もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~ 作:ショウゴ
何とかキリのいいところまで書けたので、投稿させてもらいます。
ひとまず、本編をどうぞ。
決戦当日。
「まあ、こんなところか」
俺は自室でゲームに向けた戦闘服――専用の物ではなく、普段使用している駒王学園の制服をそのまま使っている――に着替えたところだった。
今回のゲームは人数差がかなりあるので負傷するのは目に見えており、この制服もボロボロになるのがわかりきっているが、修業期間中に朱乃さんが服の修復魔力を覚えてくれたのでゲーム終了後はかなり高い確率でその魔力のお世話になるだろう。
なお、悪魔としての俺の数少ない常客の人達には修行開始前の召喚自粛依頼の連絡を入れた時に一通りの事情を説明して明後日の夜まで召喚自粛の了承を取り付けてあるので、今日は営業活動もなく、学校が終わってからはそのまま帰宅して余計な体力消費を抑える事に専念した。
現在時刻は午後10時ジャスト。ゲームは深夜0時開始となっており、開始30分前に部室へ集まる手筈となっているので、あと1時間もしたら出発しなければならない。
試合前のカロリー補給として既にバナナ数本を食べたので事前準備その物は完了しており、今は少しでも落ち着く為に自室でゆっくりしていた。
コンコンコン
そうしていると、部屋の扉をノックする音がした。
「イッセーさん、入ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
ドアを開けて入室してきたアーシアの恰好を見て、俺は少なくない衝撃を受けた。
何故ならロザリオを胸から下げず、ヴェールを纏っていないとはいえアーシアはシスター服を着ていたからだ。
「アーシア、その格好……」
「は、はい。部長さんは『自分が一番良いと思える格好で来て欲しい』と言っていたので。……信仰を忘れた事がないとはいえ今の私は悪魔で、
「そこまで考えて着ているなら、別に構わないと思うぞ」
悪魔どうしの戦いに敢えてシスター服で臨んでいる時点で相応の覚悟がある証拠のように思えるので、部長も文句を言ってくる事はないはずだ。
「それに、アーシアは学校の制服以上にその服装がしっくりくる。悪魔になろうと似合ってると思うぞ、俺は」
「ありがとうございます」
服装について褒めながら自分の思いを正直に伝えると、アーシアは心底うれしそうな笑顔を浮かべた。
「あ、あのイッセーさん。そばに行ってもいいですか?」
「ああ、構わないぞ」
もじもじと身体を悶えさせて気恥かしそうな態度でそう言ってきたので了承すると、アーシアはベッドに腰かけていた俺の隣に座り、腕に身体を絡みつかせてきた。
その腕を通してアーシアの身体の震えが伝わってきており、これから始まるレーティングゲームを彼女が恐れている事が否応なく理解できてしまう。
「……これから怖い戦いが待っていると思うと、震えが止まらないんです。でも、イッセーさんがいてくれるなら私は大丈夫です」
「アーシア……。ごめんな、悪魔になってでも平和な生活を送ってほしかったのに、結局戦いに巻き込んじまって」
合宿中に一緒に風呂へ入った時は気が動転しすぎていてまともに話せなかったので、改めて戦いに巻き込んでしまった事を謝罪しておく。
「謝らないでください。確かに戦いは怖いですし悪魔になってしまった事にも慣れていませんが、あの時イッセーさんが助けにきてくれたから、今こうして普通の生活ができているんです。その事は、いくら感謝してもし足りないくらいなんですよ? だから、イッセーさんもそんなに自分を責めないでください」
アーシアはそう言いながら俺の左腕から身体を離すと、そのまま俺の左拳を包むように自分の両手を組んで祈りを捧げるような体勢にして言葉を続ける。
「それに、イッセーさんがそばにいると思うだけでその怖さもなくなるんです。……だから、お
どこか緊張した面持ちのまま、アーシアはそう言って自身の願いを口にした。
疑似的な戦場に立つ恐怖をそれで抑える事が出来るなら、拒否する理由もない。
「おう」
「…………これからもずっとイッセーさんのそばにいてもいいですか?」
「ああ。一緒にいような、アーシア」
「……よかった」
俺の返事を聞いたアーシアは安堵の笑みを浮かべながらそう呟き、そのまま二人で出発時間まで静かに過ごす。
そうしている内にアーシアの震えも止まった為、俺達は共にリラックスした状態で集合場所である部室へ向かう事が出来た。
―○●○―
あれからさらに時間は進んで現在深夜11時40分を過ぎており、ゲームに参加する俺達オカ研部員一同は拠点である旧校舎の部室に集まって待機していた。
アーシア以外のメンバーは学園の制服を纏っているが、前衛要員の木場と小猫ちゃんは制服の上から防具――木場は手甲と脛当てを、小猫ちゃんはオープンフィンガーグローブを装着している――を纏って少しでも防御力を向上させているし、トラップ作成用のアイテムも多数用意してある。
朱乃さんと部長はソファに座ったまま優雅にお茶を口にしており、緊張とは無縁のようだ。
俺はアーシアと共にソファに座り、こうして周りの様子を見ながら待機している。
「皆さん、準備はお済みになられましたか? 開始十分前です」
そうしてゲーム開始直前になると見慣れ始めたグレモリーの魔方陣が展開されてグレイフィアさんが確認にやってきた。
その言葉を聞いて俺を含めた部員全員が立ち上がり、その行動を『準備完了』と捉えたグレイフィアさんがゲームに関する説明を始める。
「開始時間となりましたら、こちらの魔方陣から戦闘フィールドへ転送されます。戦闘フィールドは人間界と冥界の間に存在する次元の狭間に構成された使い捨ての空間なので、どんな派手な攻撃をされても構いません。各々、思う存分にご自分の力を振るってください」
人間界だろうと冥界だろうと、陸続きの場所で疑似戦闘を行ったら自然に様々な影響を与えてしまうのは想像に難くないので、『周囲への影響のない隔離空間』の存在はあって然るべきだろう。
それとは別に今更ながら一つ疑問が出てきたので、部長に質問してみるとしよう。
「部長。ゲーム開始前に一つ質問させてもらっていいですか?」
「どうしたの、イッセー?」
「ライザーの奴がはじめて部室に来た時に、『手に余ると言われて封印されている
ただでさえ俺達のチームは人数が少ないので、今は一人でも多くの戦力が欲しい。今から部長にとっての大一番が始まるというのに、何故参加する様子を見せないのか疑問に感じてしまう。
「わかったわ。私のもう一人の僧侶はイッセーや祐斗と同じ神器所有者なのだけど、神器の力の強さに本人の制御能力が追い付いていない関係でちょっとした事で神器を暴走させてしまうの。おまけにあの子の神器は視界に関係した能力だから、視界の中に味方がいる状態だと味方にも神器の効果が及んでしまうのよ。その事は上役の方々もご存じだから、あの子には申し訳ないのだけど本人の了承の下、封印という形で隔離させてもらっているわけ。時間もないし、これ以上の詳しい説明はまた今度で良いかしら?」
「ええ、大まかな理由は理解できたんで大丈夫です。お時間を取らせて申し訳ありませんでした」
自分の能力を制御できていない上に味方を巻き込む可能性が高いなら、今回のゲームに参加できない理由も納得できる。
そういう事なら、参加できない僧侶の人の分まで頑張るとしよう。
「話の腰を折ってすみません、グレイフィアさん。説明の続きをお願いします」
「気になさらないでください、一誠さん。――今回の『レーティングゲーム』は両家の皆様も他の場所から中継で戦闘をご覧になられます」
両家って事は部長の親御さんもゲームを観戦するのだろう。無様な姿を見せるわけにはいかない。
「さらに魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されておられます。それをお忘れなきように」
冥界トップの重鎮がわざわざ非公式戦を?
「っ!?…………そう、お兄様が直接見られるのね」
心底驚いた表情を浮かべた部長のつぶやきを聞き、俺は自分の耳を疑った。
「たびたび話の腰を折る真似をしてしまいますが、確認させてください。部長のお兄さんって、ただ単に現魔王のトップと同名なだけじゃないんですか?」
「いや、部長のお兄様は魔王様ご本人だよ。現四大魔王様達のファミリーネームは冥界を統べる魔王の証明であると同時に、三勢力戦争時に亡くなられた旧魔王様方にちなんだ役職名でもあるんだ。――サーゼクス・ルシファー。別名『
俺の疑問に対して、木場が現魔王様達に関する事情をすらすらと説明していく。
つまり、本来家督を継ぐべき兄が冥界を統べる魔王の一人となった為に部長が家督を継ぐ必要が出てきたってわけか。
お兄さんが悪魔社会を背負う必要がある以上は仕方のない事なのだろうが、諦観以上に驚きの方が強かった。
「そろそろ時間となります。皆さま、こちらの魔方陣の上へお集まりください」
だが、その驚きに浸る間もなくゲーム開始時間となったので、ゲーム参加メンバー一同は促されるままグレイフィアさんが展開した魔方陣の上に準備した物を持って立つ。
「なお、一度戦闘フィールドへ移動しますとゲーム終了まで距離を問わず魔方陣を利用した転移は不可能となります、お気をつけください」
そう言って注意勧告をしてくるグレイフィアさんの言葉が終わると同時に魔方陣が光って転移が始まり、俺達はゲームフィールドへと向かうのだった。
―○●○―
魔方陣による転移時独特の感覚が治まり、戦闘フィールドに到着したはずの俺達の眼前に現れた風景を見た俺は思わず首をかしげてしまった。
何故なら、つい先ほどまで近くにいたグレイフィアさんの姿が見えない事を除けばオカルト研究部の部室その物に見えたからだ。
『皆さま。このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の
この場所が本当に戦闘フィールドなのか気になりだしたところで、部室から消えたグレイフィアさんの声が校内放送? を通じて聞こえてきた。
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞよろしくお願いします。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考に、リアス様が通う人間界の学び舎、駒王学園のレプリカを異空間にご用意しました』
淡々とした声色で挨拶と共に告げられた言葉を聞き、思わず耳を疑った。
グレイフィアさんの言う事が確かなら、今俺達がいる部室は飾り物の位置や壁の細かな傷を含めて全てコピーされたモノだというのだから驚くなという方が無理だ。
違和感を覚えさせないほどの正確さで複製された部室のコピー精度の高さだけで、冥界の持つ技術力の高さを思い知らされる。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアス様の本陣は旧校舎オカルト研究部部室。ライザー様の本陣は新校舎生徒会室。
生徒会室は新校舎最上階の一番端の部屋なので、旧校舎にある部室からは結構な距離がある。移動距離とそれまでに出会うであろう敵の数を考えると、プロモーションにはかなりの手間がかかりそうだ。
『開始のお時間となりました。なお、ゲームの制限時間は人間界の夜明けまでとなります。それでは、ゲームスタートです』
キーンコーンカーンコーン
グレイフィアさんの宣言の後に、聞き慣れた始業チャイムが鳴り響く。
どうやらこれが開始の合図らしく、俺達にとっては初めてのレーティングゲームが始まった。
「ゲームも始まった事だし、具体的な作戦を決めていきましょうか。お互いの本陣には地図も用意されているけれど、今回の戦場は私達に馴染みのある駒王学園だから私達の方がゲームフィールドを使い込めるわ。意見があったらどんどん言ってちょうだい」
チャイムが鳴り止むと同時に部長はデスクに向かって筆記用具を取りだした後にソファに腰掛けながらそう言うと、いつも談笑に使っているテーブルの下から学校の全体図を取り出してテーブルの上に広げて新校舎の生徒会室の周辺と旧校舎のオカ研の部室周辺を赤ペンで囲み、相手と自分の本陣に印をつけた。
「あの、部長さん。作戦とは全く関係のない質問になってしまうのですが、ここは本当に戦場なんですか? いつもの部室と全く変わらないので、実感がないんですが……」
どうやらアーシアも俺と同じ疑問を持っていたらしく、小さく手を上げながら申し訳なさそうな態度で部長にそう問いかけた。
「ええ、ここは既にゲームフィールドの中よ。その証拠に、窓を開けて空を見てみなさい。面白い物が見えるわよ?」
「はぁ……」
部長に促されるままアーシアは窓際まで移動していったので、俺も随伴して部長の言う『ゲームフィールドである事の証明』を見てみる事にする。
「……わぁ」
「おお、……こりゃすげえや」
アーシアが開け放した窓から上空を眺めてみると、見慣れた夜空ではなく、空一面が緑色のオーロラのような物に覆われた不思議な光景が広がっていた。
駒王町からオーロラが見られるはずがないし、空の色からして変化しているので、ここが普段過ごしている駒王学園の敷地内ではない事は否応なく理解できた。
「二人の理解も追い付いたようだから、改めて作戦を決めていきましょう」
「はい」
「わかりました」
疑問も晴れたので先にテーブルの周囲に移動していた木場達に倣って俺とアーシアもテーブルの方へ移動し、作戦会議を始める。
部長が場所ごとにライザーチームの戦力分布を予想し、下僕の俺達で相手に対応しながら最終的に勝つための戦略を考えていった結果、以下のような戦略で動く事が決まった。
本陣である旧校舎を守る為に校舎前に広がる森の中に攻性トラップを多数設置し、敵であるライザーチームのみを幻惑する霧を旧校舎全体を覆うように魔力で発生させて相手
この作業が終わってからは前戦要因である俺・木場・子猫ちゃんは二手に分かれ、木場は運動場方面に単独で侵攻して運動場に配置されたライザーチームメンバーをおびき寄せる事で時間を稼ぎ、可能ならば相手の撃破を狙う。
そうして木場が運動場の面々を抑えている間に俺と子猫ちゃんが体育館内に侵入。内部にいるであろうメンバーを
その後は運動場の木場に合流して運動場に残った相手チームを撃破していき、最終的には相手本陣へ侵入して
当然ながら途中で相手チームから妨害される事が予想されるので状況に合わせて戦略は切り替えていく予定だが、大筋の戦略はこのような形だ。
『リアス・グレモリー、俺からも意見を言わせてもらっていいか?』
そうして戦略が決まり、動き出そうとしていたところで今まで黙っていたドライグが口を開いた。
「どうしたの、ドライグ?」
『今お前達が決めた戦略だが、少しばかり想定が甘いのではないか? お前と姫島朱乃の事前調査によれば、あの不死鳥は既に公式戦を何度か経験しているのだろう? 今回が初めてのゲームであるお前達が構築する戦略への対策など、予め構築されていると考えておくべきではないか?』
「それは……。そうかもしれないけど、私達が勝つには他に取れる戦略がないわ。他の策もあるにはあるけど、イッセーの負担が大きすぎてライザーの撃破まで体力が持たない可能性が高いのよ」
ドライグの容赦ない指摘に対して、部長は苦々しい表情でそう反論した。
この言葉を聞く限りだと俺達で考えていたプランは部長一人で考えていた戦略の中で最も安全性の高い物と同じらしく、俺の身体能力が高ければ別の策を執る事すら可能だが、今の俺では負担が大きいので実行には不安が残るようだ。
「部長。相手にこちらの戦略が読まれていると言うのなら、その事を前提に行動していって、相手が妨害してきたらそれをやり過ごしていく方向で行きましょう。ドライグ、お前の持つ豊富な戦闘経験を利用して、さっき俺達が決めた戦略でいく場合に相手がどこで妨害してくるか予想してくれないか?」
思わぬところで実力不足を痛感させられたが、ないものねだりをしても仕方ないので今できる最善を尽くす為にもドライグに意見を求める。
歴代赤龍帝と共に戦ってきたドライグが個人的に蓄積している戦闘経験は、レーティングゲーム初参戦の俺達どころか今回の対戦相手であるライザーと比較してもドライグの方が多い事は容易に想像できる。
無論、殺し合い前提の白龍皇との戦闘経験と相手の打倒のみを目指すレーティングゲームでは求められる経験の質に違いがある事は承知しているが、それらの戦いにも共通する部分はあるはずなので、相手から妨害を受けそうな箇所と、その対策を導き出す事くらいはできるはずだ。
『そうは言うがな、相棒。俺に集団戦の経験なぞ殆どないぞ。それでもよければ話してやるが、どうする?』
「今の私達には少しでも相手への対策が欲しいの。私からもお願いできないかしら、ドライグ?」
『――わかった。妨害があるとするなら、お前達が戦略上の目標を達成した直後だろうな。特に、体育館を壊した直後と運動場のメンバーと戦い終えた頃は注意しておいた方がいいだろう。何かを成し遂げた後というのは、得てして気が緩みがちになる。そこにデカイ一撃を叩き込まれれば少なくともダメージは受けるし、ダメージの量次第ではそのまま退場してしまう可能性も否定できん。特に今回は相手の方が人数が多い関係上、相手は自分の陣営を2~3人犠牲にしてこちらのメンバーを1人片付ける様な戦法を利用してきたとしてもなんらおかしくないからな』
部長からの真摯な嘆願を聞いたドライグはどこか諦めた態度で了承すると、理由を交えながら自身の予想を淡々と口にしていった。
「確かにあちらのチームの人数が多い以上、
『そうして攻撃してきた時に受けるダメージを軽減、ないしは耐える事ができれば、勝負の天秤をこちらに傾かせる事も不可能ではないだろう。そこは相棒を上手く使う事だ。俺から言えるのはそれくらいだな』
そう言ってドライグは言葉を締めくくり、口を閉じた。
「ありがとう、ドライグ。みんな、今のアドバイスは聞いていたわね? 今言われたとおり、戦略目標を達成した後だからこそ気を抜かず、周囲の様子に気を配っている事。特にイッセーは重点的に狙われるはずだから、自己強化も譲渡も細心の注意を払って使ってちょうだい。いいわね?」
「わかりました」
一通りの戦略を決めて改めて実感したが、今回のゲームに勝てるか否かは俺がライザーと直接戦うまで生き残る事ができるかどうかにかかっていると言っても過言ではないので、何とかして生き残るとしよう。
「――肝心な事を言い忘れていたわ。今回のゲーム、アナウンスこそされてないけれど、相手はまず間違いなく回復薬のフェニックスの涙をいくつか持ち出してきているはずよ。戦略上重要な相手の
フェニックスの涙というのはライザーの実家・フェニックス家が生産している薬で、使えばそれまでに負った傷をたちどころに治癒する事を可能としているとんでもない薬だ。
それだけの性能なので本来だったら購入費用もかなり高くつくが、今回のゲームは向こうの家にとっても重要な一戦である事は容易に想像できるので、部長の言うとおり戦略上重要な駒に持たされていると考えておいた方がよさそうだ。
「注意としてはそれくらいね。会議にかなり時間を使ってしまったから、急いで準備を進めましょう。まず、みんな耳の中にこれを入れておいて。通信機の代わりになるわ」
そう言って部長は小さなピンク色の魔力球を複数展開してきたので、それを受け取って指示通り耳の中に入れておく。
「魔力を入れ終えたら、祐斗と小猫は急いで森にトラップを仕掛けてきて。地図も一緒に持っていって、トラップの設置場所を記入するのを忘れないようにね」
「わかりました、部長」
「行ってきます」
矢継ぎ早に放たれた部長の指示を受けて、木場と小猫ちゃんはトラップグッズを持って部室を出て行った。
「朱乃は祐斗と小猫が帰ってきたら、手筈どおりに霧の魔力を展開して」
「わかりました、部長」
「アーシアはしばらく待機していて。イッセーに確認しておきたいのだけど、あなたに与えた
「普段使っている分の力は駒4つ分で、禁手の時は8つフルで使ってます。使っていない分の駒の力はドライグが塞き止めてくれているので、身体に悪影響が出た事はありません」
指示を与える前の確認に正直に答えると部長の表情が一瞬驚きに満ちた物に変わったが、すぐに表情を引き締めて数秒間黙考した後、口を開いた。
「――わかったわ。ドライグ、普段イッセーに流れ込んでいる駒の力、ひとつ分上乗せしてあげて。短期間とはいえあれだけ鍛えたのだから、それくらいは耐えられると思うわ」
『確かに今の相棒の能力ならば平時に使う駒の力を1つ分追加したとしても耐えられそうだな。お前の言うとおり、上乗せしておこう』
ドクン!!
部長の指示を聞いたドライグがそう言うと、初めて禁手化した時の感覚が再度やってきて、駒の力が身体に馴染んでいく。
使える駒の力が1つ分増えたが、感覚としては劇的に変化した部分もないので慣らしをしなくても何とかなる範囲だ。
「問題はなさそうね。今の内に言っておくけど、相手の本陣に到着したら
「了解です、部長」
前能力を上昇させる
あとは、ドライグの言っていた事に注意しつつ戦略をこなしていくだけだ。
「部長。合宿の時に言った約束、絶対に果たしてみせます」
決意表明を兼ねて、合宿の時に約束した事を改めて口にしておく。
「ええ。期待しているわ、イッセー」
それを聞いた部長もいつもの微笑を見せてくれたので、ますますやる気が漲ってくる。
それから10分しない内に木場と小猫ちゃんがトラップの設置を終えて部室に戻ってきたので、俺達は本格的な作戦行動に移る事にした。
そんなわけで、今回からレーティングゲームのエピソードになります。
2ヶ月更新が滞ったのはオリジナリティのある戦略を考えようと四苦八苦していたのが理由なのですが、結局いい案が思い浮かばなかったのでこんな形になりました。
原作の焼き直しに近いですが、ご容赦いただけるとありがたいです。