機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第三話 蘇る力 機皇帝ワイゼル

 さて、あれから大体一週間、ようやく待ちに待った月曜日になったわけだが……待ちに待っていたのはプラシドだけだ。俺は違う。

 俺はプラシド。でも楽しみにしていたほうじゃない。

 今現在、第三アリーナにて“俺たち”とセシリア・オルコットが視線を交わしている。

 第三アリーナの地に立っている表が俺であるプラシド。

 そして上空にて自らのIS『ブルーティアーズ』を纏っているセシリア・オルコット。

 

「さぁ、ISを装備しないのかしら?」

 

 挑発してくるセシリア・オルコットに俺は反応しないでおく。

 ここからは俺の出番ではない。

 ―――頼んだぞ、プラシド。

 

『フン、貴様はそこで見ているが良い!』

 

 目をつむった瞬間、体のコントロールが俺から離れる。

 次に目を開くのは、俺ではなく“プラシド”だ。

 

「雰囲気が変わった?」

 

 セシリア・オルコットがつぶやくが、そのとおりである。

 先ほどまでの俺とこの俺は別人であり、同一人物。

 

「待たせたな女」

 

 冷たい声でつぶやいたプラシドに、焦りを見せるセシリア・オルコット。

 確実に戦いに対する覚悟が違うのだ。俺とプラシドとでは……。

 命を落とすかもしれない戦いの真意を知っているプラシドと、スポーツか何かだと思って戦いを行っている代表候補生では“各”が違う。

 

「貴方、何者ですの?」

 

「消えゆく者に答える名は無い」

 

 ―――いやプラシド、消しちゃダメだからな?

 とか言っても返事は返ってこない。

 目の前の戦いに集中するということ、だろう。

 

「な、なにを!」

 

 狼狽するセシリア・オルコットを相手に、プラシドは腰についた鞘から剣を引き抜き空に向けた。

 

「さぁ、シンクロキラーの威力、存分に味わうがいい!」

 

 ―――いや、ISだから。

 

 光を放つ剣。

 ISを装備するための光はプラシドと俺、二人を包んで姿を変える。

 弾け飛ぶ光、そこから現れるプラシドは白いISに身を包んでいた。

 

「機皇帝ワイゼル」

 

 スラッとした腰まわりの灰色の装甲、白い胸部分には∞の文字が装飾される。

 

「ワイゼルC(キャリア)

 

 足にも白い装甲。

 

「ワイゼルA(アタック)

 

 左腕にも白い装甲が伸び、その前腕には大きな刃が装備される。

 

「ワイゼルG(ガード)

 

 右腕にも同じような装甲だが、肩部分は左よりも大きく、白い装甲の隙間から緑色の部分が見えた。

 プラシドの顔部分、右目付近には灰色の装甲が追加され、∞の文字が緑色に浮かび上がる。

 額部分に白い装甲が装備され、その白い装甲が開き、黒い装甲が現れた。

 

「ワイゼルT(トップ)

 

 その黒い装甲部分に赤いラインが入る。

 最後に胸の∞のマークが輝いた。

 プラシドは一つだけ見える赤い瞳で上空の青い敵を睨みつける。

 

「さぁ、ショーの始まりだ!」

 

 飛び立つのはプラシド、つまりは『機皇帝ワイゼル∞』と呼ばれたIS。

 その瞬間、戦闘開始のブザーが鳴り響く。

 音は遥かに響き、セシリア・オルコットの緊張感は一気に膨れ上がる。

 戦いの雰囲気を肌で感じ取る俺とプラシド。

 笑みを浮かべるプラシドにつられてか、プラシドの中で俺も笑みを浮かべた……ような気がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 戦闘開始の音が鳴り響くと同時に、セシリアはBT(ビット)兵器『ブルーティアーズ』を放つ。

 四機のビットが動き出し、プラシドの周囲を旋回する。

 眉一つ動かさぬプラシドを見て、セシリアは笑みを浮かべた。

 

「いきなさい、ブルーティアーズ!」

 

 突如、ビットの先端がプラシドへと向き、四機が同時にビームを放つ。

 多方向からのオールレンジ攻撃。

 本来“普通の相手”との戦闘であれば、これでほぼ決まるのだろう。

 けれど、今回はそうも行かない。

 普通じゃない相手なのだ、プラシドと彼の二人は……。

 

「フッ、見えているぞ!」

 

 彼とはまったく違う雰囲気で、プラシドは体をひねらせ多方向からのオールレンジ攻撃を回避する。

 素早い華麗な動きでビットからの攻撃を回避し、セシリアへと近づいていくプラシド。

 しかし攻撃はビットだけではない。

 ビット攻撃が止んだ瞬間、セシリアが大型ライフル『スターライトmkⅢ』を撃つ。

 だがその一直線のビームにプラシドが直撃するわけもない。

 

「避けるまでもない!」

 

 プラシドは左腕の(ブレイド)でビームを切り裂く。

 拡散するビーム、プラシドは目を鋭く細めると……飛び出す。

 

「ッ―――ブルーティアーズ!」

 

 飛んでくるビットからの攻撃に、プラシドは足止めを食らう。

 前方に並ぶ四つのビットからのビームを、プラシドは急降下して回避する。

 地面スレスレを飛行するプラシドへと追い打ちをかけるように真上からビット攻撃を放つ。

 ISの中でも早い部類に入るであろう機皇帝ワイゼル∞はそのビームを避けながら地上スレスレを飛ぶ。

 

「さすが、篠ノ之束博士の下に居ただけはありますわね!」

 

 ビットの攻撃を止め、ライフルをプラシドが飛ぶ先に撃つ。

 地面に左腕の刃を刺し、急停止した。目の前に落ちるビームにも、プラシドはまったく動揺しない。

 

「ふん、所詮はこの程度か……ハハハハッ!」

 

 突如笑い出したプラシドに、セシリアは眉をひそめる。

 

「行くぞワイゼル!」

 

 地面に刺したブレイドを引き抜いて、飛ぶ。

 セシリアは、近づくプラシドへの牽制としてプラシドの周囲に配置したビットからビームを打ち出す。

 

「厄介なビットだ、まずそちらからつぶそう!」

 

『ビット操作中はセシリアはそちらに集中していて動けない、ビットだけに集中しろ!』

 

「わかってる!」

 

 プラシドの頭に響く声は彼の声だ。(プラシド)の中にいる彼のサポートにより、プラシドはなんの遠慮もなく動く。

 急停止してビームを避けると、身を翻して一番近いビットをそのブレードで切り裂く。

 ただの一撃でビットは真っ二つになり破壊された。

 

「私は、国家代表候補生ですのよ!」

 

 セシリアの声が聞こえる。背後のビットがビームを放とうとするが、プラシドが流れるような動きで背後のビットへと飛び破壊する方が早い。

 これで二機、飛んでいるビットは残り二機。

 その程度ならば破壊するのは造作も無いと、プラシドはセシリアへと飛ぶ。

 

「(あの薄い装甲、胴体に一撃当てれば体勢は崩れますわ……そしてそこに一斉攻撃を撃ち込めば)」

 

 一瞬、脳内にて次の展開を想像する。

 セシリアは近づいてくるプラシドとの距離をしっかりと見据えた。

 そして……距離が近づいた瞬間、セシリアが笑みを浮かべる。

 

「かかりましたわ」

 

「なに?」

 

「四機だけではありませんのよ!」

 

 腰部の二本の銃口がプラシドの方を向く。

 この戦闘にてはじめて驚愕というものを見せるプラシド。

 

『悪い、報告すんのわすれてた』

 

「貴様ァ!」

 

 このスピードでは減速できても止まって方向転換して回避することもできない。

 避ける方法は―――皆無。

 二つの銃口から放たれる二発のミサイル。

 

「クッ!」

 

 放たれたミサイル―――そして、プラシドを爆発と共に爆煙が覆う。

 セシリアは爆煙から離れて、同時にプラシドがいるであろう場所に腰部のミサイルを含めた四機のブルーティアーズにて一斉射撃を行った。

 何度も起こる爆音に、セシリアは笑みを浮かべる。

 自らの勝利を確信した彼女は爆煙の方を見つめ続けた。

 

「貴様、蜂の踊りを見たことがあるか?」

 

 たった今、倒したと思った男の声が聞こえる。

 それに不信感を抱くセシリアは、驚愕に顔を歪めた。

 爆煙が晴れ、そこに飛んでいるのは間違いなくプラシドだ。

 

「ふん、この問いは無意味か……ただ確かなことは、貴様は俺に敗れるという運命に縛られている!」

 

 プラシドは左腕でセシリアに指差す。

 言葉も出ないセシリアを相手に、笑みを浮かべたプラシド。

 

「貴方ッ、なぜ……直撃のはず!」

 

「それはどうかな?」

 

 不敵に笑うプラシドは、会場でその戦いを見ている生徒たちを魅了する。

 大勢が見ていようと、そこはたった二人だけの世界。何人も入ることは許されない。

 セシリアが動揺しながらも、プラシドのISを良く見る。

 

「右腕?」

 

 プラシドの右手、ワイゼルG(ガード)と呼ばれる武装だけが破壊されていた。

 ボロボロの右パーツが粒子となって消えると、プラシドはなにもついていない右腕を軽く振る。

 

「貴様が攻撃を放った瞬間、ワイゼルGの効果を発動した。攻撃はすべて俺の右腕、つまりワイゼルGへと誘導される」

 

「なっ!」

 

 つまり攻撃はすべて右腕に集中していったということだ。

 それでもシールドエネルギーは爆風などによって削られ、半分ほどまでに減っていた。

 

『プラシドはこういうところでツメが甘いんだ』

 

「黙ってろ、もう油断などしない!」

 

 プラシドが右腕を真横に向ける。

 緑色に輝く粒子がプラシドの右腕に集まる。

 右目につけられた端末についた∞のマークが緑に輝き出す。

 

「現れろ、ワイゼルG3!」

 

 右腕に新たに装備された腕パーツ。

 それは先ほどと違い前腕部分には盾がついていて、先ほどより強固なものであるのは明白だ。

 

「これが俺の機皇帝ワイゼル(インフィニティ)だ!」

 

 驚くセシリアを他所に、プラシドが左腕のブレイドを振るい、飛ぶ。

 すぐに我に返ったセシリアは残った二機のビットと二つの銃口、計四つのブルーティアーズを操作する。

 だが飛んでくるミサイルもすべてプラシドのブレイドに切り裂かれていく。

 二つのブルーティアーズがプラシドの背後に配置されるが、プラシドがその程度のことを意識できないはずがない。

 

「そこかぁ!」

 

 プラシドが突如振り返り、視界におさめた二つのビットに接近し、切り裂く。

 

「俺の剣は全てを切り裂いてきた……貴様の小道具を切り裂く程度、造作もない!」

 

 全てをビットを切り裂いたプラシドがセシリアへと視界を移す。

 放たれたスターライトmkⅢ。

 それを切り裂くプラシドは自らのIS機皇帝ワイゼルのスピードを持って接近していく。

 距離を離しながらライフルを撃ち続けるセシリアだが、プラシドはその距離を徐々に詰めていった。

 

「無駄だ、すでに運命は決まっている。その運命(さだめ)を切り裂く力も、撃ち貫く力も無いお前では……俺には勝てん!」

 

「貴方は一体……ッ!?」

 

 スターライトmkⅢの銃身を切り裂いたプラシドが、セシリアの懐に入る。

 プラシドはがら空きのその体をブレイドで切り裂く。

 ISのシールドバリアにて衝撃だけがセシリアの体に伝わる。

 

「(展開が遅い近接装備ですが、出して軽く牽制すればさがれる……そうすれば私のフィールドに相手を誘い込める!)」

 

 思考し、セシリアは攻撃をさらに一度喰らいながら自らの武器を呼ぶ。

 

「インターセプター!!」

 

 名を読んでから、わずかにタイムロス。その間にさらにプラシドの一撃を受けるものの、なんとか近接戦闘用装備を呼び出してプラシドのブレイドを防ぐ。

 だが力により徐々に背後へと下がることを余儀なくされるセシリア。

 

「無駄だ!」

 

 プラシドの蹴りがセシリアの脇腹に直撃し、体制を崩したセシリアのインターセプターがプラシドの右手に叩き落される。

 これでセシリアには身を守る術が無くなってしまった。

 勝負は決まったも同然だろう。 

 

「機皇帝ワイゼルの攻撃……」

 

 ワイゼルの腕のブレイドに青いオーラが纏いつく。

 その青いオーラは徐々に形をなし、竜の頭のようになる。

 

「ワイゼルアタック!」

 

 左手の青き竜のオーラが付与されたブレイドが、セシリアを切り裂いた。

 それによりシールドエネルギーはゼロになり、試合終了のブザーが鳴り響く。

 ショックと、動揺を隠せずに体の力を抜くセシリアの腕を掴むプラシド。

 

「貴方は……」

 

 セシリアの視界に映るプラシド・イリアステルという男の表情は、優しいというか、生ぬるいというか、そんな感じだ。

 決して先まで戦い続けた争いを好むような表情をしていない。

 それに戸惑い、先よりも動揺するセシリアが、考えていた言葉を全て消し、今そこにある疑問を投げかけた。

 

「貴方は―――誰、ですの?」

 

 そんな疑問に、目の前の彼は屈託の無い笑みを浮かべる。

 

「イリアステルの三皇帝の一人―――ってのは憶えなくても良いか……プラシドだ」

 

 そんな自己紹介と共に、セシリア・オルコットは彼から視線を外せなくなっていた。

 跳ねる白銀の髪。地上から数メートルのその場の風に、その髪は揺れる。

 

 

 

 これがIS学園設立以降はじめての男性IS操縦者の戦闘。

 そして、IS学園にて彼ら(プラシド)のはじめての戦いでもあった。

 

 

 




あとがき

初戦闘にござる。当初は圧倒的性能にプラシド圧勝のはずだったのでですが彼の性格を考慮してこういうことにしたでござる。
ついでにこうした方が次回のためになる、ということでございました。
戦闘がかけたのでこれでもう満足しそうで候。   蟹「こんなことでお前に満足されてたまるかッ!」
まだ満足できないようなので頑張るでござる。

次回は驚愕の展開になると、思います。
では、次回をお楽しみにしていただければ、まさに僥倖!!
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