機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第一話 登場! スーパーエリート候補生

 さて、どうしたものか……二限目が終わってそうそうだが織斑一夏と俺から女子生徒たちが離れていく。

 こんな行為も二度目だが、たしかこれは女子生徒たちにより一夏争奪戦の問題だったはずだ。

 誰かが抜け駆けすることも許されないからこそ、お互い様子を見ていたはずなのだが、一限目の後にポニーテールの少女こと、篠ノ之箒は一夏を連れて密会に行ってしまった。

 束の妹だなぁ……強引なところはそっくりだ。

 

『篠ノ之束の妹だと? 全然似ていないな、あの騒々しい女とは大違いだ』

 

 まぁ中の人から見ればそうなるだろうなぁ。

 

「なぁ!」

 

 ハッ、と意識を外側に向けると……目の前には織斑一夏の顔があった。

 驚き少し後ろに下がった俺は、愛想笑いを浮かべることもない。

 

「知ってるとは思うけど自己紹介しとくな、俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれよ。よろしくな」

 

 軽く右手を差し出してくる織斑一夏に、俺も右手を出してその握手に応じる。

 ここで、というよりコイツと敵対しても良いことなんてなんにもない。むしろアイツ、篠ノ之束に文句を言われる可能性だってある。

 

「俺はプラシドって呼んでくれ」

 

「たった二人の男なわけだしさ、仲良くしてくれよ」

 

 なんて嬉しそうな顔で言うんだコイツは、世界的に重要な人物という自覚がないのだろうな、警戒する色なんてまったく見せやしない。

 IS学園で、俺という者を除けばたった一人の男ということでただでさえモテるコイツの遺伝子目当てで近づいてくるかもしれない奴だっているかもしれないのに、まったくそんなこと考えていないという様子だ。

 

『とんだ甘ちゃんだな、おい……コイツに守る価値なんてあるのか?』

 

 俺と“一緒になって”六年、これでもプラシドは丸くなった方である。

 かつてなら一夏がこんなんであれば迷いなく『斬るぞ! こいつには覚悟がたりん!』ぐらい言っていただろう。

 ―――守らなきゃいけないだろ、俺とお前は生き残ってもしょうがないし……。

 

『フン、ならばそいつを守るのは好きにしろ、俺はなにもせんぞ』

 

 あらやだツンデレ。なんて言ったら殺されるので黙っておくとしましょう、俺ったら賢明。

 

「良ければISのこととかも教えてくれよ」

 

「ああ、伊達に篠ノ之束の元にいなかったことを見せてやろう」

 

 そう言うと、一夏は屈託なく笑う。

 しかして少し離れたところから鋭い視線を感じた。

 間違いなくそれは篠ノ之箒からのもので、俺が一瞬だけそちらに視線をやると急いでそらす。

 

「ところでその剣って……」

 

 目の前の一夏に視線を戻すと、俺の剣をガン見している。

 そんなに気になるのだろうか?

 

『俺の“剣”を簡単に見せびらかすなよ』

 

 ―――わかってるっての。

 それでも、どうせなら教えておいても損は無い。と思ったそんな時、長い金髪を揺らした少女が近くへと寄ってくる。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 俺はそちらを向く。

 その少女は、俺だけに話しかけているわけではなく俺の前方の席で俺へと向きを変えて剣をガン見する一夏にも話しかけているようだ。

 声をかけられてそちらを向く一夏だが……そんなにこの剣が気になるのか?

 

「へ?」

 

「聞いてます? お返事は?」

 

 聞いているのは明白だろうに……。

 

「あ、ああ聞いてるけど、どういう用件だ?」

 

「まあ! なんですの、そのお返事、わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 あぁ、イギリス代表セシリア・オルコット。

 俺は“今現在”のこの女は嫌いだ……なんだか物言いがいちいち鼻につくし、男を見下しているし、そもそも性格が嫌いだ。

 すぐにでもその態度を“改める”のだからそこまで嫌いではないが、今のこの高飛車な態度はいかがかと思う。

 

『なんだこの女は!』

 

 ―――まったくの同意だよプラシド。

 その高飛車な態度に普通の表情の一夏。

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし」

 

 まぁそうだろうな、いちいち他人の名前を覚えていられないだろう。

 ただでさえ一夏はISのことを覚えなければならんのだ。それぐらい当然である。

 

「私を知らないっ!? このセシリア・オルコットを!? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

『いちいちやかましい小娘だ』

 

 まったくの同意だが、表に出てるのが俺で本当に良かったと思う。

 プラシドなら剣を抜いて脅すぐらいはしていたことだろう、間違いない。

 だって下っ端だもん。

 

『貴様ァ!』

 

 ヤベっ、ついうっかり洩らしちまった。

 プラシドとの会話はこういうところが厄介である。

 自分で考えることとプラシドに伝えることをついつい間違えてしまったり……面倒だ。

 

「あ、質問いいか?」

 

 一夏が手を出して静止をかける。

 止まったセシリア・オルコットは笑みを浮かべた。

 

「フン、下々の者の要求に答えるのも貴族の努めですわ。よろしくてよ!」

 

 高飛車! ってな態度で言うセシリア・オルコットだが、このあとの展開を知っている俺としては笑いをこらえるのに一苦労だ。

 まったく、織斑一夏のような男が世界初の男性IS乗りになったというのが不運なのか幸運なのか……。

 真剣な表情で、一夏は口を開いた。

 

「代表候補生って……なに?」

 

 コントさながら、周囲の女子生徒は見事にこける。

 新喜劇に出れること間違いなしのこけっぷりだな。

 

『ば、バカの世界チャンピオン……』

 

 今回もプラシドに同意しよう。

 ただ純粋な意味でのバカである。

 勉強すればついてこられるようになるだろうし、俺がゆっくりと教えていくとしよう。

 一夏を指差して呆れたような態度をとるセシリア・オルコット。

 

「信じられませんわ! 日本の男性というのはこれほど知識に乏しいものなのかしら、常識ですわよ。常識!」

 

 最後の『常識』を強調して言ったのはそれほど物をしらないことに呆れたのだろうけれど……別にそれほど問題ないと俺は思う。

 結局、男子高校生なんてISをいくら知ってようが意味はない。

 もちろん工学が好きな奴は知っていて当然かもしれないが、日本の政治に関わるわけでもなくつい最近まで中学生をやっていた一夏が知らなくても……そんないうほどではない。

 何事も自分の物差しで図るものではない。

 

 とりあえずセシリア・オルコットが説明をするが……一夏はどれだけすごいかいまいちわかっていないようだ。

 まぁ当然っちゃ当然だ。

 

『小娘がエリート、エリートと……』

 

―――ちょっとプラシドご立腹?

 

『当然だ。代表候補生が……候補生風情が、分をわきまえろッ!』

 

 ちょっとどころじゃなく盛大にご立腹だったようだ。

 まったく、いまいち沸点がわからない人だが今回はまぁ怒るのも当然か……候補生が強いと思いすぎるのも問題ありだな。

 たしかにエリートとしての自覚はある分に問題はないが、誰かを導くということがエリートの務めだともわかっていないようでは才能の持ち腐れだ。

 

「あぁ、そりゃラッキーだ」

 

 つい最近まで大してISのことを知らなかった一夏にとってはどれだけのものかわかっていないのだろう。

 まぁ確かに俺だって代表候補生と同じクラスになったからといって浮かれることは何もないのだがな、そりゃそうだ。他人だしな。

 

「馬鹿にしていますの?」

 

 その言い方じゃそうなるだろう。

 喧嘩を売るようなものだ。

 天然でこうするからこまるこんなバカは世界に二人といらない。

 

『ふん、馬鹿な小娘だ。鳥籠の中の鳥とも知らずに』

 

 天然で誰かを苛立たせるバカがもう一人居た。いらない。

 

「お前が幸運だって言ったんじゃないか」

 

 あっけからんと言う表情でそうのべた一夏。

 あ~オルコットさんものっそいイライラしていらっしゃるよ一夏君? 

 まぁ……あとはお前好きにしてくれ、俺はこの件には関わらないでいたい。

 

「大体、何も知らないくせによくこの学園に入れましたわね。唯一男でISを操縦できると聞いていましたけれど、期待はずれですわね」

 

 一夏の表情がわずかに歪む。

 それはどこか落ち込むような感じだが、どこか面倒くさいと言うのも読み取れる表情で……お気の毒に……。

 

「俺になにかを期待されても、困るんだが」

 

 そりゃそうだ。

 また偉そうに御高説を始めるエリート様だが……おっと俺まで喧嘩腰になってどうする。

 俺はクールでいよう。

 

『なぜなにも言わん織斑一夏、貴様それでも!』

 

 あぁうるさいよプラシド、こんなんでも“いざという時”すごく役に立つしカッコイイから困る。

 入試の時、教官を倒したとか倒してないとかいう話になっているが……。

 まぁ教官の度合いにもよるが“俺たち”なら倒せないなんてことはないだろう。

 

「あ、貴方も教官を倒したって言うの!?」

 

「やかましいぞ金色ドリル!」

 

 ―――プラシドォォォォッ!!

 

『黙れ!』

 

 今、俺はプラシドでは無い。

 俺の体を使っているのは間違いなく先ほどまで“中の人”だった正真正銘のプラシドだ。

 無理矢理、俺の精神を押しのけて体のコントロールを奪うとは、怒り浸透だったのだろう。

 教室はシーンとなっている。……まぁ当然だな。

 

「あ……貴方っ、今なんと!!」

 

 そんな時、助け舟が時の女神から出された。

 チャイムの音が鳴り響き、エリート様は舌打ちを鳴らす。

 

「話の続きはまた改めて、よろしいですわね!」

 

 俺たち二人を睨みつけてから去っていくオルコット。

 プラシド曰く金髪ドリル。

 そんなドングリピエロみたいなノリで言わんでも……とは思うがイライラしているようなので黙っている。

 

『ふん、あとは好きにしろ』

 

 ―――プラシドさんそんな殺生な!

 と言っても返事はくることはない。

 まったくもう、この注目はどうしろというんだ。

 

「す、すみませんでした」

 

 俺は大人しく席につく。

 

「どうしたんだプラシド?」

 

「いや……友達に絡まれるのは嬉しくないからな」

 

 誤魔化すためにそう言うと、一夏は嬉しそうに笑っている。

 まったくもって、確実に俺の雰囲気が違うことに気づかないのだろうか?

 まぁ、楽で助かるにこしたことはないがな……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 一日の授業が終わり、俺と織斑一夏は寮への道を歩いていた。

 背後から付いてくる沢山の一夏目当て女子生徒たち。

 溜息をつく一夏。

 

「初日からこれじゃ、先が思いやられるよな?」

 

「まったくだ」

 

 頷くのは俺、中のプラシドは……今は出てこないようだ。

 

「そう言えば寮の部屋別々だったな、男同士だから一緒だと思ったんだけど」

 

 そんなわけがないだろう俺から願い下げである。

 一夏と同じ部屋なんかになったら何度、篠ノ之箒“たち”の無断入室をされるかわからないからな。

 俺は一人でのんびり……だと信じたい。

 二人して部屋番号を見るが、それほど離れた数字ではないのがわかる。

 とりあえず今日はゆっくりしたい……というのが俺の心情だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 部屋へとやってきて、入る。

 無論その部屋は俺の一人部屋であり、篠ノ之束が用意した俺用の部屋。

 プラシドの体である俺は一人部屋を余儀なくされるが、プラシドの体だとなぜ一人部屋でなければならないのかはまだ言う皆に説明する段階ではないだろう。

 部屋は他の両室とほぼ変わり無いが、ベッドが一つ無いのと一つだけ別の部屋があるのが決定的に違う箇所だ。

 

「さて、これでゆっくりできるな」

 

 カバンを置いて、設置されている勉強机の椅子を出して腰掛ける。

 

『フン、なぜ俺が学生など……』

 

「良かったな、お前の時代じゃできなかっただろう?」

 

 そんな言葉をつぶやくと、俺の中のプラシドは小さく鼻をならした。

 まぁ、悪くないって感じか、プラシドはこういうところがあるが基本的には良いやつだ。

 生理的に合わない以外は仲間思いでもあるし……高校生なんてやるのは初めてだろう。

 俺もこういう高校生に関してははじめてだが、二人でやってけたら嬉しい。

 

『ええい、ISなどより早く俺にDホイールで戦わせろ!』

 

「無理だろ、外出可能な日になったらいくらでも変わっていやるから抑えててくれ」

 

『ふん、ならばその間はISでストレス解消させてもらう』

 

「頼むから変なことはしないでくれよ?」

 

 そんな風に頼んでみるが、きっとノリに乗ったら俺の頼みなんて聞くことはないのだろうと察する。

 六年も一緒に生きてきたのだからそんなこと簡単に予測可能だ。

 まったく厄介な相棒である。

 かつてのプラシドの仲間曰く『やること全てが裏目にでる』というのはあまりに恐ろしい言葉だ。

 どうかこの世界では上手くいきますように……。

 

 願いながら、俺は篠ノ之束へとメールを送った。

 とりあえず定期連絡、のようなものだ。

 あのシスコンにも困ったものである。

 さて、あいにく腹は減っていないことだし、晩ご飯は面倒だ。

 

 俺は制服を脱いで寝巻きへと着替えるとすぐにベッドに入り眠りについた。

 

 明日、波乱が起きるとも知らずに、気楽に寝てしまう。

 

 

 




あとがき

はい、一話、サブタイトルはルチアーノがデュエルアカデミアに転入してくるときのものでござる。
とりあえずセシリアに因縁をつけられましたのでこれにて下準備完了でござる!
よって次回は……お楽しみにということでこれにて!

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