もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~   作:ショウゴ

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連続更新第3弾です。お楽しみください。


04 入部

PIPIPIPI!! PIPIPIPI!! PIPIPIPI!!

 

 

いつものように無機質なアラームが部屋中に鳴り響き、その音で目が覚める。

 

(あ゛~、だりぃ。……早く慣れねえかな)

 

悪魔化した影響で日光を浴びると倦怠感を感じるようになってしまったので、そのだるさを我慢しながら身体を起こして枕元に置いてある目覚まし時計を止め、そこで違和感を覚える。

 

(あれ、なんで裸なんだ?)

 

どういうわけか素っ裸だった。俺は寝る時に裸になる習慣はないし、何よりも昨日は自分の足で帰宅した記憶がない。昨日の最後の記憶は堕天使を跡形もなく吹き飛ばした後で突然リアス先輩が現れたところまでだ。

 

「うぅん……」

「っ!?」

 

そこまで考えたところで微かに艶の含まれた聞き覚えのある声が聞こえたので、慌ててそちらの方向を見る。

 

「……すーすー」

 

ストロベリーブロンドよりなお赤い紅の髪をもつ高校生離れしたプロポーションをした美少女で、悪魔になった俺の主であるリアス・グレモリー先輩が何故か同じベッドで眠っていた。

 

(リアス先輩!? 何故に!?)

 

狭いベッドの上だという事を忘れて無意識の内に後ずさり、そのままベッドから転げ落ちてしまう。

 

「いってぇ~……何がどうなってんだ? ドライグ、説明頼む」

 

昨日俺が意識を失ってからの一部始終を知っていそうなドライグに話しかけ、どういった経緯でこうなってしまったのか聞き出す事にする。

 

《相棒も昨日の戦闘でダメージを負った事は覚えているだろう? リアス・グレモリーは傷を治療する為に相棒に魔力を供給して自己治癒能力を促進させていたのだ。ただこの方法はかなりの至近距離でないと行えないらしく、同衾するしかなかったわけだ。お互い『初めて』は捨ててないから安心しておけ》

 

「……教えてくれたことには感謝するが、誰もそこまで説明しろとは言ってねーよ」

《なに、普段は隠しているが相棒もそういった事に興味を持っているようだからな。俺なりの配慮というやつだ》

 

ドライグがからかい混じりの声色でそう言ってくる。俺とドライグは精神の深いところで繋がっているので、こちらの思考の一部がドライグ側に漏れる事が稀にある。俺だって高校生なのでエロい事には当然興味があり、たまに考えているそのテのことがドライグ側に伝わっているようだ。

 

「そういうのは余計なお世話っつーんだよ。――」

「イッセー!! 起きてきなさい!! もう学校でしょ、遅刻するわよ!!」

 

タチの悪い冗談を言ってきたドライグに一言文句を言いながらリアス先輩を起こさないよう静かにベッドサイドに腰掛けると、階下から若干の怒りを含んだ母さんの声が響いてくる。

 

「母さん、イッセーは部屋にいるのか?」

「お父さん、玄関に靴があるから帰ってきてるのよ。帰ってきたなら帰ってきたで、どうして一言言わないのかしら?」

 

母さんは若干の怒りと多分の呆れを含んだ声色で父さんに向けてそう言うと、そのまま階段を上る足音が聞こえてくる。どうやら俺を起こしに来るつもりのようだ。

 

(ん? それって……マズくないか?)

 

現在ベッドにはリアス先輩が熟睡しており、ドライグから教えてもらった魔力を用いた治療の影響で俺も先輩も素っ裸だ。悪魔の事はおろか神器の存在すら知らない生粋の一般人である母さんが『年頃の男女が二人とも裸でいる』姿を見たら、考える事は一つしかないだろう。

 

(どう考えても『秘密裏に彼女を家に連れ込んで部屋で童貞捨てていた』って構図だよな、これ)

 

むしろそれ以外の可能性などゼロに等しいので、どう転んだとしても勘違いされてしまうだろう。……うん、ヤバイ。

 

「母さん待った!! 起きてる!! もう起きてるから!!」

「そう? でも帰りが遅くなった理由くらい聞かせて欲しいからそっちに行くわね」

 

母さんを静止させるために声をかけるが、もっともらしい理由を掲げて足音を響かせながら部屋に近づいてくる。

 

「うーん……。朝?」

「っっ!?」

 

しかも至近距離でどたついていた事でリアス先輩が目を覚ましたらしく、寝ぼけまなこをさすりながら上半身を起こそうとしていた。

 

 

ガチャ

 

 

おまけにリアス先輩が体を起こした事を見計らうように部屋の扉が勢い良く開かれ、母さんが室内に入ってくる。

 

「おはようございます」

 

部屋に入ってきた母さんの方に向き直りながら、リアス先輩はいっそ見事なまでの微笑みを浮かべて朝の挨拶をする。

 

「………………」

 

母さんの視線が俺からリアス先輩に移り、一瞬にして表情が凍る。その状態で視線だけが俺の方に移ってくるが、何を言えばいいかわからない状態なので自然とその視線をそらしてしまう。

 

「…………ハヤク、シタク、シナサイネ」

 

嫌に硬い声色で一言だけそう言うと、母さんは静かに扉を閉めて退室していき、一泊あけてドタドタと慌ただしい足音で階下へ向かっていった。

 

階下からはリアス先輩を見て困惑した母さんの声が大声で響き、それにつられるように父さんの声もだんだんと焦ったモノになっているようだった。

 

「随分と朝から元気なお家ね」

 

だがリアス先輩は階下の喧騒を気にする様子もなくベッドを抜け出し、机の上に置いてあった制服に手をかけて着替え始める。

 

「……先輩。おっぱいやらお尻やら色々と丸見えなんですが……」

 

あまりジロジロと見るのも失礼と思いリアス先輩から視線をそらしながら一言注意すると、予想外の答えが返ってきた。

 

「見たいなら見てもいいわ」

 

異性の前で堂々と着替えながらリアス先輩がそう言ってくる。

 

「っ!?」

 

にわかにはその言葉を信じられずリアス先輩の方を向くと、先輩は微笑みを浮かべたまま質問をしてきた。

 

「それより、身体は平気?」

「はい、ダメージは先輩の治療のおかげで完治してます」

「それはなによりね。……あなたが気絶した後、ドライグに堕天使に襲われたから自衛の為に相手を消し飛ばした事は聞いたけど、どうして戦闘になったの?」

「堕天使が襲ってきた理由については見当もつきませんが、再排除の刺客の可能性は低いと思います。戦う前の口ぶりだと、俺の事は知らなかったみたいですし。……ただ、高位のドラゴンは異性と戦いを引き寄せる『力』を持っているらしいので、それに引き寄せられた可能性もあると思います」

 

体調に問題がない事を確認したリアス先輩は着替えを始めながら昨日の戦闘について質問してくるが、そちらに関してはさっぱりなので、俺が知る中で一番可能性が高そうな事を伝えておく。

 

「そういえばそんな伝承もあったわね。……とにかくあなたが無事でよかったわ、イッセー」

「こちらこそ、また助けてもらってありがとうございました」

 

先輩はそう言いながら下着姿で俺に近づき、細い指先で俺の頬を撫でる。初めて異性の体を見たこともあって、自然と顔が赤くなってしまう。

 

「イッセーも着替えなさい。そしたら朝ご飯にしましょう」

「あ……はい」

 

見た者を魅了する微笑みを浮かべたままそう言ってくるので、俺も着替えを始める事にする。

 

(あまり気は進まないけど、母さんたちには何とかして誤魔化すしかないな)

 

階下の喧騒はいつの間にか収まっており、嵐の前の静けさを連想させられてしまう。

 

お互いに10分ほどで着替え終わり、両親から質問攻めにされる事を覚悟して食卓に向かうが、結論から言うと俺の覚悟は杞憂に終わった。

 

何故なら話の途中でリアス先輩が魔力を使って両親に暗示をかけたらしく、食事が終わるまで二人とも目が虚ろになっていたからだ。

 

リアス先輩が両親に使った方法は手段としてはあまり褒められたものでない事はわかっているが、両親には駒王学園に入学するまで色々と苦労をさせているため、その種を追加させるようなマネはしたくないので容認する。

 

暗示の効果は抜群だったらしく、食事が終わってからのわずかな間に両親と先輩はすっかり打ち解け、程なくして俺はリアス先輩と共に登校する事になった。

 

登校時間としてはいつもより早く通学路を歩いていると、同級生や上級生の先輩達は俺の姿を見つけ慌てて時間を確認する人もいるが、そういった人達は圧倒的な少数派だった。

 

何故なら俺の前には学園一の人気を誇るリアス・グレモリー先輩がおり、その先輩が駒王学園で最も悪名高い俺と行動を共にしているため殆どの生徒は驚愕の視線を俺達に向けている状態だった。

 

道の方々から生徒の男女を問わずに様々な憶測が飛び交い、事実を受け入れた人物は驚愕の視線を嫉妬の混じったものに変化させて遠慮なく俺にぶつけてくる。

 

(普通だったらありえん光景だっつーのはわかるが、文句があるならはっきりしろっての。……あ゛~、だりぃ)

 

未だに慣れない日光と周囲から浴びせられる不愉快な視線に辟易しながら校門を抜けて生徒用玄関に到着すると、リアス先輩が声をかけてくる。

 

「放課後にまた会いましょう、イッセー。そうしたら昨日の続きから話してあげるわ」

「わかりました。放課後に向かいます」

 

返事をすると先輩は一人で教室に向かっていった。

 

「さて……羨ましいにしても実力行使はやめろっての、松田」

 

リアス先輩の姿が見えなくなった直後に左側から襲い掛かってきた拳を右手で受け止めながら視線を動かすと、案の定怒りの表情を浮かべた松田の姿があった。

 

「約束すっぽかしてる奴に言われたくないわ!! 俺達の事も紹介するって言ったじゃねーか!!」

「そもそもお前がリアス先輩と登校している理由を知りたいな、イッセー」

 

怒鳴る松田と対照的に表面上は冷静を装いながらメガネのズレを直す元浜だが、その視線はいつも以上に鋭かった。

 

(悪魔や神器絡みの事はにわかには信じがたいし、適当に誤魔化すか)

 

先輩が俺の家に泊まった理由を説明しようとすると世間一般にはオカルトと呼ばれる天使や悪魔に関する事柄を教える必要があるので話の信憑性が薄くなるし、何よりめんどくさい。始業までに説明し終える自身がないので、事実の一部だけを伝える事にする。

 

「昨日は色々あって先輩が俺の家に泊まる事になったんだよ。それで今日は一緒に登校したってだけだ」

 

声量を絞って松田と元浜だけに聞こえるように呟くと二人は戦慄し、その表情が瞬く間に呆然としたモノに変えるとその場に棒立ちになる。恐らく俺の言葉を聞いて勝手に『その先』まで想像してしまったのだろう。

 

嘘は一言たりとも言っていないが、全ての事実を話したわけでもない。色々と面倒な部分を省いて説明しただけだ。

 

(まあ、その内回復するだろ)

 

二人を放置したまま教室へ向かい、日光を浴びる倦怠感に抗いながら忘れない内に入部届に必要事項を記入しておく。

 

(あとはこれをリアス先輩に提出すればいいな。……しかし、悪魔の隠れ蓑がオカルト研究部ってのはすごい発想だよな)

 

内心でダレつつ他愛ない事を考えながら、黙々と授業を受ける。

 

授業中は特に問題らしい問題が起こる事もなく平穏に過ごし、昼休みに起こった松田と元浜からの追求も事実を交えた嘘を教えることで事なきを得た。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

時間はわずかに流れて放課後。悪友二人からの招待を蹴って旧校舎に向かうと既に鍵が開いており、旧校舎の中に最低でも一人はオカルト研究部のメンバーがいるようだったので早速オカルト研究部の部室へ移動し、念のために扉をノックする。

 

 

コンコンコン

 

 

「あらあら、どちら様でしょう?」

 

すると扉越しに朱乃さんの声が響く。

 

「朱乃さん、イッセーですけど入っても大丈夫でしょうか?」

「ええ、どうぞ」

「失礼します」

 

入室許可が出たので部室の中に入ると、既に部員は全員集合している状態だった。

 

「こんにちは、イッセー先輩」

 

そういう小猫ちゃんの手には切り分けられた羊羹が乗った小皿があり、俺に挨拶をすると小猫ちゃんはその羊羹を食べ始める。

 

「ああ。こんにちは小猫ちゃん、朱乃さん。木場もいるんだな」

 

朱乃さんと小猫ちゃんにはしっかりと挨拶をしておき、木場にも声をかけておく。

 

「僕だけ扱いが軽くないかい?」

「同性で肩肘はってても仕方ないだろ。フランクにいこうぜ」

「……そういう事ならいいけど」

 

一人だけ扱いの違う木場が文句を言ってくるので反論すると、木場は一応の納得を見せる。

 

「こんにちはイッセーくん。部長から堕天使に襲われたと聞きましたが、大丈夫でした?」

「かなりギリギリでしたけどね。リアス先輩が駆けつけてくれなかったら、その時に受けた光のダメージでヤバかったかもしれません」

「でも、部長が駆けつけた時にはもう倒していたっていうんだから驚かされるよ。どうやって倒したのか、聞いていいかい?」

「朱乃、イッセーが来たの?」

 

木場からの問いが終わると同時に部屋の奥からリアス先輩の声がしてきたので、そちらを見てみるとシャワーカーテンらしきものがあり、そこから水音が聞こえてきた。どうやら奥にシャワーがあるようだ。

 

(昨日は気付かなかったけど、この部屋本格的に水道引いてんのかよ)

 

昨日お茶が出てきた事を考えると、普通にコンロもあるのだろう。一部活動の部室とは思えないほどしっかりとライフラインが整備されているのは何か理由があるのだろうか?

 

「ゴメンなさい。昨夜(ゆうべ)イッセーのお家にお泊りしてシャワーを浴びてなかったから、汗を流していたの」

 

そんな事を考えているといつの間にか水音はやんでおり、制服に着替えたリアス先輩がシャワーカーテンの奥から出てくる。

 

「いえ、構いませんよ。それより先輩、忘れない内にこれを渡しておきます」

 

鞄の中から今朝書いておいた入部届を出して先輩に渡しておく。

 

「ありがとう。あとはこちらで処理しておくわ」

「了解です。それじゃあ昨日の話の続きを聞かせてもらって大丈夫でしょうか?」

「ええ。昨日は他種族から転生した悪魔が爵位を得られる事まで話したわね。今日はそういった眷属悪魔の歴史とランク、その特性から話していくわ」

 

リアス先輩のその言葉と共に第2回悪魔講座が開始される。

 

教えてもらった内容は、三勢力間の戦争終了後の眷属悪魔についてだ。

 

三勢力間の戦争で多くの同胞と軍勢を維持するだけの威厳を失った悪魔の皆さんは自然出生による数の回復を待ちきれなかった事が切っ掛けとなり、戦後処理の最中に他種族の人々を悪魔に生まれ変わらせる方法を造り出したらしい。

 

その時、他種族転生システムを造り出した人は当時の上級悪魔達の間で流行(はや)っていたチェスを利用することを考えついたらしい。

 

そうした理由から新たに眷属悪魔になった者達には主である悪魔を(キング)として他のチェスの駒に(なぞら)えたランクと特性が付与されており、この他種族転生システムを『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』と呼ぶようになったようだ。

 

これはチェスを模しているだけでなく転生させた悪魔の殆どが元人間である事の皮肉も込められており、リアス先輩のような上級悪魔の場合だと一定の年齢に達した時に通常のチェスと同じ女王(クイーン)1個、戦車(ルーク)僧侶(ビショップ)騎士(ナイト)が各2個、兵士(ポーン)8個の合計15個の(ピース)を与えられ、下僕に相応しい者を見つけた時に任意の駒を使用して主従関係を結び、三勢力での戦争以前に用いていた大軍勢の代わりとしたようだ。

 

「つまり、数を持てなくなった代わりに1騎あたりの質を高めて少数精鋭で戦おうって考えでいいんですか?」

「そうよ。あと、このシステム自体が爵位持ちの悪魔たちに好評なの」

 

主の悪魔は主従関係を結んだ眷属悪魔同士を自慢しあっている内にどちらの駒が強いか実際に競い合うようになり、いつしかそれは『レーティングゲーム』と呼ばれてルールが整備され、悪魔の間で大流行となった。

 

その流行はレーティングゲームの強さが爵位に影響を与えるほどのものとなり、最近では『駒集め』と称して優秀な人間を眷属にしようと躍起になる悪魔が多いようだ。

 

「なるほど。……そういう意味だとリアス先輩は運がいいですよね。どの駒をいくつ消費したかは知りませんが、赤龍帝を眷属にした悪魔ってそうそういないと思いますよ?」

『むしろ悪魔に転生した赤龍帝は相棒が初めてだぞ』

 

そこまでの話を聞いて思った事を口に出すと、ドライグからツッコミが入る。

 

「私も赤龍帝が悪魔側についた事例は聞いた事がないわ。……それはおいておくとして、『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の歴史を簡単に説明するとこんなところね。次に、それぞれのランクと特性についてよ」

 

駒そのものの歴史についての講義が終わり、話の内容は駒の特性に関するものへ変わっていく。

 

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』で転生した悪魔に付与される特性は転生時に使用される駒の種類によって異なり、『騎士(ナイト)』を与えられた者はスピードが、『僧侶(ビショップ)』を与えられた者は魔力運用能力が、『戦車(ルーク)』を与えられた者は攻撃・防御能力がそれぞれ上昇するようになり、『女王(クイーン)』は前述した3つ全ての能力が上昇するようだ。

 

もっとも、全ての上級悪魔の方々が眷属悪魔を15人揃えられるかと言うと、そうでもないようだ。

 

悪魔に転生させたい人物の潜在能力が駒一つで収まりきらない程に高い場合は同じ駒を複数消費するケースもあるらしく、一人の人物に異なる駒を使用することも不可能なようだ。

 

オカルト研究部メンバーで言うと木場が『騎士』、小猫ちゃんが『戦車』、朱乃さんが『女王』となり、『僧侶』については既に1つ消費しているものの、現在のリアス先輩の実力ではその能力を持て余すと悪魔の上層部から判断されてしまい、やむなく封印している状態のようだ。

 

「いずれ『僧侶』の子は紹介するわ。……最後に『兵士(ポーン)』についてね。この駒を与えられた者は前述の4種を与えられた者達と違って何かに特化する事がない代わりに、プロモーションと呼ばれる特殊能力があるわ」

「プロモーション……何かしらの条件を満たせば他の駒の能力を得る事が出来るってところですか?」

 

プロモーションは実際のチェスにも存在し、基本的に前へ1マスずつしか進めない兵士の駒が敵陣の一番奥にまで到達してしまい、それ以上動けなくなった兵士の駒を任意の駒に変化させて続闘できるルールの事だ。

 

「そのとおり。私が『敵の陣地』と認めた場所の最重要地点に足を踏み入れた時に『(キング)』以外の駒に変ずる事が可能よ。イッセー、あなたに使ったのはこの駒なの」

 

元の特化能力がない分、戦況に合わせたプロモーションを行うべきだろう。

 

「条件は厳しいですが俺向きではありますね。……参考までに聞いておきますが、俺の転生時には駒をいくつ消費しました?」

 

ポーンの駒は1セットに8個あるので最大8人まで揃える事が出来るが、俺が赤龍帝である事を考えると兵士の駒を半分以上使ったのは間違いないだろう。いつゲームに参加するかは知らないが、兵士が一人というのは色々な意味でまずい気がする。

 

「イッセーの場合はポーン8つを全て消費して悪魔に転生させたわ。元々の相性もよかったようだし、何より私の手駒でイッセーを転生させる事が出来たのはポーンだけだったの」

「……デスヨネー」

 

転生時に異なる駒を使えない以上は一番数が多いポーンを選ぶしかないというのは理解できるが、これで戦闘の時には最低でも8人分の働きをしなければいけなくなってしまった。

 

(8人分か……至って(・・・)いれば何とか出来るかもしれないけど、2年経っても至れない(・・・・)俺にそこまでの働きが出来るか?)

《あまりその事は気にするな。相棒の場合は切っ掛けがないだけにすぎん》

 

リアス先輩達に話していない赤龍帝としての致命的欠陥について考えていると、それに気づいたドライグが皆に聞こえないように慰めてくる。

 

「それぞれのクラスと特性についてはこんなところね。昨日の分も含めて今まで話した部分で何か質問はあるかしら?」

「いえ、大丈夫です」

 

聞いた部分で質問事項はないのでそう答えると、リアス先輩はこう言ってきた。

 

「それじゃあ実際に悪魔として働いてみましょうか。まずは基本の契約取りから教えていってあげる。実力があれば頭角を現していく事もできるでしょうし、爵位を得ることも不可能ではないわ。それにイッセーも正式に部員になることだし、これから私のことは『部長』と呼んで」

「わかりました、部長。これからよろしくお願いします」

 

その挨拶が俺の悪魔としての第一歩であり、正式なオカルト研究部の部員としてのスタートだった。




そんなわけで、今回はここまで。

明日も同じ時間に更新します。
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