もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~   作:ショウゴ

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連続更新第10弾です。

昨日一日での日間PVがそれまでの3倍近くにまで増加していたので、何事かと思いました。
もしやと思ってランキングを確認してみたところ、日間PVランキング44位にランクインしていました。
閲覧していただいた方々には感謝の言葉を述べるほかありません
今日を含めてあと3日でストックが尽きてしまうのでそれ以降は読者の方々をお待たせしてしまう事になりますが、期待に添うべくなるべく早い更新を心がけたいと思います。

長くなりましたが、本編をお楽しみください。


11 日常風景とリアスの悩み

アーシアがホームステイという形で俺の家に住むことが決定した頃には遅刻ギリギリの時間になっていたため、俺・部長・アーシアの3人は日中発揮できる最大速度で通学路を疾走せざるを得なかった。

 

後の事を考えずに全速力で駆け抜けた甲斐あって何とか予鈴前に教室に到着し、俺達3人は遅刻せずに済んだ。

 

「アーシアちゃん、おーはよー!!」

「おはよう、アーシアさん。今日もブロンドがキラキラ輝いてるね」

 

そうして朝から体力を思い切り使ったところで松田と元浜が俺の斜め後ろにあるアーシアの席に近づいていき、着席したばかりのアーシアに挨拶をする姿が目に付いた。

 

「おはようございます、松田さん、元浜さん」

 

アーシアが挨拶を返すと、二人は感無量の表情になりながらしみじみと口を開く。

 

「やはりこれだね、元浜くん」

「ああ、そうだな松田くん。美少女からの『おはようございます』、朝から生き返る思いだ」

 

その気持ちはわからんでもないが、表現が大袈裟すぎだと思うのは気のせいか?

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

そんなことを考えている間に予鈴が教室内に鳴り響き、席を離れていた生徒達が自分の席に着きはじめる。

 

「さっさと席に付け~。SHR始めるぞ~」

 

その直後に担任が到着し、程なくして朝のSHRが始まるのだった。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

「イッセーが購買のパンってのも珍しいな。何かあったのか?」

「そういやいつも弁当だったよな。お袋さんが作り忘れたのか?」

 

時間は流れて昼休み。購買でのパン争奪戦に勝ち抜き教室に戻ると、登校時にコンビニに寄って昼飯を買っている松田と元浜から質問が飛んできた。

 

「今日は朝から家族会議やってたから、弁当どころじゃなかったんだよ」

「ほう、それは大変だったな」

「何だ、イッセーのスケベさに親がキレて説教でもされてたのか?」

 

元浜は気遣いの言葉をかけてくるが、松田はからかい混じりに事実とは程遠い予想を口にしてきた。

 

「性欲丸出しのお前と一緒にすんな、松田。……まあ、たまに俺の家に来るお前らにも関係ある事だから、今から言う条件を守るなら教えてもいい」

 

こいつらにアーシアがホームステイという形で俺の家に住む事を教えると騒ぎになるのは目に見えているが、何も知らずに俺の家に来て恨み言を言われるのも面倒なので条件付きで教えることにする。

 

「ほう、どんな条件だ?」

「勿体つけずに教えろよ、イッセー」

 

こういった話し方をすれば二人は大抵食いついてくるので、条件を提示する。

 

「守る条件はたった二つだ。今から話す内容を聞いて騒いでもいいが、最後まで落ち着いて話を聞く事。もう一つは話を聞き終えてから俺を責めない事。それを守れるなら今朝の事を話そう」

「……いいだろう。聞かせてくれ、イッセー」

「俺らにも関係あるっつーなら聞くしかないだろ。条件くらい呑んでやるよ」

 

元浜は少し考えた後で、松田はいつも通りの軽い雰囲気で返事をしてきた。

 

「今朝アーシアがホームステイの形で俺の家に住むことを希望し、両親がそれを了承した結果アーシアが俺の家に住む事が決定した。お前らの今までの態度を考慮すると両親から『家の中に入れるな』って言われる可能性があるから、これを機に今の性欲丸出しの生活態度を改めろ」

 

今はまだ両親からそういった事を言われてはいないが、今後2年間アーシアが家で住む以上は性欲丸出しの二人に対して何かしらの苦言を告げてくる可能性は高い。予め手を打っておいた方がいいだろう。

 

「ぶっ!!」

「なんじゃそりゃ!! っつーか、アーシアちゃんと同居ってどういうことだゴラァ!! 羨ましいぞ、変われ!!」

「落ち着け松田。理由は今話しただろ。この件については俺も今朝知った事だから今でも驚いてるっつーの。……あと、いくら頼まれても変わる気はない」

 

同年代の女子と一つ屋根の下で暮らす事ができて嬉しい気持ちを持っていないと言えば嘘になるが、それ以上に生活態度を改める必要があるのは明白だった。

 

なにせアーシアは小さい頃から今まで教会暮らしだったので、少々浮世離れしている部分がある。当然異性と過ごした経験も少ないだろうから、風呂の時間をはじめに色々と気遣っておいた方が無難だろう。

 

「……事情は理解した。お前の言葉が真実なら俺としても生活態度を改めるのもやぶさかではないが、それ以上に一言言いたい事がある」

「言いたい事? 何だよ、元浜」

 

俺の言葉を聞き、予想以上に冷静な声で元浜が口を開いたので続きを促す。

 

「イッセー、ここ1ヶ月の間にお前はどれだけの女の子と知り合った? 俺が知る限りでも学園の二大お姉さまたるリアス先輩と姫島先輩、1年の塔城小猫ちゃん、極めつけにアーシアさんだ。この分だとこの4人以外にも知り合っている可能性が高い。一人くらい紹介してくれても(ばち)は当たらないと思うぞ。というか、誰か紹介してくれ。頼む。…否、頼みます」

 

元浜は凄まじくシリアスな口調でしょうもない事を頼んできた。

 

「そっ、そうだぞイッセー!! 一人くらい俺達にも紹介してくれよ!! お前ばかりがモテる理不尽で俺は壊れそうだよ!!」

 

おまけに松田も乗っかってきやがった。

 

ついでに言うと、元浜の考察は正しい。悪魔としての取引相手で数名の女性と緊急時の依頼用にケータイの番号を交換したので、紹介しようと思えばできないわけではない。

 

ただしそこまで仲がいいわけではないし、こいつらのことだから下手に女性を紹介するとセクハラ発言しまくって紹介者である俺の評判を落とす要因になりかねない。

 

ハイリスクローリターンの取引は俺としても望んでいないので正直言って断りたいが、こいつら以外に一緒にバカな事をできる相手を知らないので何とかして願いを叶えてやりたい気持ちがあるのも否定できない。

 

(こいつらのセクハラ発言に寛容な人が適任なんだろうけど、そんな都合のいい人とは知り合ってないしなぁ……)

 

ケータイのメモリを検索しながら紹介できる人がいないか探してみるが、異性で二人に紹介できる人は一人もいなかった。

 

(……待てよ? この人ならこいつらの性格を矯正できるかもしれんな。思考だけ(・・)は間違いなく乙女だから、二人にセクハラ発言の不快感を懇切丁寧に叩き込んでくれるだろう)

 

そのかわりに松田と元浜のエロ思考を改善させられそうな人物に行き着いた。

 

「……少し待ってろ」

 

教室の隅に移動し、電話で相手に連絡を取ると同時にある事を頼んでおく。

 

数分間話をした結果、こちらのお願いを了承してくれた上に紹介の承諾も得る事ができた。

 

「一人承諾してくれた人がいたぞ。今日OKだとさ。ついでに友達も紹介するって言ってた。……これがその人の番号。メアドも一緒に入れてあるから、まずはメールで連絡とってみろ」

「「サンキュー!!」」

 

つい先ほどまで嘆いていた松田と元浜は途端に元気を取り戻し、アドレスをコピーするために俺のケータイを奪っていく。

 

「ありがとうございます、イッセーさま!! このご恩は決して忘れません!!」

「ああ、今度トリプルデートしようぜ!! 待ってろ、俺たちもソッコーで彼女作るからな!!」

 

二人とも瞬く間に番号登録を完了させてそう言ってきた。

 

松田も元浜も非常にいい笑顔をしているが、二人が今日会うのはあの筋骨隆々とした純真漢女(おとめ)『ミルたん』であり、明日の朝には怒りの表情と共に俺の下に向かってくるだろう。

 

当然ながらミルたんには俺が悪魔である事を松田と元浜に教えないように頼んでおいたので、二人が悪魔や堕天使の存在を知る可能性はかなり低い。

 

俺としてもこんな詐欺紛いの方法は使いたくないが、今後も我が家に来るつもりならば二人には自身のスケベ根性をコントロールしてもらう必要がある。かなりの荒療治になる事が予想されるが、今後の高校生活を考えると二人にとってもプラスになるはずなので頑張ってもらうしかない。

 

「で、どんな子なんだ? 美少女なんだろうな?」

 

興味津々な様子で松田が紹介した人物の容姿を訊いてくるので、ミルたんを思い出しながら返事をする。

 

「乙女である事だけは間違いないな」

「乙女!! す、素晴らしい……素敵だよ、イッセーくん!!」

「まったく、兵藤先生には頭が下がる思いだ」

 

先程の怒りはどこに行ったのかと問いかけたくなる程のべた褒めをしてくる二人に対して、機嫌を治してくれた事をうれしく思えばいいのか、あっさり手のひらを返した事を呆れればいいのか迷うところだ。

 

「そういえばイッセー。基本的に本名でメモリ登録するお前からすると、あだ名で登録してある相手ってのは珍しいな。何か事情があるのか?」

「そういえばそうだよな。どうして登録名が『ミルたん』なんだ?」

「登録者本人からの要望だ」

 

正確にはメモリに登録しようとした際に本名を聞こうとしたら凄まじい勢いで睨まれたので、仕方なくこの名前で登録しておいたのだが。

 

「なるほど、恥ずかしがり屋なのか」

「いいねぇ。ますます会いたくなってきた」

 

そう言って二人は自分に都合のいい解釈をしていた。

 

既に会う事が決定した以上はミルたんに任せる意外選択肢はなく、俺は松田と元浜とダベりながら食事を再開することにした。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

その日の夜。俺は住宅街を自転車で駆け抜けていた。

 

「ふっ!!」

 

ブレーキをかけて目的地の民家前で停車すると、自転車の後方に座っていたアーシアがポストの中に召喚用魔方陣を添付したチラシを投函する。

 

「完了しました。……今日の分はこれで最後です」

 

どうやら今日の分はこれでラストだったようなので、学園に戻るとしよう。

 

「了解。それじゃあ学園に戻るか」

 

アーシアが後部に乗ったのを確認した後で再度ペダルを踏み込み、学園への帰路につく。

 

ここ数日は悪魔になりたてのアーシアが行う初めての仕事である召喚用のチラシ配りを手伝っていたのだが、理由は三つある。

 

一つ目はアーシアのフォローだ。アーシアは今まで教会暮らしだったので自転車に乗ることができないため、徒歩でチラシを配る必要がある。そうなるとどうしても効率が悪くなるので、それを解消しようと思った事が一つ。

 

二つ目の理由は俺自身のトレーニングのためだ。自転車を長時間漕いでいれば自然と息が上がり足に疲労が溜まるので、肺活量と下半身の訓練にもってこいだと思ったのが二つ目。

 

三つ目はこの街をよく知らないアーシアに色々な場所を覚えてもらうためだ。活動拠点である駒王町内の地理は覚えておくに越したことはないし、この街の中にも悪魔が近づかない方がいい場所が何箇所か存在する。チラシを配っている時にそういった場所を説明し、ある程度の注意を促すのが三つ目の目的だ。

 

「ほらアーシア、あの先が神社。俺達は悪魔だから、境内に入ると色々な意味でまずい。覚えておいてくれ」

 

学園への通り道に神社があったので、アーシアに説明しておく。

 

「わかりました。悪魔は精霊が集まるところや土地の神様に関係するところへ行ってはダメなんですよね? クリスチャンの私には日本の『八百万の神』は理解しかねますけど……」

 

そういえば部長も『一神教の文化圏で育つと日本の宗教観は理解しづらい』と言っていたな。……俺はそういった感覚は持っていないので、それまでの生活環境の違いからそう思うのだろう。

 

「あ、あとあのパン屋は結構オススメだな。種類も豊富にあるし、何より美味い。今度一緒に買いに行くか?」

「いいですね。私、日本のパンは甘くて大好きです!!」

 

悪魔が近づいてはいけない場所だけでなく、街の中にある色々な店も教えておく。アーシアも既に数名のクラスメイトと仲良くなっているので俺が教えなくてもいずれは知る可能性はあるが、予め教えておいた方が女子の間でその店の話題が出た時に付いていく事ができるだろう。

 

「イッセーさん、『ローマの休日』を観た事がありますか?」

 

街の案内をしながら自転車を走らせていると、不意にアーシアから問いかけられた。

 

「いや、見た経験はない。……けど、こうして男女二人で街中をバイクで走ってるシーンがある事くらいは知ってるさ」

 

俺達の場合は自転車だが、言われてみればシチュエーションとしては近しい部分があった。

 

「……私、こうやって仲のいい男性と一緒に街の中を走ることに憧れていたんです。……夢がひとつ叶いました。ありがとうございます、イッセーさん」

 

自転車から落ちないように俺の腰に回している腕に力を込めながら、嬉しそうな声色でアーシアが告白してきた。

 

「これくらいどうってことないさ。…それに、アーシアがチラシ配りを初めて10日経つ。そろそろこの仕事も終わりなるだろうからな」

 

俺の時はチラシ配りをやっていた期間は約1週間だったので、そろそろアーシアも契約取りの仕事を始める頃だろう。

 

「そうなんですか? こうしてイッセーさんと一緒に行動できなくなると思うと、少し寂しいです」

「……別にチラシ配りだけが一緒に自転車に乗る機会って訳じゃないだろ。なんならプライベートでこうやったっていいんだしな」

「あ……そう、ですね。また、こうしてくださいね。イッセーさん」

「わかった。……少し飛ばすぞ」

「……はい!!」

 

俺の返事を聞いて嬉しそうな声を出すアーシアを乗せ、それまで以上のスピードで学園へ向かうことにすることにした。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

10分ほどで本拠地である駒王学園旧校舎にある部室に到着。チラシ配りが終わった事を部長に報告する。

 

「「ただいま戻りました」」

「あらあら、お疲れさま。今お茶を()れますわ」

 

俺とアーシアが部室に戻ってくると朱乃さんが出迎えをすると同時に(いたわ)りの言葉をかけ、お茶を淹れるために部室の奥へ向かっていく。

 

「お疲れ様、イッセー君。トレーニングは順調かい? アーシアさんもお疲れ様」

「ああ。朝も夜もこなしてるよ」

「ありがとうございます、祐斗さん」

「オーバーワークにならないように注意してください、イッセー先輩」

 

時間的に依頼者の元へ転移していておかしくなかったが、珍しく木場と小猫ちゃんも部室内にいてチラシ配りを終えた俺達に話しかけてくる。

 

「部長、ただいま帰還しました」

「部長さん、ただいま戻りました」

 

部室の一番奥にあるデスクに座り、何か考え事をしている部長に声をかける。

 

「はぁ……」

 

いつもならすぐに次の指示を出してくるところだが、部長は俺達の帰還に気づかず深い溜息をつくだけだった。

 

「部長、ただいま帰還しました!!」

「っ!? ご、ごめんなさい。少しボーッとしていたわ。ご苦労様、イッセー、アーシア」

 

少し大きめの声でもう一度声をかけると、部長はかなり驚いた様子で俺達を労ってきた。

 

「さて、今夜からアーシアにもデビューしてもらいましょうか」

 

どうやら俺の予想はあたっていたらしく、アーシアも契約取りを開始するようだ。

 

「悪魔としての本格デビューだ。頑張れよ、アーシア」

 

アーシアの見た目はかなり綺麗なので性的な依頼をされる可能性もあるが、直接的なその手の依頼に関しては専門の悪魔の方々がこなす事になっているので貞操の心配をする必要はないだろう。

 

「はい!! 頑張ってきますね、イッセーさん」

 

俺のわずかな心配をよそに、アーシアは満面の笑みを浮かべて返事をしてくる。

 

「というわけで、今日からは依頼が入ったらアーシアも転移してもらう事になるわ。頑張ってちょうだい」

 

部長がそう言った直後に転移用魔方陣が展開され、魔方陣の管理者である朱乃さんが陣に刻まれている悪魔文字を読んで依頼内容を判別する。

 

「あらあら、早速アーシアちゃん向けの依頼が届きましたわ」

 

朱乃さんの報告を受けると、部長は微笑みながらこう言った。

 

「それは都合がいいわね。アーシア、初仕事よ」

「は、はい!!」

 

部長のその言葉に緊張した声色で返事をしながら魔方陣の中央へ向かうアーシア。

 

「アーシアちゃん、頑張ってくださいね」

「が、頑張ってきます!!」

 

朱乃さんに声をかけられ、緊張したまま転移を開始するアーシア。

 

(俺も初めて転移した時ってああいう風に見えたのか?)

 

自分では気づいていなかったが、初めての時はああいった感じなのかもしれない。

 

そんな事を思いながら、俺は自分の依頼が来るのを待つことにするのだった。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

あの後俺にも依頼が入ったのでそれをこなし、部室に戻ってきた時にはアーシアも帰還していたのでその日は解散となり、俺はアーシアと共に帰宅した。

 

「すみません、先にシャワーいただきますね」

「ああ、ゆっくりするといい」

 

アーシアは一言断りを入れてから風呂に向かっていき、俺も自室に向かって風呂が空くのを待つことにする。

 

(今朝から部長の様子がどうもおかしかったけど、何が原因だ? 帰る時は何か思いつめてたっぽいし)

 

依頼先から帰還した時にも部長は何かを考えていたし、解散する直前には俺の方を見ながら思いつめた表情をしているように見えた。

 

 

カッ!!

 

 

部長の事を考えていると、突然部屋の床に見慣れたグレモリー眷属の転移用魔方陣が展開される。

 

そこから現れたのは紛れもなく部長本人ではあったが、帰宅前同様に思いつめた表情をしていた。

 

「イッセー、時間がないから要件だけ言うわ。至急私の処女をもらってちょうだい」

 

……はい? 

 

「ほら、ベッドへお行きなさい。私も支度をするから」

 

部長はそう言って制服を脱ぎ始める。正直言って訳がわからなかった。

 

「あの、部長。どうしていきなり……」

「イッセー、私ではダメかしら?」

 

戸惑いを隠しきれずに狼狽(ろうばい)する俺をよそに、下着姿になった部長は息を整えながらそう呟き、俺に近寄ってくる。

 

「そういうわけじゃないですけど、せめて理由を説明してください!!」

「いろいろ考えたのだけど、これしか方法がないの。既成事実ができてしまえば文句もないはず。身近でそれができそうなのはあなたしかいないのよ、イッセー」

 

既成事実ってどういう事ですか!? 何故それが必要に!? そこを説明してくれないと理解できないですよ!!

 

「それにあなたは赤龍帝。しかも希少な禁手(バランス・ブレイカー)に至っている神器保有者なのだから、向こうも私たちの関係を認めざるを得ないはずよ」

「いや、どうしてそこで赤龍帝と禁手(バランス・ブレイカー)が出てくるんですか!? それに、神器保有者って事なら木場もいるでしょう!!」

 

レイナーレを消し飛ばし、部室に帰還した後に教えてもらったのだが、木場も神器保有者だった。

 

神器の名は魔剣創造(ソード・バース)。様々な属性を持った魔剣を造り出す事ができる汎用性に優れた神器で、普段使用している剣もこの神器で造り出したものらしい。

 

「祐斗ではダメ。彼は根っからのナイトだから、絶対に拒否するわ。だからこそ、イッセーしかいなかった」

 

そう言って部長の指先が俺の頬を撫でる。

 

「今朝のあなたのご両親の言動からすればこういった事に興味があるようだし、イッセーとしても嬉しいのではないの?」

 

部長にそう言われながら押し倒される形でベッドに横になり、部長は俺の腰のあたりに馬乗りになる。そうなれば当然下半身に直接部長のお尻と太ももの感触が伝わってくる。

 

確かにエロいこと全般に興味があるのは認めるし、憧れの女性とこういった関係になるのは望むところではあるのだが、嬉しさよりも何故こんなことになったのかという困惑の方が強い。事情を説明してくれないのがそれに拍車をかける。

 

 

パチン

 

 

ブラのホックが外され、部長のおっぱいが(あらわ)になる。

 

「イッセーは初めてよね? それとも経験が?」

「は、初めてですけど……」

「そう。私も初めてだからお互い至らない点もあるでしょうけど、何とかして事を最後まで進めましょう」

 

部長のその言葉は焦燥に駆られている証に思えて仕方なかった。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください、部長!! 始める前に、理由を説明してくださいよ!! 色々と過程を吹っ飛ばしすぎててワケわかりませんって!!」

「全部終わったら説明してあげるから、今は聞かないで。……それとも、私に恥をかかせたいの?」

 

そう言って部長は俺の右手を掴むと、自分の胸に押し当ててくる。

 

その顔は明らかに恥ずかしがっており、理性のタガが外れかける。

 

 

カッ!!

 

 

だが、その瞬間に再び転移用魔方陣が展開され、それを見て部長が嘆息する。

 

「……一足遅かったわけね……」

 

部長は忌々しげに床の魔方陣を見据える。陣そのものは見慣れたグレモリーのものではあったが、転移してきた人物は見知らぬ女性だった。

 

メイド服のような出で立ちをした銀髪の女性で、室内を見回して俺と部長の姿を確認するなり静かに口を開いた。

 

「このような事をして破談に持ち込もうというわけですか?」

 

銀髪のメイドさんは呆れた口調で淡々とそう呟くと、部長は眉を吊り上げながら口を開く。

 

「こんな事でもしないと、お父様もお兄様も私の意見を聞いてくれないでしょう?」

「このような下賎な輩に操を捧げると知れば、旦那様とサーゼクス様が悲しまれます」

 

上級悪魔やその従者の中には転生悪魔の存在そのものを下賎と考える人もいるらしいのでメイドさんの発言はあまり気にしていないが、旦那様に、サーゼクス?

 

旦那様ってのは部長のお父さんでいいとして、サーゼクスってのは現四大魔王様の一人だったよな? 部長の親類に現魔王様と同名の方がいるのだろうか?

 

「私の貞操は私のものよ。私が認めた者に捧げて何が悪いのかしら? それに、私のかわいい下僕を下賎呼ばわりしないでちょうだい。たとえあなたでも怒るわよ、グレイフィア」

 

明らかに不機嫌な声で部長は銀髪のメイドさんを睨みつける。

 

グレイフィアと呼ばれたメイドさんは嘆息しながら脱ぎ捨てられた部長の上着を拾い、部長の体にかけながらこう言った。

 

「何はともあれ、あなたはグレモリー家の次期当主なのですから、無闇に殿方へ肌を晒すのはお止めください。ただでさえ、事の前なのですから」

 

グレイフィアさんはそう言って部長をたしなめると、視線を俺に移してから頭を下げてきた。

 

「はじめまして。私はグレモリー家に仕える者です。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

「えっと、兵藤一誠です。部長……もとい、リアス様の『兵士(ポーン)』を務めさせていただいています」

 

丁寧な挨拶をいただいたので、こちらも自己紹介をしておく。

 

「一誠? まさか、この方が?」

「ええ、『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』の使い手よ」

「ブーステッド・ギア。……龍の帝王に憑かれた者……」

 

俺が自己紹介をすると、グレイフィアさんは驚愕の表情を浮かべたあとで異質なものを見る目で俺を見つめてきた。

 

「グレイフィア、私の根城に行きましょう。話はそこで聞くわ。朱乃も同伴でいいわよね?」

 

部長が服に袖を通しながらそう問いかけると、グレイフィアさんは当然のように返事をする。

 

「『雷の巫女』ですか? 私は構いません。上級悪魔たる者、『女王』を傍らに置くのは常ですので」

「よろしい。イッセー」

 

グレイフィアさんの言葉を聞いている間に制服を着終えた部長は俺の名前を呼ぶと、そばに歩み寄ってくる。

 

 

チュッ

 

 

そのままお詫びとばかりに俺の頬に唇を触れさせたあとでこう言ってきた。

 

「ゴメンなさい、イッセー。さっきまでの事はなかったことにしてちょうだい。これはそのお詫び。私も少し冷静ではなかったわ。今日の事はお互い忘れて、明日また部室で会いましょう」

 

謝罪の言葉を俺に告げると、部長は魔方陣を展開してグレイフィアさんと共に去っていった。

 

部屋の中は再び俺一人になり、キスの感触が残る頬をさすりながら呆然とするしかなかった。

 

「イッセーさーん、シャワー上がりましたー」

 

だが、その直後にアーシアが扉越しに風呂が空いたことを伝えてきたので慌てて風呂の準備を始めて風呂に入り、風呂から出て部屋に戻ってからも部長が迫ってきた理由を考えている間に夜が明けてしまい、結果的に徹夜をすることになってしまうのだった。




そんなわけで、今回はここまで。

変更点ほぼなしの原作焼き直しなので、ダイジェストで済ませようと思えば可能だったのですが、それはそれで味気ないので一応文章化しました。

次回も同じ時間に更新しますので、それまでお待ちください。
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