もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~   作:ショウゴ

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大変長らくお待たせしてしまいました。

更新を滞らせてしまった理由は全てあとがきで語らせていただくので、ひとまず本編をどうぞ。


21 招待

部長の一生を左右する重要なレーティングゲームに勝利する事ができた俺達グレモリー眷属だが、その余韻に浸れる時間は思いのほか短かった。

 

何故なら過度のダメージを受けて医療ルームに転送された木場・小猫ちゃん・朱乃さんの3人は部長の指示で大事を見て学校を欠席する事になったので話は別だが、比較的軽傷な俺はゲーム終了後数時間もすれば朝となり、人間として通っている駒王学園へ登校しなければならないからだ。

 

それはダメージらしいダメージを負う事がなかった部長とアーシアにも言える為、俺はその場でアーシアの治癒を受けてから、部長・アーシアと共に部室に帰還。部室に備え付けのシャワーを交代で使い、汗を流してから仮眠を取った。

 

教科書類を入れている鞄については仮眠中に部長の使い魔に運んでもらい、起床後に部室の簡易キッチンで朝食を作り、食事を済ませた後で片付けをしてから登校。主観時間としては約十日ぶりに授業を受けた。

 

ゲームに備えた合宿をしている間、朱乃さんの使い魔による学業代行を頼んでいたのがバレた様子はなかったものの、進んでいた授業についていくのに少々苦労させられたので、この十日間で進んだ授業内容に関しては全教科しっかりと復習しておかなければならない事を痛感させられた。

 

「お家に帰ったら、しっかり復習しておかないといけませんね、イッセーさん」

「だな。十日分あるから大変だけど、お互い頑張ろうぜ、アーシア」

 

それはアーシアも感じたらしく、昨夜から今朝にかけての片付けをする為に旧校舎に向かう傍らで、彼女に同意しながら励ましておく。

 

「っ!?」

 

そうして旧校舎に入って後ろ手で扉を閉めようとした瞬間、何度か感じたグレイフィアさんの気配が部室のあたりにある事に気付かされ、思わず手を止めてしまう。

 

「イッセーさん? どうかしましたか?」

 

アーシアも俺が扉を閉めなかった事を訝しみ、こちらに向き直りながら何かあったのか尋ねてきた。

 

「あー……グレイフィアさんの気配がしたから、ちょっと驚いたんだ」

 

アーシアに伝えるべきか迷ったが、どうせこの後会う事になるので正直に伝えておく。

 

「グレイフィアさんというと、あのメイドの方ですよね? 部長さんに、また何かあったのでしょうか?」

「そこまではわからないけど、部室に行った方がいい事だけは確かだ。急ごう」

「はい」

 

また何かしらの問題が起こった可能性も否めないので、扉を閉めてからアーシアと共に早足で部室へ向かう。

 

 

ゴンゴンゴン

 

 

「部長、イッセーです。失礼します」

 

一応の礼儀としてノックをしてから入室するが、来訪した人物が人物なので扉の叩き方が少々乱暴になってしまった事は勘弁してもらいたいところだ。

 

「お嬢様。先程の件、下僕の方々にもお伝えください。それでは、失礼いたします」

 

もっとも、俺達が入室した時には既にグレイフィアさんは用事を済ませたらしく、先に到着していた部長に向けて一礼した後、転移用魔方陣を展開して去っていった。

 

「どうしたの、イッセー。そんなに慌てて?」

「えっと……旧校舎に入ったらグレイフィアさんの気配がしたんで、また何か問題が起きたのかと思って急いで来たんですけど、もう帰ったって事は、遅かったですか?」

 

複雑な表情で手に持っていた手紙から視線を上げた部長がそう問いかけてきたので、考えを正直に話す。

 

「グレイフィアは昨夜のゲームに関係する連絡をしに来ただけだから、そんなに心配しなくて大丈夫よ、イッセー。昨夜の参加メンバーもそろそろ冥界から戻ってくるようだから、座って少し待っていてちょうだい」

「……わかりました」

 

『グレイフィアさんが部長の元を訪れなければならない程の連絡事項』の内容が気になるところだが、二度手間をとらせる訳にもいかないので素直に了承してソファに腰掛け、負傷していた木場・小猫ちゃん・朱乃さんの帰還を待つ事にする。

 

幸いと言っていいのか、それからさほど待つ事無く3人が部室に戻ってきたので、『連絡事項』の内容を聞く事ができた。

 

「全員集まったわね。――まずはお礼を言わせてちょうだい。みんなが頑張ってくれたおかげで、昨夜のレーティングゲームに勝つ事ができたわ。ありがとう」

 

部長は自分用のデスクから立ち上がり、俺達が座っているソファの近くに移動すると、一言そう言ってから深々と頭を下げた。

 

「私達のチームが勝った事で、両家の現当主である私の父とフェニックス卿にライザーとの婚約の破談も認められたわ。これで即座に普段どおりの生活を取り戻す事が出来ればベストな展開だったのだけど、そうもいかないみたいなのよ」

 

苦笑を浮かべながら、部長はそう言った。

 

「旧七十二柱に属する他の御家から、何かしらの干渉があったという事ですか、部長?」

「少し違うわ、祐斗。実は昨夜のゲームを観戦していたフェニックス卿たっての願いで、ライザーに勝った私達全員と話をする機会が欲しいそうなの。私の父も一度腹を割って話をしたいとも言っていて、先程グレイフィアを通して今週末の土日に昨夜のゲームに参加した下僕を全員連れて一度冥界に帰ってくるように連絡が来たわ。急で悪いのだけど、そういった理由で今週末の土日はみんな予定を空けておいてほしいの。頼めるかしら?」

 

木場が自身の推論を述べたが、部長の口から告げられたのは今回のゲームに関する冥界での後始末とも言える事柄だった。

 

「元々予定が入っていませんでしたから、私は構いません」

「私も元々フリーですから、問題ありませんわ」

 

部長の説明を聞いた小猫ちゃんと朱乃さんは、ノータイムでそう返事をした。

 

「お得意様の要望で一緒に出かける予定があったんですが、そういう事なら了解です。先方に事情を説明して、キャンセルを了承してもらいます」

 

木場はどうやら、悪魔としての仕事が入っていたようだ。

 

「ごめんなさいね、祐斗。もしも先方に理解を得られないようだったら、すぐに教えて。私の方で直接交渉させてもらうわ。――イッセーとアーシアはどうかしら?」

「俺は松田と元浜から遊びに誘われてたんですが、どう考えても優先すべきは部長の方なので、適当に理由をでっち上げてあいつらには了承させときますよ」

「私もクラスメイトの片瀬さん達に買い物に誘われていたんですが、キャンセルの連絡を入れておきます」

「プライベートに干渉する結果になった事は謝るわ。二人とも、ごめんなさい。もし理解を得られなかったら教えて。そちらもしっかり交渉させてもらうわ」

 

俺とアーシアの予定を聞いた部長は、そう言って謝罪を述べた。

 

「わかりました。もしもの時はよろしくお願いします、部長」

「私の方も大丈夫だとは思いますが、何かあったらよろしくお願いします、部長さん」

「ええ。――それじゃあ、今の内に日程と具体的な冥界への移動手段について説明しておくわね。今回は初めて冥界へ向かうイッセーとアーシアがいる関係で法手続き上、魔方陣での転移ではなく正規ルートで冥界に移動する必要があるわ。その事はお父様も承知しているから、いつもの専用列車を土曜の朝6時に到着する様に手配してくれたわ。だから、遅くとも6時ジャストには全員駒王駅に集合していてちょうだい。日程そのものは1泊2日を予定しているから、着替えなどの準備も忘れないように。いいわね?」

「「「はい」」」

 

部長の説明を聞いた木場・朱乃さん・小猫ちゃんは即座に返事をしたが、俺は部長の言い回しに気になる点があった為、返事をする事ができなかった。

 

「すみません、部長。今の説明で法手続きがどうこうって言葉が出てきましたけど、どういう事か説明をお願いしてもいいですか?」

 

俺とアーシアがいなければ魔方陣での転移も可能なような言い回しが気になったので、その理由を訊いてみる。

 

「構わないわ。実は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を使用して他種族の者を転生させると、冥界のデータベースに転生させた人物の個人データが自動的に記載されるようになっているの。あとは冥界にも様々な法律があって、その中には転生悪魔に関する物もあるの。その法律によって、初めて冥界を訪れる転生悪魔は主を同伴させた上で正規ルートで移動し、その最中に冥界側に記録されたデータと与えた駒を実際に照合して登録者本人である事が認められた場合のみ、冥界への入国が認められる様になっているわ。わかりやすく言ってしまえば、冥界への入国審査のようなものね。これを守らないと違法入国として処罰の対象になるから、正規ルートを使うの。これくらいでいいかしら?」

 

そういう理由があるなら納得だ。個人的にも処罰は遠慮したいので、当日は絶対に遅れない様にしよう。

 

「ええ。理由もしっかり理解できました。週末の朝6時、駒王駅前に集合ですね」

「その通りよ。よろしく頼むわね、イッセー。――アーシアは今のうちに訊いておきたい事はある?」

 

部長のその言葉と共に横に座っているアーシアに視線を向けて見ると、アーシアはどこか緊張した面持ちのまま何度も首を横に振ると、ガチガチに緊張した状態で口を開いた。

 

「い、いえ。大丈夫です、部長さん。生きているのに冥府へ行くのは緊張しますが、死んだつもりで行きたいと思います!!」

 

言っている事が支離滅裂なので意味は理解できないが、元々敬虔なキリスト教徒だったアーシアからすれば冥界はかなりの覚悟を持って訪れなければならない場所なのだろう。

 

「落ち着いてくださいな、アーシアちゃん。元キリスト教徒なので冥界へ向かう事に対して緊張してしまうのは理解できますが、週末まではまだ時間はありますよ」

「朱乃さんの言うとおりだよ、アーシアさん。緊張する理由も理解できるけど、言われているほど怖い場所じゃないから、そんなに硬くならなくても大丈夫だよ」

「祐斗先輩や朱乃先輩の言うとおりです、アーシア先輩。キリスト教で冥界がどのように伝わっているかは知りませんが、今まで何度も訪れた身からすれば、悪い場所じゃない事だけは確かです」

 

ここまで緊張していれば当然のように木場達にも伝わるので、思い思いの事を口にしてアーシアの緊張をほぐしにかかった。

 

「あ……。ありがとうございます、皆さん。そうですよね、実際に移動するまでまだ時間はたくさんあるんですから、緊張するには早すぎますよね」

 

言葉を投げかけられたアーシアも早々に木場達の気遣いを察し、恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう言った。

 

「アーシアも落ち着いたみたいだから、もう一度集合時間を言っておくわね。朝6時前に駒王町駅前集合よ」

「「「「「わかりました」」」」」

 

事情も理解できたので、今度は俺とアーシアも返事をする。

 

そうして悪魔に転生して初めての冥界行きが決まり、松田と元浜への連絡や冥界でのマナーを木場達に教えてもらっていると、あっという間に週末を迎えていた。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

そうして迎えた土曜の朝。1泊2日の小旅行の荷物を持ってアーシアと共に集合時間の15分前に待ち合わせ場所である駅前に向かうと、既に部長を含めた部員全員が集まっていた。どうやら俺たちが最後だったようだ。

 

「おはようございます、部長。お待たせしてしまったみたいで申し訳ないです」

「お、おはようございます。部長さん」

「おはよう。イッセー、アーシア。到着順に関しては気にしなくていいわ。予定より少し早いけど、全員集まったから列車へ向かいましょうか」

 

俺達が挨拶を済ませると、部長はそう言って駅に備え付けのエレベーターへと向かっていった。

 

頑張っても5人ほどしか乗れない狭いものだったはずだが、何故そちらに向かうのだろう?

 

「朱乃、私はイッセーとアーシアと一緒に先に降りてるわ。あなたは祐斗と小猫と一緒に降りてきてちょうだい」

「かしこまりましたわ、部長」

 

部長はそう言って朱乃さんに指示を出すと、返事を聞いてからエレベーターの中へ入る。

 

だが、その言葉はどう考えてもおかしかった。言うまでもなくここは一階で、駒王駅に地下階は存在しないので、エレベーターは上へしか行けないはずなのだ。

 

「イッセー。疑問に思うのはもっともだけど、説明するより実際に体験した方が早いから、とりあえず中へ入ってちょうだい」

「はぁ。――わかりました」

 

部長が手招きをしてくるので、釈然としないままアーシアと共にエレベーターの中に入る。

 

3人分の荷物があるのでエレベーター内は少々狭く、階層表示も大きさ相応の「1」と「2」の二つのボタンしかない。

 

部長は俺達がエレベーターに乗った事を確認すると閉扉ボタンを押して扉を閉め、スカートのポケット内からカードのような物を取り出して階層選択ボタンの下にかざした。

 

 

ピッ、ガクン。

 

 

それに反応して電子音が発せられた直後、地下へ向かってエレベーターが降りていく。

 

まだ駒王町で暮らし始めて間もないアーシアは小首を傾げていたが、長年この駅を利用し続けている俺は驚きを隠せない。

 

「実を言うと、駒王町の地下には普通の人間には絶対にたどり着けない様に魔力で保護した悪魔専用の領域が多数存在するの。この駅の地下階層もその一つで、町に住む悪魔達が冥界へ帰省する時に利用する『駅』になっているわ」

 

部長の言葉が確かなら、この町の地下は人知れず開発が進んでいるという事なので、驚くなという方が無理な話だ。

 

「…………マジっすか」

 

スケールの大きさが想像を超えていたので、絞り出すようにそう呟く事しかできなかった。

 

そのまま呆然とした状態で1分近くが経つとエレベーターも停まり、扉が開く。

 

「さあ、行きましょう」

「イッセーさん、大丈夫ですか?」

「ああ。ありがとう、アーシア。行こう」

 

気遣ってくれたアーシアにお礼を言いつつ、3人でエレベーターから出る。

 

その先にあったのは、広大な人工空間だった。

 

造りとしては人間界の駅の構内を踏襲しているらしく、多少の差異はあるものの駅のホームにそっくりだったが、規模は地上部分よりも遥かに大きく、思わず圧倒される。

 

「お待たせしましたわ、部長」

 

そんな風に周囲を見渡していると、いつの間にか朱乃さん達も合流しており、部長に声をかけていた。

 

「今日冥界へ向かうメンバーは全員そろったから、3番ホームまで歩くわよ」

 

その言葉と共に部長の先導の元、部員全員で目的のホームまで移動を開始するが、時間が時間だからか俺達以外に人気(ひとけ)はない。

 

おまけに地下を開発している影響なのか防犯目的なのかは不明だが、右へ左へと頻繁に曲がるので距離感も多少狂い、自分がどのあたりにいるのかわからなくなり始めたところで再び開けた空間に出た。

 

そこには既に、鋭角的ながら魔方陣らしき物がそこかしこに刻まれている独特のフォルムをした列車らしき車両が停車していた。

 

「部長、これが冥界への移動手段ですか?」

「ええ。グレモリー家所有の列車よ」

 

独特のデザインをしているので念のために部長に確認をしてみたところ、堂々とした態度でそう答えてくれた。

 

悪魔に転生してから、何度か部長から『グレモリーは上級悪魔だ』という言葉を聞いてきたが、確かにこれだけ大きな物を所有し、保守管理を行った上で運用している時点でグレモリー家は悪魔の一族としては相当大きな規模である事は間違いないだろうし、実物をこうして目にしたのでその事も否応なく実感させられるが、それ故に疑問も浮かび上がってくる。

 

合宿中に部長は『グレモリーの令嬢としてではなく、リアス個人として見てくれる人物と結婚するのが夢だ』と教えてくれたが、これだけ大きな御家の次期頭首となる女性の伴侶となれるだけの実力を備えながら、御家の力に惑わされたり溺れたりせずに部長と接する事ができる器量を持った男など存在するのだろうか?

 

 

プシューッ

 

 

列車のデザインを見る傍らでそんな疑問を感じながら足を動かし続け、出入口らしき場所の前に部長が立つとドアが自動で開いたので、部長を先頭にしたまま列車内へと入る。

 

「私は先頭車両に行って、荷物を置いてくるわ。この列車には乗車に関する細かなしきたりがあるから、(あるじ)の私は列車が動き出すまでは別行動をせざるを得ないの。イッセー、アーシア、乗車に関するしきたりでわからない事があったら、遠慮なく朱乃達に質問しなさい。朱乃達は勝手もわかっているでしょうから、イッセー達を気にかけてあげて」

 

そのまま全員が乗車を完了すると、部長は俺達に向き直ってそう指示を出した。

 

「かしこまりましたわ、部長」

「お任せください、部長」

「わかってます、部長」

 

俺とアーシアよりも悪魔歴が長い3人は部長から指示を受ける事がわかっていたらしく、気安い態度で了承していた。

 

「頼むわね、3人とも。私も列車が動き出したら、そちらに向かうわ。イッセー、アーシア、またあとで会いましょう」

 

3人の返事を聞いた部長は満足気に頷くと、そう言って一人で別行動をとり始めた。

 

「それじゃあイッセーくん、アーシアちゃん、まずは私達も荷物を置きに行きましょうか。眷属は中央から後ろの車両を使うのがしきたりになっているので、私達についてきて下さいな」

「わかりました。案内よろしくお願いします、朱乃さん」

「よろしくお願いします」

 

朱乃さんのその言葉に従って俺達も全員で眷属用の車両に移動し、車両内の荷物を置くスペースに各々の荷物を置いてから、俺とアーシア、木場・小猫ちゃん・朱乃さんの3人で向き合うように対面の席に座り、列車が動き出すのを待つ。

 

 

リィィィィイイイイィィン

 

 

発車時間までの雑談代わりにこの列車のしきたりについて詳しく話を聞いていると、車内に鐘の音らしき音が鳴り響き、列車が動き出した。

 

「そういえば朱乃さん。この列車、冥界の目的地までは移動にどれくらい時間がかかるんですか?」

「移動にかかる時間ですか? 次元の壁を越えて冥界に入るまでなら40分程度、今日の目的地であるグレモリーの本邸までは1時間ほどで到着しますわ。イッセーくんとアーシアちゃんは、それまでに入国審査を兼ねたデータベースとの照合を受ける事になるでしょうね。アーシアちゃんは、何か質問や気になる事はありますか?」

 

移動にどれくらい時間がかかるか確認してみたところ、旅行の移動時間としては比較的短い時間を告げられた。

 

「質問や気になる事、ですか? ――私としては、この後で行う予定の審査が気になります。入国審査を兼ねたデータベースとの照合というのは、具体的にはどのような事をするのですか?」

 

話題を振られたアーシアは僅かに黙考すると、入国審査に関する質問を投げかけた。

 

「専用の機械を身体にかざすだけですから、特に気構えをする必要はありませんよ。照合にはそれほど時間はかかりませんから、次元の壁を超える前に手続きを終わらせておくために、部長がこちらに来る時に一緒にスタッフを連れてくると思いますわ」

「朱乃の言うとおりよ。イッセー、アーシア、早速で悪いけど、手続きを始めさせてもらっていいかしら?」

 

朱乃さんのその言葉に合わせるように先頭車両側の出入り口から部長の声がかかってきたのでそちらを向いてみると、部長は車掌姿の初老の男性悪魔を引き連れていた。おそらくだが、この男性が入国審査の担当さんなのだろう。

 

「俺はいつでも大丈夫です、部長」

「よ、よろしくお願いします、部長さん」

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ、アーシア。それじゃあ頼むわね、レイナルド」

「かしこまりました、姫。初めまして、姫の新たな眷属悪魔さん。私はこのグレモリー専用列車の車掌をしているレイナルドと申します。以後、お見知りおきを」

 

男性悪魔は脱帽してからそう言うと、俺達に向けて頭を下げた。

 

丁寧な挨拶を貰ったので俺もアーシアも席から立ち上がり、レイナルドさんに一礼する。

 

「丁寧な挨拶、ありがとうございます。リアス・グレモリー様の『兵士(ポーン)』、兵藤一誠です。こちらこそよろしくお願いします」

「アーシア・アルジェントです。『僧侶(ビショップ)』です。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。早速ですが、お二人の照合を始めさせていただきます」

 

俺達のあいさつに返事をしたレイナルドさんは帽子をかぶると、魔方陣を展開してモニター付きの特殊な機器を手元に転移させると、そのモニター部分で俺達を捉える。

 

事前の説明通りなら、レイナルドさんが俺達に向けている機械がデータベースとの照合用機材なのだろう。

 

 

ピコーン

 

 

そのまま1分もしない内に軽快な音が鳴った。

 

「照合完了です。姫、これでニューフェイスのお二人の入国手続きが完了しました。あとは到着予定の駅までごゆるりとお休みできますぞ。寝台列車や食堂車も完備していますので、目的地までご利用ください。では、私はこれで失礼させていただきます」

 

どうやら問題なくパスできたらしく、レイナルドさんは始めてこの列車を利用する俺とアーシアに向けた説明を口にした後、再び脱帽してから一礼して帽子をかぶり、去っていった。

 

「これでイッセー達の照合も終わったから、到着までは自由に行動できるわ。とりあえず、食堂車に行って朝食にしましょう」

「わかりました」

 

ひとまずこなすべき事はこなしたので、部長の提案に従って朝食をとる為に参加している眷属全員で食堂車に向かうのだった。




そんなわけで、今回はここまでとなります。

以下、更新が滞っていた理由となるので、興味のない方は読み飛ばしていただいて構いません。



執筆を滞らせた理由を簡単に言ってしまえば、モチベーションの低下です。

プロットそのものはある程度まで書き連ねてあるのですが、原作との決定的な差が出るのが結構先で、それまでは後の巻で発覚・後付けされた設定をストーリーに組み込みながら時系列に関係なく発生可能な原作で発生したイベントを全体的にシャッフルして、その影響で各キャラクターの心象を筆頭に細々した事象が多少変化する程度、あとはほぼ原作の焼き直しという状況となってしまった為、どんどん書く気が萎えていってしまいました。

最近は原作最新刊を読んだ結果、多少なりともモチベーションが回復してきたのですが、『二次創作を書く上で、原作との乖離が発生するのが遅いのは大丈夫なのだろうか?』と悩んでいたので、ここまで放置してしまいました。大変申し訳ございませんでした。

これからもこのような長期放置が発生してしまうかもしれませんが、ご愛顧いただけたら幸いです。
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