機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス 作:王・オブ・王
ISよりも一回り大きいであろう巨体を飛ばしながら、プラシドを追うISもどき。
それはプラシドを追っているのか、その前を走る束を追っているのかはわからないが、間違いなく“俺たち”の敵なのは確かである。
前を行く束がホイール・オブ・フォーチュンをターンさせた。
周囲を回るたった一つのホイールだからこそできる芸当である。―――というより、いつのまにやらそんな技を身につけているとは……。
こちらを向きながら走る束。
「さぁプラシド君、やっちゃえ~!」
まったく、簡単に言ってくれることである。だが、こうするのが久しぶりだからか嬉しそうなプラシド。
非常に面倒な二人が非常に面倒なことにハイテンションになっていて、非常に面倒である。
プラシドがハンドルから片手を離して開いた手を少し横上を飛ぶ巨大なISもどきに叫ぶ。
「さぁ行くがいい、機皇帝グランエル∞!」
そんな声と共に、俺は出ざるをえないので出ることにした。
グランエルの機体を体に、俺は“その戦場”へと姿を現すことにする。
俺たちの“恩人”である束に手を出されては黙っているわけにもいかない俺と、コイツ。
ならば俺たちの取る選択しは一つじゃないか、そう……この世界に来たときからしてきたようにすれば良いのだ。
その“剣”で全てを断ち切る!
「さぁ、シンクロ召喚だ!」
―――別にこれはシンクロ召喚ってわけじゃないんだけどな。一応前口上はするが……な!
その中で、光の中で、俺は
「シンクロフライトコントロール! リミッター解放、レベル5!」
自らの内より出てし力に、俺の意識が乗り移るのが意識できる。
「ブースター注入120%! リカバリーネットワーク、レンジ修正! オールクリア!」
俺がソレになった瞬間、背後の俺はまた俺の中へと還った。
これこそが、グランエルの力、機皇帝の力、過去を変えようと必死であがき続けた“奴ら”の力の一端!
「GO! シンクロ召喚! カモン!
その光の中から俺は姿を表す。ISもどきに人が入っていれば相当驚愕したのだろうけれど、機械なのは間違いないようだ。
まったく同様していない。
俺の姿はグランエルでもなければブレード・ガンナーでも無く、TG パワー・グラディエイターである。
「出たねぇ!」
束の嬉しそうな声が聞こえるが、気にしないことにしよう。
俺はアックスを両手で持って巨大なISを睨みつける。
ちなみに追記するならば今現在、ずっとD・ホイールで進みながらこの行動を全て行っているのを忘れないで欲しい。
「行け、TG パワー・グラディエイター!」
プラシドの支持がなくても行く! と言いたいが、どうもノリノリのプラシドは放っておいた方が賢明だ。
それをよくわかっているからこそ俺は聡く賢明な生き方ができてきた。
じゃなければプラシドと束を両方相手なぞ、死んでしまうわ。
俺は巨大なISもどきへと接近する。
「マシンナイズ・スラッシュ!」
叫ぶと同時に、アックスを振るう。
両腕をクロスして、そのアックスを受けるISもどきだが、パワーで圧倒的に俺の方が上だ!
その力のまま切れないなら切れないで振りきり、ISもどきを高速道路下の海へと叩き落とした。
「終わりか?」
「ふんワイゼルを出すまでもない」
まったくそのとおりである。
だが、こちらを見ている束は楽しそうというより、“甘い”とでも言いたげな目だ。
それはまるで、何かをわかりきっている状況下でするような……罠カードを見誤った時のような?
「そんな姿であれに勝てるかな?」
バイクを走らせながらそう言う束に、俺はわずかに苛立ちを感じた。
あまりにも何が言いたいのか、遠まわしすぎる。
「俺が負けるとでも言うのか?」
「プラス思考!」
「なに言ってんだテメェ!?」
うお、ついつい悪い口調が出てしまった。でも今のは仕方ないと思う。
「きたぞ!」
プラシドの声に我に帰ると、俺の真上に黒い巨大な影。
それは間違いなく先ほど海へと打ち落としたISもどきである。
「なにぃッ!?」
俺の胴体へと拳を打ち込み、高速道路を転がる俺。
なんとか体勢を整えるが、俺が体勢を整えたときにはすでにISもどきは次の攻撃モーションに入っており、両腕を俺に向けていた。
その巨大な腕の甲部分に集まるエネルギー。
避ける暇すら与えず、その機械のAIは即座に判断し俺へとその手のレーザー兵器を放った。
◇◇◇◇◇◇
ISもどきの攻撃がホセへと直撃した直後、巨大な爆発が起きた。
束とプラシドの間で起こっていたその戦い。
ホセが攻撃を受けたときの爆風に、プラシドがわずかにその威力を体に浴びた。
「ぐぅッ!」
痛みや風圧などを耐えて走行するプラシドは横を飛ぶ黒いISを睨みつける。
ホセを倒せば次のターゲットはプラシドか束。ワイゼルを出す準備すら必要かと思われた……だが、そうではない。
爆煙の中から、薄い赤の膜を纏ったパワー・グラディエイター、しいてはホセがD・ホイール以上のスピードで飛び出したからだ。
「ふん、最初から本気で行けば良かったものの……」
口元に笑みを浮かべてそうつぶやくプラシドだが、すでにホセの姿は見えない。
黒いISもどきは現在索敵中なのだろうけれど、そのスピードより圧倒的にホセの方が早い。
ホセがやろうとしていることを、プラシドは悟っていた。
もちろん、前方にいる束も同じくその顔でわかるほど、待っていましたと言わんほどの笑顔。
「さて、“君”はどういう風にこの束さんを満足させてくれるんだい?」
言って笑う束に、プラシドすらも笑みを浮かべる。
黒いISはホセを逃亡したと判断したのか、その体を高速道路を走行する篠ノ之束へと向けた。
だが、プラシドも束もどちらも驚愕や恐怖の表情も浮かべることはない。
その表情に見えるのは確実で、絶対な―――余裕だ。
『お前にそんなことで満足されてたまるか!』
通信機から聞こえる叫び声と共に、先へと飛び去ったホセが後方から飛んでくる。
赤い光をその身に纏いながら飛んでくるホセは今だ二人と一機の位置からでは小さい。
それでも確実に近づいて来ていた。
「アクセルシンクロォォォッ!!」
間近に聞こえる叫び声は確かにプラシドと束の真上から聞こえたものであり、二人の真上にはオレンジ色の姿をしたホセが、TGブレード・ガンナーの姿で飛んでいる。
それが彼のもう一つの姿であり、本気の時の姿だが、まだこれ以上の本気は隠し持っていた。
ただ、それをここで使用するのに問題があるというだけだ。
それに、この程度の相手であれば……。
「GO! TGブレード・ガンナー!」
ホセが銃のトリガーを引く。
マシンガンのように連続で吐き出される弾丸を、黒いISはその巨体に似つかわない動きでよける。
だがホセはその黒い巨体より素早く移動し、至近距離で弾丸を撃ち込む。
直撃と共に煙を上げながら飛んでいく黒いISは、上空へと飛び上がった。
それを追うホセ。
束とプラシドの二人はバイクを止めて上空を見上げる。
上空でぶつかりあうオレンジと黒の二機。
その巨腕を振り回しながらホセを落とそうとするが、ホセがその程度の攻撃に当たる訳もなくブレードガンナーのスピードをもってして避けながら銃を撃ち黒いISもどきの体勢を崩させる。
直後、銃からサーベル状のビームを伸ばし、黒い機体に斬りかかった。
「腕をもらう!」
振られたビームサーベルに腕を落される黒い機体。
斬りかかったその勢いのまま、ホセは体を回転させて蹴りをあびせる。
わずかに下がる黒い機体に、ホセはさらに飛ぶ。
残像すら残すブレードガンナーのスピードをもってして、すれ違いざまに黒い機体のもう片方の腕を切断。
「まだだ!」
そこから急ターンで身を翻し、黒い機体の両足を一撃で斬った。
「これこそがアクセルシンクロ! そして、クリア・マインド!」
黒い機体の正面にいるホセは、そのISもどきの中央にサーベルを突き刺す。
ホセの手にある銃に集まる目に見える粒子―――ホセがトリガーを引いた瞬間、その銃口からは一夏に放ったビームがはき出される。
それは黒い機体を貫いた。
大きな穴の空いた黒い機体を高速道路下の海に落とすと、ホセは束とプラシドのいる地上へと降り立った。
「なにやってんだお前ら」
ホセがそう言うのも仕方がないことである。二人は心配していたわけでも返ってきたホセに笑顔を浮かべるわけでもない。
ただ、スタンディングデュエルの最中であったのだ。
空中戦をはじめてすぐに始めたのだろう。展開は結構な終盤を迎えていた。
二人のどちらもホセになにかいうことはない。
プラシドはおなじみデュエルディスクで、束は昔懐かしき初期のデュエルディスクだ。
「束さんのバトルフェイズ! いけぇ、私のA・O・Jカタストル、プラシド君にダイレクトアターック!」
ガションガションと音を鳴らしながら、A・O・Jカタストルはプラシドにビームを飛ばした。
「ぐわあぁぁぁッ!!」
ダイレクトアタックにより吹き飛んだプラシド。
それによりデュエルが終了したのか、ソリッドビジョンが消え去り、二人はデュエルディスクを待機状態にする。
立ち上がったプラシドがホセを視界に入れる。
「ふん終わったか」
プラシドはそう言ってホセへと近づく。
「こっちも終わったけどね~」
「人間ごときに……気に入らん……気に入らんぞォォ!!」
◇◇◇◇◇◇
俺が戦っている間のデュエルは……なんだか熱いバトルだったようだ。
まぁプラシドが負けたようだがしょうがない。
この世界にもマジック&ウィザーズ。つまりデュエルモンスターズというカードゲームは存在していた。
それを知ったときのプラシドの口元に浮かぶ笑みは、それもはもう……といった感じである。
デュエルディスクは俺たちが話をしてから束が突如販売してみて、とんでもない収入を得たというのは語るまでもないだろう。
世界的カードゲームだからな。
「ていうか、俺が戦ってる間にお前らは……」
「先に挑発してきたのはこの女だ!」
まぁ、挑発に弱いプラシドもプラシドだと思うよ。俺は……。
さて、とりあえず事情を聞こうか?
俺は
「ふぅ、さて……あれはなんだ?」
デュエルディスクとデッキをしまって俺は聞く。
束は楽しそうに笑うが、俺はまったく楽しくないのだが?
こう、俺としてはさっさと用件を教えて欲しいのだがな……あんなものを作れるとすれば誰でもない。
間違いなく束だけだ。
「無人機の試作品だったんだけど、ちょっとした“手違い”でね……」
「手違い、だと?」
そんな失敗をコイツがする? 数十カ国の数十万発のミサイルを同時に日本に撃てるような奴が、ミスだと……。
その確率はいったい何%ほどなんだ?
これは間違いなく作為だ。
「何を考えてる?」
「……やっぱりわかるか~さすがだね!」
ビシィッ、と俺に指を指して言う束だが、俺から言わせてみればただことをなかったことにされているにすぎない。
まったく、なにを考えているんだこの女は、どうせ答える気はないのだろう。
『おいホセ、なんとかしろよ』
―――できたら誰も苦労しないっての……。
「さてさて、束さんは忙しいからね!」
そう言うとデュエルディスクをD・ホイールにセットして、束はホイール・オブ・フォーチュンにまたがった。
思った時にはもう遅い。
『逃げられるぞ!』
「わかってる!」
俺も即座にD・ホイールにまたがる。
走らせようとグリップをひねるが、俺のD・ホイール、T・666が動き出すことはなかった。
原因を考えれば一人しかいないだろう。
そう、俺のはるか前方を走る人物、篠ノ之束だ。
このT・666だってプラシドの注文通りに束が作ったもの、動かさなくするようなモノを持っていてもなにもおかしくはない。
『おのれぇっ!』
「はぁ……帰るか」
バイクは束が見えなくなってから動くようになっていた。
まったく、面倒なシステムをつけてくれたものだな……非常にやっかいである。
そろそろ時間も時間だ。朝になって俺が無断外出をしていたのが織斑先生に見つかれば間違いなく壊される。
「急がないとな」
バイクを走らせる。
―――それにしても涼しいな。
急いでいるけれど、それを忘れるぐらい気持ちがいい。
D・ホイールと呼べば良いのか、バイクと呼べば良いのかはわからないが、このT・666は間違いなく“俺たち”の相棒であり、はじめて乗ったときからしっくりときていたのを思い出す。
プラシドが“アレ”を試したときも楽しそうにしていて……危うく外に行こうとするので俺が必死に止めたのもいい思い出……いい思い出ではないな、やっぱり。
『俺が究極体になればIS学園まですぐにでも着く』
「俺が嫌だよ!」
『なにぃっ!?』
本気で驚くなよ……。
いや、実際にあの形態は嫌だな、半身が千切れる思うと怖くでしょうがない。
あと変形ってどういう感覚だよ。
俺は絶対やらんからわからないし、わかりたくもない。
高速道路の上から見える水平線の彼方には、太陽が登り始めていた。
少しばかり急ぐ必要がでてきたな。
気持ちのいいぐらいの風を受けながら、俺はT・666のスピードを上げた。
あとがき
とりあえず、今回は束さん回……になるはずだったけれども微妙でござる。
やはりこの段階では彼女を思いっきり出すまでには至らぬようで候……え、ガッツリ出てた? まぁ、凄まじい人でござるから今回はこれだけということで!
次回はみなさまお待ちかね、彼女の登場でござる。そう! シェンロン……ガンダァァァァムッ!
では、また次回お会いいたそう!