もしドラ~もしもドライグが早く目覚めていたら~   作:ショウゴ

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連続更新第5弾になります。お楽しみください。


06 最悪の再会

はぐれ悪魔・バイサーを討伐した翌日。表向きの部活動の時間を使った悪魔講座を終えて一度家に帰り、夕食を食べた後悪魔の営業活動を始めるまでの僅かな時間でベットに寝転びながら考え事をしていた。

 

考え事の内容は『悪魔として大成し、何をしたいか』という根本的な物だった。

 

この事を考えるきっかけになったのは、今日の悪魔講座で悪魔の昇級について話を聞いていた時だ。

 

部長から『イッセーは昇級して爵位を得たとしら何をやりたいのか?』と問われ、悪魔の仕事を覚えるのに精一杯になっていたあまり『悪魔になって自分がやりたい事』がすっぽりと抜け落ちた状態になっている事にようやく気づかされたのだ。

 

当然部長の問いに答えることは出来ず、微苦笑と共に『どんな内容でも構わないから悪魔になって自分がやりたい事』を時間をかけて考えておくように言われてしまった。

 

(悪魔としての夢、か。行動指針を決めずに動いていたとは、我ながら間抜けなもんだ)

《今回ばかりは俺も助け舟を出せんぞ。こればかりは相棒個人の夢だからな》

(わかってるよ、ドライグ)

 

自嘲を込めて苦笑しているとドライグが話しかけてくるのでいつものように返事をするが、ごく普通の日本家庭に生まれた事もあって爵位を持つ事の利便性がわからないし、そういった大きな力を得てまでやりたい事というのはそう簡単に思い浮かばなかった。

 

真っ先に思い浮かぶのは女性関係を充実させる事だが、これについては爵位という大きな力を盾にしてまで充実させようとは思わない。

 

そもそも普通の眷属悪魔が昇級試験を受けようとすると10年から100年単位で様々な分野を通して少しずつ功績を得ていき、それが一定を超えたところでようやく昇級試験の受験資格を貰う事が出来る程のモノらしいので、これを目標に添えるとしたら2つ目以降の目標にしておいた方が無難だろう。

 

それに、天野夕麻と名乗っていたあの女堕天使みたいなヤツがまた現れる可能性はゼロじゃない。しばらくの間、異性絡みの事柄は慎重に行動しておいた方がいい気がする。

 

(しかし、天野夕麻か。……(だま)してたってのは殺そうとしてきた時点で理解してるが、そう簡単に忘れられそうにないな)

 

なにせ偽りとはいえ赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)を発現させたあの事件以降で噂に惑わされずに初めて俺の事を認めてくれた女であり、たとえ人間でなかろうと守りたいと思った初めての異性だ。初めてのデートで殺されかけた事も含めて鮮烈に記憶に残っている。

 

冷静になって考えてみると彼女は『俺が危険因子の可能性が高いから排除しに来た』と言っていたので、俺が神器保有者である事は予め知っていたのだろう。

 

それがブーステッド・ギアの下位神器保有者として認知されていたのか『赤龍帝の籠手』という神滅具の保有者として認知されていたのかは既に知る事が出来ないが、『危険因子』と言われるくらいなのだから後者の可能性が高い。

 

それに、たとえ前者の場合だろうと俺の事は『殺害する事が容易な存在である』と判断されていたのだろう。つまり、彼女に指示した人物は『後者の場合、俺が確実に至っていない』事を看破していたのは想像に(かた)くない。

 

《確かにその可能性は高いが、悪いのは相棒を殺そうとしたあの堕天使とその指示者だ。お前が気にやむ必要はない》

(それはわかってんだよ、ドライグ。……ただ、最初から全部話してたら別の未来もあったんじゃないかって思っただけだよ)

 

ドライグとはどう出会ったのか、何故俺が『至る』事ができないのかを懇切丁寧に説明していれば、少なくとも人間として死を迎える事もなかったのではないかと思わずにはいられなかった。

 

《それでも全ては過ぎてしまった事でしかない。過去を悔やむのは構わんが、いつまでも囚われていては何も変わらんぞ》

(少しくらい感傷に浸ってもいいだろ。……適当に折り合いは付けるさ)

 

どれくらい時間がかかるかはわからないが、この件については時間をかけていくしかないだろう。

 

(……ウジウジしてても仕方ないな。気持ちを切り替えて、きっちり仕事をこなしながら悪魔としてやりたい事をゆっくり考えていくとするかね)

 

異性絡みの願望以外だとすぐに思いつくことがないので、こちらも時間をかけてしっかりと考えていくことにする。

 

(よし、切り替え完了!! お仕事頑張りますか!!)

 

営業開始前の小規模訓練の事を考えるとそろそろ出発した方がいい時間になっていたのでベッドから起き、学園へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

 

「それじゃあ部長、行ってきます」

 

今日の仕事は初めての依頼の時と同じく小猫ちゃんのヘルプだった。

 

「ええ、頑張ってきなさい」

 

朱乃さんが展開してくれた転移用魔方陣の上に立ちながら出発の挨拶をしておく。

 

目の前が光に包まれ、空間転移をする時独特の感覚と共に今日の依頼者の家の玄関へ到着する。

 

「だっ、誰か!! 助げっ!?」

 

しかも到着早々助けを求める悲鳴が聞こえ、その声が不自然に途切れる。

 

(っ!? 何だ!?)

 

嫌な予感をさせながら何が起こったのか確認するために靴を脱いで声のした方に向かう。

 

必要最低限の明かりを灯されたリビングでは俺と同年代と思しき白髪の少年と、大量の血を吹き出しながら倒れ伏す成人男性の遺体があった。

 

「お゛ぇっ」

 

初めて見る人間の死体、それも数十秒前には生きていたであろう物を直視してしまい、無意識の内に胃の内容物を吐き出してしまう。

 

昨日討伐したバイサーはその倒され方が特異なものだったこともあってそこまでショックを受けずに済んだが、このやり方はあまりにも生々しいため耐えることができなかった。

 

「これはこれは悪魔くんではあ~りませんか。もしかして、召喚されたばっかし? 俺超タイミング良かったりする?」

 

ニマニマと意地汚そうな笑みを浮かべながら嬉しそうに呟く白髪の男。

 

「俺の名前はフリード・セルゼン。とある悪魔払い組織に所属する末端にございます。……まあ、悪魔みたいなクソじゃないのは確かですが」

 

目の前の白髪の男、フリードは自己紹介をしながら慇懃な態度のまま一礼してくる。

 

外見上の特徴は白髪で顔立ちはそこそこ良く、白の制服に黒いコートを纏い、その首にはロザリオがかけられている。

聖職者然とした格好をしながら平然と殺人を犯している時点で正規の悪魔祓い(エクソシスト)である可能性はほぼ0と判断してよく、悪魔祓いの行為そのものに快楽を見出して異端の烙印を押されながら処分を免れた『はぐれ悪魔祓い』の関係者である事は明白だった。

 

(それにしても、殺人はやり過ぎだろ!? 警察が介入してきたらどうすんだ!?)

 

『はぐれ悪魔祓い』の存在は悪魔講座で教えてもらっていたが早々に会う事になるのは予想外だったし、ここまでイカレた野郎だとは思わなかった。

 

俺は死体を見てしまった嘔吐感を無理やり抑え込みながらブーステッド・ギアを展開し、力の増幅を開始しながらフリードに声をかける。

 

「この人を殺したのは、お前で間違いないか?」

 

フリードの持つ剣の柄らしき物に真新しい血痕があり、状況証拠からすればこいつが殺したのは間違いないが確認のために問いかける。

 

「イエスイエス。俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしぃ、殺すしかないっしょ」

「……は?」

 

フリードは殺人をあっさり肯定すると同時に犯行動機まで喋ったが、理由としては到底理解できないものだった。

 

「悪魔に頼るなんてのは人間として終わった証拠。エンドですよ、エンド。だから、俺が殺してあげたんですよぉー!! クソ悪魔とクソに魅入られた人間を殺すのが俺様のお仕事なんでねぇ!!」

 

そう言いながらフリードは懐から大型拳銃を取り出し、血痕のついた柄から光の剣を発生させる。

 

(くそっ、少しでも早く到着していれば、何とかなったんじゃないか?)

 

僅かな差で凶行を防げなかったのは悔しいが、憂うのは後回しにしないとまずいだろう。なにせ目の前のはぐれ悪魔祓いはどう考えてもこちらを殺す気満々なので、他のことに気を取られていると本当に命取りになってしまう可能性が高い。

 

「今からお前の心臓にこの刃を突き立てて、このイカす銃でお前のドタマに必殺必中フォーリンラブ、しちゃいますYO!!」

 

フリードはそう言いつつこちらに向かって突撃しながら光剣を振るってくるので、懐に飛び込む要領で奴の横を通り抜けてその攻撃を回避。続けて襲いかかってくるであろう銃撃を回避する為にその場から飛び退く。

 

「ばきゅばきゅばきゅん!!」

 

だがフリードはこちらに振り向く勢いを利用して銃を連射してきたため全ての弾丸を回避することができず、左のふくらはぎを撃ち抜かれてしまう。

 

「があぁっ!?」

 

それと同時に光の攻撃をくらった時独特の痛みが攻撃を受けた場所を中心にして襲いかかってくる。

 

悪魔祓い(エクソシスト)謹製祓魔弾(ふつまだん)。お味はいかがすかー?」

「ぐっ…最悪だよ!!」

 

 

『Explosion!!』

 

 

痛みを(こら)えながら溜まっていた力を使って自己強化を発動。身体能力を上昇させつつ立ち上がり、フリードに殴りかかる。

 

「おぅ、早い早い。でも、まだまだ甘いっすよ!!」

 

感嘆の声を漏らしながらフリードはバックステップでこちらの攻撃を回避し、もう一度銃を構えてくるのでサイドステップで回避を始める。

 

「甘いっつんてんだろうが!!」

 

反射神経なども強化しているのでフリードがこちらの回避方向に追いすがるようして銃口を動かし、銃声を響かせることなく光弾が発射される様子がはっきりと確認できてしまう。

 

だがこちらの移動速度の方がわずかに早かったようで光弾は右の二の腕を掠めるだけで済んだ。

 

「そうそう。抵抗してくれよ、悪魔くん。そうしてくれた方がこっちとしても悪魔祓いのしがいがあるんでねぇ!!」

「言ってろ、はぐれ野郎」

「きゃああっ!!」

 

狂笑を浮かべたままのフリードをどうやって倒すか考えようとしたところで聞き覚えのある女性の悲鳴が室内に響き渡り、俺もフリードも声がした方向に視線を向ける。

 

倒れ伏した男性の遺体を見て表情を固まらせていたのは二日前に教会へ案内をしたシスターことアーシアだった。

 

「おんやぁ? 助手のアーシアちゃん。結界は張り終わったのかな?」

「こ…これは……」

「そっかそっか、君はビギナーでしたなぁ。これが俺らの仕事。悪魔に魅入られたダメ人間をこうして始末するんす」

 

死体を見て呆然としているシスターに何でもないような口ぶりで自分が行なったことを説明するフリード。

 

「そ、そんな……っ!?」

 

その説明を聞いてショックを受けたシスターがフリードの方を向く。そうすれば当然俺の顔も見ることになり、彼女の表情は驚愕したものになる。

 

「……イッセーさん?」

「……アーシア」

 

彼女の前では外国語が堪能なこと以外は『どこにでもいる気のいい男子高校生』として見えるように行動していたこともあり、どうしても気まずい雰囲気になってしまう。

 

「なになに? 君たちお知り合い?」

 

当然その雰囲気はフリードにも伝わり、俺とアーシアを交互に見回してくる。

 

「どうして……、あなたが……」

「……俺は、悪魔だからな」

「悪、魔? ……イッセーさんが?」

 

信じられないものを見た表情で固まってしまうアーシア。

 

「ああ。言い訳がましく聞こえるかもしれないが騙すつもりはなかったし、初めて会った時からお互いの立場も理解していた。……二度と会うことはない。いや、お互いの立場を考えればあってはならない。……君との約束は、どう頑張っても果たすことが出来ないんだよ」

「そんなぁ……」

 

俺の言葉にショックを受けるアーシア。彼女の向けてくる視線が(つら)かった。

 

「残念だけどアーシアちゃん、悪魔と人間は相容れません。ましてや僕達、堕天使様のご加護なしでは生きてはいけないハンパ者ですからねぇ」

 

アーシアに近づき、彼女の耳元でそう囁くフリード。

 

悪魔祓いは天使の持つ光の加護があって初めてその仕事をする事が可能なため、異端の烙印を押されながらも処分を免れたはぐれ悪魔祓い達は堕ちてなお光の力を持つ堕天使の下に転がり込み、自己の欲求を満たそうとする者が圧倒的に多いらしい。

 

「さて、ちょちょいとお仕事完了させましょうかねぇ?」

「っ!?」

 

そう言って再び俺に光剣を向けてくるフリード。俺としてもタダで殺されるつもりはないので再び拳を握ろうとすると、アーシアが俺たちの間に入り込み、俺を(かば)うように両手を広げる。

 

「おいおい、マジですか?」

 

アーシアの行動に険しい視線を向けながらそう呟くフリード。

 

「フリード神父様、お願いです。この方をお許しください。……どうかお見逃しを!!」

 

彼女の言葉を聞き、俺は声を詰まらせるしかなかった。彼女は俺が悪魔であることをきっちりと認識した上で俺を庇っている。

 

「キミ、自分が何をしているのかわかってるのかな?」

「わかっています。……たとえ悪魔だとしても、イッセーさんはいい人です。それにこんなこと、主がお許しになるはずがありません!!」

 

彼女の優しさを考慮すると後半の発言はフリードに殺された依頼者さんのことを咎めているのだろう。

 

「はあ゛あ゛っ!? バカこいてんじゃねえよ!!」

 

だが彼女の発言はフリードにとっては不快なものに映ったようで、苛立ちを込めてシスターに向かって光剣を一閃し、下着を含めた彼女の服のみを切り裂く。

 

「きゃあっ!?」

 

突如裸同然にされてしまい、羞恥心から両手で胸を隠すアーシア。

 

「このクソアマが!! マジで頭にウジ湧いてんじゃねぇのか!?」

 

だが、そんな彼女のことなどお構いなしにフリードは憤怒の表情でそう言いながら光剣を床に突き刺し、彼女に近づこうとする。

 

今から起こりそうな事など容易に想像できるが、リアルにそれを見て喜ぶ性癖は持ち合わせていない。

 

足を動かそうとするとそれだけでかなりの痛みが襲い掛かってくるが、ここで何もせずに彼女が好き勝手にされるのを見ているほど落ちぶれているつもりはないので、無理やり足を動かしてフリードに接近する。

 

「頭にウジが湧いてんのはてめぇの方だろうが!! 殺人犯して(よろこ)んでんじゃねえよ、狂人!!」

「っとお!!」

 

万感の思いを込めて右ストレートを繰り出すが足の痛みでまともな踏み込みが出来ず、少しでも威力を上げるために大振りな一撃にせざるを得ない為あっさりと回避されてしまう。

 

「オーケー、オーケー。そうまでして死にたいわけねクソ悪魔。どこまで肉をコマギレに出来るか、世界記録に挑戦しましょうかぁ!!」

 

フリードは先ほどと変わらず怒りを多分に含んだ声色で床に突き刺さっている光剣を素早く引き抜いてこちらに突撃してくる。

 

「イッセーさん逃げてぇ!!」

 

それを見たアーシアは悲痛な叫びをあげながら俺に逃げるように言うが、少なくとも目の前にいる下衆野郎をぶちのめしてからでないと彼女が何をされるかわかったものではないので、到底受け入れられなかった。

 

(ぜってー叩き潰す!!)

 

意気込みながらフリードのクソ野郎を迎撃しようとすると目の前に見慣れた真紅の魔方陣が展開し、そこから木場が飛び出てきてフリードと鍔迫り合いを始める。

 

「イッセー君、助けに来たよ」

「あらあら、これは大変ですわね」

「……悪魔祓い(エクソシスト)

 

木場だけでなく朱乃さんと小猫ちゃんも救援に駆けつけてくれたらしく、魔方陣から出るなり戦闘態勢に入る。

 

「みんな、助けに来てくれたのか。……でも、どうして?」

「今日イッセーくんが担当した地区の周辺で突然はぐれ悪魔祓いの反応を(とら)えたものですから、急いで助けに来ましたの。…その様子だと、無事とはいかなかったようですね」

 

朱乃さんが俺の左足を見ながら救援に来た理由を簡潔に説明してくれた。どうやら心配をかけてしまったようだ。

 

「それなりにキツくはありますが、まだ戦えます」

「怪我の治りも遅くなってしまいますし、無茶はいけませんわ。私たちに任せてくださいな」

「無茶はしないでください、先輩」

「……了解。支援に徹しますよ」

 

ダメージは左足だけなので戦えるには戦えるが、二人を心配させるわけにもいかないので前線は木場たちに任せることにする。

 

「大丈夫、イッセー?」

 

そして最後に展開されたままだった魔方陣から主である部長も姿を現し、俺を一瞥しながら怪我の有無を確認してくる。

 

「左足が猛烈に痛いだけなんで大丈夫ですよ、部長。ここで足を止めてみんなの支援をするくらいは余裕です」

「……あなた、ケガをしたの?」

「ええ。けど『はぐれ悪魔祓い』相手にこの程度のケガで済んでるんですから、軽傷ですよ」

 

女堕天使に殺された時と比べれば痛覚がはっきりしている分、浅い傷といって言いだろう。

 

「立派に重傷よ。…ゴメンなさいね。まさかこの依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓い』が訪れるなんて計算外だったの。……私の下僕を随分とかわいがってくれたみたいね?」

 

部長は俺の左足を見て『はぐれ悪魔祓い』と会ってしまった事を謝ると、普段より3割は低い声と共にフリードを睨みつける。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしているの。特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられるのは本当に我慢ならないわ。消し飛びなさい」

 

部長は死刑宣告のようにそう言うと、バイサーを消滅させた時と同じ漆黒の魔力塊をフリードめがけて撃ち出す。

 

「ぬぉっ!?」

 

だが、いつの間にか木場との鍔迫り合いをやめていたフリードは部長の攻撃を回避する。

 

「っ!? 部長、この家に堕天使らしき者達が複数近づいていますわ。このままではこちらが不利になります」

「……朱乃。イッセーを回収しだい、本拠地へ帰還するわ。ジャンプの用意を」

 

報告を聞き、部長はフリードを一睨みすると帰還準備のために朱乃さんに魔方陣の準備をさせる。

 

「部長、この子を一緒に連れて行くことは可能ですか?」

 

どのような形であれ俺を助けようとしたシスターを見捨てたくないので、部長に彼女の転移も可能か問いかける。

 

「無理よ。魔方陣で移動できるのは悪魔だけ。しかもこの魔方陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

「…わかりました。……ゴメン、アーシア。人間の君が転移範囲にいると何が起こるかわからない。少しだけ、離れてくれるか?」

 

どうやらそれは不可能なようで、俺はアーシアに向き直り彼女の安全のために転移範囲から出るように告げる事しかできなかった。

 

「いえ、いいんですイッセーさん。……また、またどこかでお会いしましょう」

 

アーシアの身の安全よりも主の命令を受け入れた事を罵ってくれればまだマシだったが、彼女はそれを当然のように受け入れ、自発的に魔方陣から出ながら俺に微笑みながらそう言ってきた。

 

「逃すかっての!!」

 

フリードは俺たちの転移を止めようとするが朱乃さんの詠唱が完了する方が早かったらしく、すぐに空間転移独特の感覚が発生し、次の瞬間には本拠地である部室に帰還していた。

 

だが、はぐれ悪魔祓いとの戦闘が終わり命が助かった事に対する安堵感よりも俺を庇ってくれたアーシアを見捨ててしまった無力感の方が圧倒的に強く、自分の弱さを再確認させられる形になってしまった。




そんなわけで、今回はここまで。

拙作でのイッセー君は魔方陣での転移が普通にできるので、名もなき依頼者さんの殺害直後にフリードとエンカウントしています。

序盤は変更可能な点が少ない事もあり、どうしても原作の焼き直しに近くなってしまいますが、その点はご容赦いただけるとありがたいです。

次回も明日の同じ時間に投稿します。
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