定員割れなのに落ちたのでアカデミアぶっ潰します   作:家臣さん

4 / 4
第4話 ©ミスターサタン

 

 

 

 

 

神示 LP3400 手札2

□□■□□ 《幻獣王ガゼル》

□□□□□

 

千里 LP4000 手札4

□□■□□ 《封印されし者の右腕》

□□■□□ 《下克上の首飾り》

 

 

「俺の……ターン、ドロー!」

 

神示の頬を伝う一筋の汗は、ライフ差もカード枚数の差も開いているこの危機的状況を如実に表している。この逼迫した戦況を打破するには、デッキからのドローに懸けるほかない。

 

「……来たか! 俺は《幻獣王ガゼル》を生贄に捧げ、《サイバティック・ワイバーン》を召喚!」

 

《サイバティック・ワイバーン》 星5/風属性/機械族/攻2500/守1600

 

肌の大部分を覆う研磨された金属が頼りない街灯の光を受けて眩く光っている。蜷局を巻いて姿を見せたそのモンスターは、紅い翼幕を広げた後鎌首をもたげて咆哮した。

レベル5で攻撃力は2500。これは、首飾り(ブレスレット)を着用した右腕でも対処の出来ないステータスだ。

 

「更に手札から《死者蘇生》を発動して墓地の《有翼幻獣キマイラ》を蘇生させる!」

 

《有翼幻獣キマイラ》星6/風属性/獣族/攻2100/守1800

 

カードプールがいくら一昔前のものでも、由緒正しい《死者蘇生》は誰もが所持しているようだ。一切のコストもなしに墓地からモンスターを完全蘇生させる最高レベルのパワーカード。上級モンスターの連打に、千里の心は静かに高ぶった。

 

「……やるじゃねえか」

「バトルフェイズ! 《サイバティック・ワイバーン》で《封印されし者の右腕》に攻撃、さらに《有翼幻獣キマイラ》でダイレクトアタック!」

「ぐっ……! 墓地へ送られた《下克上の首飾り》の効果発動。このカードをデッキトップへと戻す!」

 

千里 LP4000→3800→1700

 

やはりこの男は只者ではない。デッキと自分の力を信じて仲間を助けるという、主人公が持ち合わせる性質を不足なく兼ね備えているようだ。少なくとも、今の千里にはそう思えた。

 

「俺はこのままターンエンドだぜ!」

「生意気な……俺のターンだ!」

 

相手に試練を与えるのが本来の目的であり、そのためのデッキ構築も行った。相手を煽るような表情で口元を吊り上げ、千里はカード名を宣言する。

 

「魔法カード《古のルール》! 手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する!」

 

空に立ち込める暗雲が辺りを暗くしていく。それは千里の切り札を呼び寄せる為に、立体映像(ソリッドビジョン)システムが計らった儀式。この世界のカードプールにおける最強のモンスターであり、唯一無二の絶対的な存在。

 

「現れろ! 《青眼の白龍》(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)!」

「なっ……?!」

 

《青眼の白龍》 星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

 

淡く光を発する翼を広げて尾を引く咆哮を放つと、ドロドロと胸の奥から沸き上がる焦燥感が神示を襲う。そのオーバーにも思えるリアクションに、異世界の者である千里は怪訝な顔をしていた。

 

『この世界における《青眼の白龍》や《ブラック・マジシャン》とかは千里さんが思っているよりも大きな存在なんです』

「……そうか。なら好都合だな」

 

《青眼の白龍》という圧倒的な力を見せつけて相手の闘争心を煽る事が出来るのならばそれで良い。非常に不本意だが、彼は強くなって久留巳というヒロインを守る役なのだから。

 

「お、お前は一体何者なんだ……!」

「俺の素性なんて関係ないんだ。あんたはただ目の前の俺を倒すよう考えればいい。俺は更に《封印されし者の左足》を召喚!」

 

《封印されし者の左足》星1/闇属性/魔法使い族/攻 200/守 300

 

「またエクゾディアのパーツ……! 何をする気だ?」

「さっきと同じだよ。《下克上の首飾り》を左足に装備してバトルフェイズに入る。《青眼の白龍》で《サイバティック・ワイバーン》に攻撃……更に左足で《有翼幻獣キマイラ》に攻撃!」

 

暗澹とする闇夜に輝く粒子は、召集を受けたように白龍の口元に吸収されていく。甲高い音が止んだ直後、高らかに攻撃名を宣言する。千里と、右腕が。

 

「行け! “滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)”!」

『くらいなさい! ダイナマイトキーック!』

「お前は右腕だろうが!」

 

神示 LP3400→2900→2300

 

《青眼の白龍》による攻撃により、神示のフィールドにはもうもうと土煙が舞い上がった。その隙間から見えた神示の顔は、どこか絶望にみせられているようだった。一条の光すらも遮断された目――千里の操るドラゴンの持つ圧倒的な力が、立ち向かう気力を必要以上に奪ってしまっているのか。

 

(流石は伝説級のカードだな。レプリカとはいえよくこんなカードが今のアカデミアにあったもんだ)

 

バトンを渡されてフィールドに舞い戻った《幻獣王ガゼル》も、《青眼の白龍》を前にして萎縮しきっている。マスターである神示が感じている畏怖をモンスターも共有しているのだ。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

「……俺の、ターン」

 

力のない声で宣言する。

 

『このままだとマズイですね』

「なんでだ」

『《青眼の白龍》の存在が強大過ぎてしまったのかもしれません』

「……そんなもんなのか? たかが立体映像(ソリッドビジョン)だろ?」

『さっきも言ったでしょう? このモンスターは特別なんです』

 

成長には段階を経なければならない。今の彼にとってこの試練はあまりに大きすぎてしまったらしい。世話の掛かる主人公である。

 

『千里さん! お説教タイムです!』

 

また右腕が訳の分からないことを言い出した。反応するのも面倒だが、彼女の言わんとしていることは不思議と理解してしまった。あの男を奮い立てる為に叱咤激励をしろという意味である。

 

『色々な世界の主人公さんたちがやってるじゃないですか。他人から叱咤を受けることで自分が成すべきことを再認識するんですよ!』

「な、何を言えばいい? いきなり言われても迷うぞ……」

『じゃあ、千里さんが思っていることをそのままどうぞ!』

 

自分が今思っていること――それだけならば考えるまでもない。この男に対する理不尽にも思える一方的な憎悪。果たして意味を成すのか分からぬままに、ただ歯に衣着せぬ言葉を吐きだした。

 

「おいてめぇ! ウジウジしてんじゃねーぞ!」

「……!」

「俺が仕方なしにお前に役を譲ってやったんだ! 主人公らしくしろアホ! この決闘に負けて不利益被るのはてめぇだけじゃないんだよ!」

 

そう言い捨てると、千里は木の根にもたせ掛けた久留巳に視線を映す。千里が言っている言葉の意味は全くもって分からなかったが、彼女を一瞥した意味だけは理解できた。

 

「く、久留巳……」

「お前が助けなくて誰が助けるんだ。助けてやれよ(俺を!)」

 

アニメで言うからこそ映える言葉を自ら口にした自分に若干の羞恥心を覚えつつ、思いの丈を正直にぶちまける。碌に会話をしたことのない彼女をさも寝取られてしまったような物寂しい感覚と、自分の身の消滅がかかっている焦燥を千里は抱いていた。

 

「そう……だよな」

 

神示にとってこの男の存在がますます分からなくなった事だろう。自分で彼女を攫っておきながら神示を鼓舞するような言葉を掛ける真意など、汲み取れるわけがない。しかし、確かに彼のおかげで自分が成すべきことを再認識した。

 

「俺のターン……ドローッ!」

 

もし神示が主人公としての器を持っているのならば、ここで逆転のカードを引き寄せるはずだ。

 

「俺は《融合回収》を発動。墓地の《融合》と、素材となった《バフォメット》を手札に戻す!」

「これでまた準備が整ったわけか」

「ああ。俺は再び《融合》を発動! 手札の《バフォメット》とフィールドの《幻獣王ガゼル》を融合――《有翼幻獣キマイラ》!」

 

《有翼幻獣 キマイラ》 星6/風属性/獣族/攻2100/守1800

 

三度姿を見せる神示のエースモンスターを前に、千里は心のどこかで高揚した。この静かな野原で、静かに物語が動き出すのを感じたのだ。まさに眼前に立つ男を中心として。

 

「……だがその攻撃力じゃ《青眼の白龍》を破る事は出来ねえぞ!」

「いや、俺はここで装備魔法を発動する!」

 

敵らしいセリフでもう一度挑発する千里も、この後の展開ははっきりと読めていた。神示がこのターン引いた逆転のピース――最後の1枚で、強大なモンスターに打ち勝つのだ。

敗北を間近にした絶望と、アカデミアに対して持ち始めた希望。悪役である千里はその狭間で揺れ動いていた。

 

揺れ動きながら、それは転覆する。

 

「《強奪》発動!」

「ゑ?」

 

 

 

「あれええええええええええええ?! 違う! 思ってたのと違う!」

 

凛とした表情で高く掲げるコントロール奪取のカードを前に、千里の呼吸が一瞬停止した。ここは《青眼の白龍》を上回る攻撃力にまでキマイラを強化させて攻撃を仕掛ける――そんな勝手な妄想は露と消えた。現実は違う。

 

左足を、持っていかれた。

 

「ちょ、ちょっとまって」

「《封印されし者の左足》で《青眼の白龍》に攻撃!」

 

コントロールを奪われた左足は、数メートルの助走をつけた後にドラゴンへと急接近していく。7のレベル差によって、攻撃力は3500上昇する。

 

《封印されし者の左足》攻200→3700

 

「おい右腕何とかしてくれ! お前さっきダイナマイトなんとかとか言ってただろ! あっちのパーツにも意思宿ってんじゃないの?!」

『私は右腕であって左足ではないんです! さっきのは冗談です!』

「てめえ!」

 

実にならない論争の直後、左足はドラゴンの下顎を一気に蹴り上げた。あまりにシュールな光景に、訳も分からず千里はただ立ち竦む。彼の視界に映ったのは真上に吹き飛ぶ《青眼の白龍》。

 

千里 LP1700→1000

 

「これで……終わりだ! キマイラでダイレクトアタック!」

「うわあぁぁっ!」

 

千里 LP1000→0

 

充満する土煙がまた視界を奪う。だが目で確認するまでもなく、千里のライフは0を指していた。

 

『千里さん、逃げましょう!』

「に、逃げる……?」

『決闘が終わったらやる事はもうありません。スタコラサッサですよ!』

「く、くそぉ……なんでこんな役回りなんだ!」

 

――遠くを見渡せるようになると、(千里)の姿は既に消え去っていた。残るのは何事もなかったような静寂と、横たわり目を瞑る久留巳のみ。慌てて彼女の元へ駆け寄り安否を確認する。呼吸による腹部の起伏が、彼女の睡眠を示していた。

 

「よかった……無事みたいだな」

 

 

 

* * * * *

 

 

 

「……今ごろあの男と久留巳ちゃんはイチャコラしてるんだろうか」

 

暗闇が蔓延る森の中で千里はそんな心中の不満を漏らす。表では吹っ切れたと言っていても、やはりあの男への羨望と遣り様のない哀しさが蟠っているようだ。

 

『千里さん……』

「っていうかふざけんなあのクソガキ! あの場面で《強奪》はおかしいだろ!」

『落ち着いてください、同い年ですよ!」

「てっきり俺は《デーモンの斧》とかで攻撃力を100上回って倒すものだと思ってたのによぉ。しかも左足を奪うとかよぉ……」

『うーん。まだあの人は“主人公力”が足りないんですかね』

「な、なんだそのワード……怖いな」

『あ、私が今作ったワードですけど。所謂主人公補正ってやつですよ』

 

相変わらずの適当っぷりに呆れ果ててしまったが、この世界には確かに与えられている役割と共に相応しい補正がかかっているようだ。それは、原作のストーリーを一部知っている千里もよく分かっていること。

 

これで何度目だろうか――自分の置かれている状況を恨んだのは。“転生”という摩訶不思議な状況に、“精霊”やら“神”だとかいう謎の存在。そして極め付けには悪役としてアカデミアを襲うなどという在り得ない展開。

 

『思ったんですけど』

 

思いにふけり項垂れる千里に割り込むように、彼女は呟く。

 

『これじゃあ効率悪いですね』

「……さっきの作戦のことか? 今更だけどな」

 

確かにアカデミア全体のレベルを底上げするのならばこの作戦では時間がかかる。そしてその度に主人公サイドの甘酸っぱい青春や成長を指をくわえて見届けるのも、千里の精神が持たない。

 

『もっと大きな事件を起こしましょう!』

「大きな事件か。そうだな……

 なぁ、この世界はGXと同じ世界なんだな?」

『ええ』

「じゃあ、正史であったイベントも存在するんだな?」

『え……えーと、そうですね』

 

千里の思惑は、彼女にすぐに伝わった。

 

『もしかして……前倒しで事件を起こすんですか?!』

「ああ。どのみち俺が消滅するんならやれる事はやる」

『だ、大丈夫なんでしょうか、それ……』

「知るか。こんなことになったのもお前のせいだ。最後まで付き合え」

 

既に彼にとっては“最後の手段”。原作で起きた出来事を千里が自ら起こし、今の学生達をその当事者にさせるのだ。こういう逆行物は“修正力”が付きもの――そんなことを根拠もなく信じて千里は次の手を打つ。

 

デュエリストの闘志を集める、“三幻魔”の事件だ。

 









展開が無理矢理すぎる。

禁止制限はガバガバです。ネタ重視です。

今思えば先行ドロー無しルールは止めとけばよかったですね。GXとパラレルではない以上、この設定は矛盾してました。伏線とかはないです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。