機皇帝ワイゼル∞インフィニティ・ストラトス   作:王・オブ・王

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第七話 進化する獣 一夏と代表候補生!

 なんとか帰ってくることができたが、時刻も織斑千冬が行動する前だったのかなんとかなった。

 寮に帰って少しして、朝ごはんを食べてから俺専用の部屋の追加部屋に少し入ってその後に学園に向かう。

 いつも通り、現在俺は相変わらずの裾の長い制服を着て、腰に剣を引っさげて歩く。

 プラシドは睡眠を取らないが、俺は精神的に睡眠を取らなくてはなんか人間という枠から外れたようなので睡眠をとるために、今日はプラシドと交代だ。

 学園の廊下を歩いていると、一組の前に見慣れぬ人影が立っていた。

 

「中国代表候補生、凰 鈴音(ファン リンイン)、今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 

 まぁ放っておいて問題無いだろう。

 そう思っていると、プラシドは前の方の席だからか、その凰鈴音の背後に立つ。

 

「邪魔だ女」

 

 ―――っておいぃぃぃっ!!?

 びっくりしてんじゃん、みんなね! 目の前の凰鈴音ももちろんだけどみんなビックリしてんじゃん!

 なんでもうちょっと言葉をオブラートに包まない!

 

「なっ、あんたもう少し言い方ってもんが……って男ォッ!?」

 

 まぁビックリするわな。

 

「チッ……邪魔だ」

 

「あ、あんたがプラシドね、一夏につぐ男性IS操縦者っていう!」

 

「だからどうした」

 

 あら、こういう強気な女は嫌いなのかプラシド?

 まぁ聞くまでも無いだろうが、態度を見ればわかる。

 大抵プラシドは人間相手にはこんな感じな気もするがな。

 

「やかましい人間だ」

 

 プラシドは面倒そうにつぶやく。

 だが、それがまた凰鈴音を激昂させるというのに、まったくもって馬鹿な男である。

 しかも自分が喧嘩を売っていることに気づいていない。

 この年頃の男はそういうものだ。俺にも覚えが……無い。

 

「ふん」

 

 プラシドは凰鈴音を無視して自分の座席、つまり一夏の後ろの席につく。

 

「あ、あんた、覚えてなさいよ!」

 

 捨て台詞を吐いて消える凰鈴音。

 プラシドはまったく気に求めてないという様子だが、一夏やセシリアは苦笑しているのみ。

 いや、それだけでなくクラス中の生徒が苦笑して俺たちを見ている。 

 あぁ、安心して眠りにもつけねぇよ。

 ―――おいプラシド、頼むから大人しくしといてくれよ?

 

『ふん、無駄に目立つ行為など誰がするか』

 

 ―――してるんだよ!

 

『チッ……うるさい奴だ』

 

 もういや、でもとりあえずは寝ておこう。

 俺はそっと意識を消した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 そのまま、プラシドの中にいた彼は寝続けて、昼時へと変わった。

 昼ごはんは毎度学食のプラシド。

 私生活は基本的に彼に任せってきりのプラシドは新鮮さを感じながら立ち上がる。

 

「おいプラシド、飯行こうぜ!」

 

 一夏からの提案。

 ―――なぜこの俺がこいつと同じ席で飯など……。

 などと思いながら考えていると、いつものプラシドと違うとわかっている一夏は苦笑する。

 しょうがないと思いながらも、隣に立つセシリアをチラッと見た。

 少し溜息をつくも、セシリアは頷く。

 

「一緒してくださるのであれば私がお昼ご飯代を出してさしあげますわよ?」

 

 諭すようにいうセシリア。

 

「俺好みの交換条件だ」

 

 ニヤリと笑うプラシドだが、どうしてここまでこの男を誘いたいのかと言うと、聞きたいことが山ほどあるからだ。

 今日という日にこうなってくれたのは些か厄介ではあるが、今日を逃せばいつ聞けるかわからない。

 だからこそ、大して高くもない食事代でなんとかプラシドを釣る。

 

 

 

 少し遅れていったプラシドとセシリアが並んで昼食を手に入れたときには、すでに一夏と鈴は食事をしていた。

 なぜかはわからないが、一夏を挟むように座る箒と鈴。

 一夏が嬉しそうにしている。

 

「ここに座るといい」

 

 箒が一夏の方によってプラシドとセシリアの座るスペースを用意した。

 プラシドは大人しく箒のとなりに座り、そのとなりにセシリアが座る。

 そのセシリアにおごらせたカツ丼を見て、プラシドは黙ったまま割り箸を割った。

 

「あっ、あんた!」

 

 そんな声に、プラシドが視線をそちらにやると一夏のとなりの鈴だ。

 ようやく気づいたのかと、笑う一夏の腕がつねられる。

 せっかく一夏と話せると思っていたのにまさか『一夏の一号さん』が来たせいでそれもできず、挙句の果てには今朝自分にあんなにも小馬鹿にした男。

 まったくもって腹ただしいものである。

 

「今朝のこと忘れてないからね!」

 

 ビシィッ! と指差して言うが、当の本人であるプラシドは鈴を一瞥してすぐに食事を再開。

 その余裕満々の態度が余計頭に来る鈴。

 さすがにプラシドの記憶の中にある“この時”の鈴よりも鈴の余裕はない。

 全てはこの男、プラシドのせいだ。

 

「このニワトリ頭っ!」

 

「ムシケラ風情が俺を愚弄する気か!」

 

 立ち上がるプラシドと、それに呼応するように立ち上がる鈴。

 その二人の大声に周りから注目の目が集まる。それに気づいて鈴をいさめる一夏。

 そして同様にセシリアもプラシドの肩をそっとおさえる。

 

「プラシドさん、そんないきなり怒鳴らなくても、少し落ち着きましょう、ね?」

 

「……フン」

 

 黙って座るプラシドが昼食を続ける姿を見て、鈴も座ってとなりの一夏に耳打ちをする。

 

「あいつなんなのよ」

 

「少しあってな、まぁ悪い奴じゃない……かな?」

 

 いつもの、ホセのような性格の彼が悪い奴じゃないのは確かだ。

 自分にISのことを教えてくれて、なおかつ戦い方も弱点も白式での近づき方などその他もろもろと教えてくれた。

 けれどプラシドの、こっちの方は正直良いやつかと聞かれれば微妙なラインだ。

 

「どこがよ、ていうかなんで私『ムシケラ』扱いよ?」

 

「大丈夫だ。ああなってる時は俺だってムシケラだから……な! プラシド!」

 

「なんだ織斑一夏」

 

「違うじゃない!」

 

「悪かった」

 

 ムキー! と怒る鈴に『騒がしいぞ!』と言ってまたプラシドと鈴が言い争いになる。

 こう見ていると似た者同士なのかもしれないと思ってしまう一夏。

 まぁ鈴はプラシドのように天然で喧嘩を売るような人間ではないが……。

 チャイムが鳴ると、鈴は溜息をついた。

 

「じゃあ一夏、そっちの練習が終わった頃に行くからね。時間空けといてよ」

 

 そう言って食器を片付けに行く鈴。

 箒がぐぬぬ、と拳を震わせているが、それを見てセシリアは苦笑した。

 プラシドはまったくなにも思っていない表情で食事を続ける。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 放課後、練習のためにアリーナに集合した一夏、箒、セシリア、そしてプラシドの計四名。

 HLが終わると同時に意識を覚醒させたプラシドの中の彼、これで三人とも安心というわけだ。

 正直箒はプラシドとあまり話がことがないから突然性格が悪くなったり良くなったりで良くわからない。

 

「で、どうするんだ?」

 

 プラシドの質問に、三人が難しそうな顔をする。

 今回、箒が日本の量産型IS打鉄を借りてきたまでは良かったのだが、これでどう練習するかだった。

 ここは気を利かせて箒とセシリアに一夏の相手をさせてやりたかったが、そんなに実のある練習になるかは微妙だった。

 だからこそ、一時間は二人に好きにやらせてやるつもりだったプラシドだが……。

 

「セシリアは参加してこなくてもよかったのか?」

 

 いつも通りのISスーツであるプラシドが隣でまったくデザインも雰囲気も違うISスーツを待とうセシリアに聞く。

 微笑を浮かべなが頷くセシリアを見て、わずかに疑問を感じた。

 ―――セシリアは一夏のことが好きなんじゃないのか?

 そう思っても答えは出ないし、聞く気もしない。

 

「む、剣道の大会で優勝するほどの腕前を持つ篠ノ之箒と互角にわたりあう……か」

 

 数年もブランクがあるにもかかわらずここ数週間でその勘を取り戻した。だとすればとんだ化物である。

 いや、もしかすれば織斑一夏はそれほどの潜在能力を秘めているのかもしれない。

 事実、六年間かなり戦闘経験をつんできた自分に一撃を掠らせたのだ。しかも初の実戦で……。

 箒と剣を交えぶつかりあう一夏を見るプラシドの目は、わずかに細まった。

 

「そういえば、プラシドさん私と戦ってくださるという約束は?」

 

 そういえばリベンジしたいんだったなと思い頷くプラシド。

 

「あぁ、クラス代表候補戦が終わったらやろう。今は俺たちのクラス代表に勝ってもらわなければならないからな」

 

「そうですわね」

 

 笑顔で頷くセシリア。

 それを見るプラシドが、みけんを押さえて軽いため息をついた。

 ISスーツの相手とは、目のやり場が困るものである。

 

 

 

 一時間ほどしてから、一夏との特訓相手をセシリアに変えるよう指示したプラシド。

 現在アリーナの観客席にて座ってその特訓を見ているプラシドと、箒。

 二人の視線の先では青いビーム兵器を避けている一夏。

 筋はかなり良い。

 

「イリアステル」

 

「ん?」

 

 突然声をかけられて驚き半分だが、普通に返すプラシド。

 イリアステルと呼ばれることに今だに慣れないからか、わずかに反応が遅れる。

 

「お前はたしか、姉は……篠ノ之束はどうだった?」

 

 ―――ああそうか、数年も離れていたんだものな。気にはなっているよな。

 

「元気一杯でこっちが疲れるぐらいだ。お前のことずっと心配してたぞ」

 

 間違いはない。いつも元気で振り回されていたプラシドだが、一日たりとも箒の名が出なかった日なんてない。

 就寝前などに箒の話題を少し振ってみればそれから一時間は寝れないことを覚悟しなければならないほどだ。

 彼女は間違いなく妹を愛している。

 ただ天災ゆえに見えていないのだ、人の心が……。

 

「私のことを心配……か、あの人のせいで私はひどい目にあったというのに」

 

 ―――たしかIS学園に入ることになったのも束の妹だから強制だったんだっけ? 束はあれをわかってないんだろうけどさ。

 プラシドは腕を組んだまま頷く。

 だが、その内仲直りはさせようと、心に決める。

 

 

 

 そして一時間、次はプラシドが一夏の特訓をつける番だ。

 IS『機皇帝』のワイゼルを纏ったプラシドが、一夏の前に立つ。

 中身に関してはプラシド本人ではなく、先ほどまでと同じく彼だ。

 

「さて、一夏……ここまでの特訓、篠ノ之には剣を、セシリアにはオールレンジ攻撃の回避をしてもらったわけだが俺とは実践に近い訓練をしてもらう」

 

「つまり、戦うってことか?」

 

「まぁ、俺はかなり手加減するけどな……いつでもかかってくるが良い」

 

 軽く腕を振るう、それと同時に一夏がプラシドへと突っ込む。

 横から振るわれる雪片弐型を受け止めたプラシドは目を細めてその力を実感する。

 悪くない、力を込める軸もブレていなければ狙いも悪くない。

 

「末恐ろしい成長速度だ」

 

 一夏の刃を受け流すと、プラシドは一夏に蹴りを浴びせて、空へと飛んだ。

 それを見て、一夏はプラシドを追って空中へと向かう。

 (ホセ)自身、前回戦ったときを思い出しても一夏の成長には驚かされていた。

 さすが織斑千冬の弟、と思う半分……これはもしかしたら織斑千冬をいつか越すのではないかと思わされるほどの成長。

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 一夏が空中のプラシドに向かって縦一閃で刃を振るうが、プラシドはそれを受け取め、受け流す。

 左腕の刃を振るい、一夏のISを攻撃。

 バリアエネルギーが現象するのがわかる。

 

「まだまだ!」

 

 横から刃を振るう一夏だが、同じように受け流すプラシド。

 だが、受け流された刃は先ほど力を込めていないからかそこまでおお振りにはならず、すぐに刃を返してプラシドを受け流された場所から斬る。

 

「なにっ!?」

 

 ワイゼルの胸部分に一撃を食らわせると、プラシドがわずかに体勢を崩す。

 隙を見つけたと言わんばかりに、一夏は雪片を構えて再び斬りかかるも、プラシドはワイゼルの右腕を一夏に向けて、そのまま右腕を射出する。

 直撃した一夏がプラシドの追撃をできず地上に降りる。

 プラシドも同じく地上に降りるが、驚愕が拭えないでいた。

 

『織斑一夏、あの順応性はムシケラのくせに凄まじいな』

 

 ―――本当にな、あいつは化物か?

 心の中でプラシドと会話をする(ホセ)に、再び一夏が斬りかかる。

 今度は受け流さずその刃を受け止めた。

 

「すさまじいこの順応性、いやこれは適応しているわけではなく……進化しているか?」

 

「なに言ってんだ?」

 

 つば競り合うプラシドと一夏の二人。

 

「そのままの意味だ。セシリア戦のBIT兵器だって並の操縦者であればあのままBITを落とすことなどできるはずもなく落ちるだろう、だがお前は全部破壊して、セシリアを後一歩まで追い詰めたそれはまさしく進化」

 

『人類の進化、人間のくせにこいつ……』

 

 プラシドが何を思ってか彼の中で言う。

 二人は刃を何度もぶつけ合うがどちらも優勢になることも劣勢になることもない。

 何度も実戦を積んているプラシドと同じことができるというのは、まさしく恐ろしい進化。

 プラシドも本気ではないとはいえ、織斑一夏という人間に対して戦慄を抱く。

 

「進化する獣か……」

 

「なんだって?」

 

 一夏は不思議そうな表情をするが、次の瞬間、プラシドの目が光った。

 刃がぶつかった瞬間、力点をずらして一夏の刃を受け流す。

 驚愕する一夏だが、プラシドは横から蹴りを放って一夏を吹き飛ばした。

 立ち上がる一夏とその場に佇むプラシド。

 

「そろそろ終わりにしよう。十分だ」

 

 その一言で、プラシドはもちろん一夏も同時にISを粒子化する。

 倒れる一夏と、その場に立っているプラシド。

 流石に疲労はプラシドの比じゃないようだ。

 連戦すればそうもなるだろうと、笑みを浮かべながら頷いたプラシド。

 とりあえず、今日のところは解散といった所だろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜、九時を過ぎた頃にプラシドは寮の屋上のベンチにて缶コーヒーを飲んでいた。

 寮の屋上はIS学園校舎の屋上と同じように芝生があり、自動販売機だってある気分転換にいい場所だ。

 ベンチに座って何か考え事をしているプラシド、現在表に出ている彼。

 

「隣、失礼しますわね」

 

 そう言って隣に座ったのは、セシリア・オルコットだった。

 彼女が自分のパーソナルスペース内に入ったことすら気づかないほどに、プラシドは考え事に没頭していたのだ。

 

「なにか考えごとですか?」

 

「そうだな、難しいことだ。俺はなぜここにいるのか、とかな……」

 

 そうつぶやくプラシド。隣のセシリアは静かに手に持った缶紅茶を飲む。

 両手で持った缶を下ろすと、そっと空を見上げてつぶやく。

 なんとなくではあるが、束を思い出したプラシド。

 こうして、こんな風に話しをしたのはこの世界では束一人だったからだ。

 

「私は国のため、ここにいますわ。一国の名を背負うものとして恥を晒すわけにはいきません……だから、私はここにいます」

 

 それがセシリアの決意なのだろう。きっとその中には死んだ両親、いや母親のためなどもあるのだろうけれど、それでも確かな“決意”や“目的”があった。

 しかして自分にはそれが無い。

 最低限織斑一夏のサポートができれば退学すれば良いと思っているほどだ。

 まったくもって先が見えない状況下、なにを目的にすれば、なにを求めれば良いか……。

 

「深く考える必要はないと思います。まだ、時はあるのですから」

 

 その一言と共に、いつのまにか飲み干した缶紅茶を自動販売機の空き缶入れに投げるセシリア。

 立ち上がったセシリアはプラシドの方を見て微笑む。

 

「私は戻ります」

 

「あぁ、俺はもうしばらくここにいるよ」

 

「お話できてよかったですわ、それではこれで……」

 

「ああ、また明日」

 

 屋上から去るセシリア。

 わずか15ほどの少女があそこまでの決意を持っているのだ。

 それに比べて自分は、と思うもなにをすればいいかわからないというのも事実。

 自分だけでなくプラシドも同じくで、生前もその後も目的が用意されていた場合と違い、今回は自らそれを見出さなければならないということで無い状態。

 いつかは見つかるかもしれないけれど、今自分たちにあるのは戦いだけだ。

 

「なんか無いもんかねぇ……」

 

 そんな時、派手な音と共に屋上へと入ってきた人影。

 そちらに目をやると、その人物は長いツインテールを揺らしてプラシドに気づいた様子もなく自動販売機で飲み物を買う。

 出てきたお茶を取ると、プラシドの方へとやってくるも、プラシドに気づいて躊躇した。

 プラシドの方を見ているのは間違いなく凰鈴音である。

 

「暇してたんだ、隣どうだ?」

 

 そんな気さくなプラシドに、今朝や昼の印象しかない鈴は怪訝な顔をするも少し離れて同じベンチに座る。 プラシドに一部始終を聞いて多少は聞いていた彼は、避けられても別段不思議には思わない。

 自分だっていきなり相手が友好的になれば疑いもする。

 数分はプラシドを警戒していた様子の鈴だったが、それもなくなると次は少し苛立ったというか、呆れたような雰囲気を出す。

 

「一夏関連か?」

 

 そう聞くと、驚いたような表情をする鈴。

 彼には大体わかる。先ほどのセシリアの訪問は以外だったが、今日この時間にこうしてここに現れたということは一夏の問題が発生したからだ。

 あれは天然でいて朴念仁だから……。

 

「なんで、わかんのよ」

 

「たった二人の男でしょっちゅうつるんでるんだ。それぐらいわかるさ」

 

 そう言って笑うプラシドに、鈴は驚き半分納得半分と言った様子。

 

「一夏とは知り合いだったようだし、お前も大体一夏に惚れてることぐらい察しもつく」

 

「なにそれ、一夏とあった女の子はみんな一夏に惚れるって言ってるようなもんよ?」

 

「その通りだ」

 

 鈴の方を見て断言するプラシド。

 最初、鈴はプラシドという人間に苛立ちを覚えていた。その偉そうなのと人を見下した態度にだ。

 だが今はなんでも見透かされているようなそれに苛立ちを覚えて……。

 

「あいつはそういう人間なんだよ、別に誰が悪いわけでもない」

 

 そう、一夏はそういう人間だ。だからこそ、あそこまでモテるにも関わらず誰とも付き合ったことも無い。

 鈴はそれを理解している上で、自分の約束も覚えられていないことを苛立つ。

 しかしそういうことをしっかり覚えている人間であればIS学園に来たとき、確実に一夏は誰かのものになっている。

 

「あぁ~もう、馬鹿一夏……」

 

「アイツを惚れさせるならばそれなりのことをしなければな」

 

 笑ってそういうプラシドの方を見て、やはりどこか怪訝な顔をする鈴。

 

「あんた、その今朝との違いはなによ。今朝そんな感じだったらあたしだって無駄にあんたに敵意をもったりしないですんだのに」

 

「……すまん」

 

 そう言って苦笑するプラシドに、鈴は突然吹き出した。

 あんなに『ムシケラ』などと言っていた人間が突然こうなるというのはさすがに腹に来る。

 笑いが止まらない鈴を、驚いた様子で見ているプラシド。

 そこから数分間笑い続けた鈴が、落ち着いて目元の涙を拭う。

 

「あ~おもしろ、今度ほかの子にいろいろ聞いてみよ」

 

「一夏に聞いたほうが早いぞ」

 

「一夏なんて知らないわよ! ギッタンギッタンにしてやんだから!」

 

 ―――なるほど、クラス代表候補戦か……。

 納得するプラシド。

 ならばその日を楽しみに待っているとしようと思った矢先、少し何かが引っかかった。

 記憶が曖昧なのだ。

 ―――どっちが勝つんだったか?

 

『ふん、そんなことは試合を見ればわかることだ』

 

 心の中のプラシドの声に、なんとなく納得したが何かが引っかかる。

 思い出そうとして出てくるのは先日戦った束の作った作品だ。

 

「さて、じゃあそろそろ戻るわね」

 

 そう言って立ち上がる鈴。

 来たときのようにプラシドを敵視するような様子は無く、ただ友達を見るような目だ。

 

「あんたもさっさと戻って寝なさいよ」

 

 鈴はそのまま屋上を出ていった。

 また一人になったプラシドは何かを考えている。

 今考えるべきことは自分の立ち位置についてだ。

 クラス代表候補生は一夏に譲った。これはよしとしてこの戦いの結末がどうなるかわからないということは、自分の中で整理がつかないことが山ほどある。

 どちらかが勝ってどちらか負ける。その時自分はどうすればいい?

 慰めればいい? それでも良いかもしれないがもし何かがあればここでどういう判断を取れば良い?

 

「まったくわからん」

 

『何を考えてるか知らないが、お前は無駄に考えすぎだ』

 

 ―――でもプラシドの作戦に乗るのも失敗しそうだしなぁ。

 

『なにィ!?』

 

 ―――そんな驚くようなことかよ。ルチアーノにだって言われてたくせに……。

 そんなことを言ってしまったせいでまたプラシドを激昂させる。

 それでも、彼もプラシドも本気で怒っていない部分を見ればこれもやりなれたやりとりだ。

 彼がプラシド相手にこういう冗談を言えるようになるまではいろいろと事件があったのだが、それを知っているのは彼らと束ぐらいのものだろう。

 クラス代表戦までは一週間と少し、その間プラシドも彼も彼らなりのできることをするのみだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ―――こちら、篠ノ之束の無人機を回収した。

 

 ―――任務完了、ただちに帰還する。

 

 ―――了解。鍵はそろった。諸君、パーティーの準備をしようじゃないか……。

 

 

 

 水面下にて『なにか』が動き出していた。

 

 




あとがき

今回は鈴が出てきましたね! みんな好きかい? ミス酢豚!
拙者嫌いではないで候。
次回は代表候補戦、いったいどんな結末を迎えるのか……と思ったか!
まだでござる、その間の話しがまだ続く、そして次回一組に新たな転校生推参!

次回をお楽しみにしてくれたらただただ僥倖!
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