もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~   作:ショウゴ

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連続更新第2弾です。お楽しみください。


03 (悪魔としての)初めての戦い

学園の二大お姉さまと呼ばれるほどの人気を誇る朱乃さんにドライグの事を含めた自己紹介をしてしばらくすると、残る部員である木場祐斗と塔城小猫ちゃんがやってきたので朱乃さんの時と同じくドライグと共に赤龍帝である事を含めた自己紹介を行い、それを聞いた二人は色々な意味で驚いて朱乃さんと同じように固まってしまった。

 

「……仕方ないわね。皆フリーズしてしまっているようだし、まずはイッセーの疑問に答えてあげる。何か聞きたい事はあるかしら?」

「えっと……まずは人間から悪魔に生まれ変わったメリットを教えてもらっていいですか? 自分で気づいているのは異常なほどに夜目が利くようになっている事くらいだし、ドライグからは人間の時と比べて体が頑丈になった事と老化が極端に遅くなる事くらいしか聞いてないので。他にどういったメリットがあるのか教えて下さい」

 

リアス先輩が何か疑問があるか訊いてくるので、ドライグから教えもらった事を除いて自分の身体が悪魔に転生してどう変化したのか訊いてみる。

 

「わかったわ。夜になれば自然に理解できると思うけど、一通りは説明させてもらうわね。まず――」

 

俺の問いを聞いたリアス先輩は、前置きとしてそう言ってから人間と悪魔の身体的な違いを教えてくれた。

 

メリットとしては悪魔になった瞬間から音声言語限定で世界中のどこでも俺の言葉が通じるようになり、夜が近づくにつれて五感が鋭敏化し、身体能力が上がっていく事を教えられた。夜目が利くようになったのもこの影響らしく、深夜の時間帯になればフルマラソンもジョギング感覚で走れるほどの体力が発揮されるらしい。

 

「――あとは魔力、『頭の中で思い浮かべたイメージを現実に起こす方法』が運用できるようになる点もメリットと言えるわね。魔力は使い手のイメージ次第でどんな事も出来るようになるわ。……イッセーが知らない悪魔のメリットはこんなところかしら」

「なるほど。では人間と悪魔を比べた場合のデメリットは何なんでしょう? 日光に対する耐性が極端に落ている事は気づいていますが、他にも何かあるんですか?」

 

悪魔化のメリットを一通り聞いたので、デメリットについても訊いておく。

 

「そちらも説明するわ。まず――」

 

リアス先輩から教えられたデメリットは、少ないながら一つ一つの影響はかなり強いものだった。

 

まず第一に出生率の低さ。個人で強大な力と長大な寿命を持っている反動なのか悪魔同士で子供ができる可能性は低いらしく、種族としての総数は増えづらい傾向があるようだ。これは人間から悪魔に転生した者にも当てはまるが、純粋な悪魔ほどではないらしい。

 

次に、日光を含めた『光』や聖書・聖水・十字架などの『聖なるモノ』に対するダメージがかなり増えている事。日光への耐性は悪魔になりたてなので体が慣れていないだけらしいが、それに慣れたところで天使や堕天使の使う『光の力』に対してはダメージ軽減効果はほぼないらしい。

 

「つまり、堕天使の使う光の槍とかを無理矢理抜こうとして触るだけで体にはかなりのダメージが来るって認識でいいんですか?」

「そのとおり。私たち悪魔にとって光は猛毒よ。人間の時でもかなりのダメージを受けたでしょうけど、今はそれ以上のダメージを受けると思っていて」

「わかりました。他には何かデメリットはありますか?」

「そうね、あとは――」

 

その他にも教会や神社といった『神聖な場所』に入るのはダメージを受ける要因になりうるだけでなく、悪魔以外の勢力を刺激する可能性があるので出来る限り近づかないほうがいいらしい。

 

「もっとも、そういった場所でも『きちんとした後ろ盾』と『その場所に入る正当な理由』があれば期間限定のフリーパスが発行されるから、その手の心配をせずに移動できるようになるわ」

「正当な理由、ですか。どういった理由ならそのフリーパスが発行されるんですか?」

「イッセーの場合、パスが発行されるとしたら今年の修学旅行に行く時ね。あれも学校行事だから、そうそう休むわけにもいかないでしょ? しかも京都はお寺や俗にいうパワースポットが多い場所だから、悪魔にとってはかなり不都合なの。パスがない状態だと体へのダメージや他勢力の事を気にして旅行を楽しめないし、駒王学園は悪魔だけじゃなくて普通の人間が通う学校だから一般生徒たちと足並みを揃える必要がある。そういった時のために『一般人と足並みを揃える事』を理由に修学旅行の期間限定でフリーパスを発行する形になるの。……悪魔になったデメリットはこんなところかしら」

 

確かに学園内で悪魔の存在を知らない人はいるだろうから、そういった人達に不信感を与えないための救済措置も用意されているということか。

 

「なるほど、よくわかりました。色々と教えていただき、ありがとうございます」

 

悪魔になったメリット・デメリットがはっきりしたので、そこを注意しておけばなんとかなるだろう。

 

「気にする必要はないわ。あなたの事だから教えなくてもそのうち気づいていたでしょうし。……それよりこちらからも訊きたい事があるのだけど、いいかしら?」

 

リアス先輩からの質問。何だろうか?

 

「ええ、構いませんよ。どういった事でしょう?」

「イッセーは天使や堕天使、悪魔や神器についてはどれくらい知っているの? ドライグとは仲が良さそうだし、彼からこちら側の知識もある程度は教えられているんじゃないかしら?」

「ええ、限定的ではありますが少しは知っています。俺が知っている限りはこんな感じですよ。――」

 

先輩の指摘どおり、中学時代から今まででドライグからこの世界の裏事情とも言える天使・堕天使・悪魔・神器に関する事柄は色々と教えてもらったので、それらについて――それぞれの勢力は戦争をする程仲が悪い事。大昔に行われた戦争で三勢力はどこもかなりの痛手を負ってしまい、自然回復を待てなかった悪魔の人達は他種族を悪魔にする技術を開発して失った数をある程度補填しており、その中にドライグクラスのとんでもないドラゴンがいる事。神器や神滅具に関する簡単な解説と、半ば自分の事である赤龍帝や対存在たる白龍皇について――を一つずつ説明していく。

 

「――以上ですね」

「ありがとう。話を聞いた限りだと、多少の抜けはあるものの三勢力の基礎的な部分は知っているみたいね」

 

納得した表情でリアス先輩がそう呟く。どうやら気に触る事は言っていないようだ。

 

「……なんていうか、意外です」

「どうしたの、小猫?」

 

俺が一通りの話をし終えると、今まで黙っていた塔城さんが口を開いたのでリアス先輩が質問をする。

 

「えっと……今の話をしていた姿がクラスメイトの人達から聞いた兵藤先輩のイメージからはかけ離れていたので」

 

塔城さんは若干表情を曇らせると、自分が感じた事を口にした。

 

悪印象を持たれている自覚はあるので、その言葉を聞くだけで何も知らない1年生の間でどういったイメージを持たれているか容易に想像がついてしまう。

 

「塔城さん、1年生の間では俺の事粗暴って言われてる?」

「はい。……あと私の事は小猫でいいです、兵藤先輩。これからよろしくお願いします」

「なら俺の事もイッセーでいいよ、小猫ちゃん」

 

半ば覚悟していた事柄をあっさりと肯定されて内心ヘコみながら、愛称で呼ぶように言っておく。

 

「僕からすれば妥当なところかな? 一部のクラスメイトや他の女の子達からは小猫ちゃんと同じような話を聞くけど、何気に定期テストの点数は悪くないって聞いた事があるよ」

「実際そうだからな。テスト前は悪友含めてクラス中の男子から頼られる事が多い」

 

小猫ちゃんと同じように今まで黙っていた木場祐斗が口を開いて、2年生内での俺の評判を口にする。木場の言うとおり定期テストについては入学当初から今まで努力してきたので、現クラスメイトだけでなく去年同じクラスだった男子からもテスト前になるとヤマを聞かれる事が多い。

 

「へぇ、それなら今度の定期テストの時になったら僕にも教えて欲しいな、兵藤君。…いや、イッセー君と呼んだ方がいいのかな?」

「出来る事ならそうしてくれ。よろしくな、木場」

「うん、こちらこそよろしく」

 

木場とも挨拶を交わし合い、そこからは朱乃さん・木場・小猫ちゃんの3名も交えて悪魔についての基本的な事柄――悪魔の基本的な活動である召喚用簡易魔方陣を添付したチラシを配布して契約を取る事だったり、俺が知らない悪魔の歴史や俺のような他種族から転生した悪魔も功績によっては爵位を得る事が可能である点について――や、オカルト研究部の存在そのものがリアス先輩の眷属悪魔の集まりである事の隠れ蓑になっている理由などを教えてもらった。

 

『リアス・グレモリー、俺からも質問がある』

 

そうして話が一段落ついた頃、今まで黙っていたドライグが口を開き、リアス先輩に質問をする。

 

「何かしら、ドライグ?」

『今後相棒が天使や堕天使に襲われた場合、どのように対処するべきだ? どうも堕天使側は相棒を排除したいようだからな。《殺したはずの相手が悪魔に転生して生きている》事を知ったら再度排除しに刺客を送ってくる可能性は高い。そういった排除目的で襲ってきた天使や堕天使をただ返り討ちにするだけでは、同族を倒された恨みや報復で戦争の秒読みに入ってしまうのではないか?』

 

ドライグの指摘はもっともだ。今は悪魔に転生した直後なので堕天使側に気づかれている可能性はかなり低いが、何かのはずみでその事がバレた場合を考えると真っ先に訊いておくべき事だった。

 

「堕天使側がイッセーの排除を?……本当なの?」

「ええ。人間として死ぬ事になった時に襲ってきた女の堕天使が『私達にとって俺の存在が危険因子の可能性が高いから排除しに来た』って言っていたんで、間違いないです」

「その時にブーステッド・ギアの力は使った?」

 

俺に確認を取ってくるリアス先輩の視線は真剣そのもので、この問題がかなりデリケートな物だということが否応なくわかってしまう。

 

「1段階のパワーアップを1度だけ使いました。その後に反撃をしたんですが回避されて、背中に大穴開けて殺されかけた形になります」

「多段階のパワーアップは使っていないのね?」

『使う隙が無かったと言った方が適切だな。堕天使相手に強化を施していない人間の身体能力で1段階のみとはいえ強化する時間を稼げただけでも儲け物だ』

「確かにそのとおりね。………こちらとしては無闇に堕天使を刺激をしたくないから、なるべくなら殺さないでおいて。仮に殺してしまった場合はすぐに連絡をちょうだい。こちらで何とかして処理をするから」

「わかりました。なるべく殺さないようにしますが、悪魔の身体能力に慣れるまでは確約はできません」

 

リアス先輩からの指示に答える声は自分でも驚くほどに緊張したものになっていた。

 

「刺客が来るとしたらしばらく後でしょうからそこまで緊張しなくていいわ。今は悪魔の体に慣れる事を第一としておいて」

 

 

♪~~♪~~~♪~♪~~

 

 

俺の返事を聞いたリアス先輩の言葉が終わった直後にケータイの着信メロディが室内に響き渡る。

 

(この着メロ、俺のケータイじゃねーか!!)

 

ポケットの中に入れてあるケータイを取り出すと、案の定着信の真っ最中だった。

 

「すいません、ちょっと席外します」

 

リアス先輩たちに一言そう言ってからオカルト研究部の部室を出て電話に出る。

 

「はい、もしもし」

『ちょっとイッセー!! あなたこんな時間まで何してるの!! 今どこ!?』

「母さん!? 今学校だよ!! こんな時間って……っ!?」

 

腕時計で現在時刻を確認すると既に夜7時を過ぎていた。

 

『とにかく一度帰ってきなさい、いいわね!!』

 

母さんは簡潔に要件だけを言うと、俺の返事も聞かずに電話を切ってしまう。

 

(こりゃ一度帰らんとマズイな。リアス先輩たちには明日改めて来るって言おう)

《そうした方が無難だろうな》

 

あの怒り方をスルーすると色々な意味で危険なので、一刻も早く帰宅するとしよう。

 

「すいません、リアス先輩。母親からとっとと帰ってこいって電話が来たので、今日はこれで帰ります」

「あら、ご両親からだったの? それなら仕方ないわね。長々と話し込んでしまってごめんなさい、イッセー」

 

通話を終えてオカルト研究部の部室に戻りリアス先輩に帰る事を伝えると、先輩は一言謝罪の言葉を告げてきた。

 

「いえ、俺の方こそいろいろと教えていただいてありがとうございました。明日も来て大丈夫ですか?」

「ええ、歓迎するわ。……そうだ。暇な時にこれを書いておいてくれるかしら?」

 

そう言いながらリアス先輩はデスクの中から1枚の紙を取り出して俺に渡してくる。その紙には『入部届』と書かれており、オカルト研究部への正式な加入の要請だった。

 

「入部届、ですか?」

「ええ。既にイッセーは私の眷属の一員になっているわけだけど、悪魔の存在を知らない一般生徒の事を考えると正規の手順を踏んでおいた方が後腐れがないから、出来る限り書いておいてもらえるかしら?」

 

確かに同じやっかみを受けるにしても、表面上無関係を装っておいて何かあった時に一緒に行動を共にするよりは正規の手続きを取って常に行動を共にしておいた方が無難だろう。

 

「わかりました、書いておきます。……それじゃあ、お先に失礼します」

「ええ、また明日」

 

鞄を持って旧校舎を出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。

 

(どおりで連絡してくるはずだ。急いで帰るか)

 

両親は俺が中学時代にやらかした事件――言うまでもなく赤龍帝の籠手を覚醒させる契機になったあの事件の事だ――の影響で結構過保護になっており、帰宅が遅くなるようならば一度連絡を入れるように言い含められている。リアス先輩たちからの話に夢中になっていて連絡をすっかり忘れていたので、あとで謝っておこう。

 

そんな事を思いながら校門に向かって走り出すが、そのスピードは昼間と比べるまでもなく速くなっていた。

 

(なるほど、リアス先輩が『夜になれば自然とわかる』って言ってたのはこういう事か)

 

自分でも驚くほどのスピードで校門に到着するが、息一つ切れていなかった。

 

(旧校舎から校門までってそれなりに距離があるはずなんだが、息一つ切れないとは恐れ入るな)

 

どうやら悪魔の身体能力はかなりのモノのようだ。

 

(まあ、今は利用させてもらうとするか)

 

悪魔化した身体の調子を見ることも含め、全速力で通学路を走り始める。

 

だが、自宅への道のりを6割ほど走り終えた頃に不本意ながら慣れ親しんでしまった敵意を強烈にした感覚が襲いかかってくる。

 

《相棒、気づいたか?》

(当然。これで気づかない方がおかしいっての)

 

一度足を止めて、その気配を感じた方向を見据える。

 

そこにはコートを着て帽子をかぶった40代程の男性が俺を睨みつけており、敵意を隠そうともしていなかった。

 

(いや、この密度は敵意じゃなくて殺意って表現した方がいいな。……何者だ?)

 

俺に殺意を向けてくるその男は静かにこちらへ歩み寄りながら口を開く。

 

「これは数奇なものだ。こんな都市部でもない地方の市街で貴様のような存在に会うのだからな」

 

まるで俺と会った事が想定外のような口ぶりでそう呟いてくる男。正直言って嫌な予感しかしない。

 

《この男から光の力を感じるぞ、相棒。それに随分と欲深そうな雰囲気だ。堕天使と見ていいだろう》

 

そんな俺の嫌な予感をバッチリと肯定してくれる相棒に文句の一つも言ったとしてもバチは当たらないだろう。……悪魔に仏様が力を貸してくれるかはわからんが。

 

(昨日の今日でこれかよ……勘弁しろっての、コンチクショー!!)

 

こんなところで堕天使と戦ったら周囲に被害が出るのは目に見えているので、一度人気のない広い場所に移動するべきだろう。

 

ゆっくりとした歩調でにじり寄ってくる男から少しでも距離を取ろうと後ずさっていくと、憮然とした声色で男が再び口を開く。

 

「逃げ腰か? 主は誰だ? こんな都市部から離れた場所を縄張りにしている(やから)だ、階級の低い者か、物好きのどちらかだろう。お前の主は誰なんだ?」

「さあ、誰だろうな!!」

 

一言だけそう言って、大きくバックステップ。悪魔の身体能力に任せて一気に10メートル近く距離を離し、全速力で今の時間に人がいないであろう近所の児童公園に向けて走り出す。

 

(ドライグ。悪魔に転生して身体能力が上がったってことは、強化の上限も増えてるはずだよな!? どこまでのブーストなら耐えられる?)

 

その途中でドライグに悪魔化してどれ程キャパシティが上昇しているか訊いておく。今の身体能力ならばかなりのブーストに耐えられるのは感覚的にわかるものの、下手にブーストしすぎて戦えなくなっては意味がない。

 

《そうだな。………今の相棒の身体能力ならば、無傷の状態で15段階がキャパシティギリギリといったところだ。効果の持続時間は肉体強化だけなら1時間は保てるだろうが、譲渡も併用するとなると15分程度が関の山だろう》

 

ドライグからの言葉はかなり頼もしいものだった。

 

強化の段階だけで見ても人間だった時の3倍に増えているのだが、増幅率で見れば6万5千倍以上増加している。文字通りの桁違いだ。

 

譲渡というのはブーステッド・ギアの二つ目の能力で、その名の通り溜めた力を最大二つまでの任意の物に譲り、対象の能力を強化する事が出来る。

 

使い方によってはかなり強力な能力なのだが、譲渡は使い慣れていないので自己強化のみに絞っておいた方が無難だろう。

 

あとは堕天使が攻撃する時に使うであろう光の力に注意すれば何とかなると信じたい。

 

(オッケー、そんだけ上げれりゃ十分だ。とっととあの堕天使を倒して帰るぞ)

 

相棒との話し合いを行いながら赤龍帝の籠手を展開、戦闘に備えたブーストを開始すると同時に強化中不安定になる神器の『力』が逃げないよう走るスピードを落とす。

 

(よし、到着。あとは……)

 

2分ほど走って児童公園に到着すると、頭上から黒い羽が舞い降りてくる。

 

「逃すと思うか? 下級の存在はこれだから困る」

 

案の定堕天使は俺の後をつけてきてくれたようで、余裕の表情を浮かべたまま地面に降り立つ。

 

「お前の属している(あるじ)の名を言え。こんなところでお前たちに邪魔をされると迷惑なんでな。こちらとしてもそれなりの――」

「悠長に喋ってるとこ悪いが、こっちとしてはあんたをとっとと倒して家に帰りたいんだ。速攻で倒させてもらうぞ!!」

 

 

『Explosion!!』

 

 

堕天使の言葉を遮りながらここに移動するまでの間に限界ギリギリまで貯めた『力』を身体全体に行き渡らせ、身体能力を大幅に増幅させると同時に堕天使に肉薄する。

 

「っ!? 何だと!!」

「遅い!!」

 

一瞬で距離を詰めた事に驚く堕天使の左足を思い切り踏みつけてその場に縫い付け、体を屈めながらガラ空きになっている堕天使の腹めがけてボディブローを打ち込む。

 

 

ドゴン!!

 

 

「ごはっ!?」

 

無防備の腹を攻められた堕天使の口から大量の血が吐き出される。どうやら不意打ちは成功したようだ。

 

「オラオラオラ!!」

 

そのまま腕力と上半身の力のみでパンチを連打し、堕天使の上半身を滅多打ちにする。本来だったらさほど力の入っていない攻撃故に効果は薄いが、ブーステッド・ギアの効果で増幅された今の身体能力ならばそれなりのダメージを与えられているようだ。

 

「調子に乗るなよ、小僧!!」

 

そのまま殴り続けていると堕天使側も打たれ慣れてしまったらしく、ダメージを受けながらも光の槍が作り出す余裕を与えてしまう。

 

(やばっ!?)

 

パンチの連打を中止して距離を取ろうとするがわずかに遅く、光の槍は俺の右腕を掠める。

 

「がっ!?」

 

掠めただけにも拘らず右腕にハンマーで殴られたような痛みが走る。確かにこのダメージならリアス先輩の言っていた『光は悪魔にとって猛毒』というのも理解できる。

 

「これほどの力を持っているという事は相当の手練。貴様、何者だ?」

「ちょっと特別な神器を持った新人悪魔だよ、堕天使!!」

 

堕天使が仇敵と相対した時のようにこちらを睨みつけてくるので、自分の経歴を手短に話す。

 

「戯言を!!」

 

だが、堕天使としてはお気に召さなかったらしく、光の槍を俺目掛けて放り投げてくる。

 

「当たるかよ!!」

 

増幅された反射神経や反応速度を利用してその光槍を回避し、再度堕天使に接近する。

 

「舐めるなよ、悪魔!!」

 

だが、堕天使はその翼を利用して上空へ退避する。

 

「今後の事を考えあまり力は使いたくなかったが、やむを得まい。このドーナシーク最大の一撃をもって、貴様を殺す!!」

 

そう言いながら堕天使――どうやらドーナシークという名前らしい――は両手を掲げて光球を造りだす。

 

《あの光力、直撃すればただでは済まんぞ。どうする、相棒?》

(どうするもこうするも、回避するしかねーだろ)

 

どんな攻撃か想像できないが、あの光を見ているだけでかなりやばい事がわかってしまう。

 

出来る事ならドーナシークを叩き落としたいところだが、ジャンプして行なった攻撃を回避されたら空中で動けない俺はまず間違いなく殺されるので、回避に専念するしかない。

 

「さあ、死ね!!」

 

その言葉とともに抱えるほどの大きさになった光球が俺のいる場所に向けられ、そこから散弾の要領で大量の光槍が発射される。

 

(そういう(たぐい)かよ、くそっ!!)

《頭や胸といった急所を守れ!! そこさえ守れば何とかなるはずだ!!》

(了解!!)

 

回避が意味をなさない事を見た瞬間に悟らされるが、すぐにドライグからアドバイスが飛んでくるのでそのとおりにする。

 

増幅された反応速度を利用して飛来する光槍の中から頭や胸、腹などの急所への直撃コースと思われるものを選び、両手両足を駆使して軌道を逸らしていく。

 

当然ながら光に触れた右手と両足はダメージを負うことになるが、光槍の直撃に比べれば微々たるものなので痛みを我慢して攻撃を捌き続ける。

 

「ほぉ、まさかこの攻撃を受けて満身創痍とはいえ生きているとはな」

「うる、せえよ……」

 

ドーナシークの言うとおり攻撃が終わる頃には全身に光槍を掠められて少し多めの出血をしているが、それ以上に傷口から侵食してくる光のダメージがバカにならなかった。

 

「その状態では回避もできまい。大人しく死ぬがいい」

 

そう言ってドーナシークが再び光球を形成してくる。念の入った事にさっきの攻撃をもう一度やるつもりらしい。

 

(くそっ……せめて遠距離攻撃ができれば……)

 

ダメージでまともに働かない頭でそんなことを思う。

 

《なら魔力を使ってぶっつけ本番でやれ、相棒》

(おいおい、魔力の扱い方なんて知らねーのにどうやれっつーんだよ、ドライグ)

 

いきなり突拍子もない事を言い出す相棒に文句を言う。

 

《リアス・グレモリーたちの言葉を思い出せ。魔力はイメージ、使い手の想像力でどのような形にでもなる。とっととやらんと死ぬぞ、相棒!!》

 

上空ではドーナシークが先ほどと同じように光を溜め込んでおり、いつ攻撃が来てもおかしくなかったので記憶の中から適当な遠距離攻撃を検索する。

 

(遠距離攻撃………ええい、これでいいや!!)

 

空想と現実の区別がまだ曖昧な小学生の時に散々練習したため最もイメージしやすかった『ある作品』の初期必殺技を思い出し、過去の練習のまま構えを取る。

 

「ド・ラ・ゴ・ン……」

 

身体中の『力』を流れるように掌に集めるイメージを浮かべると、本当に赤い光が集まって光球を形成する。

 

《まだ僅かだがブースト出来る!! そのまま撃て、相棒!!》

「波ああっ!!」

 

ドライグの言葉に従って光球をドーナシークに向けて掛け声と共に撃ち出すイメージを送ると、光球から赤い光の奔流が溢れる。

 

 

グオオオオオォォォォンッ!!

 

 

奔流はブーステッド・ギアの増幅効果によって瞬く間に人一人余裕で包み込む大きさに変貌し、ドーナシークに襲いかかる。

 

「何だと!? ぐああああっ!!」

 

ドーナシークはこちらが遠距離攻撃を行なってくるとは思っていなかったらしく、あっという間にその奔流に飲み込まれて跡形もなく消し飛んでしまった。

 

 

『Reset』

 

 

それと同時にブーステッド・ギアの増幅も終了し、元の身体能力に戻った瞬間それまでのダメージからか身体の力が抜けてその場に大の字になって寝転ぶ。

 

《ぶっつけ本番とは思えんほどだ。よくやった、相棒》

(そいつはどーも)

 

しかし、悪魔になって一日でまた堕天使に襲われるとは思ってもみなかった。

 

《大方ドラゴンの力に惹かれたのだろう。戦いに関しては苦労しなさそうだな、相棒》

(戦いより女を引き寄せろっての。……っつーか、この会話も何度目だ?)

 

ドラゴン?としての習性で戦いを引き寄せるのは今までの経験で嫌というほど理解していたが、ドライグの言い分を聞く限りだと悪魔に転生した事でその力も強くなったようだ。

 

今までのように不良共を引き寄せるだけでなく、今しがた消し飛ばした堕天使のような人外の存在すら引き寄せる事になるとしたら、正直言ってやってられない。

 

いくら赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)という切り札があったとしても人外の存在の強さは不良などとは比較する必要がない事は今の一戦で理解できてしまったので、実力差次第ではこちらが殺されかねない。

 

敵との間にどれくらいの実力差があるかを知らせる機能か、どれくらいの強化を施せば実力差を埋める事が出来るのかを知らせる機能が発現してほしいものだ。

 

「イッセー、無事!?」

 

そんなことを考えていると紅の魔方陣が展開し、そこからリアス先輩が出現する。

 

「生きてはいますが堕天使から光の攻撃を受けたんで、ダメージで全身くまなく痛いっす」

「光の!? 相手の堕天使はどうしたの!?」

「あー……すいません、ダメージで色々と限界なんで、あとはドライグから聞いてください」

 

戦闘が終わって緊張が解けた事とダメージが限界を迎えた事でそれだけ伝えるのが精一杯であり、どちらかというと心地よい感覚と共に俺は意識を失うのだった。




そんなわけで、今回はここまで。

原作におけるドーナシークさんはモブ同然だったので、拙作における必殺攻撃(仮)と同じ攻撃ができるかは不明なので、独自技という事にしておいてください。
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