機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第二十二話 降臨せし機械龍 セシリアと野外デート!?

 朝、プラシドは外から差し込む光によって目を覚まし、上体を起こす。

 不味い、という表情をして眉を潜めると、掛け布団をそっとめくり、すぐに戻した。

 片手で顔を押さえると、どうするかと考えてみるが道が一つしかないことに気づく。

 

「ん……んぅ」

 

 唯一の道を取る前に、プラシドの隣で寝ていた“少女”は起き上がった。

 

「ぬぉわっ!」

 

 急いで顔を逸らすプラシドだったが、もぞもぞと起き上がった少女は猫のように背を伸ばすと外を見る。

 

「もう朝か……どうした嫁?」

 

「いずれこうなることは予想できた。ラウラ、まず布団をかぶってくれ、肌が見えるのは良くない」

 

「しかし夫婦とはすべて包みかくさずにと」

 

 ―――おのれ黒ウサギ部隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)

 心の中でラウラの直属の部下である少女を恨むが、時すでに遅しである。

 プラシドはラウラの体を見ないように掛け布団をラウラの体にまきつけるとようやく目を合わせた。

 

「いいかラウラ、隠せ。これは命令だ」

 

「うむ、決闘(デュエル)の教官である嫁の命令ならば仕方ないか……」

 

 大人しく布団で体を隠すラウラ。その姿を見てようやく安心できたプラシドはため息をついてラウラを見る。

 何も着てなかったはずなのに眼帯だけは外さない。特に気にすることもないが、細かいところが気になるのは彼の性分だ。

 とりあえずと思って辺りを見回すと、ベッドの下に脱ぎ捨てられた服があった。

 

「服はたためラウラ。ほら、着てくれ」

 

 そう言って服を渡すと、プラシドは制服を持って洗面所の方へと向かうことにする。

 着替えながら考えることはここ最近のことであった。彼の知っているIS学園であれば誰もが一夏ばかりを好きになるはずが二分してしまっているのは変えようのない事実。

 実際にラウラは自分に好意を持っているのはわかる。

 

「おいプラシド!」

 

「危ないな、丁度着替え終わったからいいものの」

 

 洗面所の扉を勢い良く開けて入ってきたラウラの方を見たプラシドは制服を上下着ていた。

 あとは首元のホックをかけるだけだが、息苦しいので外しっぱなしにすることにする。

 特にそんなことを気にすることもなく、ラウラは自らのウエストについているホルダーからデッキを取り出した。

 

「嫁、私と朝の決闘(デュエル)をしよう!」

 

 ―――なんでこんな子に……。

 大体自分のせいであるも、目の前の現実を受け入れがたいというのも事実だ。

 

「ちなみに私が決闘(デュエル)したいのは嫁の方だからな!」

 

 素直に嬉しいプラシド(ホセ)だったのだが、若干現実味がない。昔の彼自身別に女性から好意を受けることなどなかったから、余計なのだろう。

 

「わかった。じゃあ一回だけだぞ?」

 

「ああ! 外に行こう!」

 

 しょうがないので決闘(デュエル)に付き合うことにしたプラシド。

 だが、彼は甘く見ていた。なにがかと聞かれれば、ラウラのことだ。

 このIS学園の生徒のレベルは最初のころとは違い格段に上がっている。理由は男であるプラシドと一夏がやっていることであり、さらに次の決闘(デュエル)大会が始まるというせいだ。

 それに勝ち上がれば間違いなくプラシドや一夏と戦い、うまくいけば目に留まる可能性があると女子生徒たちは奮起している。

 だがそれがどうラウラに関係あるのか? 周りの生徒たちが強くなるということはそれに追いつこうとするラウラの進化するスピードもまた上がるのだ。

 そして彼女には大きな後ろ盾とも言える『黒ウサギ部隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)』がある。

 

 故に―――ラウラは今やかなりの腕を持っている。そしてそんなラウラと今のプラシド(ホセ)

 

「TGハイパー・ライブラリアン! 俺はカードを2枚伏せターンエンドだ!」

 

 TGハイパー・ライブラリアンの攻撃力は2400。並の攻撃では倒されることはないだろう。

 先行一ターン目にしてレベル5のシンクロモンスターを召喚したプラシドの表情に浮かぶのは笑み。

 だが一方のラウラもその表情に笑みを浮かべた。

 

「いくぞ、嫁! 私の……ターンッ!」

 

 カードを引き抜くと同時に、ラウラの表情に浮かぶのは笑み。

 

「このモンスターは相手フィールド上にのみモンスターがいる場合、特殊召喚できる! いでよ、サイバー・ドラゴン!」

 

 現れるのは白銀の機械龍。

 その姿は彼もプラシドも知っている。いや、当然のことだろう。

 決闘(デュエル)をやるもので知らない者がいるであろうかというカード。

 この世界ですらそのカードを持っている人間は少ないだろう。そもそもそのカードをメインにしようというデッキそのものが並の人間では使えないのだ。

 だがラウラはそれを使いこなす天性の才能があった。

 そう、サイバー・ドラゴンという数多の可能性を持つ機械龍を扱うそれを人は『サイバー流』と呼ぶ。

 

 『サイバー・ドラゴン:星5/光属性/機械族/攻2100/守1600』

 

 ―――出た、ラウラのサイバー流は侮れない!

 下手をすれば1ターンキルすらされかねないデッキに、身を引き締める彼だが相手ターンとなればできることなどたかが知れている。

 現れたサイバー・ドラゴンの攻撃力はハイパー・ライブラリアンにはかなわない。

 

「私は手札より魔法カード『エヴォリューション・バースト』を発動!」

 

『来たぞ、サイバー・ドラゴンの技の魔法カード!』

 

「サイバー・ドラゴンが自分フィールド上にいるときのみ発動可能、相手フィールド上のカード一枚を破壊することができる。TGハイパー・ライブラリアンを破壊!」

 

 サイバー・ドラゴンの口から放たれた青いプラズマによりハイパー・ライブラリアンが破壊される。

 ダメージは無いがせっかく召喚したシンクロモンスターが消えた。フィールドにだしたTGサイバー・マジシャンと手札のTGラッシュ・ライノを無駄に失ってしまったのは痛い。

 ―――だがこれでサイバー・ドラゴンは攻撃できなくなる……。

 

『だがサイバー・ドラゴンでなければ』

 

 心の中でプラシドの声が聞こえた。確かにそのとおりだ。

 まだラウラは召喚権を使ってすらいないのだから……油断はできない。

 

「私は手札よりプロト・サイバー・ドラゴンを通常召喚!」

 

 現れるのはサイバー・ドラゴンよりも小さく簡易的な機械龍。

 

 『プロト・サイバー・ドラゴン:星3/光属性/機械族/攻1100/守600』

 

 サイバー流デッキには欠かせないカードと言っていいほどのそのモンスターが現れた。

 そんな攻撃力の弱いモンスターを出すということは、その効果が狙いなのだろうと簡単にわかる。

 プラシドは焦りを隠せずにいた。

 プロト・サイバー・ドラゴンはフィールド上に存在する時、サイバー・ドラゴンとして扱う。

 

「手札より『融合』を発動!」

 

『やはり来たか!』

 

 ―――なにを出すラウラ!

 額から汗を流しながらも、彼女のこれからの動きに期待を隠せない。

 なぜなら彼もまた決闘者(デュエリスト)なのだから……。

 

「私はフィールドに存在する二体の“サイバー・ドラゴン”で融合!」

 

 二体が吠え、次元の狭間へと吸い込まれていく。

 

「機械龍よ! 二つの力を以て今、姿を表せ! 融合召喚!」

 

 次元の狭間から現れるのは二つの頭を持った機械龍。

 

「サイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

 『サイバー・ツイン・ドラゴン:星8/光属性/機械族/攻2800/守2100』

 

 やはりか、と思う半分“あのカード”での融合召喚じゃなくて助かったと心底安心する。

 巨大なモンスターの前に、プラシドのフィールドはガラ空き。あるのは魔法・罠カードが二枚のみだ。

 だがそれを警戒しようがしまいが、攻撃起動の罠カードならばそれはそれで構わないと、ラウラは眼帯に隠していない片目を細めた。

 

「行けサイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

「くるか!」

 

「エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 その攻撃により、プラシドの4000のライフポイントが削られそうになる。

 いや、削られるだけでは済まされないだろう。サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力は2800であり、

 だが目を細めたプラシドが決闘盤(デュエルディスク)のボタンを押した。

 

「リバースカードオープン『リビングデッドの呼び声』を発動!」

 

 リビングデッドの呼び声は墓地のモンスター一体を特殊召喚することができるカード。

 しかし特殊召喚したモンスターにリビングデッドの呼び声は装備され、リビングデッドの呼び声が破壊された時特殊召喚したモンスターも破壊される。

 だがその程度のデメリットであれば構うことはない。

 召喚したのはTGハイパー・ライブラリアン。

 

「ダメージを軽減してきたか、だが! いけサイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

 その口から放たれようとする青いプラズマだが、プラシドは笑みを浮かべてさらにボタンを押した。

 

「さらにリバースカードオープン『プライドの咆哮』!」

 

「なっ、そんなカードは嫁のデッキに!」

 

「入れたのさラウラ! このカードは戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手モンスターより低い場合、その攻撃力の差分のライフポイントを払って発動する!」

 

 プラシドの体に仮想のダメージが奔る。

 TGハイパー・ライブラリアンとサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力差は400。よって400ポイントのライフポイントを払うことになる。

 プラシド:LP/4000→3600

 

「そしてサイバー・ツイン・ドラゴンとの戦闘中のみ、TGハイパー・ライブラリアンの攻撃力は相手モンスターとの攻撃力の差分の数値と300ポイントアップする!」

 

 TGハイパー・ライブラリアン:攻撃力2400→3100

 

「なにっ!」

 

「迎え撃て、TGハイパー・ライブラリアン! マシンナイズ・ソーサリー!」

 

 ハイパー・ライブラリアンがラウラのサイバー・ツイン・ドラゴンを迎え撃った。

 爆風に体勢を崩されそうになるが、両足でなんとか体勢と保つ。

 ラウラ:LP/4000→3700

 反撃されフィールドがガラ空きになったのはこれでラウラになってしまった。

 

「ぐっ、やるな嫁!」

 

「当たり前だ!」

 

 まだまだ決闘(デュエル)は始まったばかりだ。

 真剣なこの戦いをそう簡単に終わらせるわけにはいかないと、ラウラはメインフェイズ2に移行する。

 今打てる手は取っておこうと、ラウラは手札よりモンスターカードを特殊召喚。

 

「私はサイバー・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

「また現れたか!」

 

 攻撃力2100のサイバー・ドラゴンでは、次のターンにはハイパー・ライブラリアンに破壊されることが目に見えている。

 ならばどうするか?

 ラウラの手札はすでに一枚。

 だが残りライフはまだ3700であり、次のターンで負ける可能性は少ない。

 

「ターンエンドだ」

 

「ならば、俺のターン!」

 

 プラシドがカードをドローした瞬間、目を細めた。

 

「俺は手札よりTGカタパルト・ドラゴンを召喚!」

 

 現れるのは名前のとおり、背にカタパルトを装備したドラゴン。

 

 『TGカタパルト・ドラゴン:星2/地属性/ドラゴン族/攻900/守1300』

 

「カタパルト・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、手札からレベル3以下の『TG』と名のついたチューナー1体を特殊召喚する事ができる! いでよTGジェット・ファルコン!」

 

 さらに召喚されたのはTGジェット・ファルコンという黒い鳥。

 

 『TGジェット・ファルコン:星3/風属性/鳥獣族/攻1400/守1200』

 

 ステータスこそ高くはないが、チューナーモンスターであり、TGカタパルト・ドラゴンと合わせればレベルの合計は5。

 そしてプラシドは、いやホセは目を細める。

 いつもの雰囲気と違うことに気づき、ラウラは『来たか……』と笑みを浮かべた。

 

「レベル2TGカタパルト・ドラゴンにレベル3TGジェット・ファルコンをチューニング! リミッター開放レベル5! ブースターランチOK、インクリネイションOK、グランドサポート、オールクリア GO! シンクロ召喚! カモン、TGワンダーマジシャン!」

 

 現れるのはホセのTGデッキのキーカードとも言えるモンスター。

 

 『TGワンダー・マジシャン:星5/光属性/魔法使い族/攻1900/守0』

 

「そしてTGジェット・ファルコンをシンクロ召喚に使用した場合相手に500ポイントのダメージ!」

 

 ラウラ:LP3700→3200

 そしてフィールドに揃ったのはレベル5のシンクロモンスターが二体。片方はシンクロチューナーだ。

 ホセは片腕を振るう。

 

「私はTGハイパー・ライブラリアンにTGワンダー・マジシャンをチューニング!」

 

 つい最近、鈴に敗北を喫したが、強力であり今のホセのTGデッキのエースカードであることに変わりはしない。

 ホセの目つきが変わり、その周囲に赤いオーラが溢れ出す。

 それもソリッドビジョンの一つであろうと解決する一夏やラウラだが、それはまぎれもなくホセ自身が出しているものである。

 

「リミッター解放レベル10! メイン・バスブースター・コントロール、オールクリア! 無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め GO! アクセルシンクロ! カモン、TGブレード・ガンナー!」

 

 次元を裂いて現れるのは緑色の機械戦士TGブレード・ガンナー。

 

 『TGブレード・ガンナー:星10/地属性/機械族/攻3300/守2200』

 

 ラウラがこのカードを見るのは始めてではない。だが目の前に立ちはだかるこのカードとどう戦うか……。

 絶賛連敗中のラウラにとっては大いなる壁であるのは確かだった。

 しかしここで怯むわけにもいかない。

 

「いけ、TGブレード・ガンナー! サイバー・ドラゴンを攻撃!」

 

 ブレードを振るいサイバー・ドラゴンを切り裂くブレードガンナー。

 ダメージにより尻餅をついたラウラのフィールドにはモンスターはもう居ない。

 ラウラ:LP3200→2000

 

「私はこれでターンエンドだ! さあラウラ、凰鈴音に次ぎお前は私を超えることができるか!?」

 

 そんな言葉に、立ち上がったラウラは衝撃のせいか眼帯が外れていた。

 その綺麗な金色の眼はまだ諦めていないという眼だ。その場しのぎの攻撃や効果などではブレード・ガンナーには無意味。ならば道は決まっている。

 このドローに全てをかけるだけだと、ラウラはデッキの上のカードを―――。

 

「私のターン!!」

 

 引き抜いた。

 

「さぁ、見せてもらおうか! お前の可能性を!」

 

 ラウラが引いたカードを見て、笑みを浮かべる。

 

「ん?」

 

 手札からカードを引き抜き出す。

 

「私は魔法カード『カップ・オブ・エース』を発動!」

 

「そのカードは!?」

 

「コイントスを1回行い、表が出たら私が、裏が出たなら嫁がカードを二枚ドローできる」

 

 笑みを浮かべたラウラが懐からコインと一枚取り出した。

 軍人らしく賭け事をするとは、この歳にしてはよろしくないなと思いながらそんな博打は嫌いじゃないとホセはその表情に笑みを浮かべた。

 ラウラはコインを弾き、目を瞑る。

 空中で回転したまま落ちてくるコインを、ラウラは目を閉じたまま取った。

 目を開いたラウラがそっと手を開く、コインは―――。

 

「表だ!」

 

 それによりラウラはカードを二枚引く。

 笑みを浮かべたラウラは先ほどまで持っていたカードを出す。

 

「私は魔法カード、死者蘇生を発動!」

 

 そのカードにより召喚するカードはなにか? 

 この場を乗り切るためならばサイバー・ツイン・ドラゴンでブレード・ガンナーの攻撃を受けるだけでいい。

 しかしラウラの表情は完全に『勝つ』と決めている。

 

「私が召喚するのはプロト・サイバー・ドラゴンだ!」

 

 現れるのはサイバー・ドラゴンにすらスペックで劣るプロトの方だ。

 疑問に思ったホセだが、彼女はさらに手札を消費する。

 

「さらに私は手札より、速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動! 相手フィールド上にモンスターが存在し、私のフィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する!」

 

 だが、プラシドのフィールドに存在するTGブレード・ガンナーはデッキに一枚のみだ。

 召喚されるのはラウラのフィールドにいるモンスターと同名カード。

 そしてプロト・サイバー・ドラゴンはフィールドに存在するとき『サイバー・ドラゴンとして扱う』つまりは―――。

 

「現れろ、私の墓地に眠る二体のサイバー・ドラゴン!」

 

 サイバー・ドラゴンがさらに二体召喚され、ラウラのフィールドには計三体の“サイバー・ドラゴン”が存在することとなった。

 このカードたちは先ほどまで手札にあったカード。

 そしてこの状況で引き当てたカードを、ラウラは使用する。

 

「魔法カード『パワー・ボンド』を発動!」

 

「なんだと!」

 

 驚愕するホセだが、すでに遅い。

 パワー・ボンドとは魔法カードである融合の効果にさらに機械族限定という効果が付いているがこれは所詮おまけにすぎない。

 一番のポイントは特殊召喚された融合モンスターの攻撃力が2倍になるということとエンドフェイズに召喚した融合モンスターの元々の攻撃力分のダメージを発動プレイヤーが受けるということだ。

 

「機械龍よ! 三つの力を以て今、眼前の敵に永遠の終焉を! 融合召喚!」

 

 三体のプロト・サイバー・ドラゴン(サイバー・ドラゴン)が次元の狭間へと吸い込まれ、その狭間から新たなモンスターが生まれる。

 白銀の装甲を持ち、三つの首と二枚の翼を持つ機械龍が、その巨体を持ち上げて現れた。

 

「サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

 『サイバー・エンド・ドラゴン:星10/光属性/機械族/攻4000/守2800』

 

 サイバー流の切り札と言えるカードであり、ほかのモンスターの追従を許さない圧倒的な攻撃力。

 そしてその効果は相手の守備力を貫く貫通効果。

 召喚するのが困難であるが故に1ターンキルすら可能にするその能力。

 そしてその圧倒的な攻撃力は現在パワー・ボンドの力により……。

 

 サイバー・エンド・ドラゴン:攻撃力4000→8000

 

 さらなる高みへと到達していた。

 

「さあ行けサイバー・エンド・ドラゴン! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

 攻撃力8000のモンスターに3300のブレード・ガンナーが適うはずもない。

 その攻撃の前にブレード・ガンナーは破壊されその攻撃力の差分のダメージである4700がホセへと襲いかかる。

 プラシド:LP3600→0

 ライフポイントが0になったときの特有の音が鳴り響き、その決闘(デュエル)の終了を告げた。

 

「か、勝った! 嫁に勝てたぞ!」

 

 立ち上がった彼がラウラの元へと寄り、その頭を撫でた。

 ソリッドビジョンはすでに消えていて戦闘などなかったかのような状況だ。

 

「よくやったな、流石だ」

 

「あ、ああ!」

 

 年相応というより、見た目相応に喜ぶラウラ。

 ここ最近でラウラはずいぶん感情を表に出すようになったと笑うプラシドが、ラウラの眼帯を拾うとそっとラウラに付けた。

 自然に、親切でやったつもりのプラシドだったが顔を赤くしているラウラを見て『まずかった』と思う。

 自分からラウラを落としにかかってどうすると頷いて立ち上がった。

 何かの間違いだと思いながら、プラシドはラウラを誘って食堂へと向かうことにする。

 おそらくセシリアたちが待っているであろうと……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 朝食を食べた後、プラシドは現在街へと繰り出すために駅に立っていた。

 すでに目的の駅には着いていて、プラシドはただ待っているだけだ。

 誰をか……。

 

「お待たせしました!」

 

 学園から一緒でいいもののあえて時間を遅らせてきたセシリアを、である。

 どうやら待ち合わせというものに憧れているらしいが、プラシドは若干なりとも面倒だと思ってしまった。

 しかし一夏の方ではなくなぜ自分ときたのか、なんて疑問ばかりが浮かぶがまさか自分のことが? と思ってはまた『そんなことありえない』とする。

 とりあえずセシリアとの合流もすんだし、いくとしようと、二人揃って歩き出す。

 

「それにしてもセシリアも街に用があるのか?」

 

「はい、なにかいいアクセサリが欲しいので」

 

 さすがの女子。おしゃれには気を使っているのだなぁ、と思う。

 

「デッキホルダーなどにつけようかと」

 

 間違いなく決闘者(デュエリスト)である。

 

「質素だものな」

 

「はい、さすがにそのままというのも……もうすぐ大会もありますし!」

 

「その前に臨海学校が待っているだろう」

 

 それもそうですね。と忘れていたかのように言って笑う。

 一瞬だけその笑顔に見とれそうになるも、彼は臨海学校を忘れるほど決闘(デュエル)大会が楽しみなのかと笑った。

 完全に決闘者(デュエリスト)である。おもにプラシドや自分のせいで……。

 だが今更後悔してもしかたないことだと、今は楽しむことにした。

 とりあえず水着を買わなければならないがそこらへんですぐ見つかることだろう。

 

「プラシドさんは何を買いに?」

 

「水着だ」

 

「私もご同行させていただきますわ!」

 

 うおっ、と食いついてきたセシリアに驚く。

 ―――あれか、物珍しいのか男の水着が……。

 ということで済ますが、やはり一夏のような男がそばにいると勘違いしないようにと他人からの好意に気づかない。

 そんな覚えは無いが、プラシドにはなんとなくホセの気持ちがわからないでもなかった。

 

 

 

 プラシドとセシリアの二人はデパートの水着売り場にて水着を見ている。

 選んでいるのは最初はプラシドだったのだが、途中からセシリアまで水着を数着ほど用意してプラシドに見せてきた。

 とりあえず選んでもらったものの中でもっともセンスが合っているものを選んだ。

 特にそれ以上何かがあるわけでもない。

 弾とたまたま会って軽く挨拶を交わした後に、アクセサリショップに行く。

 

「これなんてどうでしょう?」

 

 デッキホルダーをデコレーションするものだけではなく、普通のアクセサリも買うようだった。

 よくよく考えれば当然である。彼女も“女の子”であるのだから……。

 

「ネックレスか、紅いな」

 

「はい、レッド・ティアーズのためのものです」

 

 そこまで得意ではないと言えど自らが使うワイゼルに勝ったのだ。流石と言わざるをえない。

 シグナーは現在自分を含めて四人。

 臨海学校での銀の福音暴走事件は“どちら”なのだろうか?

 どちらにせよ自分たちに危機が迫っているのは事実だ。

 

「あの、プラシドさん?」

 

「ん、ああすまない」

 

 せっかく外出を誘ってくれたのに失礼なことをしてしまったと思うプラシド。

 いつの間にやら外に出ていて、挙句にセシリアと手まで繋いでしまっているという実におかしな状況。

 悪い気はしないのだろうけれど、違和感は感じる。

 

「次はどうするか?」

 

「お食事でも?」

 

 そんなセシリアの提案に時計を見れば、丁度昼少し過ぎといった時間。

 丁度店も空いてきて良い時間帯だろうと、プラシドが歩きだそうとした直後、もう一方の手を誰かに引かれた。

 振り返ったプラシドの視界には誰も映らない。

 少し視線を下げれば、そこには今朝一緒にいた銀髪、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 

「ラウラさん!?」

 

「嫁よ、私も行くぞ」

 

「ラウラ、一人で来たのか?」

 

「途中までルチアーノと一緒だったのだが……先に帰った。人だらけで酔ったらしい」

 

 なるほど、と頷くとプラシドはセシリアの方を見た。

 なんとも言えぬ表情をしているが、それでもプラシドことホセは彼女の好意に気づかない。

 何らかの理由があるのだろうと心の中で決め付けている。

 そんなプラシドを見て、セシリアはため息をついて苦笑した。

 

「行きましょう」

 

「うむ」

 

「ああ」

 

 二人の返事を聞いて歩き出す。

 なんだか腑に落ちないという表情で歩き出すセシリアと、なんだかよくわからないプラシドとラウラ。

 妙な三人組は歩いて、近場の食事が取れる場所へとやってきた。

 ちょっとした評判の店に入ると、席へと案内される。

 

「あっ」

 

 そこで意外な人物との遭遇。

 案内された席の隣の“一人席”にて、山田麻耶が座っていた。

 そんな彼女を見て、苦笑するプラシドとセシリアに、ラウラはその雰囲気の意味がわからず首をかしげる。

 予期せぬ三人の来行に呆けていた麻耶だったが、すぐに『見られた……』と顔を真っ赤にした。

 

「いや、よくある事です先生。ひとり飯ぐらい普通ですって」

 

 そう言って横の席につくプラシド。

 

「ほ、本当ですか?」

 

 三人で食事に来ているプラシドが言ってもなんのフォローにもならない。

 

「はい、もうよくあることで」

 

「私は常にみんなと食事だぞ」

 

 セシリアのフォローも虚しくラウラが言った言葉に全て崩れる。

 涙目になる山田麻耶を相手に、プラシドは迷いに迷った結果―――席を詰めた。

 テーブルは四人掛けで、プラシドの正面に椅子に座っているセシリアとラウラ。つまりはプラシドは二人分の席に座っていたのだが詰めたことによって一人分が空く。

 プラシドは麻耶の方を空けて、隣の席を軽く叩いた。

 

「どうぞ、山田先生」

 

 そんなプラシドの言葉に、口元を押さえて今にも感激の涙を流しそうになる麻耶。

 

「い、いいんですか?」

 

 セシリアは苦笑して『どうぞ』と言い、ラウラは『別に構わん』と返事をする。

 片方は若干なりとも残念そうだが、別に“邪魔者”が一人増えたところでもう変わりはしない。

 ラウラは余裕と言わんばかりであり、なにがあってもプラシドを手に入れる自信があるのだろう。

 

「じゃ、じゃあお邪魔して……」

 

 赤く紅潮した表情の山田麻耶がプラシドの方に寄る。

 プラシドは麻耶と壁に挟まれているが、少し麻耶が寄りすぎで窮屈そうだ。

 それを見てむすっとするセシリアとラウラ。

 さすがに目の前でベタベタされるのはいや、ということだろう。

 

「さ、さぁ、昼にしようぜ!」

 

 そんなプラシドの提案と共に、メニューが開かれることとなる。

 とりあえずは本能に身を任せようと、セシリアとラウラもプラシドにやけにくっついている麻耶のことを我慢して食事を決めることにした。

 注文してから、しばらくは四人で雑談。

 

 ―――悪い意味ではないが、織斑先生ほど緊張はしないな。

 

 こちらも悪い意味ではないが、麻耶はあまり先生という感じがしない。

 デュエルモンスターズの話も普通に付いていけるし、なによりもその雰囲気が……だ。

 無意識だろうにやけにプラシドに近い山田麻耶。

 

 ―――ぱいおつが当たってるでござるよ。拙者のヤリザ殿の危険が危ない。

 

『貴様、俺の体で妙なことを!』

 

 ―――生理現象でござる。お主にも覚えがあるでござろう。

 

『チッ……』

 

 それはあるに決まっている。恋人だっていたのだから当然だ。

 あの荒廃した世界で唯一の心の支え……。

 

「プラシド君、今度決闘しましょうか!」

 

 そんな言葉に、意表を突かれて驚愕するプラシド。

 山田麻耶からの挑戦、だが受けることを拒否する必要もない。

 

「はい、俺で良ければ」

 

「ふぁ~」

 

 惚けた表情で笑顔を浮かべる山田麻耶に、プラシドことホセは一瞬だが見惚れた。

 それを察したのかセシリアが笑顔のまま負のオーラをかもしだし、なんだか背筋に悪寒が奔りプラシドは我に返る。

 頷いたプラシドはまた雑談を開始することにした。

 程なくして頼んだ料理が来て、それぞれ食事を開始する。

 

 ちなみに追記するならば一組で麻耶に敬語を使うのは、数少ない。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 それから麻耶も一緒に街を回った後に、学園へと帰ってきた。

 ラウラと分かれてプラシドとセシリアになってから、夕食時だからか人通りのない廊下を通っている最中、プラシドが立ち止まる。

 それに吊られて立ち止まったセシリアだったが、プラシドが今日買ってきたものを入れた紙袋の中を漁り、一つの品を取り出す。

 

「これは?」

 

「今日は買い物に付き合ってもらったしな。それに二人と合流する前に買ったものだから二人の前では出しづらくてな」

 

 しっかりと包装されたそれを受け取ったセシリアは嬉しそうな表情で何度も頷く。

 言葉が出てこなくなっている。

 

「あ、あっ、あっ……ありがとうございます!!」

 

 感激のあまり目には涙すら浮かんできて、セシリアはそれを見られないために背を向けた。

 それに若干なりとも驚くプラシドは『やはりまずかったか!?』と焦ってあたふたとするが、本物のプラシドの時と比べるとずいぶんシュールだ。

 すると突然、振り返ったセシリアがプラシドの胸へと飛び込む。転びそうになるプラシドがセシリアを受け止めた。

 セシリアが精一杯背を伸ばして、プラシドの首に両腕をかけて、それでようやくセシリアの顔とプラシドの顔は近づく。

 そしてセシリアはそっと、プラシドの唇に唇を合わせた。

 

 ―――どういうことだ?

 

 そんな疑問をよそに、セシリアは離れてそっと笑う。

 恥ずかしさのせいか嬉さで感動しているせいか、あるいは両方か……彼女の頬は赤い。

 プラシド(ホセ)の中のプラシドがなにかをわめいているが、彼にとっては今はどうでもいいことだ。

 これは間違いなく挨拶やそういうものではないと、本能でわかる。

 

「今日はありがとうございました……ではまた!」

 

 そう言って走り去るセシリアをよそに、プラシドはそこで目を点にしたまま固まっていた。

 セシリアが去った方とは違う方の道にて、その一部始終を見ていた者たちがいる。

 

「これはこれは……」

 

「やるね、セシリア……」

 

「セシリアはエロいなぁ~」

 

 翌日には大変な噂になっているであろうことを彼や彼女は知らない。

 そしてその噂が色々な場所で誇張されたりなんてことも、今の彼らは知らない。

 これもまたIS学園にたった二人の男故、と言うことだろう。

 

 臨海学校まであと少し―――ちなみにプラシドはあと十分ほどそこで呆然としているのだった。

 

 

 

 

 

 




あとがき

フハハハハハッ! 待たせてしまって申し訳ありませんで候!
それにしてもこの状況、プラシドはようやくセシリアの好意に気づいたのか!?
そして麻耶も落としてしまったでござる。

次回は臨海学校初日! さて水着回というやつでござるが、まったく関係ないでござるな。文章オンリーなもので。
では、次回もお楽しみにしていただければまさに僥倖である!!
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