それらの
『ふん、無論―――』
―――参加だ。
『学年別トーナメント同様、負けることは絶対に許さんぞ……デッキは登録したもの以外は禁止』
―――あぁ、だからこそ今回は俺の力をこの学園に見せつける。
『アクセルシンクロではなく……』
―――機皇帝を出す。我が最強の機皇帝にて蹴散らしてくれる。
彼の口の端がわずかに吊り上がり、強者達はその雰囲気の変わりように気づくと身を引き締めた。『生半可な気持ちで戦えば狩られる』ということを肌で感じた。
そんな中、ラウラは口元に笑みを浮かべる。
「(そうか、私が転校してきた日に織斑一夏にくわえた攻撃を防いだ後の人が変わったような殺気の正体はこれか……能ある鷹は爪を隠す。コトワザという奴も確かに侮れん)」
プラシドから発せられる
そしてセシリアもセシリアでプラシドの変化には気づいている。
今までだってただただ普段のプラシドが優しいだけじゃないことにだって気づいていた。
「(プラシドさん、貴方の本気が見られるというのですね。しかし私にもまだ策がありますわ貴方のシンクロキラーを超える策が……)」
プラシド。いやホセに機皇帝という隠し玉があるように、セシリアにも隠し玉はあるのだ。まだまだ油断はならないと雰囲気で悟ったホセは再び心の中でどこかに忘れたはずの高揚感を取り戻す。
そう、いうなれば『ワクワクを思い出すんだ』と言われたような気分で、ワクワクを思い出した感じだ。
プラシド、ラウラ、セシリアの三人が表情に笑みを浮かべている中、一夏や鈴、シャルルに箒にルチアーノは笑みを浮かべる余裕などなかった。
しかし鈴にもまだ考えはある。
「(ここ一ヶ月もしない内に私の
葛藤する鈴。
「(ボクの
志を胸に闘士を燃やすシャルロット。
「(学年別トーナメントの一夏との約束はおかしなことになってしまったが、この学年別
勝利の褒美のために自らをもう一度見直す箒。
「(変わっていくボクは恐いけど、それでも
内なる自らを恐れながらも
「(みんなすごい気迫だ……俺、勝てるのか? シャルルにもなんとか勝てたけど次も勝てる自信はない。俺はこの大会に出てどうするんだ。いっそのことスターダスト・ドラゴンを抜いて、なんてできるわけもない……くそっ! どうすればいい)」
自らの弱さに苦悩する一夏。彼とて学年ではトップクラスの腕を持つ
だからこそ今ここで、自分は出るべきなのか悩んでいるのだ。どちらにしろ負けるならばでない方が正解なのではないかと……。
一夏は息をついた。
「昼休みの時間無くなっちまいそうだ! みんな、早く行こうぜ!」
そう箒に言うと、彼女は静かに頷く。一夏を先頭に購買から出て行くのは箒、セシリア、鈴、ルチアーノ、シャルル、プラシドといつものメンツだ。
しかし全員静かでどこか考え事をしているという様子だ。おそらく全員“学年別
おそらく目前に控えた学年別トーナメントよりも真剣に考えている。
プラシドたち六人は屋上にて作ってきた弁当や購買で買ったパンなどを食べながら先ほどとは違いわいわいと話しをしていた。
まぁその話しの大体はISのことや
ちなみにセシリアはあの日以来プラシドの言いつけ通り“シンクロ弁当”という悪夢を生み出すことはなかった。最初は大人しく弁当を作ってくるのだがそれが壊滅的に不味いことに気づき現在修行中で今は大人しく購買のパンを食べる。
話をしている中、突然ルチアーノが笑みを浮かべて言う。
「ボクは参加するつもりなんだけど、みんなは
そんな言葉に、全員がわずかに雰囲気を変えた。
嫌な雰囲気ではない。ただ闘志がぶつかり合うだけでなく、好敵手同士であるそれぞれを応援しあうような、そんな暖かな雰囲気ではある。
決闘大会が開かれるからと言って全員が敵なわけではないのだ。全員が仲間かもしれないし敵かもしれない。やはり
「俺は言うまでもないだろう、我が機皇帝の力をもってして全てを蹴散らす」
ニヒルに笑いそう言うプラシド。
「私は参加しますわ。ISでは無理でも
「はん、つい最近はじめた奴が何言ってんのよ……もちろん私も参加するわ。狙うはもちろん優勝よ」
「ボクも参加するよ。いや、参加しないわけにはいかない」
「私も無論参加するつもりだ。今回こそ勝たせてもらう」
笑みを浮かべる面々、だがそんな中、一夏だけが笑みも浮かべずにただうつむいていた。
いつも能天気というか、元気と言える彼がそんな暗い雰囲気をしていて気にならない者はいないだろう。
だからこそ彼の肩をゆするシャルル。それに気づいた一夏が驚いたように顔を上げて、直後に話を整理して空笑いをする。
「あ、あはは、俺は今回は不参加ってことで」
そんなことを言った一夏に、どこか不思議そうな面々だったが……いち早くそれに気づいたセシリアは目を細めた。
「どうしてですの?」
「あっ、えと……ど、どうせやったって勝てないしさ。負けるならやらないほうがマシかなって―――」
直後、セシリアが立ち上がった。食べかけのパンを乱雑にビニール袋の中に入れると全員を見て一礼。
それには『よろしくお願いします』という意味も含まれているのだろうけれど、なによりも雰囲気を悪くしてしまったことに対しての侘だ。しかしそれをしてからもセシリアは抑えきれない感情を無理に抑える気はないといった表情で一夏を睨みつける。
先ほどまでは怒っている様子だったにも関わらず、今はどちらかというより落胆しているような目だ。
「がっかりですわ。貴方を今まで
そんな言葉をかけられた一夏が、自嘲するように笑う。
「そうだな、そうかもな……」
「ッ……なんですその眼は? そんな捨てられた飼い犬のような眼をしているから負けるんですわ! 失礼します!」
そう言って不機嫌そうなセシリアはそこから去っていき、ルチアーノはそんなセシリアのフォローのために足早に去っていく。プラシドは『出来た子』だと思いながらも、この空気をどうにかしないとともう反面。一夏にはいい薬だったと思う。
まさかそんなことを思っていたのだと、思いもしなかった。
だが
―――負けるぐらいならやらないほうがいい。
『なんだ復唱なんかしやがって』
―――ふっ、俺にも覚えがある。
「一夏、少し付き合え」
そう言って一夏の腕を掴むと食事をほったらかしにして一夏を肩に担ぐと、ISを展開して飛び立つ。
驚愕するシャルルと鈴だが、箒がその二人の腕を掴んで止める。彼女にはプラシドが成そうとしていることがなんとなくわかるのだろう。それが一夏を良い意味で先に進めさせるということであるということも……だからこそ二人を止めたのだ。
「あいつに任せておけ」
箒のそんな言葉に、シャルルと鈴は大人しく従う。三人そろっての昼ごはんというなんとも言えぬ光景ではあるが、嫌な雰囲気にもならずにすんだのはおそらくデュエルモンスターズのおかげだ。
とりあえずデッキ構築の話でもしておけば話題は尽きない。
デュエルモンスターズさまさまだと、箒は心の中で何度も頷いた。
アリーナの一つに、プラシドは降り立った。
誰も居ないアリーナにて、プラシドは一夏を下ろして自分もISを解除する。制服姿の一夏とプラシドの視線が交差する。一夏はなぜこんなところに連れてきたのか? と言いたそうな表情だがプラシドは答えることはない。
ただその場にて、プラシドは
「
その言葉に、一夏は踵を返して戻ろうとするがそうはいかない。
「臆病風に吹かれるか一夏、それでは織斑千冬の弟は敵に恐れて逃げる人間だと学園で噂になるな」
「ッ千冬ねえは関係ないだろ!」
「ふっ、ならば
そんな言葉に、一夏は
受け取った一夏だったが、プラシドは手にどこからか出したのか金色の骨のようなものを取り出してつける。そこから緑色の輝くビームのようなものが出現し、腕についているものは
早い話がイリアステルの頃に使っていた本物のプラシドの
「さぁ……」
―――
◇◇◇◇◇◇
五分ほどしただろうか、ただそれだけの時間で様々な出来事はおきていた。
ライフポイントは変動し、一夏のライフポイントは2300ポイント、プラシドは1800だ。
一夏の手札は二枚でプラシドの手札は三枚。一夏のフィールドには攻撃表示の『スカー・ウォリアー』とセットされたモンスターが一枚とセットされた魔法罠カードが一枚で、プラシドのフィールドにはセットされた魔法罠カードが二枚だ。
プラシドのターンが開始されドロー、メインフェイズへと移る。
「このカードは相手フィールド上のみにモンスターがいるとき特殊召喚できる! 現れろ、TGストライカー!」
その言葉と共に、プラシドのフィールドに青い装甲をまとった戦士が召喚される。攻撃力はスカー・ウォリアーの足元にも及ばず、挙句スカー・ウォリアーは戦闘で一度だけ破壊されない効果を持っている。
だがそれでも勝利を諦めることはないプラシドに一夏は気持ちで負けていた。
「レベル4以下のモンスターの特殊召喚に成功したとき、このモンスターは特殊召喚できる。現れろ、TGワーウルフ!」
現れる機械チックな狼男。プラシドのフィールドに召喚された二体のモンスター。
レベル3のTGワーウルフとレベル2チューナーのTGストライカーの二体が揃っている時点で次に何が起こるかなんてことは一夏にはわかる。
「レベル3のTGワーウルフに、レベル2のTGストライカーをチューニング!」
やはり来たかと、身構える一夏。フィールド上のスカー・ウォリアーは一度だけ破壊されないが、プラシドであればこのターンで破壊してくるはずと、予感がしていた。
光り輝く光景を見ながらも、一夏は手札とフィールドのカードをもう一度確認する。負けたくないという気持ちが先立って焦りが発汗量を増やす。
「(けど、勝てるのか……俺に……)」
プラシドに勝ったことは一度もない。ならば同じだまた負ける。
「リミッター解放レベル5、レギュレーターオープン、スラスターウォームアップ、OK! アップリンク、オールクリアー! GO! シンクロ召喚!カモン! TG ハイパー・ライブラリアン!!」
前口上と共に、現れるのは真っ白な服を着たモンスター。レベルは5で攻撃力は2400というそこそこのモンスター。だが今の一夏のフィールドにいるスカー・ウォリアーの攻撃力は越えた。
攻撃力はスカー・ウォリアーを超えている。
それだけでこの戦況は充分だが、まだだ―――プラシドはまだ召喚権を行使していない。
「さらに私はリバースカード、TGX3―DX2を発動!」
プラシドの発動した罠カードはTG専用のカードである。墓地のTGと名のついたモンスター三体をデッキに戻し、シャッフルした後に二枚をドロー。戻すのは前のターンに倒したTGラッシュ・ライノとたった今シンクロに使ったストライカーとワー・ウルフ。
ここに来てドローアドバンテージを得るカードを使ったプラシドの顔に、わずかな笑みが浮かんだ。
それを見て一夏は身構える。
「私は手札から、TGサイバー・マジシャンを召喚!」
ここにて召喚権を使ってモンスターを召喚、レベル1のチューナーモンスター。
「このモンスターは手札のTGと名のつくシンクロモンスターを召喚する際に手札のモンスターで代用できる! 手札のTGラッシュ・ライノに、TG サイバー・マジシャンをチューニング!」
再びのチューニングに、一夏はゴクリと生唾を飲む。この確実に勝っている戦況で、なぜか一夏は焦らされていた。
そして心の奥底で、相手の逆転すら楽しみに、嬉しく思える自分がいた。負けるならばやりたくないとまで思っていた一夏は、今プラシドの戦い方を楽しみにしている。
「リミッター開放レベル5、ブースターランチOK、インクリネイションOK、グランドサポート、オールクリア GO! シンクロ召喚! カモン! TG ワンダー・マジシャン!!」
現れるのは可愛らしい魔法使いのTG。攻撃力は1900と低い。
TGハイパー・ライブラリアンの効果によりプラシドは一枚ドロー。
「ワンダー・マジシャンの効果発動! 召喚時に相手フィールド上の魔法、罠カードを一枚破壊することができる。私が選択するのはそのカードだ!」
破壊された一夏のカードは罠カード『スキル・サクセサー』であり、そのカードは自分フィールド上のモンスター一体の攻撃力を400上げることができる。
これによって、スカー・ウォリアーを守るはずだった一夏の計画はこれで狂うが、まだスカー・ウォリアーを破壊できるわけではない。
「私は手札より、永続魔法『TGX300』を発動。このカードが存在する限り、自分フィールド上にいるTGと名のついたモンスター一体につき自分フィールドに存在するモンスターの攻撃力は300ポイントアップする!」
自分フィールド上のTGと名のつくモンスターは二体。つまりは二体のモンスターは600ポイント攻撃力が上がる。
TGハイパー・ライブラリアンの攻撃力は3000になりTGワンダー・マジシャンの攻撃力は2500だ。
スカー・ウォリアーでは足元にもおよばない。
「バトルフェイズ、ハイパー・ライブラリアンでスカー・ウォリアーを攻撃! マシンナイズ・ソーサリー!」
放たれた攻撃がスカー・ウォリアーに直撃する。
「スカー・ウォリアーは攻撃によって一度だけ破壊されない!」
「だがダメージは受けてもらう!」
一夏の体を擬似的な衝撃が襲う。ライフポイントが攻撃力の差、900ポイント削られる。
ライフポイント4000のルールが主流であるこの世界では大きなダメージだ。
まだ残っているスカー・ウォリアーの前に現れるのはワンダー・マジシャン。
「いけ! スカー・ウォリアーを破壊しろ!」
ワンダー・マジシャンの拳がスカーウォリアーを貫き、今度こそ破壊する。衝撃に膝をつく一夏が、目の前の現実を直視する。
負ける。負ける―――心の中でその言葉だけがループして駆け抜ける。なのに、あれだけ嫌だった負けているという現状が今は楽しくて仕方がない。
プラシドの残りライフは変動も無くあと1800で、一夏は2300から1300引かれて1000ポイント。
「ようやく思い出したようだな一夏……リバースカードを一枚伏せて、ターンエンドだ!」
その宣言と共に、一夏は立ち上がり眼前のプラシドを見る。
一夏の表情には笑みが浮かんでいて、その笑みはいつも浮かべるものと違い目の前の闘争を楽しまんとする
彼の眼を見てプラシドも笑みを浮かべる。
一夏は自らの目を閉じてデッキの上に手を置く。
「俺の……ターンッ!!」
引き抜かれるカード。そして一夏は目を開いて、笑みを浮かべた。
「俺はデブリ・ドラゴンを攻撃表示で召喚!」
真っ白な、どこかスターダスト・ドラゴンに似た容姿のモンスターが現れる。
レベル4の攻撃力1000、守備力2000のモンスターを攻撃表示。しかしそれに意味がないわけではない。
「デブリ・ドラゴンの効果発動。このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚することができる。来い! デコイ・ドラゴン」
現れるのはレベル2の攻撃力300を持つドラゴン族モンスター。攻撃対象にされた時墓地のレベル8以上のモンスターを特殊召喚するという強力な効果を持つ。
「デブリ・ドラゴンの効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される」
「ここにきてそのカードを引き当てたか!」
プラシドの声に笑みで答える一夏は、まだ終わっていないとばかりに宣言する。
「俺はセットされたモンスターを反転召喚、チューニング・サポーター!」
レベル1のチューニング・サポーターが召喚され、合計レベルは通常であれば7だ。
「チューニング・サポーターは効果によりシンクロ素材とする場合レベル2として扱う事ができる」
そしてこれで、合計レベルは8となる。
「レベル2のチューニング・サポータとデコイ・ドラゴンに、レベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング!」
上空へと舞い上がる三体のモンスター。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!」
現れるのは白銀の
一夏の楽しむような表情に呼応するように叫びを上げる竜は今その場に降り立った。
そしてプラシドは見逃すことはない。
一夏の腕に輝く紅き龍の尻尾の痣を……。
あとがき
始めて思いっきり決闘で切ったでござるな! 次回はこの決闘の続きになるでござる。
いやもぉ、決闘は書くのが本当に疲れるでござる。映像じゃないから余計に(汗
今回はこの後の話でメインキャラとなる一夏とセシリアとラウラへの伏線を立てたでござるよ。決闘大会とか開いちゃってこの学園って、ほんと決闘馬鹿。
とりあえず次回は決闘の決着と一夏がシグナーとわかったプラシドの話でござる。
もう原作はだいぶドボドボになってきているでござるが、みんなついてこれてるでござるか!?
では、次回もお楽しみにしていただけたらまさに僥倖で候!!