機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第二十話 歪められた願い 真の力、機皇帝グランエル!

 ブザーと同時に動きだした四機のISは、すぐさま行動を開始する。

 まず中央へと、いや、敵へと向かっていくのはワイゼルと甲龍(シェンロン)の二機であった。もちろんそれは接近戦しかないワイゼルでは仕方のないことでもあるだろう。甲龍ならば中距離戦闘もできるかもしれないが、ワイゼル、いやプラシド相手に遠距離からひたすら撃つなどと不毛なことをする気もしない。

 だからこそ鈴は接近戦をしようと言うのだ。私念がないかと言われれば否定はできやしないが是非もなし、今まさにいつぞやの決着をつけるために鈴は近接武装である双天牙月を振るう。

 

「ふん!」

 

 巨大な青龍刀を、プラシドはその左腕のブレードで防ぐ。

 だが甲龍の馬力はワイゼルの比では無い。そのパワーをプラシドがいつまでも持ちこたえることは不可能と言ってもいいだろう。

 だからこそ、そこは“パートナー”がカバーするべき場所なのである。

 

「鈴さん!」

 

 セシリアの声に、鈴は気づいた。足からバーニアを噴かせてプラシドから離れれば、鈴の居た場所には弾丸が奔り観客席近くの壁へと直撃し、爆発を生んだ。

 撃ったのはまごう事なくラウラであり、その巨大な砲身から煙を出しながらすぐさま移動を開始した。先に潰すのはセシリアとの予定であればプラシドだ。まだ対処法があるプラシドならばまだラウラよりましである。

 しかしプラシドとて並のIS乗りでは無い。すぐにワイゼル∞のスピードをもってして鈴へと近づこうとするが、上空からセシリアがスターライトmkⅢにてプラシドの前方へと射撃をした。それにて足止めをされるプラシド。

 

「ナイス、セシリア!」

 

「プラシドさん、鈴さんなんて追いかけても良いことはありませんことよ!」

 

「前言撤回!」

 

「遊んでいる暇があるのか蒼いの!」

 

 そんな声にセシリアが気づけば、衝撃を感じた。声の主は間違いなくラウラであり、今の衝撃は素直に殴られた痛みである。地上へと落ちていくセシリアがなんとか踏ん張り落下は避けて両足を地面へとついたが、上空には黒い機体シュヴァルツェア・レーゲンとラウラ。

 だが、ラウラの背後から接近する影、鈴は双天牙月を分裂させて二刀流になると両腕を振りかぶってラウラへと切りかかろうとするが、背後を見たラウラがすぐに片腕を鈴へと向けた。

 

「なっ、動けないっ……」

 

「まさか、AIC!?」

 

 驚愕するセシリアだが、すぐにスターライトmkⅢをラウラへと構える。

 

「俺を忘れてもらっては困るな!」

 

 そう言ってセシリアへと突撃していくのは機皇帝ワイゼル∞を駆るプラシド。

 だがセシリアとて馬鹿みたいにただつっ立っているわけがなく、背後に下がりながらラウラへとスターライトを撃つ。それに気づいたとしても遅く、ラウラの背中へとスターライトは直撃する。衝撃と共にAICこと慣性停止能力(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を止める。

 プラシドがそちらに意識を向けた瞬間、セシリアは腰部のブルー・ティアーズにてミサイルを放つ。

 

「くっ!」

 

 即座に体勢を変えてセシリアから離れながら、ミサイルを切り裂いていく。今戦いでは爆風でのシールドエネルギー低下すら敗因になりかねないから、だろう。

 ラウラは上空にて鈴の双天牙月を両手のプラスマ手刀にて防いでいる。

 

「離れましたわね!」

 

 そんな叫び声と共に、ブルー・ティアーズから分裂し、放たれたビット兵器ブルー・ティアーズ。

 ビットはワイゼルへと向かって飛ぶ。

 上空の鈴がラウラと近接武器にてつば競り合いになりながらも、レーダーを使って龍砲をプラシドへと放つ。

 

「なにっ!」

 

「この数の攻撃を完全にさばき切れますか!」

 

「えぇい!」

 

 プラシドは地上をホバー移動しながら連射される龍砲とビットから放たれるビームを避けていくが、一発が左腕へとかすった。さすがにワイゼルGをもってしてもこの数の攻撃をさばききれるはずもないが、ブルーティアーズがプラシドの前へと配置されれば、それを切り裂く。残り三機。

 

「甘いわねプラシド!」

 

 そんな言葉と共に、プラシドへと放たれる龍砲。それはワイゼル∞の頭へと向かうが、途中でプラシドの右手へと直撃し、右腕ことワイゼルGが破壊される。

 だが次に再び放たれる龍砲。そして三機のビットがプラシドを狙う。

 

「上へと避けろプラシド!」

 

 そんな声と共に、急上昇するプラシドだったが、ビットはプラシドへと向いている。

 装甲の薄いワイゼルではこの三機の攻撃は直撃すれば致命傷とも言えるだろう。しかしこれは一人で戦っているのでは無いと、プラシドは笑みを浮かべる。

 瞬間、三機のビットは三つの刃のついたワイヤーに破壊される。そのワイヤーをたどってみていけば、放ったのはラウラ。

 つば競り合いになりながらも攻撃できるのは鈴だけれは無かった、ということだ。

 

「くっ! 邪魔すんじゃないわよラウラ!」

 

「なにを言う。これは“タッグ”での戦いだ!」

 

 そう言うラウラはさらに三つのワイヤーブレードをセシリアへと飛ばす。

 

「やりますわね!」

 

 セシリアはワイヤーブレードを避けるために急上昇し攻撃を避けていくが、それでは自分が攻撃できない。対処法を考えるうちに、ブルー・ティアーズの足がワイヤーブレードに巻き付かれる。

 そして、鈴とつば競り合うラウラが突如背後へと下がったことによりバランスを崩される鈴だが、すぐに龍砲をラウラに撃つ。AICで防御するラウラ。

 

「ハッ、まだよ……っぐぅ!」

 

 背後からの攻撃に、鈴は下へと落ちていき地上にぶつかった。さらにワイヤーブレードにて振り回されるセシリアまで鈴の上に落とされる。

 セシリアと鈴の二人が体勢を整えて上空を見れば、そこに浮いているのは二機のISの影。白と黒の機体の登場者はどちらも眼帯をしていた。左目に眼帯をするラウラと右目に眼帯をするプラシド。二人が二人を見下ろす。

 ワイヤーブレードを戻すラウラと、右手の破壊されたワイゼルGをワイゼルG3へと新たに変えるプラシド。

 

「ぐっ、プラシドとラウラ、大したコンビネーションだわ。ISでの訓練をしてなかったからって舐めてたかも!」

 

 鈴はそう言いながらシールドエネルギーを確認した。まだまだ余裕はある。

 上空のラウラが腕を組んでその表情に笑みを浮かべた。

 

「ISでの訓練など私たちには今更不要、私たちはコンビネーションを鍛えるためにずっとタッグデュエルを鍛えてきた!」

 

「な、なんですってぇぇっ!?」

 

 大声で驚いたのはセシリア。まるで怒っているようにも見えるが気のせいだろうとすますプラシドだが、妙に自分を睨んできている気がするのは気のせいだろう。

 ラウラが笑いながら二人に向けて右肩のレールガンを向ける。

 

「私たちは熟練度やISでのテクニックに関してお前たちを大きく上回る。だがタッグでの戦いともなるとコンビネーションが必要になるだろう、タッグデュエルで鍛えたコンビネーションと、この大会で私たちがタッグを組む意外性というタクティカル・アドバンテージの二つ。私たちはこれで次の戦い、織斑一夏を葬り去る!」

 

 宣言するラウラだったが、プラシドはそこまで自分のISでの戦闘能力を過大評価していない。だが二人の実力はこの程度じゃないことだってわかっている。だが二人は自分たちを少しばかりでも侮っていた。それが敗因だ。

 すでにビット兵器ブルー・ティアーズは腰の誘導ミサイルだけ、すでにセシリアはただのライフル持ちだ。

 

「ふん、落ちるがいい!」

 

 そんな言葉と共に、放たれるレールガンだが、セシリアはその弾丸をライフルにて迎撃。そしてすかさずもう一度スターライトを撃ち腰のミサイルをも発射させる。

 スターライトをAICにて防ぐラウラの脇をすり抜けるプラシドがセシリアへと飛ぶが、そのプラシドの前へと現れる鈴。

 

「甘いわね、二人だって言ったのはラウラよ!」

 

「だからこそ俺は安心して前に出れる!」

 

「はぁ? ……きゃぁっ!」

 

 プラシドが急上昇すると同時に、プラシドの影にかくれて見えなかったラウラが姿を現しレールガンを撃つ。そしてすぐにラウラはスピードを上げてアリーナをホバー移動し追尾していくミサイルを避けていく。

 体勢を崩した鈴を通り過ぎて、プラシドはセシリアを追い上空へと飛んだ。だが突如セシリアが追ってくるプラシドに対して、つまりは真下向かって何かを投げた。

 

「あれは……インターセプター!?」 

 

 それに対してセシリアはスターライトを撃ち、小規模の爆発をさせる。

 

「ぐぅっ!」

 

「懐が!」

 

 爆風の中から現れたセシリアが、そのスターライトmk3の銃口をプラシドの腹部にぶつける。

 突き刺さるようにぶつかったその銃口に、まずいと思うプラシドだったが、すでに遅い。

 

「ガラ空きでしてよ!」

 

 放たれる青い閃光、それと共に地へと叩きつけられたプラシド。すぐにセシリアは動き出してラウラと鈴の方へと移動する。

 ラウラはすでにミサイルを迎撃したのか、鈴と空中戦を繰り広げながら龍砲とレールガンを撃ち合う。レールガンを避ける鈴とは違い一歩も動かずAICにて攻撃を防ぐ。

 ラウラはワイヤーブレードを放った。

 

「いきなさい、最後のブルーティアーズ!」

 

 その言葉と共に放たれるミサイルに、ラウラは気づくことなく正面から放たれる龍砲を防いでいくが、真下から迫るミサイルには気づけず……気づいた時にはもう遅い。

 

「なにっ!?」

 

 ミサイルの直撃、ラウラを中心に爆煙が巻き起こるがその中、ラウラの元へと戻ろうとするワイヤーブレードを撃つが、当たることなく爆発の中へと戻っていくワイヤーブレード。

 爆煙が晴れたそこにはラウラ。だがさすがにダメージは入っているようでシールドエネルギーも削れている。笑みを浮かべて軽いタッチを交わす鈴とセシリア。

 

「くっ、男の尻ばかりを追い続ける割にはよくやる!」

 

 そう言いながらラウラは肩のレールガンを二人に向けたが、セシリアがスターライトを構えて鈴が双天牙月を構えた。

 笑みを浮かべるラウラ。それに気づいた時にはすでに遅く、鈴は背後から斬られる。斬ったのは無論先ほどセシリアが倒したと思ったプラシドだが、シールドエネルギーはすべて削っていなかった。

 

「けど、もう動けるなんて!」

 

「頑丈さだけが取り柄なんでな!」

 

 そう言ってプラシドがブレードを振るが、セシリアは紙一重のところで回避を成功させる。そこに隙が生じた。

 セシリアを狙っていたラウラのレールガンが放たれる。

 

「まだですわ。まだ負けない……そうでしょうレッド・ティアーズ!」

 

 その声と共に、輝くセシリアの右腕の赤き龍の翼の痣。そしてセシリアは先ほどとは全く違う動きで身を翻してレールガンを避ける。

 それを見て……いや、セシリアの腕の痣を見て明らかな動揺を見せるプラシド。

 

 観客席にて、立ち上がった一夏。

 

「あれは!」

 

「なんだ、知っているのか一夏!?」

 

「なにあれ、ボクの知る情報には無いよ!」

 

 箒もシャルルも、もちろんルチアーノも知らないその姿に驚愕を隠すことはできない。

 プラシドの言っていたシグナーがセシリアだとは一夏も思わず、立ち上がって驚いてしまったことにしまったと顔をしかめる。

 一夏は自らの腕を隠すように抱いた。

 

「ブルー・ティアーズが赤く?」

 

 赤き龍の元、ISが変化していく、それは一夏も知っている。

 あの時に起きた現象とまったく同じものであると、一夏は痣の輝く右手を隠しながら戦いを見た。

 

 セシリアのブルー・ティアーズはクラス代表戦での時のごとく、レッド・デーモンズ・ドラゴンのように変化し、形を変えた。観客席は盛大に盛り上がり、半比例するように来賓の席では困惑が巻き起こっている。

 これを見せてどう説明すれば良いのかと迷うが、そんな暇はない。今はただ目の前の二人を倒さなければならないと、その手に持つスターライトを地面へと放り投げ―――飛ぶ。

 その速度は今までのブルー・ティアーズよりも早い。

 

「なんだそれは、そんなもの情報には無かった!」

 

「当然ですわ! 誰にも見せていませんものっ!」

 

 翼を羽ばたかせ、セシリアが飛ぶ。赤い雫(レッド・ティアーズ)は赤い流線型を描きながらラウラのレールガンを避けていくが、ラウラはしびれを切らしてすぐにワイヤーブレードを放った。

 動揺で動けなかったプラシドが我に返るとすぐに飛び立つ。

 

「セシリア、聞くのはあとだが、しっかりと説明してもらうぞ!」

 

「私だって詳しいことはわかりませんが、プラシドさんが聞きたいならば知ってることは、私が勝たせてもらった後でお話しますわ!」

 

 プラシドの振るうブレードを、セシリアはその右腕で受け止めるも、まったく切れることも無ければダメージも無い。赤く輝くそのレッド・ティアーズの右腕はまさにレッド・デーモンズ・ドラゴンの持つ腕そのものと言わんばかりにエネルギーが凝縮されている。

 さらにセシリアの左腕も振るわれるが、プラシドはワイゼルG3にてその左腕を防ぐ。

 その様子を見ていたラウラがそちらにレールガンを向けるものの、突然の攻撃に体勢を崩すこととなる。

 

「ぐっ!」

 

 攻撃を受けた方を見ればそれは鈴であり、すぐ鈴に向けてレールガンを撃つラウラだったのだが、鈴が持つ“スターライト”にレールガンを相殺され、龍砲がラウラを襲うもAICにてなんとか防いですぐにレールガンを放つ。

 

「このっ、死に損ないがぁっ!」

 

 ラウラが鈴に向けてワイヤーブレードを放った。

 それを見て、セシリアが目を細める。

 

「押し通らせていただきます!」

 

 レッド・ティアーズの腕に集まるエネルギーがさらに強くなり、ワイゼルG3を破壊する。

 

「なにぃっ!?」

 

 驚愕するプラシドだが、セシリアは左腕にてプラシドを殴り飛ばす。セシリアにしては優雅ではないが、決闘者(デュエリスト)であるセシリアとしては正解と言っていいパワー重視だ。

 プラシドを退けるとすぐに鈴の元へと向かうセシリア。鈴がワイヤーブレードにて攻撃を受けるが、セシリアはワイヤーブレードのワイヤーを掴むことに成功した。

 

「はぁっ!」

 

 ワイヤーを引っ張ると、ラウラまでもが引っ張られセシリアの方へと勢いをつけて引き寄せられる。赤く輝くセシリアの右手。左手にて引っ張ったワイヤーを離すことは無い。引き寄せられるラウラが両腕を前にしてその攻撃のダメージを軽減させようとするが、おそらくダメなことはわかる。

 

「アブソリュート・パワー・フォース!」

 

 そんな叫び声と共に右手が突き出され、赤いエネルギーが手の形となって放たれた。いくら減速したところでセシリアにワイヤーを握られている時点で避けることは不可能。

 だが、そんなラウラの前に突如白い装甲が現れる。

 

「プラシド!?」

 

「味方を庇うのはタッグデュエルの醍醐味だ!」

 

 そう言って笑うプラシドだったが、すぐにセシリアの『アブソリュート・パワー・フォース』の直撃を前を向いて受ける。爆発と共に吹き飛んだプラシドとラウラ。プラシドに庇われたおかげでラウラのダメージはかなり少ないものとなっているが、やられ弱いワイゼル∞のシールドエネルギーは0へと変わる。

 セシリアの隣に立つ鈴。

 

「プラシド!」

 

「すまないラウラ。ここまでのようだ」

 

 そんな言葉を聞いて、ラウラはプラシドをそっと壁際へと寄せる。

 

「ラウラ?」

 

「休んでいろ。ここまでやったのだ、一人で充分だ!」

 

 ラウラはすぐにセシリアと鈴のもとへと飛ぶ。

 ―――情けないっ、この俺がっ!

 

『ふん、お前にとってはそこまで使い勝手のいいものでもないワイゼルでよくもまあ……いい負けっぷりだった!』

 

 ―――いざ言われると腹立つなそれ。

 プラシドは“プラシド”を放っておいて、ラウラの戦いを見ることにした。ここで負けてしまっては、正史を再現できることがなくなる。

 焦るプラシドだったが、ラウラと鈴とセシリアの三人に動きがあった。

 

「私は、教官をあんな風にする。織斑一夏を……消さなければならない!」

 

「消すとか、なにいってんのよあんた!」

 

 鈴が動き、ラウラのプラズマ手刀と双天牙月を何度もぶつけ合う。

 

「私はっ! 私はそのためだけにこの学園に!」

 

 AICにて鈴の動きを止めると、すぐにレールガンを鈴に向ける。

 

「あんな種馬一人、どうということはない!」

 

「あんたねぇ!」

 

 叫ぶ鈴だが、今のラウラが容赦することはない。もう一歩なのだ。目的まで、織斑一夏を消すまで後一歩なのだ。それをこんなところで、こんなISを遊びで使っているような女たちに負けるわけにはいかない。

 だが、横からの攻撃によりレールガンが破壊される。下がるラウラだが、レッド・ティアーズの拳を受けて吹き飛ぶラウラ。

 

「(ぐっ……力が欲しいっ! プラシドに庇われることなんてない。むしろプラシドを守ってやれるほどの力が欲しい!)」

 

『汝、より強い力を欲するか?』

 

「(よこせ、力を……比類なき最強を!)」

 

 突如、ラウラが叫び声を上げる。それに驚愕するセシリアと鈴と会場の面々。シュヴァルツェア・レーゲンが形を変え、ラウラを飲み込もうとする。

 だがそれでももがきながら抵抗する。ラウラの意思を反するようにラウラは激しい痛みと共に取り込まれていく。

 ―――馬鹿な馬鹿な馬鹿な! 早い、早すぎる! まだだ、一夏ともまだ戦っていない!

 

『ふん、あれがどういうものかわからんがお前が倒せば解決だろ』

 

 ―――そういう問題じゃない。一夏が切らないとダメなんだ!

 

『ちっ、勝手に言っていろ』

 

 そう言うと黙ってしまうプラシド。だがプラシド(ホセ)はそれも気にならないほどに焦っていた。

 だめだと、ここでこんなことになってしまってはダメだと……こんなことならばさっさとルチアーノと組んで箒にラウラと組んでもらえば良かったと後悔の念が押し寄せる。

 それでもだめだ。セシリアが強ければラウラをもっと前に倒してしまったかもしれない。

 

『非常事態発令。トーナメントの全試合は中止。状況レベルDと認定。鎮圧のため、教師部隊を送り込む。来賓、生徒はすぐに避難すること』

 

 それと共にシャッターがしまっていく。

 

「ラウラ!」

 

 叫ぶ鈴だが、すでにシュヴァルツェア・レーゲンに飲み込まれたラウラに声は届かない。

 シャッターは完全に閉ざされ、アリーナには四人だけ。

 ワイゼルを解除したプラシドはすぐに走って鈴とセシリアの元へと寄る。セシリアのレッド・ティアーズはすでにブルー・ティアーズへと戻り武装がなにも無い状態だ。

 ラウラを飲み込んだシュヴァルツェア・レーゲンとも言えないそれは形を変えてISを纏った人のようになる。その右手に握られているのはまごう事なく刀。それも一夏の雪片二型そっくりだ。

 

「セシリアはISを解除してすぐに下がりなさい!」

 

「でも!」

 

「武装の無いあんたはさっさと下がりなさい! あんたを守りきれるかわからない!」

 

 そんな鈴の言葉に、セシリアは頷きISを解除した。

 その容姿、代表候補生である鈴がわからないはずがない。間違いなく、それは織斑千冬の姿だ。

 鈴は両肩の龍砲を撃つ。しかしその攻撃は当たることなく、横に走って避けられ、瞬間―――距離を詰められる。

 

「っのぉ!」

 

 双天牙月を振り上げるが、それよりも早く黒いそれは刀を振り双天牙月を払い飛ばす。声を上げる暇もなく、鈴は一度斬られる。

 斬撃を受け、数歩下がるがさらにソレは刀を振り上げた。シールドエネルギーは0になった。もう一度切られれば無事である保証はない。

 

「きゃぁっ!」

 

 声を上げる鈴だったが、突如、鈴の目の前に現れたオレンジ色の機体が斬撃を防ぐ。

 

「鈴、ISを解除しろ!」

 

 そんな言葉と共に、鈴は反射的にISを解除した。

 斬撃が止まり、鈴は下に落ちる。尻から落ちたためか痛みで尻をさするも、目の前のソレが動かなくなったことに気づいたからか怪しく思いセシリアとプラシドのもとへと歩く。プラシドが鈴をかばったグランエルGを粒子化して消す。

 プラシドは焦りながらもそれを見上げた。教師部隊が現れてソレを囲むが、認めない。認められない。プラシドにとっては最悪としか言えない状態だ。

 ―――どうすればいい! このまま教師部隊にやられるのを黙って見ていろと言うのか!?

 

『ならば行動を起こせばいい。何度も言わせるな……お前は“神じゃない”んだぜ?』

 

 ―――わかっている!

 

『ならなぜ動かん、貴様がモタモタしているから凰鈴音が危うかったのだ。歴史改変もできんお前では今を戦い続けることしかできないはずだ! お前も知っているだろう。我が神ゾーンは諦めなかった。シグナーというイレギュラーが現れようと自らの求めた歴史のために諦めなかった。ならなぜ貴様が諦める。アンチノミーもそうだ。アイツも諦めることなく不動遊星に希望を見たからこそすべてを託した。貴様はどうだ……今の貴様は正史と言う名の“運命”に踊らされているにすぎん!』

 

 ―――っ!

 

『貴様がイリアステルの三皇帝の一人であるということに自覚を持つならば、アポリアの一部であるならば少し道を違えた程度で立ち止まるな! 貴様が歩くことをやめた時こそアポリア(崖っぷち)から突き落とされた時だ』

 

 ―――……フッ、フハハハハッ! おもしろいことを言うなプラシド。まさかお前が俺を励ますとはな、今回ばかりは否定せんだろう?

 プラシドからの返事は無いが、ということは確実だろう。間違いなく“励ましていた”のだ。珍しいというよりこの世界に来て、彼と共になってから丸くなったということだ。

 それもあるだろうけれど、一番の理由はもっと前の―――この世界に来る前のことが理由なのだろう。

 

「セシリア、鈴、下がってくれ……俺がやる!」

 

 プラシドがそう言って前に出ると、その左腕に赤き龍の痣が輝く。

 

「プラシドさん。いえ、ホセさん……」

 

「任せてくれ」

 

 そう言ってラウラを取り込んだソレの前に立つホセ。教師部隊がなんらかの連絡を受けたのか下がっていく。おそらく、いや……間違いなく彼女のおかげだと確信したホセは後で礼を言おうと決める。

 ホセは腰の鞘に入っている剣を引き抜くと、上に掲げた。

 

「現れろ、機皇帝グランエル(インフィニティ)! グランエルT(トップ)! グランエルA(アタック)! グランエルG(ガード)! グランエルC(キャリア)!」

 

 現れるのは5機のオレンジ色の機体。それらがプラシドの前に集まる。

 

「合体せよ、機皇帝グランエル!」

 

 プラシドの声と共に合体するオレンジ色の機皇帝。その最強の機皇帝は巨体を起動させる。

 すぐにその場から下がるプラシドとセシリアと鈴の三人。

 ラウラを飲み込んだソレを赤い瞳でわずかに見下ろすグランエルだが、すぐにソレは動き出す。通常のISと大きく違うグランエルをISと認識したのだろう。

 

「ふん、さすがだな織斑千冬のコピー……だが所詮コピーだ」

 

 グランエルはその右手、グランエルGから発せられるシールドにてその刀を止める。接近攻撃を持たないグランエルだが充分だ。右手で刀を止めて、左手でその腕に狙いを定める。

 光り輝くその左手の銃口。放たれるのは巨大なビームカノン。吹き飛ばされるコピーの右腕。右腕を滅ぼしてさらに地面を激しく抉る。

 これにて武器はなくなったと思われたが、すぐに左腕から新たな刀が現れて振るわれた。切り裂かれるグランエルGこと右腕だが、ホセの力はそれだけではない。

 光り輝く左手、さらに放たれた攻撃をコピーは避けると左腕にてグランエルの左腕を切り裂く。

 両腕を失くしたグランエルだが―――まだだ。

 

「そう、まだ終わってなどいない。我らが機皇帝は三位一体!」

 

 グランエルの右腕に装備されるオレンジ色のワイゼルA3。グランエルに合うように形を変えるそれが振るわれるが、コピーは素早く避けて背後に回りこんだ。

 しかし現在のホセは普通のISを纏っているわけではない。グランエルCはそのままに上半身だけが90度回転する。回転の勢いを利用してコピーの頭を切り裂くが、再びコピーはグランエルの左腕を切り裂く。

 

「まだだ、我々はイリアステル!」

 

 グランエルの胸の∞の文字が開き、その中からTGブレード・ガンナーが現れるとコピーの左腕を切り落とす。彼らは、いいや、彼はイリアステルの三皇帝の四人目。こんなところで負け、絶望するわけにはいかない。

 ホセの名を名乗った自分がこんなところで諦めるわけにはいかないのだ。

 

「これが私の戦いだ。シュート・ブレード!」

 

 ホセはその銃でコピーの両足を撃ち抜き、ブレードにてコピーの胸を切り裂いた。後ろ向きに倒れるコピー。それと共にグランエルとブレード・ガンナーの二機が消え、ホセがプラシドの中へと戻るとすぐに走り出す。

 セシリアと鈴が止めようとするが無駄だ。今は自分が『しっかりと彼女を助けられたか?』ばかりが頭を支配している。

 

「ラウラ!」

 

 その名を呼びながら、ホセは倒れているコピーの裂け目を両腕でこじあける。

 

「……ぁっ」

 

 小さく声をあげたラウラの、その小さな声を聞き安心したのか、ホセは大きく息をついて彼女をその中から引きずり出した。

 溶けるように元に戻るシュヴァルツェア・レーゲン。

 風が吹きラウラの眼帯が落ちると、その綺麗なオッドアイを見てホセは笑みを浮かべた。

 ラウラはその笑顔を目に焼き付けながら、意識を落とす。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ラウラが次に目を覚ましたのは、医務室のベッドの上だった。ISスーツのままだが、眼帯は無い。

 外は夕焼けに変わっていて―――。

 

「なにが、あったのですか?」

 

 自分の寝ているベッドの側に、織斑千冬が座っていた。

 

「一応重要案件である上に、機密事項なのだがな……VTシステムは知っているな?」

 

 さきほどのシュヴァルツェア・レーゲンが変形したシステムの名前だ。

 

「ヴァルキリー・トレース・システム?」

 

「そう。IS条約でその研究はおろか、開発、使用、すべてが禁止されている。それがお前のISにつまれていた。精神ダメージ、蓄積ダメージ、そしてなにより操縦者の意思。いや、願望か……それらが揃うと発動するようになっていたらしい」

 

「私が……望んだからですねっ」

 

 布団を握りしめてそうつぶやくラウラ。

 

「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「っ、はい」

 

「お前は誰だ?」

 

 その質問の意図が、ラウラにはわからなかった。

 

「私は……?」

 

「誰でも無いなら丁度良い。これからお前は、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 そう言って立ち上がる千冬。一方のラウラは言われてもわけがわからないという表情だ。

 踵を返して歩いていこうとする千冬だったが、立ち止まる。

 

「それから二つ……お前は私になれない」

 

 どこかおかしそうにそう言う千冬。

 

「あと、でゅ、でゅえるとは……なんだ? 今度教えてくれ」

 

 そう言ってから、千冬は去っていった。

 彼女が部屋を出て行く音を聞いてから、ラウラおかしくなって笑う。彼女に言われた一つ目のこともそうだが、二つ目の事の方が今は大きい。

 プラシドにまんまと騙された気分だが、やけに心地良い。

 千冬でも知らぬことがあるのだと、少しわかったこともあった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、食堂にて―――。

 

「結局、トーナメントは中止だって」

 

 そう言ったのはシャルルだ。ラーメンをすすりながら聞く一夏と鯖の味噌煮を箸で食すプラシド。

 やはりな、と言った表情のプラシド。

 結局プラシドとセシリアと鈴が内密に一夏にことを話すと、一夏は当初は怒っていたがすぐに倒したプラシドに礼を言った。やはり自分で倒したかったという気もあったというようだが『プラシドに倒してもらったなら満足』だそうだ。

 

「ただ個人データは取りたいから、一回戦は全部そうだよ」

 

 興味なさげな返事をする一夏だが、プラシドとラウラの二人と戦えたならまた話は別だっただろう。

 ん? と食堂の端に目を向ける一夏。そちらには女子生徒が三人ほど、しかも一組の生徒ばかりだ。

 三人の生徒はショックを受けたと言わんばかりの表情で走っていく。

 プラシドは一夏をジト目で見る。

 

「なんだよ?」

 

「なんでもないが……箒が待っているぞ」

 

「お?」

 

 一夏が立ち上がって箒の方へと向かっていく。

 話し合っている声が聞こえるが、シャルルはそちらに聞き耳を立てるのが必死なようだ。

 笑うプラシド。どうやら思いのほか正史通りにはいくらしい。

 

「惚れたか」

 

「えぇっ!? なななっ、なにが!?」

 

「聞くまでもないだろう、まったく一夏が羨ましい」

 

 そう言って笑うプラシドに、シャルルが『プラシドも大概だと思うけど』と聞こえないようにつぶやく。

 確かにそうなのだが、すでに一夏に釘付けにされてしまっているシャルルにとっては一夏が一番だ。

 

「付き合ってもいいぜ」

 

 そんな一夏の言葉が聞こえると、シャルルは後ろへと振返る。まったく、と笑うプラシド。

 

『ほう、意外でもないか、幼馴染というのは』

 

 ―――フッ、まだまだ一夏というのがわかっていないなプラシド。

 

『なんだと?』

 

 プラシドのそんな言葉を聞いてから、一夏と箒の会話に聞き耳を立てる。

 

「付き合うさ!」

 

「そうか!」

 

「買い物くらい!」

 

 瞬間、一夏の頬を拳が打った。なんの受身も取らずの直撃だ。これは死ねると思う。

 だがその程度の攻撃を受け慣れているのが一夏だ。ダメージは大きいがまだまだだと思われる……しかし箒の蹴りによる追撃であえなく撃墜。

 激怒した箒が去っていくが、シャルルはすでに一夏の元へと向かっていた。

 立ち上がるプラシドが二人の元へと歩くが、一夏は倒れたままだ。

 

「織斑君デュノア君、プラシド君朗報ですよ!」

 

 そう言って現れたのは副担任こと山田麻耶。逆から読んでも、と言うのは持ちネタのようなものだ。

 ちなみに名前で呼ぶ理由はプラシドが名前で読んで欲しいと言ったからである。最初は恥ずかしがっていたものの、最近では慣れたものである。

 

「今日は大変でしたねぇ、でも! 三人の労を労う素晴らしい場所が、今日から解禁となったのです!」

 

「え」

 

「場所?」

 

 戸惑う二人だが、プラシドは知っているので冷静だ。

 

「男子の……大浴場なんです!」

 

 腕を振るってそういう山田麻耶。

 ―――揺れるおっぱい。

 

『貴様、浮ついた考えを』

 

 ―――我慢しろ、俺とて男だ。お前にもそういう覚えがあるだろう。

 否定できるとは言わせんぞと言わんばかりのホセだったが、仕方のないことだ。だって男だものと、開き直る。

 それにしても男子大浴場解禁、シャルルと一夏の大事なイベントだと、頷くのだった。

 

 

 

 大浴場というのも乙なものだが、今日はやめておくことにしたプラシドは一夏とシャルルに断ってから部屋へと戻ってきた。それに風呂に入っていては時間指定までして呼んだ客に申し訳がない。

 部屋で待っていると、ノックが聞こえてプラシドがドアを開ける。

 ドアの前に立っていたのは金髪の少女セシリア・オルコットだ。三人目のシグナーでありレッド・デーモンズ・ドラゴンの使い手。

 

「お、お待たせいたしましたわ!」

 

「入ってくれ」

 

 そう言って部屋へと招き入れると、椅子に座らせるプラシド。

 すぐ前に置いた椅子にプラシドも座る。

 

「少しいいか?」

 

「は、はい!」

 

 赤い顔のセシリアをまったく気にも止めず、セシリアの右手を聞き手である左手を取り制服の袖をめくる。

 目を瞑っていたセシリアだったがすぐに目を開いて右手を引くと痣を隠す。

 

「いや、今のはそのっ! 違うんです。タトゥーとかじゃなくて最近できた痣でっ、でもあんなの!」

 

「わかっている」

 

 そう言ってプラシドは左腕の袖をめくり上げる。その腕には赤き龍の頭の痣。それを見たセシリアが、わなわなと震えてそれを見る。

 一夏があるというのに驚いたが、まさかプラシドにまであるとは思わなかったというのが事実だ。

 プラシドはその痣について一夏へと教えたことだけを教える。内容はその痣を持つものはシグナーと呼ばれることとシグナーの持つモンスターカードのことだ。レッド・デーモンズ・ドラゴンがシグナーの龍だと言っても特に驚かなかったところを見ると、なんとなく予想はできていたようだ。

 結局シグナーについての説明をしただけで、セシリアを帰した。なんだか不機嫌だったようだが少しばかり夜ふかしさせたからだろうか? と想い寝ることにするのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 翌朝、朝のHLにて山田麻耶が非常に気まずそうな表情をしている。それもそうかと頷くプラシド。彼女の心労を考えればゾッとすることだ。そして、現れるのはそんな山田麻耶を待ってはくれない。

 胃薬持参の仕事であると思うも、山田麻耶は非常に喜怒哀楽が激しいので問題ないだろうと思うことにした。

 そこに現れたのは金髪の少女。ざわつく教室。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん改めてよろしくお願いします!」

 

「えっと、デュノア君はデュノアさんだったということでしたぁ~……」

 

 そして訪れるのは、沈黙。

 

「……は?」

 

「ちょっと待って、昨日は男子が大浴場―――」

 

 さすがにこれ以上は不味い。何がまずいかと言うと一夏もだが自分も不味い。今更自分は入っていなかったと言って信じられる空気ではない。

 セシリアも何か言ってくれるという保証もないのは確かだ。

 

「逃げるぞ一夏、スリップ・ストリームでついてこい!」

 

 そう言うプラシドだがすでに遅い。一組の壁が吹き飛び現れる甲龍(シェンロン)

 

「一夏ぁっ!」

 

「だからスリップ・ストリームでついてこいと!」

 

「わけわかんねぇよ落ち着けよ、混乱してんのもわかるけどぉ!」

 

 このことをまったく考えてなかったプラシド、いやホセは現在大混乱中だ。昨日の昼までは覚えていたのにも関わらず起きてからすっかり忘れていたがゆえの混乱。

 一夏に『スリップ・ストリームでついてこい』と言ってもわかるはずがない。

 とりあえず逃げようとするプラシドだったが、一夏の腕を取ったところで鈴の甲龍から龍砲が放たれた。

 

『馬鹿かあの女は!?』

 

 ―――まったくの同意!

 超スローに見える龍砲。

 

「死ぬ。これ絶対死ぬ!」

 

 ―――まったくの同意。

 一夏にも同意するプラシドだが、目の前の龍砲を今更防げるはずがない。

 だが、その攻撃は二人に直撃することは無かった。ラウラ・ボーデヴィッヒとそのISシュヴァルツェア・レーゲンがAICを持ってその攻撃を防いだからだ。

 だがプラシドは考える。

 ―――なぜ? 一夏に惚れる要因は無かったはずだ。それでも惚れたというのか? 一夏はそれほどまでに『もげろ』という存在だったのか?

 

『お前はなにを言っている』

 

 プラシドがそう思うが、隣の一夏が目を開いて力の抜けたプラシドから手を離す。

 

「あれ、ラウラ……助かったぜサンキュー!」

 

 そう言う一夏だったが、突如振り返ったラウラが一夏の胸ぐらを掴む。

 

「うおっ」

 

「……間違えた。お前だプラシド」

 

 気づいた時にはもう遅い。プラシドの胸ぐらが掴まれ、ラウラとプラシドの距離が一気に縮まった。

 そして、プラシドの唇がラウラの唇と―――重なる。二人の唇が重なり、プラシドはおろかクラスの面々、隣のクラスから進行してきた鈴ですら固まっている。

 離れるラウラだが、プラシドは放心状態だ。理由としてはまさか自分が……という理由だろう。

 

「お、お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!」

 

 ほんのりと赤くなった顔でそう宣言するラウラ。

 心の中でプラシドが文句を沢山言っているようだがそちらはまったく聞こえなかった。

 クラス中の大声が聞こえるが、まったくもって反応できないプラシド。

 

 ―――待てラウラ!? 何のことだ! まるで意味がわからんぞ!

 

 彼は、心の中で叫んだ。

 

 

 

 




あとがき

さてさて! これにてトーナメント終了にござる! 負けた最大の理由はやはりセシリアのシグナーの力でござったな。まぁもう一つを言うならあまり使い勝手の良いとも言えないワイゼルをホセが使ったことに候。
ある意味舐めプでござるが、彼なりの本気で負けたわけでござる。

いろいろ改変もしていきましたでござるが、次回もお楽しみにしていただけたらまさに僥倖ぉ!

では次回も、ライディングデュエル、アクセラレーション!
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