機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第二十三話 限界突破! トップ・クリア・マインド!!

 あの日からセシリアとの会話がいささかギクシャクもしたプラシドだったが、すっかり元に戻っていた。

 そして同時に、学園中にセシリア“も”プラシドにキスをしたことも噂で広がっている状態であり、必然的にラウラに次いでプラシドにキスをした相手とされることをセシリア自身よく思っていなかった。

 臨海学校当日、IS学園から旅館へと向かうまでのバス内にて誰がプラシドや一夏の隣をとるかという話になっていたが、プラシドの提案によりプラシドと一夏は隣になることになる。

 

 バス内にて、わいわいとしている女子生徒たちと、楽しみだということが顔に出ている一夏。

 窓際のプラシドと窓際が良かったがじゃんけんで負けた一夏の二人。

 

「そういえばプラシドは海は初めてか?」

 

「ああ……飛んだことはあるが遊んだことはないな」

 

 束に連れられて散々世界中を飛んだが、海は上から見るぐらいだ。

 自分がプラシド(ホセ)になる前であれば遊んだ記憶が無いわけではない。

 だがそれでも、随分久しいことであるのには変わりなかった。

 

「じゃあ今日は沢山遊ぼうぜ!」

 

「そうだな……」

 

「プラシドさん!」

 

 背後の席からの声に、上を見上げればセシリアが顔を出している。

 してやったりの顔なのはプラシドの後ろの席を勝ち取ったからだろう。

 

「海に着いたら私にサンオイルを―――」

 

「断る」

 

「えぇっ! どうしてですの!?」

 

「プラシドは恥ずかしがってんだよ!」

 

「余計なことをいうな一夏」

 

 珍しくからかわれたプラシドは窓の外を向いてしまい、それを笑う一夏と腑に落ちないという表情でありながらも大人しく座るセシリア。

 プラシド(ホセ)は、そんな過激なアプローチに答えられるほどの度胸はない。

 決してセシリアが嫌いなわけではないが、ただその生肌に触ってサンオイルを塗るというのはまた別である。

 気分転換にふと、歌を口ずさむ

 

「帰ってテレビを見ていたい、最近アニメがおもしろい」

 

「お前の歌声なんて初めて聞いたよ」

 

 隣の一夏からの言葉に、彼は笑ってだけ返す。

 そう言えばそうであると思った。そういう学生らしい遊びというのをこの世界に来てからした覚えがない。

 せっかくの学生なのだからそういうのもまた一興であると思う半分、自分は遊ぶためにこの学園に来たわけではないと思い出す。

 一夏や箒を守るためでもあれば、さらにシグナーとして覚醒したメンツを守り、世界を驚異から救う。

 プラシドにとって世界を救うという行為は二度目だろうけれど、やり直しはきかない。

 遊んでいる場合ではない。今は覚悟が必要だろう……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 海……。

 

「イィィィィヤッホォォォォォッ!!」

 

 テンション最高潮で叫びながら海へと走るのは―――プラシドである。

 もちろんホセの方だがバスの中での黄昏はすっかりどこかへとすっ飛んで、今は海しか見えていない。

 一番乗りのプラシドのあとから生徒たちがやってきて海へと飛び込んだりする。

 少し遅れてやってきた一夏とセシリアと鈴、そしてセシリアとのキスを覗いて噂にした張本人である布仏本音もいた。

 

「おぉ~いお前ら!」

 

 そう言って現れるのは頭に大量のわかめを乗せた誰か。

 小さく悲鳴を上げるセシリアや鈴だったが、一夏が警戒しながら指を指す。

 

「誰だお前!」

 

「俺プラシド! 鈍いなぁ一夏は!」

 

 わかめを払い言ったプラシドは両手で持ったそれを見せる。

 

「うぉっ! 何持ってきてんだ!」

 

「こいつはウミガメ、たまたま浅瀬に来てたんだ」

 

「浅瀬って―――」

 

「ああ! それってボール!?」

 

 テンションの高いプラシドの声にビクッ、と跳ねる一夏とセシリアと鈴。

 そんなプラシドに驚いた様子もない本音ことのほほんさん。

 本音の『バレーボールしようよ!』という言葉にプラシドは『まだ泳ぐ!』と言ってまた沖にくりだす。

 あまりの驚愕に言葉も出ない様子の一夏たち。

 

「あのさ、プラシドってあんなだっけ?」

 

「いや……セシリアはどう思う?」

 

「いつも静かな感じのプラシドさんがあんなはしゃいで……子供っぽい一面もまた良いですわね」

 

「そうか」

 

 セシリアに聞いた自分がバカだったと遠くで泳ぐプラシドを見れば。

 ほかの女子生徒たちと合流して楽しそうに話している。

 それを見た直後、セシリアは真横にパラソルを突き刺し、持ってきたサンオイルなども放り投げて走り出す。

 

「プラシドさんの隣は一人! このセシリア・オルコットですわぁ!!」

 

 叫びながら走り出したセシリアもいつものおしとやかさを捨てて海に飛び込みプラシドの方に泳ぐ。

 ちなみになぜだが赤き龍の痣は現在消えているということもあり、安心して腕をさらせるというものだ。

 隣の鈴が肩に乗ったりしているが特に気にする必用もあるまいと一夏はため息をつき笑みを浮かべる。

 なぜだか元気が無かったプラシドが元気そうでなによりだと、腰に手を当てて頷く。

 

 

 

 その後、落ち着いたプラシドが砂浜へと帰ってくる。

 

「プラシド!」

 

 そう声をかけられて見れば、そちらには可愛らしい水着を着たルチアーノと……タオルの妖怪。

 いや、プラシドにはわかっているがやはりルチアーノの方が気になってしまう。

 完全に女の子だと自分の目で初めて確認できたところで驚愕しているが、そんな暇はない。

 すぐにタオルの妖怪の方に視線をやると、笑みを浮かべる。

 

「ラウラ、恥ずかしがらないで」

 

「し、しかし……」

 

 タオルの妖怪ことラウラはタオルの上からどういう原理でか眼帯をつけているが、はたまたどういう原理でかルチアーノはラウラに巻かれているタオルを一斉に取り上げる。

 現れるのは、プラシドが知っているラウラの水着姿ではない。また別の水着だった。

 それにふいをつかれて、プラシドはラウラに見とれる。

 

「可愛いぞ」

 

 プラシドがそう言うと、転校初日のラウラからは思いもよらないほどの笑みが浮かぶ。 

 

「そ、そうか! 私はそんなことを言われたのは初めてだっ……」

 

 しまったと思う半分、それ以外に結局言葉は見つからないだろうと思う。

 

「プラシド君、ビーチバレーやろーよ!」

 

 そう声をかけられたプラシドはその顔に笑みを浮かべる。

 全力で楽しもうと、セシリアとラウラを見た。

 3on3の戦いができるということだ。

 

 コートを作って戦いは始まる。

 決闘(デュエル)以外でのクラスメートと遊びなど始めてだ。

 

「んっふふっ! 7月のサマーデビルと言われた私の実力を見よ!」

 

 放たれる鋭いバレーボール。

 素早く動いたセシリアがレシーブし、プラシドが飛ぶ。

 

「フハハハハッ! この俺に戦いを挑むなどいい度胸だ! この俺が最強なのは決闘(デュエル)だけでないと知れぇっ!!」

 

 跳ぶと同時にスマッシュ。

 あたりからは『うわ、プラシド君がプラシド君だ!』なんて声も聞こえるが、彼は彼でこれは楽しいのだろう。

 こういうことは初めてであるからこそテンションが上がっているのだ。

 

 ―――俺にもそういう覚えがある。

 

 中で納得するプラシド(ホセ)だったが、やけにはしゃぎすぎである。

 ラウラが顔面でボールを受けて走り去ったりしたが、その結果一人の空き枠に山田麻耶が入り、一夏やシャルルや鈴なども参加しようとやってきた瞬間、一夏の女神が降臨した。

 誰もがその滅多におがめない肌に感嘆の声を出し、一夏は魅了されぼぉっとする。

 プラシドがプラシド(ホセ)にチェンジしたことにより、プラシドは一夏のおもしろい反応を見ていたがその視線に気づいたほかの生徒たちがなにやら騒ぎ出す。

 

「まさかプラシド君は織斑君が!」

 

 ―――いや、それはない。

 

 すぐにプラシドは戦闘態勢に入る。

 プラシドの背後には麻耶と一夏の二人で、相手側のコートには悪鬼が一人。

 冷や汗を流しながらも、プラシドは初めて千冬と対峙した。結果は報告するまでもあるまい。

 

 夕方までの時間、遊びに遊んだ生徒たち。

 そしてはしゃぎにはしゃいだプラシド。

 ようやく真面目モードへと戻った彼はおそらくビーチに現れなかった“彼女”がいるであろう場所へと足を進めた。

 そこに行けばすでに二人の人影があった。

 一人は今日対峙した千冬、そしてもう一人は篠ノ之箒である。

 

「赤椿……」

 

「それがお前の専用機なわけだな」

 

 そんな声に、驚いた様子で振返る箒と、わかっていたかのように振返る千冬。

 特に部外者というわけじゃないからだろう。二人とも何も言わずにいる。

 

「束から連絡があった。明日は確実に“来る”だろう」

 

 その言葉に、頷く箒と千冬。

 

「“何もするな”とは言ったがどうなるかはわからないところだ。それなりに覚悟しておけ箒、それから織斑先生も……」

 

「だ、そうだ……篠ノ之、お前も義兄になるかもしれない男の言葉は肝に銘じておけ」

 

「!?」

 

 そんな千冬の“冗談”に驚愕する箒とプラシドだったが、彼女はフッと笑ってプラシドの横を通ると去っていく。

 後頭部をかくプラシドを見て、少し笑って箒も千冬のあとを追っていった。

 二人の姿が見えなくなった頃、プラシドも帰ろうと歩きだそうとした瞬間、背後に気配を感じて振返る。

 そこにあるのはただの影。黒い影がそこには“存在”していた。

 

「なんだ……?」

 

『気をつけろ、確実に普通ではない』

 

 その影を見て警戒するプラシドだったが、直後―――その影から赤い目が二つ現れる。

 

「見つけたぞシグナー」

 

 この相手はシグナーを知っている。

 間違いなく普通ではなく、間違いなく仲間ではない。

 明らかな殺意と敵意を感じ取り、プラシドはどこから出したのか決闘盤(デュエルディスク)を腕につける。

 シグナーを知っているならば決闘(デュエル)で決着をつけるのは間違いないはずだ。

 

「フフフフッ……フハハハハハハッ……!」

 

 笑い声と共に、目の前の影は跳んで崖の下へと消えた。

 プラシドはすぐに走って崖の端から下を覗いたが、影などあるはずもなく下はただの海だ。

 舌打ちをしてから左腕を見れば、そこに輝く赤い痣。

 

 ―――間違いない。今のが敵だ……。

 

 あれを相手にする日はそう遠くないと、彼はそう確信しながらも踵を返すのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、旅館にて食事の時間。

 集まっている生徒たちの中に、プラシドはいた。

 机組とテーブル組に分かれる中、プラシドはおそらく隣に来るであろうセシリアのことを考えながらもテーブル組に参加するのだった。

 そして結果は予想通り、自分に好意を持ってくれているのであろうセシリアは隣へと座って食事をする。

 隣には久しぶりにルチアーノ。

 最近は彼女と一緒にいることも少ないのでなんだか新しかった。

 

「やはり刺身だな」

 

「魚を生って最初は抵抗あったんだよね」

 

 そう言って少量のわさびと共に刺身を食すルチアーノ。

 

「やはり日本人でなければそうだろうな」

 

「プラシドってどこの人だっけ?」

 

「生まれも育ちも日本だ。途中世界中を飛び回ったりもしたが……」

 

 そんな言葉に、ルチアーノは苦笑。

 IS学園を探してもプラシドほどの年齢で世界中を飛び回るなんてことはなかっただろう。

 プラシドは15歳には見えないが、それを言えばセシリアや箒やある意味ラウラやルチアーノも年齢不相応の見た目なので突っ込むことはやめることにする。

 誰も知らないだろうけれどプラシドは“6年前”からずっと変わらない。

 それが彼なのだが“束以外”それを知る者はいない。

 

 机組にて一夏が騒動の原因となり騒ぎが起きそうになっているので、プラシドはため息をつく。

 

「まぁ騒ぎを起こせば織斑先生が来ることであろうな」

 

 そんなつぶやきによって一斉にボリュームが下がる。

 織斑千冬の偉大さを思い知るプラシド、ならびに少数の生徒たち。

 ふと一夏を見てみれば、プラシドに親指を立ててウインクをしているので、プラシドは苦笑で返す。

 お互いこれにて安心というわけだ。

 

「プラシド、箸が使いにくい」

 

「ほらフォーク」

 

 ルチアーノの言葉に念のためと用意しておいたフォークを出せば、頭を軽く小突かれた。

 わけがわからないプラシドだったが、最初のアレが引いているのだろうと思い我慢することにする。

 セシリアが何かを言っているがプラシドは黙って食事をしていた。

 

 ―――大トロなんて初めて食べた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 食事が終わった後、少女セシリア・オルコットが廊下をこそこそと歩いていた。 

 理由を語る必要などないだろうけれど一応、言っておくならばプラシドが目当てである。

 先ほど同室の女子生徒に『セシリアはエロいなぁ』などと言われたがめげずにプラシドの部屋、つまりは一夏と千冬の部屋の隣にやってきたが、箒と鈴とシャルル、そしてラウラとルチアーノまでが織斑姉弟の部屋の前でじっとしている。

 

「どうなさいましたの?」

 

 黙っている五人の中で、鈴が口元に人差し指を当てて『黙れ』と伝えてくるので、セシリアも黙って彼女たちと同じように戸に耳を当てた。

 戸の向こうから声が聞こえてくる。

 

『ぐっ……これは……』

 

『ふふっ、一夏は上手いだろう?』

 

『千冬ねぇをずっとしてたから、プラシド相手でも問題はないはずだぜ』

 

 なんだか怪しい声が聞こえてきた。

 

『ぐっ……ふっ……』

 

 セシリアまでもが戸に耳を当てるが、それが悪かったのだ。

 限界まで体重のかかっていた戸はあっけなく外れ、そのまま倒れる。

 つまりは六人の体も倒れるということで、倒れた六人が顔をあげれば、視界には布団に寝そべるプラシドの背中に両手をそえる一夏がいた。

 すぐさま頭で処理を完了する六人。

 

 

 

 結局、千冬により正座をさせられる六人。

 椅子に座る一夏と立っているプラシド、そして千冬も椅子に座ると呆れたという表情をしている。

 

「まったく、なにをしてるか馬鹿者がっ」

 

 シャルロットが安心したように『マッサージだったんですか』と言うと、ルチアーノとセシリアが頷く。

 いつものような真面目な表情をした隣のラウラが口を開いた。

 

「それにしても良かった、てっきり……」

 

「なにやってると思ったんだよ?」

 

 一夏の質問に、プラシドは『やはり』と片手で頭を押さえる。

 

「それはもちろんホ―――」

 

 すぐさまルチアーノがラウラの口を塞いだ。

 それに安心して胸をなでおろす面々の中、プラシドも心の中では胸をなでおろしていた。

 今思えば彼女たちがくることぐらいわかっていたことなのにと思うが、すぎたことなので気にしない。

 とりあえず変な噂が立たないようで安心だった。

 

「こう見えて、こいつはマッサージが上手い。順番にお前たちもやってもらえ」

 

 珍しく千冬が箒たちに飴をやっているので珍しいと思いながらもプラシドは余計なことを言う事はしない。

 触らぬ神になんとやら、触ってこれが無しにでもなれば自分が箒や鈴やシャルロットから恨まれるのは目に見えているからだ。

 まぁ、特に何も言わねばこちらに被害は何も無い。

 ということでとりあえず箒がマッサージをしてもらうらしく一夏が立ち上がったのでプラシドが空いた椅子に座る。

 

「まぁその前に、飲み物を買ってこい一夏」

 

 そう言うと一夏は立ち上がり、部屋を出ていった。

 

 部屋には一夏を除いた面々になり、千冬は冷蔵庫からビールを出すと畳まれた布団に肘をかけて座る。

 いつもの教師モードとは違いプライベートのように楽にしていて、雰囲気がいつもと違うのは誰でもわかる。

 

「おい、いつものバカ騒ぎはどうした?」

 

 そんな言葉に、箒が動揺している。

 

「織斑先生とこうして話すのは、初めてですし……」

 

「恐縮しているということです」

 

 シャルロットの言葉に続くプラシドだが、ずいぶん楽にしているのは彼女たちよりは接点があるからだろう。

 束関係の話ではそこそこ話したし、ほかにも話すことは山ほどあってそれなりに話してきた。

 

「なるほどな。まぁいい」

 

 缶ビールのプルタブを空けて、千冬が視線を移す。

 視線の先は箒、鈴、シャルロットの三人。

 

「そろそろ肝心の話をするか……」

 

 缶ビールを傾けて喉に流すと、いつもの様子からは想像もつかない“可愛らしい声”で気持ちよさそうに声を上げる。

 嬉しそうな顔は、本当に嬉しいというか、生きる喜びというか……。

 プラシド(ホセ)にも覚えがあった。

 

「で、そこから半分はあいつのどこが良いんだ?」

 

 半分というのはシャルロット、箒、鈴のことだ。

 明らかに動揺する三人に、特に動揺もせずいるセシリアとラウラとルチアーノの三人。

 姉直々の言葉に動揺する箒と鈴とシャルロット。

 

「確かにあいつは約に立つ。家事も料理も中々だし、マッサージも上手い、付き合える女は得だな」

 

 一拍置く千冬に、プラシドも『人が悪い』と苦笑。

 

「どうだ、欲しいか?」

 

 そんな意味深な言葉に、三人が期待した顔をする。

 

「くれるんですか!?」

 

「やるかバカ」

 

 この(ブラコン)あってあの(シスコン)というわけだ。

 若干なりともプラシドは『やれよ』とは思うが、いざ一夏が女を連れてきたらどうするのかと思うとゾッとする。

 三人は『え~』と落胆の声を上げるがそれ以上プラシドは関わる気は無い。

 自分を磨けと言っている千冬だが、圧倒的余裕。このままでは一夏は千冬ルート一直線。

 

「まぁ俺には関係のないことだ」

 

 そうつぶやいたプラシドだったが、肩に手を置かれる。

 おいたのはもちろん千冬で、見上げれば千冬が笑っていた。

 

「何を言っている。残りはお前に関係あるやつらだろう」

 

 視線を千冬に合わせると、苦々しい顔をするプラシド。

 

「さて、根掘り葉掘り聞かせてもらいたいなぁ……プラシド?」

 

 そんな言葉に、プラシドは片手で頭を抱える以外はなかった。

 とりあえずその後、一夏が帰ってきてからマッサージをされている箒と鈴とシャルロットを置いておいて、プラシドは千冬について状況を説明するはめになるが、セシリアの顔が赤かったのは言うまでもないだろう。

 色々と説明させられるプラシドも恥ずかしそうだったが、ラウラは『また新しい嫁の一面を』と言っていた。

 最終的に泥酔した千冬から逃げるように部屋を出た時点で、疲れているせいか全員なにも言わずに解散。

 プラシドは部屋に戻った。

 

「待ってましたよプラシド君!」

 

 決闘盤(デュエルディスク)をつけた浴衣姿の山田麻耶が、畳の上に座っている。

 そう言えば約束はしたが、修学旅行の中学生じゃあるまいしまさか夜だとは思わない。

 枕投げの代わりに決闘などと……。

 

「いいでしょう」

 

 プラシドが断るはずもなかった。

 決闘(デュエル)を挑まれれば断る理由が無い。

 特に、未知の相手である山田麻耶との決闘(デュエル)は楽しみで仕方がない。

 (ホセ)の中のプラシドはバレーボールでの件から一切出てきていないが、それはそれで良かった。

 先に戦うのは自分だと、プラシドは決闘盤(デュエルディスク)を腕につける。

 

 ―――決闘(デュエル)!!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、旅館の中庭にて立つ二人の人影。

 それはプラシドと山田麻耶であり、二人がつけている決闘盤(デュエルディスク)を見れば二人が決闘(デュエル)をしていることは明白である。

 そして決闘(デュエル)はすでに数ターンが進んでいて、お互いのフィールドはそれぞれしっかりと違いが出ていた。

 

 プラシド:LP/4000

 モンスター:2 TGハイパー・ライブラリアン TGラッシュ・ライノ

 魔法&罠:2

 手札:2

 

 山田麻耶:LP/3200

 モンスター:0

 魔法&罠:5

 手札:3

 

 プラシドのターンが終了し、麻耶のターンへと変わる。

 

「私の……ターンです!」

 

 その言葉と同時に引き抜かれるカード。

 彼女のデッキテーマは大体理解したが、全てがわかったわけじゃない。

 しかしそのカードを引き抜いた麻耶の表情には笑みが浮かび上がる。

 いつもの麻耶に浮かんでいるその顔ではない。

 

「私は手札より! 『虹の都―レインボー・ルイン』を発動!」

 

 強き決闘者(デュエリスト)の表情であった。

 発動されたフィールド魔法により、辺りはソリッドビジョンによりコロシアムへと姿を変える。

 かかった虹。麻耶の魔法&罠ゾーンに配置されている四つの宝石と、一枚の伏せカード。

 麻耶のフィールドにある宝石は、『宝玉獣』たちであり、宝玉獣が破壊された時に永続魔法として配置できる効果によって置かれたものである。

 

「私は『虹の都―レインボー・ルイン』の効果発動! 私の魔法&罠カードゾーンの『宝玉獣』と名のついたカードの数により発揮できる効果が増えます。そして宝玉獣が四枚以上である時の効果を発動します!」

 

 レインボー・ルインの四の効果。

 メインフェイズに1度だけカードを一枚ドローできる。

 麻耶はカードを引き抜いて、笑みを浮かべた。

 

「リバースカード、発動! 『宝玉割断』私はデッキより宝玉獣と名のついたモンスター一体を墓地に送って発動、私が捨てるのは『宝玉獣コバルト・イーグル』です。相手フィールド上のモンスター一体の元々の攻撃力を半分にできますが、その代わりプラシド君は一枚ドローしてくださいね! 半分にするのはTGハイパー・ライブラリアンです!」

 

 言われた通り、プラシドはデッキからカードを一枚ドロー。

 そして、麻耶は次の行動に移る。

 

「私は手札より『宝玉獣サファイア・ペガサス』を召喚します!」

 

 現れるのは青い宝石を翼に装備したペガサス。

 

 『宝玉獣サファイア・ペガサス:星4/風属性/獣族/攻1800/守1200』

 

「召喚時効果発動、手札・デッキ・墓地から宝玉獣一体を魔法&罠ゾーンに置くことができます! 私はデッキより『宝玉獣アメジスト・キャット』を置きます。サファイア・コーリング!」

 

 さらに増えた宝玉に、プラシドは内心で焦った。

 

「これで七体の宝玉獣が墓地並びにフィールドに揃ったわけか……」

 

 だが、あのカードが彼女の手にあるとは考えにくい。

 今現在持っているカードはなんなのかと考えるが、この状況で決めてくるとは思えなかった。

 

「戦闘を開始します! サファイア・ペガサスにてTGラッシュ・ライノを攻撃! サファイア・トルネード!」

 

 竜巻を起こすペガサス。

 その竜巻はラッシュ・ライノを飲み込み、さらにプラシドにダメージを与える。

 ラッシュ・ライノの攻撃力は1600であり、200のダメージを受けた。

 プラシド:LP/4000→3800

 

「私はこれでターンエンド!」

 

「墓地のTGラッシュ・ライノの効果発動、このカードが破壊されたエンドフェイズ時、自分のデッキからラッシュ・ライノ以外のTGを手札に加える。俺が選択するのはTGジェット・ファルコンだ」

 

 TGの最大の利点はモンスターが破壊された後のサーチ。

 ドローの宣言と共にカードを引き抜くプラシドだったが、手元にある五枚のカードを見て頷く。

 

「俺は手札よりTGカタパルト・ドラゴンを召喚、そして効果によりジェット・ファルコンを特殊召喚!」

 

 これで手札二枚を消費した。

 

「TGカタパルト・ドラゴンにTGジェット・ファルコンをチューニング!」

 

 そしてこれでTGの最速の力を発揮する準備が整う。

 

「リミッター開放レベル5! ブースターランチOK、インクリネイションOK、グランドサポート、オールクリア GO! シンクロ召喚! カモン、TGワンダー・マジシャン!」

 

 現れるのは彼の仲間内ではお馴染みのTGワンダー・マジシャン。

 そのモンスターが現れた瞬間、プラシドの雰囲気がわずかに変わったことに気づいて、麻耶は少し警戒する。

 だがプラシドの顔はいつも以上におだやかでいて、その雰囲気は静かである……。

 

「山田先生は、私のデッキを知っていたんですか?」

 

「えっ……いえ、TGというカードを使うということぐらいしか……」

 

 プラシドはその顔に笑みを浮かべる。

 だからこそ、TGハイパー・ライブラリアンを攻撃力半分のまま残した驚異で無いと放置したのだ。

 それこそが仇となると、知らぬまま……。

 

「ならば見せよう。私の力を!」

 

 そう宣言すると、彼は手を振る。

 

「まずTGハイパー・ライブラリアンの効果によりシンクロモンスターが召喚されたためカードを一枚ドロー! 次にワンダー・マジシャンの効果によりフィールド上の魔法&罠カードを破壊。私が破壊するのは永続魔法となっている『宝玉獣トパーズ・タイガー』だ! さらに墓地のジェット・ファルコンの効果によりシンクロに使用されたため500ポイントのダメージを受けてもらう!」

 

 山田麻耶:LP/3200→2700

 怒涛のチェインでつながれた効果により、彼はどんどんと自らを優勢にしていく。

 麻耶のフィールドには四枚の永続魔法となった宝玉獣、そしてサファイア・ペガサスが一体。

 

「行くぞ! クリア・マインド! レベル5TGハイパー・ライブラリアンにレベル5シンクロチューナーTGワンダー・マジシャンをチューニング!」

 

 プラシドの体が赤く光る。

 

「リミッター解放レベル10! メイン・バスブースター・コントロール、オールクリア! 無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め GO! アクセルシンクロ! カモン、TGブレード・ガンナー!」

 

 麻耶にとっては初めて見るモンスターであろう。

 次元を裂いて現れた機械剣士はその巨体を輝かせる。

 それはプラシドのISに似ているが、ワイゼルデッキを使っている彼がブレード・ガンナーを出したところで驚くことではない。

 それよりも驚くべきなのはシンクロチューナーという未知のモンスターと、それによって召喚されたモンスターのステータス。

 

 『TGブレード・ガンナー:星10/地属性/機械族/攻3300/守2200』

 

「私はTGブレード・ガンナーでサファイア・ペガサスを攻撃! シュート・ブレード!」

 

 呆気なく切り裂かれたサファイア・ペガサスは破壊され、そのまま墓地へと送られた。

 攻撃力1800のサファイア・ペガサスと攻撃力3300のブレード・ガンナーの攻撃力差は1500。

 山田麻耶:LP/2700→1950

 ダメージは1500の半分である750しか与えられていない。

 

「虹の都―レインボー・ルインの二つめの効果を発動、1ターンに1度だけ受けるダメージを半分にできます」

 

 だが麻耶のフィールドにはモンスターが居なかった。

 プラシドはターンエンド。

 ああなった彼は本気で相手を潰す気でもあるけれど、本気で相手の可能性を楽しみにしているふしがある。

 それを知っている少女たちの中に今、山田麻耶も含まれた。

 

「私のターン!」

 

 引き抜かれたカードをその目に確認して、麻耶はその表情に笑みを浮かべる。

 

「私の墓地とフィールドに宝玉獣と名のついたモンスターが七種類以上存在する場合のみ特殊召喚が可能となる。私の一番のモンスター! 『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』降臨!」

 

 空から現れる巨大な龍。

 

 『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン:星10/光属性/ドラゴン族/攻4000/守0』

 

 宝玉デッキ最強のカードであり一撃必殺の切り札。

 その強力な効果は召喚したターンは使えないこそ、次のターンまで生き残れば相手が生き残る確率などたかが知れている。

 そして効果を使えないレインボー・ドラゴンでも、充分な驚異を発揮できた。

 

「さらに自分フィールド上に永続魔法カードが3枚以上存在する場合に、このカードは特殊召喚できます。『バッド・エンド・クイーン・ドラゴン』!」

 

 『バッド・エンド・クイーン・ドラゴン:星6/闇属性/ドラゴン族/攻1900/守2600』

 

 さらに現れたモンスターに、彼は笑みを浮かべる。

 

「レインボー・ドラゴンでブレード・ガンナーを攻撃です。オーバー・ザ・レインボー!」

 

 攻撃を放とうとするレインボー・ドラゴンの攻撃宣言に、プラシドはチェーン。

 

「ブレード・ガンナーの効果発動! 相手ターンに一度、墓地のTG一体を除外してこのカードを除外する。私が除外するのはTGラッシュ・ライノ!」

 

「ですが、巻き戻しにより攻撃対象はプラシド君自身、ダイレクトアタックします!」

 

 レインボー・ドラゴンの攻撃は、プラシドに当たり爆発を起こした。

 プラシドが吹き飛んで地面を転がったが、すぐに体勢を整えて立ち上がる。

 プラシド:LP/3800→1800

 驚愕する麻耶だったが、プラシドのフィールドを見て納得する。

 

「罠カード『ダメージ・ダイエット』の効果により、このターン受ける全てのダメージを半分にする」

 

「ですがこの攻撃は受けてもらいますよ。バッド・エンド・クイーン・ドラゴンの攻撃、トラジェディ・ストリーム!」 

 

 放たれる攻撃に、プラシドは再び体勢を崩す。

 いつも以上にダメージが強く感じる。

 だが、これでこそ決闘(デュエル)であると笑った。

 プラシド:LP/1800→850

 瞬間、プラシドのフィールドのもう一枚のカードがオープンした。

 

「罠発動『ダメージ・コンデンサー』を発動。自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動する事ができる。その時に受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 そう宣言したプラシドを見て、麻耶がクスッ、と笑った。

 麻耶を見てなぜ笑ったのかわからず止まってしまうプラシドだったが、麻耶は嬉しそうに笑うのみだ。

 

「ごめんなさい。プラシド君最近ずっと何か悩んでいるような顔でしたから……楽しそうで良かったと」

 

 プラシドは素直に驚いていた。

 一生徒をよく見ている。男だからかと思いはするが、それを含めてもよく見ていると思う。

 海では素直に楽しんでいたが、終わってからすぐに確かに色々悩んでいたりもした。

 千冬と箒と会ったあとのこともあって余計だ。

 そんな自分のためにわざわざ夜に自分のために決闘(デュエル)をした。

 

「私は貴女の生徒で良かった……」

 

「ふぇっ!?」

 

 真っ赤な顔になる麻耶だが、離れているプラシドはわかっていない。

 それでいてもこのモードなのだから、そういう浮ついたことを考えてはいないのだ。

 

「私がデッキから召喚するのは、TGサイバー・マジシャン!」

 

 『TGサイバー・マジシャン:星1/光属性/魔法使い族/攻0/守0』

 

 すでに麻耶は攻撃する術は無い。

 そのTGサイバー・マジシャンを放置するしかない。

 麻耶は頭を左右に振って我に返った。

 

「ば、バッド・エンド・クイーン・ドラゴンの効果発動! 相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手は手札を1枚選んで墓地へ送り、私はデッキからカードを1枚ドローします!」

 

 カードを一枚引く麻耶と、手札のカードを一枚捨てるプラシド。

 そしてバトルフェイズを終了する麻耶はメインフェイズ2にてレインボー・ルインの効果でカードを一枚引く。

 

「私はカードを二枚伏せてターンエンドです!」 

 

 その宣言と共に、プラシドはデッキの上のカードを掴み―――引き抜いた。

 

「これが私のラスト・ドローだ!」

 

 引き抜いたカードを見た瞬間、プラシドの表情が変わる。

 

「スタンバイフェイズ、除外されていたTGブレード・ガンナーが帰還する!」 

 

 帰ってきたブレード・ガンナーとサイバー・マジシャンが並ぶ。

 

「私は手札より速攻魔法TGX1―HL(ティージーエックスワン エイチエル)を二枚発動! 自分フィールド上に存在するTGと名のついたモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターの攻守を半分にしてフィールド上に存在する魔法・罠カードを一枚破壊する! 私は双方共TGブレード・ガンナーを選択!」

 

 ブレードガンナー:攻/3300→1650→825 

 

「破壊するのは永続魔法である宝玉獣ルビー・カーバングルと宝玉獣エメラルド・タートルの二体!」

 

 こうして残った永続魔法としての宝玉獣は一枚になってしまう。

 これではダメージを半分にできないが、麻耶はその表情に焦りを見せることはない。

 それでなんとなく理解したプラシドだが、彼は止まらない。

 

「私は手札のレベル1TGドリル・フィッシュにTGサイバー・マジシャンをチューニング!」

 

 手札シンクロは話に聞いていた。驚く必要は無い。

 

「リミッター解放、レベル2! レギュレーターオープン! ナビゲーション、オールクリアー! GO! シンクロ召喚! カモン、TGレシプロ・ドラゴンフライ!」

 

 『TGレシプロ・ドラゴン・フライ:星2/風属性/ドラゴン族/攻300/守300』

 

 低レベルで、攻守も頼りないモンスターならば、目的は効果。

 

「1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する『TG』と名のついたシンクロモンスター1体を墓地へ送る。そして、墓地へ送ったモンスターのシンクロ召喚に使用したシンクロモンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、この一組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる!」

 

 TGブレード・ガンナーが元のTGハイパー・ライブラリアンとTGワンダー・マジシャンに戻る。

 フィールドに揃った三体のモンスターだが、麻耶には意味がわかっていなかった。

 それを見てもプラシドたち以外の者には意味がわからないだろう。

 今なら大丈夫だと、自分に言い聞かせてプラシドは、ISを纏った。

 

「えぇっ!?」

 

「私は光を超え、さらにその先へ!」

 

 その場にとどまりながらも、自らのIS機皇帝ワイゼル∞にエネルギーを貯めていく。

 プラシドの周囲に風の波紋が広がる。

 麻耶はそんな奇っ怪な行動に疑問を抱きながらもやめさせようとは思わなかった。

 

「いくぞ!」

 

「ファッ!?」

 

 プラシドは麻耶の方へと向く。

 

「えぇぇっ!?」

 

「トップ・クリア・マインド! レベル2TGレシプロ・ドラゴンフライとレベル5TGハイパー・ライブラリアンにレベル5シンクロチューナー、TGワンダー・マジシャンをチューニング!」

 

 直後、貯めていたエネルギー全てを使いプラシドは麻耶の方へと迸る。

 叫び声すら上げる間もなく、プラシドは麻耶へと近づき、その目の前で光の中へと―――。

 

「―――消えたッ!?」

 

 そして光を超えたスピードのアクセルシンクロを超えたその力をもってして、光速の先の世界でプラシドは叫ぶ。

 

「リミッター解放、レベルマックス! レギュレーターオープン・オールクリアー! 無限の力よ! 時空を突き破り、未知なる世界を開け! GO! デルタアクセル! カモン!」

 

 プラシドがフィールドへと戻ってくるが、戻ってきた場所は元プラシドがいた場所の背後からだ。

 丁度いた場所に着地するプラシドが即座にISを解くと、彼と共に出てきた巨大な機械の騎士。

 

「TG ハルバード・キャノン!!」

 

 その姿は正しくTG最強というにふさわしいモンスター。

 プラシドは念願のデルタアクセル、トップ・クリア・マインドを習得することができた。

 麻耶はその姿に戦慄する。

 

『TGハルバート・キャノン:星12/地属性/機械族/攻4000/守4000』

 

「バトルフェイズ! ハルバート・キャノンでバッド・エンド・クイーン・ドラゴンを攻撃!」

 

 その宣言と共に、麻耶はリバースカードをオープンさせる。

 

「罠カード『立ちはだかる強敵』発動! 攻撃宣言時にのみ発動可能なこのカードの効果は私のモンスター1体を強制的に攻撃させることが可能になります。私が選択するのは『究極宝玉神レインボー・ドラゴン』です!」

 

 これでこのターン、レインボー・ドラゴンと相打ちせざるをえないことになる。

 だがその瞬間、立ちはだかる強敵に麻耶がチェーンで罠カードを発動。

 

「リビングデッドの呼び声を発動! 私は墓地から宝玉獣アンバー・マンモスを召喚します!」

 

 アンバー・マンモスが召喚されればハルバート・キャノンがレインボー・ドラゴンを攻撃するダメージステップで、間違いなくレインボー・ドラゴンの一つ目の効果が発動される。

 一つ目の効果とはフィールド上の『宝玉獣』と名のついたモンスターを墓地へ送ってその数×1000ポイント攻撃力を上げるという強化効果。その効果は相手ターンでも発動できるものである。

 すなわち死へと向かうということ。

 

「だが、TGハルバート・キャノンの効果発動! 1ターンに1度だけモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を無効にし破壊する事ができる!」

 

「そんな!」

 

「召喚を無効にし破壊されれば効果をチェーンすることもできない! クローズ・サモン!」

 

 これで、アンバー・マンモスが出ることはなくなった。

 よってこれにてレインボー・ドラゴンとハルバート・キャノンの相打ちが決定づけられる。

 飛ぶハルバート・キャノン。

 

「いけ、ハルバート・キャノン!」

 

「迎え撃って、レインボー・ドラゴン! オーバー・ザ・レインボー!」

 

 二体のモンスターがぶつかり合い、爆発と共に消え去る二体のモンスター。

 そして、フィールドには攻撃表示のバッド・エンド・クイーン・ドラゴンだけが残る―――かと思われた。

 

「えっ!?」

 

 彼のフィールドには緑色の機械剣士TGブレード・ガンナーがいる。

 

「TGハルバート・キャノンはフィールドから墓地へ送られたとき、墓地のTGモンスター1体を特殊召喚できる!」

 

 その効果によって現れたTGブレード・ガンナー。

 

「バトルフェイズは終わっていない! TGブレード・ガンナーで攻撃!」

 

 3300の大物が再び現れたわけだが、このターンさえしのげば、手札にある『聖なるバリア―ミラーフォース』でどうにでもなる。

 レインボー・ドラゴンがいて、例のコンボがあったからと伏せなかったのだが取っておいて正解だったと安心した。

 

「バッド・エンド・クイーン・ドラゴンならまだ私は負けない」

 

 3300のTGブレード・ガンナーに1900のバッド・エンド・クイーン・ドラゴン。

 ダメージは1400と考えればまだ350も残る。

 TGブレード・ガンナー:攻/3300→4100

 

「え?」

 

「私は墓地のスキル・サクセサーの効果を発動。墓地のスキル・サクセサーを除外することで、モンスター1体の攻撃力を800ポイント上昇させる!」

 

「そんなカードは使って……まさか!」

 

「バッド・エンド・クイーン・ドラゴンに落とされたカードだ!」

 

 これで勝負は決まった。

 ブレード・ガンナーの斬撃によりバッド・エンド・クイーン・ドラゴンは体勢を崩し、射撃により爆発。

 その爆風により麻耶は体勢を崩して尻餅をつく。

 山田麻耶:LP/1750→-250

 それと共にすべてのソリッドビジョンが消えて、二人はただ旅館の中庭にいる。

 彼は麻耶へと歩み寄って手を差し出す。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あっ、えへへ、ごめんなさい。やっぱりダメージを受けるのは慣れなくて」

 

 麻耶が手をとった瞬間、引いた。

 

「ッ!?」

 

 思いのほか麻耶が軽かったこともあり、勢い良く手を引いてしまったせいで胸に麻耶が飛び込む形になる。

 焦るプラシドと麻耶だが、お互いがお互いに余計なことをしないほうがいいのかと思い何もしないせいでその状態のまま留まってしまう。

 あたふたとする二人だったが、先に動いたのはプラシドで麻耶の両肩を掴んで離す。

 体に残る感触に、プラシドは気まずく言葉が出てこない。

 

「ぷ、プラシドくん、私たちは教師と生徒で、いやでも責任は……」

 

「ではこれで、また明日!」

 

 プラシドはこれ以上は不味いと思い。

 先ほどのまともさなども全て捨てて麻耶から逃げた。

 まったくもって情けないと、プラシドに言われるパターンなのだが、プラシドが出てこない。

 それを疑問に思いながらも仕方ないので今日は休もうと自分の一人部屋に帰った。

 安心と思ったのだが、ラウラとセシリアと、なぜかルチアーノの三人が寝ている。おそらく、ラウラを止めようとルチアーノは来たのだろうと頷く。

 布団を囲むように三人が寝ているが、セシリアを真ん中にしてラウラとルチアーノを寝かせると、椅子に座ることにした。

 

 ―――プラシド! プラシド!

 

『……なんだ?』

 

 ―――お前夕方あたりからいっさい喋ってないぞ?

 

『なんだと―――今はいつだ?』

 

 ―――もう夜だ。消灯時間は過ぎてるしな。

 

『……そうか、まあ良い。お前は三皇帝としてプライドを持ってやっているのなら文句はない』

 

 ―――お、おう。

 

 それ以降、また彼は喋らなくなってしまった。

 なにがあったのだろうと、疑問に思う彼だったが、これ以上考えても不毛だろうと素直に目を瞑る。

 座ったまま寝る程度造作もないと、彼はすぐに静かな寝息を立てた。

 プラシドの、あの荒廃した世界で生きた記憶や三皇帝になったときの記憶、それらの場所で培った感などが警告しているのだ。

 

 何かを―――。

 

 

 

 

 

 




あとがき

まあ最初の方はともかくとして後半はだいぶ真面目な決闘モード!
これも伏線の一つでござる。気づいている方は気づいているかもしれませぬな色々!
そして次回は銀の福音暴走事件。
しかしいつもとは違う福音事件発生といった感じになる……やもしれませぬ!

では次回をお楽しみにしていただければまさに僥倖!!
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