ラブライブ!~オタク女子と九人の女神の奮闘記~【完結】   作:鍵のすけ

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第十五話 矢澤にこという人間が

「思穂、あんた――」

「まあまあまあ! 積もる話もあるでしょう! 今後の話もあるでしょう! だからまあちょっと部室に入ってお喋りしましょうか? ねっ!? ねっ!?」

「ちょっ、にこを抱きかかえるなぁ! 離しなさい!」

「ハロー」

「そっちの“はなせ”じゃなーい!!」

 

 まるで誘拐でもするかのようににこを抱え、部室の扉を開けた思穂は皆を誘導する。目を白黒させながら、しかし与えられたチャンスを逃がさないよう、穂乃果達はさっさと部室内へと足を踏み入れる。

 全員入ったのを確認した思穂もすぐ部室に入り、鍵を掛ける。

 

「さ、にこ先輩まずはお茶でも出してもらいましょうか!」

「パンチならいくらでも出せるわよ?」

 

 思穂とにこのやり取りを見ていた皆の代表として、海未が恐る恐る手を挙げた。

 

「あ、あの……思穂とアイドル研究部さんとはどういう関係なんでしょうか?」

「にこよ。このアホとは何の関係も無いわ。今日初めて会ったんだもの」

「へ、へぇ~……にこ先輩、そういう手に出るんですねぇ……」

 

 ざっと見積もっても、にこのはらわたは煮えくり返っていたことに気づいた思穂は、それでもそういう他人行儀な態度に出てくるとは思ってもおらず、動揺していた。

 そうなれば、こちらもそれ相応な態度に出ることにした。そうと決まれば話は早く、思穂は花陽の方へと視線をやる。

 

「花陽ちゃんや花陽ちゃん」

「は、はい。何ですか?」

「貴方、こういうモノに興味はないかね?」

 

 そう言って思穂が棚に手を突っ込み、引っ張り出した物を見せた。その瞬間、花陽の目の色が変わった。

 

「こ……これは……!? 『伝説のアイドル伝説』全巻BOX!?」

「あ、こら! 勝手に……!」

「そんなにすごいの?」

「すごいなんてもんじゃないですよ!!」

 

 穂乃果の言葉を半ば怒るように返し、花陽はすぐに手近なパソコンを立ち上げ、そのBOXの説明を始めた。いつもの大人しそうな印象とは打って変わり、細かくそして情熱的にいかにそのBOXがすごいかを語る花陽の姿たるや、まるで別人だ。

 ちなみに思穂はにこから散々似たような説明を聞かされ続けたので、同じくらいの情報量をμ's全員に提供できる自信があった。

 

「……あれ、ことりちゃん? どうしたの?」

 

 思穂の視線の先には、棚の上を見上げ複雑そうな表情を浮かべていることりの姿が映っていた。思穂が声を掛けると、すぐにことりは首を横に振る。

 

「ううん。何でもないよ!」

「ああ、気づいた? 秋葉のカリスマメイド『ミナリンスキー』さんのサインよ」

「ことり、知っているのですか?」

 

 海未の質問に、ことりは先ほどと同じように首を振った。

 

「う、ううん……全然」

「まあ、それはネットで手に入れたものだから、本人の姿は見たこと無いんだけどね」

 

 何故かホッとすることりを見て、思穂はどうしたものかと疑問符を浮かべるが、今はそれよりも大事なことがあった。

 

「にこ先輩、お話があります!」

 

 流石と言うべきか、切り出したのは穂乃果であった。皆が席に座ったのを見計らい、穂乃果は説得を開始する。

 

「私達、スクールアイドルをやっておりまして!」

「知ってる。どうせ希に、部にしたいなら話つけて来いとか言われたんでしょ?」

「おお! 話が早い!」

「ま、いずれそうなるんじゃないかと思ってたからね。……そこのアホが一枚噛んでたんなら尚更よ」

 

 ジロリ、とにこが睨みを利かせたのは真正面に座っている思穂であった。そこで、ことりが小さく手を挙げた。

 

「あ、あの本当ににこ先輩と思穂ちゃんって無関係……?」

 

 ここまで来て、もう何も隠すことはない。思穂にしては珍しく、真剣な面持ちで答えた。

 

「……一年生の頃、にこ先輩にアイドル部に誘われて断ったことがあるんだ。それもキッパリと、ね」

「そ、それじゃあ前に似たようなお願い断ったってにこ先輩のことだったの!?」

 

 穂乃果の言葉に頷く思穂は、更に話し続ける。

 

「当時の私はアイドルっていうモノにあんまり興味なくてさ。まあ、それはそれで終わったんだけどね。……むしろそれからにこ先輩が私にアイドルに興味持たせようとしたり、逆に私がにこ先輩に漫画ゲームアニメラノベに興味持たせようとしたりのバトルが始まったんだ」

「そう。そこのアホにいくらアイドルの何たるかを叩き込んでもまるで興味持たず、だけどつい最近、ようやくちょっとは理解を示したかと思ったら……こういうことだったんだから馬鹿よね、にこは」

 

 そう言ってため息を吐くにこは本当に残念そうだった。その姿を見ただけで思穂は胸が締め付けられるが、それでも今はその恥を被ってでも、やらなければならないことがあった。

 

「にこ先輩、私は……!」

「お断りよ」

 

 そのにこの拒否に、海未がすぐに差し込んだ。

 

「私達はμ'sとして活動できる場が必要なだけです。ここを廃部にしてほしいという訳ではなく……」

「お断りって言っているのよ! 言ったでしょ!? あんたたちはアイドルを汚しているの!」

「でも! ずっと歌もダンスも練習してきて――」

「そういうことじゃない……!」

 

 にこの言葉に、思穂以外のメンバーは黙ってしまった。恐らくにこが何を言いたいのかが分からないのだろう。だが、思穂は知っていた。それはいつもにこが口酸っぱく言っていた言葉なのだから。

 

「あんた達……ちゃんと“キャラ作り”してるの?」

「……キャラ?」

 

 いまいち分かっていない穂乃果の曖昧な返事に業を煮やしたにこがとうとう立ち上がった。

 

「そう! お客さんがアイドルに求めるモノは楽しい、夢のような時間なのよ! だったら! それにふさわしいキャラってモンがあるの。――しょうがないわね」

 

 そう言って、にこはくるりと皆から背を向けた。その瞬間、思穂は察してしまった。あ、これいつものヤツだ。そう悟るや否や、思穂は半ば死んだような眼でその瞬間を待つ。

 

「良い? 例えば……」

 

 次の瞬間。皆へ振り向いた彼女は既に“矢澤にこ”ではなく、“アイドルのにこ”となっていた。

 

「にっこにっこにー!」

 

 そこから始まる数秒間の口上。見るたびにポーズが変わっているのは最早尊敬に値する。よくもまあ、基本を変えず、ガワを変えられるものだと思穂は思う。

 今日は手でハートの形を作ってみたり、敬礼を思わせるようなポーズを取ってみたり、最後にはいつも両手の人差し指と小指を立たせるお馴染みのポーズでフィニッシュ。

 ……正直、かなり気合が入っていたと思穂は思った。

 そこからの皆の反応は、様々であった。穂乃果を始めとする二年生組は一様に圧倒されていたが、一年生組は三者三様である。

 真姫はあからさまにドン引き、凛はあろうことに『寒くないかにゃ?』などとのたまい、花陽に至っては感心したようでメモを取っていた。

 中でもにこは、凛の言葉を聞き逃してはいなかったらしい。凛の方へと鋭い眼光を向ける。

 

「そこのあんた……今、寒いって言わなかった?」

「ぜ、全然! すっごい可愛かったです! さいっこうです!」

 

 そこからはμ's全員でにこを持ち上げる作戦に出た。花陽は声色から察するに、恐らく心の底からの賛辞だったはずだ。だが、とうとう我慢の限界を超えたにこは退去の言葉を告げた。

 

「出てって」

 

 そう言うが早いか手が出るが早いか、あっという間に皆追い出され、鍵まで掛けられてしまった。説得は失敗に終わったのだ。

 

「やっぱり追い出されたみたいやね。ちょっと付いて来てくれる? あ、思穂ちゃんはやることを優先した方がええね?」

「……はい。ということで穂乃果ちゃん達、悪いけど希先輩と行ってて?」

 

 言い残し、思穂は走り出した。目的は自分の机。そこにあるモノで、思穂は再びにこと会話をすることを試みる――。

 

「入りますねー」

「あんた! どうやって!?」

 

 手に持っていた鍵をプラプラさせることで、思穂はにこへの回答とした。それは何を隠そう、にこからもらった合鍵だった。

 

「にこ先輩が、私にくれたやつじゃないですか」

「……そうね」

 

 にこの近くの椅子に座った思穂は、彼女の方へと顔を向け、深々と頭を下げた。

 

「……何の真似よ?」

「すいませんでした。今まで、にこ先輩を騙すようなことをして。謝っても許されないことは分かっています。ですが、私にはこうやってにこ先輩に頭を下げる事しか出来ません」

「……あんたは今までにこのこと、陰で笑ってたの? 片や六人、片や一人で活動しているにこのことを」

「っ! 笑いません! 笑える訳、無いじゃないですか……!」

 

 にこも本心で言った訳では無いようで、すぐにまた不機嫌そうな表情を浮かべた。

 

「あんたはどうしたいの? にこの事」

「穂乃果ちゃん達に……μ'sに力を貸してください」

「それはにこに、あいつらの要求を呑めと言っているの?」

 

 そうなると、にこがμ'sに吸収されるという形で終わる。にこの積み上げてきたモノが崩れ去るということを意味する。それを分かっていて、思穂はそれでも言った。

 

「いいえ。にこ先輩も共に歩きましょうと、私は言っています」

 

 次の瞬間、二人だけの部室に鈍い音が鳴り響く。にこが机を叩いたのだ。手が真っ赤になるのも気にせず、にこは立ち上がり、そして思穂を睨み付ける。その表情は明確な怒りに染まっていた。

 

「勝手すぎるのよあんたは! にこが誘ってもやってくれなかったスクールアイドルを内緒で始めて! その上、一緒にやりましょう? ふざけんじゃないわよ!」

 

 何も言わない思穂へ、にこは更にまくし立てる。

 

「どうせあんたも中途半端な理由でスクールアイドルを始めたんでしょ!?」

「違います!」

 

 その言葉に、思穂もついに立ち上がった。

 

「私は穂乃果ちゃん達とは違います! 私は私の為に、にこ先輩を……矢澤にこが欲しいんです!!」

 

 流石のにこもその言葉は予想出来ていなかったのか、思穂のストレートな物言いに顔を紅くしてしまった。

 

「ちょっ!? あんた、言ってること分かってんの……!?」

「分かってますよ! 私は自分のオタクライフを守るために、穂乃果ちゃん達をサポートしています! 自分の為なんです! ……けど、穂乃果ちゃん達は廃校を何とかしようと本気で頑張っています……!! そんな穂乃果ちゃん達と、私を一緒にしないでください!!」

 

 思穂はにこの両肩を掴み、彼女としっかり目を合わせた上で……言った。

 

「穂乃果ちゃん達はしつこいですよ! 何度追い払っても、何十何百何千と追い払っても、何度も来ます! そんな彼女達の“本気”を、あの矢澤にこが分からない訳がない!! 同じくらい“本気”の矢澤にこの眼力が、ソレを見抜けないはずがない!!」

「思穂……あんた……」

 

 気づけば涙目で喋っていた。その事が気恥ずかしくなり、思穂はすぐさまにこから両手を離し、出入り口まで歩いていく。

 

「私は……にこ先輩なら、μ'sを次のステップに連れて行ってくれると言う確信があります。それだけは、覚えておいてください」

 

 にこの返事も聞かず、思穂はアイドル研究部を後にした。窓を見ると、穂乃果達はまだ希と話しているようだ。今日はそのまま顔を合わせず、帰ろうと思った。

 ……自分が泣いている姿なんて、恥ずかしくて見せられない。いつも笑顔で、いつもふざけていて、それが片桐思穂なのだから――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「皆……もう帰ったかな?」

 

 涙が乾ききったところで、思穂はようやく帰ろうと思った。いつの間にか時計は思穂のゲームプレイ時間に差し掛かっていたが、今日はそんな気分にはとてもではないが、なれない。

 

「はぁ~……にこ先輩に嫌われちゃったかもなぁ……」

 

 片桐思穂と言う人間は、本当に矢澤にこという人間が大好きで、そして尊敬していた。同じような境遇にありながら、決して折れることのないその不屈の心は、思穂にとってある意味で指針となり、ある意味で自分のスタンスを決定づけたといっても過言では無い。

 そんなにこに啖呵を切ったあげく、呼び捨て。これはもう、疎遠ルート一直線だろう。そんな完璧に沈んでいた思穂はまるで気づいていなかった。後ろから迫る影に――。

 

「わしわしー!」

「ほわっちゃ~!?」

 

 自分の胸がいきなり形を変えていくのをただ見ていることしか出来なかった思穂は、ここでようやく後ろの存在に気づいた。

 

「の、希先輩!?」

「むむっ! 意外に着やせするタイプやったんやね思穂ちゃん」

 

 何とか抜け出せたところで、息を整えつつ、思穂は改めて希へと視線をやった。

 

「な、何で希先輩いるんですか!?」

「何でって、そりゃあまだエリち、生徒会業務の真っ最中やし」

 

 だったらそっちの方へ行けば良いじゃないか。そう思いながらも思穂は、希もまた自分と似たような人間だということで納得し、同時に諦めた。

 

「にこっちと話したんやね?」

「はい。まあ、言いたいことは言ったつもりです」

 

 しかし思穂は後悔だけはしていなかった。あれが自分の本心で、全てだ。それを否定するのだけは、絶対に有り得ない。

 

「私……やっぱり自分勝手ですよねぇ……。いつも肝心なところは人任せ。こんなんじゃ、やっぱりにこ先輩どころか、穂乃果ちゃん達と“対等”になることだってさえ……」

「ウチはそうは思わないけどなぁ」

 

 ピッと、希が見せたタロットカードにはラッパを吹いた天使の絵が描かれていた。正位置のそれは『審判』と呼ばれ、その意味は復活や発展を意味する。

 

「あ……」

「見てみぃ? 思穂ちゃんの行動が、今のこのカードを引き寄せたんよ?」

 

 さっさとそのカードを仕舞った希が、ふいに空を指さした。

 

「明けない夜はない。止まない雨はない。晴れない雲も、ないんや」

 

 何もかも見透かしたような希の物言いに、思わず思穂は笑ってしまった。これではまるでエスパーか、それこそスピリチュアルな存在だろう。

 

「思穂ちゃんの行動の結果は今は分からん。……やけど、先にどれだけ悪い結果が来ても、後からは絶対いい結果がやってくるはずや」

「それは経験則……ですか?」

「……せやね。思穂ちゃんだから言うけど、ウチもそんな感じやったよ? 前例がここに居るんやから、思穂ちゃんも大丈夫!」

 

 そんな前例を出されても、こちとらただの学生である。そんな超設定、それこそ希だけにしか許されない。だが、それでも思穂はその“第二”になりたい気持ちもあった。

 

「……私は今のこのスタンスを崩すことはありません。私はあくまで黒子、裏方です。なるべく穂乃果ちゃん達の邪魔をしたくないし、でしゃばりたくありません」

 

 逃げ腰の思穂へ希が問いかける。

 

「でも思穂ちゃんの力が必要だったら?」

「やります。全力で、何もかも」

 

 それには即答出来た。当然だ、それが思穂の全てだ。

 

「今はどうしたいん?」

「にこ先輩と、仲直りがしたいです。笑って、馬鹿話して、時にはどつかれるような、そんな関係に!」

 

 それにも即答出来た。それこそが今の思穂の願い。

 

「それは誰の為? μ'sの為?」

 

 その希の問いにも――すぐに即答できる思穂が居た。

 

「――自分の為です! この片桐思穂、自分の為になることなら全力で取り組む所存です!!」

 

 その答えに、希は満足げに笑顔を浮かべた。

 

「思穂ちゃん、復活! やね?」

「ええ。長いプロローグでした。ですが、これから私の物語が始まるんです!」

 

 思穂の目を視た希が彼女から背を向けた。去り際に希は『審判』のカードを思穂へと投げ渡す。

 

「頑張りや、思穂ちゃん」

「はいっ!!」

 

 そうして思穂は走り出した。とにかく走り出した。既にアイドル研究部には誰も居なかったので、自分の家へ走って帰った。何かしていないと、もう落ち着かない。早く明日になれと、心の底から願った。

 その日はあろうことに、アニメもゲームも、漫画もラノベすら読まなかった。それが思穂の本気であり、“明日”への欲求だったから。

 そんな思穂に、穂乃果から電話が掛かってきた。一世一代の大ギャンブルの話と共に――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「……本気、なんだよね?」

「うん! 思穂ちゃんが合鍵持ってて良かったよ! わざわざ職員室まで借りに行かなくて楽になったよ!」

 

 真っ暗な空間で声だけが響き渡る。穂乃果の声は実に楽しげだった。

 昨日の夜、穂乃果から電話が掛かってきて“この作戦”の詳細を聞いた時は、思わず大笑いしてしまった。まさかこんな単純明快なやり方があったとは夢にも思わなかったのだ。これだから高坂穂乃果からは目が離せない。思穂は本気でそう思い、乾坤一擲の覚悟でその作戦に乗ることに決めた。

 失敗すれば、もう恐らく二度とにこは聞く耳を持たないだろう。だからこそ、思穂はこの作戦に懸ける。穂乃果なら、全部上手くいきそうな気がしたからだ。

 

「それで思穂。本当にそろそろ来るんですよね?」

「うん。絶対に」

 

 コツコツ、と足音が近づいてきた。聞き慣れたこの歩くリズム。次の瞬間、部室の扉が開かれた――。

 

「なっ……!」

 

 一斉に広がる“お疲れ様です”の声。ことりが手早く部室に電気をつけると、次に動いたのは穂乃果であった。

 

「お茶です! “部長”!」

「今年の予算表です。“部長”!」

 

 続けざまにことりがにこへ予算表を差し出す。何が何やら理解していないにこへ追撃するように、椅子に座っていた凛が、テーブルの上をポンポンと叩く。

 

「“部長”~。ここにあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきました~!」

「ちょっ! あんた勝手に!!」

「さ、参考にちょっと貸して? “部長”のオススメの曲」

「な、なら迷わずこれを……!」

 

 真姫の隣では花陽が目を輝かせながら、例のDVDBOXを掲げていた。

 

「あー! だからそれはぁ!!」

「ところで次の曲の相談をしたいのですが“部長”!」

 

 やんややんやとまるで豪雨のように降り注ぐ、“部長”への“相談”。完璧ににこは、唖然としていた。だが、呑まれないように一度頭を横に振ってから、口を開く。

 

「……こんなことで押し切れるとでも思ってるの?」

「それは被害妄想ってやつですよ、にこ先輩。ね、穂乃果ちゃん?」

「そうです! 私はただ相談しているだけです。音ノ木坂アイドル研究部所属のμ'sの“七人”が歌う、次の曲の!」

「七……人?」

 

 そう言ってにこが視線をやったのは満面の笑みを浮かべている思穂だった。

 

「……あんたの差し金?」

「まさか。私はそれほど器用に立ち回れませんよ? あ、ちなみに私はマネージャーもどきなので、そのつもりで!」

「……これでにこを説得できたつもり?」

「“仲間”に説得も何もありませんよ。で、“部長”。指示は無いんですか?」

 

 笑みを崩さない思穂を見て、ついににこは大きなため息を吐いた。それも、今までのモヤモヤしたもの全部を吹き飛ばさんばかりの大きな……とても大きなため息を。

 

「――厳しいわよ?」

「分かってます! アイドルへの道が厳しいってことぐらい!!」

 

 その言葉に、皆が頷いた。だが、にこは皆を順番に指さしていく。

 

「分かってない! あんたも! あんたも! あんた達も!! 皆甘々なのよ! アイドルって言うのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なのよ! それを自覚しなさい!!」

 

 その表情はいつの間にか、アイドル研究部部長であり、“μ'sのメンバー”である矢澤にこのソレとなっていた。

 

「思穂! あんたもよ! マネージャーもどきだからって仕事に手ぇ抜くんじゃないわよ!」

「はい……、はいっ! にこ先輩!!」

 

 すぐに練習が始まる。にこの指示でμ's全員はこのまま屋上に直行するようだ。穂乃果達が出ていく中、思穂も出て行こうとした刹那、にこは思穂を呼び止めた。

 

「あんたこの前、共に歩きましょうって言ったわよね?」

「……はい。間違いなく」

「にこはね。あんたも甘々だと思っているんだから。大体――」

 

 一拍置き、にこは実に挑戦的な笑みを浮かべ、言い放つ。

 

「――共に歩きましょうなんて生温いわ。突っ走っていくわよ、思穂!」

「……はい! どこまでも……付いて行きます! にこ先輩!!」

 

 もうにこの背中がちゃんと見えていなかった。思穂の目から溢れ出す涙が、彼女の小さな背中を大きく錯覚させているのだ。だが思穂には分かっていた。

 

(これからも、よろしくお願いしますね!)

 

 それこそが、矢澤にこが持っている“デカさ”なのだと――。




感想で思穂ちゃんのプロフィール知りたいって意見有ったので載せておきます。参考にしてみてください。

片桐思穂
年齢:16歳
誕生日:2月5日(みずがめ座)
血液型:A型
身長:158cm
3サイズ:B80W58H81
好きな食べ物:チョコレート、チョコレート系
嫌いな食べ物:チーズ
趣味:サブカルチャー全般
特技:頭の中でCM含め、アニメ一話分を完全に再生出来る。
チャームポイント:ハーフアップにした一本の房。尻尾みたい。
得意科目:全て
子供の頃の夢:正義の味方
得意料理:豚の角煮
イメージカラー:空色
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