機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第十九話 大会開始! 空を舞う機皇帝スキエル∞!

 アリーナにて、一夏とシャルルの二人が、ルチアーノと箒の二人と睨み合う。練習だって一緒にしたししょっちゅう一緒にいるメンツではあるが、今は別だ。

 真剣な戦い。まだ開始の合図は鳴らされていないが、すでに戦いは始まっているのだ。

 仲間だからこそ、友達だからこそここで手を抜くわけにはいかない。

 しかし個人の真剣勝負に水を差すほどルチアーノは無粋でもない、彼女は箒を前衛に出して自分は後衛に、シャルルの相手に徹することにした。

 箒が量産型ISである打鉄にて、武装である刀を構える。

 

「フッ、一夏……こんな形で戦うことになるとはな」

 

「剣道じゃ勝てないけど、ISなら俺に分がある!」

 

 幼馴染であり、剣道でも箒に一本も取れていない一夏としてはリベンジの機会といったところだろう。

 だが、一夏の背後のシャルルが目を細める。

 

「それにこれはチーム戦だよ!」

 

「ヒャハハハハッ! じゃあこっちが余計に有利じゃん!」

 

 箒の背後にいるルチアーノが笑い出すが、一夏とシャルルは黙って冷や汗を流す。ISバトルでのルチアーノはまったくもって性格も違えば考える戦略も違う。

 なによりも好戦的であり、単純に強い。一筋縄で勝てるはずもなく。また箒も一般の打鉄を使ったIS乗りよりよほど強い。さすがに専用機で中遠距離のシャルルでは時間稼ぎぐらいにしかならないものの、一夏相手ならばそこそこはやれるだろう。

 あとはルチアーノがシャルルをどう倒すか、である。

 

 観客席にはセシリアと鈴が、そして観客席の階段に立っているプラシドとラウラ。

 

 開始まであと5秒。カウントが始まり一秒、また一秒と時間が過ぎていく。

 

『たたっ斬る!』

 

 一夏と箒の言葉が同時に放たれて、カウントは0。ブザーが鳴り響くと同時に一夏は雪片二型を展開して飛び出す。

 箒も一度だけ刀を振るうとその場で両足をそろえて止まる。風を読むように冷静でいて静か……。

 

「開幕直後に先制攻撃……わかりやすいな!」

 

 言葉を放つと同時に、近づいてきた一夏の突き出される雪片弐型は箒の刀によっていなされる。

 それにより体勢を崩した一夏を横目に見て、箒は刀を一夏に振った。一夏の顔面に吸い込まれていく刀だったが、瞬間―――現れたシャルルが両手に持ったサブマシンガンを乱射する。

 

「くっ!」

 

 それを見て打鉄を後退させる箒。

 

「ルチアーノ!」

 

「言われなくたって!」

 

 上空から聞こえた声に、一夏とシャルルは同時に顔を上げる。上空に滞空しているルチアーノが両手で胸の中央にキャノンを持っていた。いつもの比じゃない大きさのそれはその威力の高さがわかる。

 一夏が後退していき、シャルルも後退しながらサブマシンガンを乱射した。しかしその弾丸の射線上に現れた箒が弾丸を刀で切り裂く。そのような芸当ができるのは彼女がその道のプロだから、だろう。

 焦りを覚えたのか、一夏が上空に飛び上がるが、すでに遅い。

 

「リミッター解除! いけぇ、スキエル・A5キャノン!」

 

 放たれる巨大な粒子砲。一般的にはビームとすら呼ばれるそれを一夏が瞬間加速(イグニッション・ブースト)を発動して、上に避けた。

 だが一夏の頭の中には疑問ばかりが駆け巡る。

 

 ―――これだけのために? いや、違う!

 

 そう思った時にはすでに遅い。ビームが消えればその真下から現れる箒が、白式の足を掴んで最大出力で真下へと投げる。

 量産型のISと言えどそれほどのことは可能だ。中々の速度で落ちていく白式だがすぐに体勢を整える。その時にはすでにシャルルがルチアーノの方へと飛んでいる。一夏は当初のシャルルとの作戦通り箒を落とすことに集中することにした。

 

 空中にて、シャルルはルチアーノに上空から真下のルチアーノにサブマシンガンと、グレネードを装備したライフルを撃ち続ける。

 だがルチアーノも尻尾部分であるスキエルG(ガード)を使って攻撃を防ぎながら、真下へと降りながら避けていく。

 ルチアーノは地上スレスレのところで急停止と同時に急加速で地上をホバー移動する。そんなルチアーノを追うシャルルも同じく地上をホバー以上しながら射撃を繰り返す。

 グレネードなどは避けれるものの、マシンガンはさすがに尻尾でふせぐしかない。

 

「逃げるだけじゃボクに勝てないし、箒も勝てるはずがないしね!」

 

「ヒャァハハッ! お前なんかにゃやられるわけにはいかないよ。ボクはプラシドをぶっ潰さないと気がすまないからね!」

 

 振り返ったルチアーノが、先ほど使ったスキエルA5を投げつけるが、シャルルはサブマシンガンを放り投げて盾を出すとスキエルA5を吹き飛ばそうとする。

 だが、その瞬間―――ルチアーノの顔に笑みが浮かんだ。眼帯で隠れていない方の片目がギラリと光る。

 

「ツイン・ボルテックス!」

 

 そんな言葉と共に、スキエルA5が爆発し、同時に強い電気が奔りシャルルへと攻撃を行う。

 

「うあぁぁっ!」

 

 電撃での攻撃に、シャルルは声を上げてISのバランスを崩し、地面に倒れる。そんなシャルルに近づくルチアーノが左腕を振るうと、その左腕にはスキエルAが装備される。

 その銃口がシャルルに向けられると、銃口に少しづつエネルギーが集まっていく。

 

「ぐっ……ぼ、ボクは……」

 

 辛そうにしながらも、シャルルが起き上がろうとするが、体がシビれる感覚が今だに残っているのか立ち上がることも困難だ。

 だからこそルチアーノは油断していたのだろう。突如、横から飛んできた巨大なそれごとルチアーノは吹き飛んでアリーナの地面を転がる。

 飛んできたのは箒と打鉄であり、シャルルの方を見れば箒を吹き飛ばしたであろう本人である一夏が立っていた。

 

「一夏お前ぇっ! って箒邪魔だよ、重いなぁ!」

 

「なっ! 重いだと!? 私のどこが重い!?」

 

「胸だよこのおっぱい馬鹿!」

 

 そう言って箒を蹴り飛ばしたルチアーノがすぐに立ち上がり、翼をはためかせる。起き上がった箒は刀を構えた。

 シャルルも頭を押さえながら起き上がると、すぐに両手にライフルを出現させて撃つ。

 そうするも箒はルチアーノの前に立って弾丸を切り裂く。飛び上がるルチアーノが左腕のキャノンをシャルルへと撃つがそのビームも一夏の雪片二型に切り裂かれるのみだ。

 

「ちっ、面倒だなぁ!」

 

「そりゃ結構!」

 

 一夏がルチアーノへと近づき剣を振るうと今回は当たった。空中にて吹き飛びそうな体勢を整えると、ルチアーノは目を細める。

 

「スキエルA4!」

 

 そんな声と共にルチアーノの両手の装甲が一度消えて、再び現れるのは二つの銃口。両手を一夏に向けるということは必然的に銃口を一夏に向けることになる。

 

「やべっ!」

 

 一夏が気づくがもう遅い。ルチアーノは顔に笑みを浮かべて両手の銃口からマシンガンのようにビームを撃つ。

 連続して放たれるマシンガンのようなビームが一夏へと向かい―――爆発が起きて爆風が起きる。

 

「ヒィヤッハハハハッ! ばぁ~か!」

 

「ルチアーノ!」

 

「ん?」

 

 箒の声に、ルチアーノはそちらを見る。見れば、すでに箒のエネルギーは0になっていて、シャルルはどこにもいない。

 それに気づいた時にはすでに遅い。煙が晴れて、その中から現れたのは一夏。ルチアーノがスキエルGを使って『零落白夜』を防ぐが、尻尾は切り裂かれてルチアーノのISには大きなダメージが与えられた。

 

「このぉっ!」

 

 驚愕するルチアーノだったが、すぐに両手のスキエルA4を一夏へと掃射する。しかしそれでも一夏を退けただけだ。まだ一夏への攻撃を防いだ張本人であろうシャルルがどこにもいない。

 

「ボクはここだよ!」

 

「っ!?」

 

 ルチアーノが上空に目を向ければ、太陽の光に目がくらまされた。しかしその瞬間、太陽を背にしていたシャルルが上空から突っ込んでくる。

 両腕のスキエルA4を撃つルチアーノだが、シャルルの右腕にシールドを構えて攻撃を防ぎながらルチアーノへと突撃し、そのまま地面へと叩きつける。

 ルチアーノが下、シャルルが上のまま地面へとぶつかるとシャルルのシールドの装甲は吹き飛び、そのシールドは真の姿を現す。

 

「パイルバンカー!?」

 

「もらったぁ!」

 

 叫びと共に、放たれるパイルバンカー。その攻撃は装甲が薄く、一夏の攻撃を受けているスキエルには致命傷だった。

 激しい衝撃と音と共に、シールドエネルギーが0になり、ルチアーノと箒のチームの負けとなる。だがシャルルと一夏もただではすまない。本当は優勝候補であるラウラ・プラシド、または鈴とセシリア戦に使おうという話になっていた隠し玉、パイルバンカーを使わされた。

 まだ使っていない手はあるものの、それだけ箒とルチアーノのコンビネーションなどが強かったということだろう。

 

「後半のあれがなかったら、ここに立ってたのはどっちになってたやら……」

 

 息を途切れさせながら言うシャルル。起き上がったルチアーノは悔しそうにしている。

 箒の方は一夏に支えられているようで、少しばかり嬉しそうにも見えた。

 

「こんなの、こんなのボクは認めないぞぉっ!」

 

 そう言うとルチアーノは先に出て行く。大きな会場で巻き起こる拍手を浴びながら、一夏、シャルル、箒の三人もまたその場を去った。

 専用機持ちの一戦目はやはりというべきか、凄まじいものとなった。そして篠ノ之箒はやはり篠ノ之束の妹ということかと驚愕されている。ISの扱いは専用機持ちほどではないにしろ凄まじいものだった。

 さらに、ルチアーノという謎の専用機持ちもそうだ。彼女も凄まじい戦闘力だった。目をつけられたのは間違いないだろう。

 

 

 

 観客席にて、ラウラとプラシドが戦いの一部始終を見たが黙っている。

 その二人はやはり目立っているようであたりから注目もされているし、気にもされているようだ。プラシドと違いラウラの方が表情は豊かで、パイルバンカーの時は結構驚いた表情を見せていた。

 それに比べるとプラシドは最初から“知っていた”ような表情でただ戦いを見ているのみて、どちらかというと一夏やシャルルや箒よりもルチアーノを気にして見ていたように思える。

 

「あの盾殺し(シールド・ピアース)は侮れないな、当たればただではすまないだろうし……今見れて“良かった”と言うべきか……遊びのくせによくやる」

 

 プラシドの横でつぶやくラウラだが、特にその言葉を否定することもないプラシド。

 彼らは人殺しの兵器を扱っているという自覚がイマイチ足りない。それを当然と思わないこともない。実際このIS学園という場所で楽しく訓練をしていれば自覚を持てるはずもない。

 横にいるラウラは命を賭けた場所に立っていたのだ。今まで実銃だって何度も撃ったことだってあるだろう。ISとは手に持つその銃が“変わっただけ”にすぎないのだから、自覚はもちろんある。

 しかし、今まで居た場所とここを一緒にするのは少し違うのだ。

 

「さて、準備をするとしようラウラ」

 

「ああ、お前とならばやれるさ」

 

 そう言うラウラは、しっかりとプラシドを信頼しているという表情であり、それはプラシド以外の誰にも向けない表情だ。

 教官であった織斑千冬には敬意の念を持って接していた。部下には威厳を持って接していた。だが、同格の相手というのをここに来て始めて得た。それをラウラ自身、自覚はしていないがそうなっている。

 それはおそらくISを兵器と意識して扱うプラシドと感じ方が似ていたことも理由の一つで、ラウラの知る“ISをファッションか何か”だと思っている人間たちの一人ではないからだ。

 共に戦うに、ISでの戦いで背中を任せられる相手というのを、このIS学園にて手に入れたラウラは静かに踵を返し、プラシドと共にその場を去っていった。

 

 

 

 プラシドとラウラが居た場所から、少し離れた場所にてセシリアと鈴の二人が試合の一部始終を見てゴクリと喉を鳴らした。あのクラスのコンビネーションを、プラシドとラウラに勝っても喰らうわけであり、それを思えば今更ながら焦りを覚える。

 代表候補生二人だから多少は楽だろうと言う感覚を持っていた自分たちが今更ながら愚かに思う。だがコンビネーションだってしっかり磨いたはずだと、セシリアは頷く。

 

「やるわよセシリア」

 

「ええ鈴さん、やるからには勝ちますわ!」

 

 笑い合う二人、最近は二人でいることが多い。

 一組と二組の合同実習では大抵組むことになる二人。遠距離と中、近距離という二人は非常に良い相性といえるし、今大会の優勝候補と言っても良い。

 教員である山田麻耶一人に落とされるなんてこともあったが、織斑千冬とほぼ同期の代表候補生だったのだ。特に一年である二人が落とされても疑問はない。

 

「頼りにしていましてよ?」

 

「任せなさいよ、あんたはあたしの背中を守っててくれればいいからね」

 

 そう言って鈴とセシリアがハイタッチをする。お互い信用し信頼しているからこそこうして“あの二人”を相手にするというのに笑顔でいられるのだ。

 想い人であるプラシドを相手にするセシリアだが、手を抜くつもりもなくただ本気でいくつもりであった。

 それが鈴に伝わっているからこそ、鈴もセシリアに背中を任せられる。

 二人は共に立ち上がって、戦いに向けての準備のために動きだした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 それから少ししてから、アリーナの中は妙にざわついていた。

 理由としてはアリーナにて、とうとう見所とも言える試合が始まろうとしているのが理由だろう。目は付けられてはいた一夏とシャルルの戦いだが、予想に反して善戦したルチアーノと箒で盛り上がった熱がさらに強くなる会場。

 間違いなくこの試合は今大会最高潮の盛り上がりを見せることだろう。

 IS学園にてたった“三人の男”の一人であり、おそらく一年でもっとも強い人物。それでいてまだまだ未知のISを駆り新たな戦いを見せてくれる。期待しないほうがおかしいというものだ。

 未知のISと言えばラウラのシュヴァルツェア・レーゲンもそうである。今だにまともな戦いを見せないラウラは決闘では負けることは多いもISバトルでの戦績は未知数。

 

 アリーナの中央に四機の専用機。

 

「プラシド、あんたがラウラと組むとは意外だったわ」

 

「だろうな、けど誘われたら断る理由もない」

 

 笑うプラシドはいつもの彼で、ワイゼルを装備しながらもいつもの彼であった。それにわずかな違和感を覚える鈴とセシリアだが深く追求する気はない。

 だから素直に疑問だけを問いかけることとした。

 

「へぇ、あんたらがISで一緒に訓練してたなんて聞いてないけど、コンビネーションは大丈夫なの?」

 

「そんなものは不要だ。ISなど無くともコンビネーションを磨くことぐらい俺にとっては造作もない」

 

 そう言いながら、プラシドは左腕を振るい空を切った。プラシドの言葉に会場がざわつき出す。コンビネーションをまったく鍛えずに戦うなど、さすがに最強クラスの二人でも無謀というものだ。

 先ほどから一切喋らないラウラとセシリアだったが、セシリアが口を開く。

 

「本気で勝たせていただきますわよ!」

 

 宣言したセシリアの目は完全に相手と戦うという瞳であり、強く熱い眼差しであった。

 

「……侮れないぞラウラ!」

 

「お前が言うならば信じよう」

 

 そんな言葉に、セシリアは先ほどまでの強く熱い眼差しを豹変させる。なんだか先ほどまでとは別の意味でプレッシャーがプラシドへと降りかかった。それはセシリアの額に浮かぶ青筋に関係があるのかどうか気になるところであるが、すぐにセシリアは頭を左右に振って先ほどのような表情に戻る。

 先ほどの異様なプレッシャーはなんだったのかと、若干なりともあった油断を完全にかき消すラウラ。さすがに代表候補生二人を相手に油断するつもりはない。

 決闘(デュエル)で培った感は無駄ではないと信じたいというものだ。

 

「さてプラシド、いつかの約束のためにぶっ飛ばしてやるわ!」

 

「私がやらせんさ!」

 

「黙って下がりなさいよラウラ! セシリアよろしくね!」

 

「わかりました。最初からフルパワーでいきますわよ!」

 

「ブルーティアーズにパワー型のパッケージはないだろ、セシリア!」

 

「お勉強していただいて光栄でしてよ!」

 

 カウントが開始される。青いモニターの数字が徐々に少なくなっていくと共に、会場の空気も引き締まる。

 来賓の席にいる各国のお偉い型もプラシドと代表候補生三人の戦いを息を飲んで見ていた。

 そして、モニターに表示される数字が0になると同時に、ブザーが鳴り響き四機が動き出す。

 

『負けるなよホセ』

 

 ―――当然だ! 機皇帝ワイゼル∞の力を思い知るが良い!

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

はい、戦いが一つ終わってまた一つが始まりましたでござる(キリッ
ルチアーノと箒は負けたでござるが……まぁ専用機二機でござるからな! さすがに厳しい!
そしてISでの訓練をまったくしていたないプラシドとラウラはコンビネーションを磨いてきた二人相手にどう立ち回るのか!

お楽しみにしていただければまさに僥倖! ではまた次回でござるな!
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