ラブライブ!~オタク女子と九人の女神の奮闘記~【完結】   作:鍵のすけ

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第二十一話 『ラブライブ』への試練

「どうですか? 絵里先輩?」

 

 生徒会室では思穂と希、そして絵里がいた。絵里の前に置かれているノートパソコンにはμ'sの新しいPVが流されている。メルヘンの国を思わせる衣装、そして校内装飾で楽しく歌っている動画である。

 他のクラスメイトと協力して装飾をしたのは割と楽しかった思穂だ。

 

「……希、何を言ったの?」

「ウチは思ったことを素直に言っただけや」

「どこかの無敵生徒会長とは違うんですね~」

 

 ジロリと絵里が思穂を睨み付けるが、その眼には力が込められていなかった。色々と思う所があるのだろう。

 そんな中、希が絵里に言う。

 

「もう、認めるしかないんやない? エリちが力を貸してあげれば、あの子らはもっと……」

「なら希が力を貸してあげれば……!?」

「――いいえ。絵里先輩の力が必要です」

 

 思穂は初めて見たのかもしれない。驚きの感情を顕わにしている絵里なんて。だが、思穂はそれでも言うことを言う性質であるが故に、遠慮はしない。

 

「一年生組が入ってやれる曲のバリエーションが広がりました。にこ先輩が入ってスクールアイドルへの意識が矯正されました。なら次は? 一番肝心のダンスを次のステージへと上げないと……μ'sはいつまで経っても埋もれたままです」

「っ! 貴方、知っているの……?」

 

 だがその視線は思穂では無く、希の方へと向けられていた。しかし希は意味深な笑みを浮かべるばかり。

 ……まさにそうである。“この話”は他でもない希から聞かされたのだ。正確には昨日の放課後にPVの編集をしている時、もっと言うなら、希と世間話をしている時にだ。思穂も最初は、耳を疑った。

 だが、希から動画を見せられた時、思穂に戦慄が走った。圧倒された、感動させられた。スクールアイドルに否定的なのも大いに頷かせられた。

 

「……なら、ハッキリ言わせてもらいます。私にとって、スクールアイドル全体が素人にしか見えない。実力があるというA-RISEでさえ……素人にしか見えない」

「……否定はしませんよ。絵里先輩の眼から見れば素人呼ばわりは当然だと思います。それだけのモノを絵里先輩は持っている」

 

 絢瀬絵里は昔、バレエをやっていた。それもまだ自分達が外で元気に遊んでいたような小さな時から。思穂が希から見せられた動画はそのくらいの年齢だが――その時点で、μ'sの全てを凌駕していたのだ。

 だからこそ、思穂ははいそうですか、と下がる訳にはいかなかった。

 

「だから、絵里先輩の力が必要なんです。絵里先輩からダンス指導をしてもらえればきっと、穂乃果ちゃん達は――」

「何故、貴方はそこまで……」

「前にも言いましたよ。自分の為です!」

 

 あえて答えを聞かず、思穂は生徒会室を出た。今ここで答えを求めるほど、思穂には余裕がない訳では無い。それにいずれμ'sは絵里へと辿りつく。その時に、また出しゃばろう。

 スマートフォンで時間を確認する。恐らくもう部室に皆が集まっている頃合いだろう。

 だが思穂の今日の予定は部室へ行くことでは無く、理事長室へ行くことだった。何故呼ばれるのかは全く見当が付かない。しかし、答えはすぐ分かるだろう。

 少しばかり緊張しながらも、思穂は理事長室の扉を開けた。

 

「失礼しまーす」

「あらいらっしゃい思穂ちゃん」

 

 相変わらず広い部屋だな、というのが思穂の感想である。こういうところで大画面のアニメ映画でも見られたらどんなに良いことか。となればまずは理事長室を占拠しなくてはならない。どうやって理事長を部屋から追い出そうか考えていると、その本人から声を掛けられた。

 

「何だか、すごく物騒な事を考えているような気がするのだけど、気のせいかしら?」

「気のせいです」

 

 即答である。まさかテロリスト紛いの願望を吐露するわけにはいかない。あっという間にまたブラックリスト入りだろう。

 

「ところで、何で私呼ばれたんですか?」

「新作のPVを見させてもらったから、その感想を言いたくて」

「ああ、この間は校内装飾の許可を出してくれてありがとうございました。じゃなかったらもうちょっと方法を考えなきゃなりませんでしたよー」

「あんなに分かりやすい企画書を見せられては、出さない訳にはいきませんからね」

 

 μ'sの新曲『これからのSomeday』のPV撮影には校舎全体が使われた。だが、もちろんそんなことをするためには事前の申請と、全体への周知が必要不可欠。

 思穂が行っていたのは申請書と添付資料の作成、そして放送部に流してもらう原稿の作成、あとは装飾の作成等などだ。装飾とその材料の作成だけはクラスメイトに手伝ってもらったが、後は全て思穂が行った。

 つまりそれは生徒会へも通さなければならない案件だったが、そこは全力を尽くした。おかげで、無事成功させることが出来たのだ。

 

「ありがとうございます。ということで、これからも頑張っていきます!」

「――の前に、そろそろ期末試験があります」

「……えっ!? ま、まさか何か部活存続の試練が!?」

「試練、という訳ではありませんが、メンバーでもし赤点を出したら――」

 

 理事長が言いかける前に、ノック音がした。どうぞ、という理事長の声で扉が開かれると、そこには先程話していた二人が。

 

「……何故、貴方がここに?」

「絵里先輩に会いたかったからに決まっているじゃないですかー! やだなーもう!」

「どうしましたか?」

 

 すると、絵里が理事長の前まで歩いていく。

 

「……今日こそ、生徒会が廃校阻止の為に活動する許可を頂きに来ました」

「……何度来ても、答えは変わりませんよ?」

「何故、アイドル研究部の活動を許して、生徒会の活動は許されないのですか!?」

 

 絵里と理事長のやり取りを見守っていた希の表情が複雑なものとなっていた。言うべきか、言わざるべきか、思穂が見る希の姿はいつもそんな二択を迫られているような顔である。

 

「分からない?」

「全く……!」

「私はすごく良く分かるんですがねぇ……」

 

 あからさまに絵里から目を逸らしながら、思穂は言った。希には悪いが、ここは口を出させてもらうことにした。

 

「片桐さんが……? 貴方達が許されて、生徒会が許されない理由を?」

「ええ、まあ。めちゃくちゃ単純な事だと思いますよ?」

「片桐さん、そこまでよ。そこからは駄目」

 

 理事長の視線が思穂を捉えて離さない。そう来ると思っていた思穂はすんなり引き下がることにした。そうだ、南ことりの母親はそんなネタバレを決して許しはしない。この音ノ木坂学院を取り仕切る者でありながら、彼女は“教育者”なのだ。

 絵里は未だに理解していないようだ。しかしそれは仕方の無いことで。むしろ、彼女程デキた人間だからこそ、到達出来ないと言っても間違いない。深みにハマりすぎて、抜け出せないと言った方が良いのだろうか。

 

「まあ、そういうことです。私ですらすぐにピンと来る答えってことですよ!」

「……くっ」

 

 そう言って、絵里は背を向けた。話の終わりを察した希も一緒に理事長室を出ようとする。

 

「あれ? お揃いでどうしたん?」

「ん? 穂乃果ちゃん達?」

 

 何か用があったのか、少しだけ開かれた扉の向こうにはμ'sメンバーがいた。しかし運が悪い。丁度絵里と出くわすような感じになってしまった。

 少しだけ思穂も近づいてみることにした。

 

「何の用ですか?」

 

 絵里がそう聞くと、前に出てきたのは真姫である。これはマズイ、と直感した思穂がタイミングを計る。

 

「理事長にお話があって来ました」

「各部の理事長への申請は生徒会を通す決まりよ」

「申請とは言ってないわ。ただ、話があるの」

 

 思穂が出る前に、穂乃果が真姫の肩を掴んだ。

 

「真姫ちゃん、上級生だよ?」

「そうだよ真姫ちゃん、あとでめんどくさくなるんだから、止めといた方が良いって」

 

 穂乃果と思穂の言葉をしっかり理解し、真姫は悔しげに引き下がった。ここで思穂は一気に場を変えることにした。

 

「あー理事長ーどうしましたー?」

 

 いつの間にか近づいてきた理事長に気づいていた思穂はあえて大げさにその存在を強調させる。理事長も理事長で話を聞くつもりだったようだ。一年生以外が理事長室へ入ることとなった。

 

「へー『ラブライブ』ね」

 

 思穂が初めて聞く単語であった。穂乃果と海未、ことりの説明を聞き、自分なりに要約した結果がこれだ。

 要はスクールアイドルの大会であり、ネットで全国的に中継もされるという規模の大きさ。

 これに出場することが出来れば、この音ノ木坂学院の名前を全国的に知らしめることも出来るだろう。……それ故に、絵里がそれを許すとはとてもではないが、思えなかった。

 

「私は反対です」

 

 やはりと言ったところである。即刻否定的な意見を出した絵里が、言葉を続ける。

 

「理事長は学校の為に、学校生活を犠牲にするようなことはすべきではないとおっしゃいました。ならば――」

「そうねぇ。でも良いじゃないかしら? 『ラブライブ』? って大会にエントリーするぐらい」

 

 その判断に穂乃果達はガッツポーズをした。割と説得するのに時間が掛かるとでも思ったのだろう。

 しかし、その理事長の判断に絵里だけが不服を感じているのもまた確かであった。

 

「ちょっと待ってください! どうして彼女達の肩を持つんです!?」

「別に肩を持っている訳じゃないと思いますよー」

「片桐さんは黙っていて。だったら、生徒会も学校を存続させるために活動させてください!」

 

 しかし理事長の出した結論は当然却下である。その言葉に、とうとう絵里が呆れを通り越してしまったようだ。

 

「……意味が分かりません」

 

 そう言い捨て、絵里が出て行ってしまった。希も一緒に出るかと思ったら理事長室に残っていた。そして絵里が出ていく姿を見送りながら、にこが言った。

 

「ざまーみろってのよ」

「絵里先輩も苦労しますねー」

「――ただし、条件があります」

 

 だがそう簡単にラブライブへの出場を認めないのもまた理事長である。娘であることりがいるからといって、一切の甘えを見せない辺り、やはりトップに立つ者であろう。

 

「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で一人でも赤点を取るようなことがあったら、ラブライブへのエントリーは認めませんよ? ――良いですね?」

 

 “赤点を”の辺りから理事長室全体に緊張が走っていた。絶望感と言っても良いのだろうか。凛とにこが崩れ落ち、穂乃果が壁に手をつき、あからさまな空気を醸し出している。

 その姿を見ながら思穂は思った。今までμ'sには様々な問題が降りかかってきた。だがその度に、皆で力を合わせて何とか乗り越えてきた。しかし、今降りかかってきた問題はその今までを優しく感じさせる謂わば――最強最悪の難問であったのだ。

 

「ということで皆さん、頑張ってくださいね。あ、片桐さんだけはちょっと残っていてください」

「へ? 私?」

 

 その言葉で思穂は予感した。また頑張らなければならないイベントが舞い降りてくるのだと――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「大変申し訳ありません!」

「ません!」

 

 部室に戻って作戦会議を開いた直後、穂乃果と凛が机に手をつき、土下座のようなことをしだした。よほど成績には悪い意味での自覚があるのだろう。

 

「……小学校の頃から知ってはいましたが、穂乃果……」

「数学だけだよ! 小学校の頃から算数苦手だったでしょ!?」

 

 花陽が凄く簡単な問題を穂乃果へと出した。ただのシンプルな掛け算だ。しかし、穂乃果はあろうことにそれを間違えてしまうという離れ業をやってのけた。当然、海未には“重傷ですね”と断じられることとなる。

 

「凛ちゃんは?」

「英語! 英語だけはどうしても肌に合わなくて……」

「我々は日本人だ! っていう凛ちゃんの大和魂が光るね」

 

 そんな思穂の冗談すら聞いている余裕はないようで、凛が更に花陽へまくし立てる。

 

「そうだよ! 大体何で日本人の凛達が外国の言葉を勉強しなくちゃならないの!?」

 

 凛の逆ギレに、真姫が立ち上がり、その上で更にキレた。

 

「屁理屈言わない! これでラブライブにエントリーできなかったら恥ずかしすぎるわよ!」

「ま、真姫ちゃん怖いにゃ~……」

「全く……やっと生徒会長を突破出来たって言うのに……!」

「そ、そうよ! あ、赤点なんか絶対と、取るんじゃないわよ……!」

 

 滅茶苦茶声が震えているにこであった。この間、アイドル研究部の備品棚を整理していたら見つかったテストの成績を知っている思穂からしてみれば、むしろその軽口を言える余裕があるのが凄いと言えるレベルである。

 

「に、にこ先輩。成績は……?」

 

 ことりの質問を得意の“にっこにっこにー”でやり過ごすが、それは逆に『ワタシ、ヤバイ、テスト、セイセキ』と言っているようなものだ。

 その惨状を理解した真姫は、ため息交じりに呟いた。

 

「はぁ……これで危険そうなのは、凛とにこ先輩、穂乃果先輩に思穂先輩、ってことね……」

 

 ――その言葉に穂乃果とことり、そして海未の時が止まった。

 

「……ま、真姫ちゃん。今の、本気?」

「……何がですか?」

 

 珍しく顔が引き攣っていることりを訝しげに見つめる真姫。その言いたいことが理解できずにいる真姫へ、穂乃果が問いかけた。

 

「……ど、どうして思穂ちゃんが危険そうって思ったの……?」

「どうしてって……普段の言動を見ていると何となく……」

「凛も、真姫ちゃんと同じ意見だにゃー。普通にカウントしちゃってました」

「うわっ! すごい傷ついた!」

「普段の行いが悪いからです」

 

 ぴしゃりとそう断じた海未ですらすごく顔が引き攣っていた。思穂は思穂で日頃の行いを振り返っていたが、何一つ悪い所は見当たらない。

 代表して、海未がその事実を告げた。

 

「……皆さん勘違いしているようですが、思穂は安全です。それこそ、確実に」

「何でそんなこと言い切れるんですか?」

「こう見えて思穂は、この音ノ木坂学院に全教科満点で首席入学してきた程の学力を持っています。私達と同じ枠で比べるのはむしろ失礼と言うレベルで……」

 

 その言葉に、一年生組の動きが止まり、視線が思穂へと注がれた。

 

「……へ?」

「全教科?」

「満点?」

 

 真姫、花陽、凛の順番で紡がれた言葉は、一瞬遅れて自分達へ自覚させた。その瞬間、一年生組、そしてにこが立ち上がった。

 

「首席入学ぅ!? し、思穂!? あんた、何でそれにこに言わなかったのよー!?」

「あああああ……にこ先輩、目が回るぅぅぅぅ……。だって、わざわざ言うようなことじゃないですかぁ~……」

 

 にこに両肩を掴まれた思穂がガックンガックンと揺らされてしまった。もうそれはガックンガックンと。大して自慢するような話じゃなかったからとしか言えない。

 

「思穂。この間の、ファーストライブの時に受けた学力テストはどうだったのですか?」

「あれ? そう言えば採点結果見てないけど、多分満点だと思うよ? でもあれ酷かったよー。中盤は応用の応用問題、後半は三年生の範囲だったし」

「……と、まあ。思穂に至ってはむしろ教える側に回ってもらうつもりでいました」

「め、滅茶苦茶だにゃ~……」

 

 一年生組とにこが完全に言葉を失っていた。今までのイメージが覆された瞬間とはこの事を言うのか、と思穂は珍しげに皆の顔を見ていた。

 しかし、思穂にしてみれば勉強はただのオタクライフを円滑にするための手段でしかない。既に思穂は、三年生までの範囲は大体学習済みなのだ。それも全て追試や補習を防ぐため。

 

「はい!」

「どうしたの? 凛ちゃん?」

「思穂先輩はどうやって頭良くなったんですか!?」

 

 その言葉に皆が注目した。真姫でさえ興味があるようで、チラチラ思穂の方を見ていた。

 

「一日一時間の勉強だよ! 趣味に時間割かなきゃならないし!」

「い、一時間!?」

「そうそう! 一時間だけね、もう勉強以外は見ないぐらい集中して取り組むんだ。下手にだらだらやるよりメリハリつくし、効率良いよ!」

「一回、思穂ちゃんの勉強している姿見たことあるんだけど、滅茶苦茶怖かったよね……」

 

 穂乃果の言葉に海未とことりが頷いた。

 

「まるで刀を喉元に当てられているような鋭い緊張感でしたね。剣道や弓道、日舞とか、そういう道に勧めたいぐらいに」

「でも思穂ちゃん、それが終わったらすぐにゲームとか漫画読んじゃうんだよね!」

 

 片桐思穂の勉強時間は一日一時間である。だが、その時間は異常に“濃い”ものとなっていた。全神経を勉強に注ぎ込み、徹底的に手を動かし、声に出し、頭に叩き込む。勉強時間が終わるその時まで、思穂は勉強の修羅と化すのだ。その状態の思穂は誰に声を掛けられても気づくことはなく、間近で大爆発が起きても、恐らく勉強し続けるだろう。

 思穂は別に天才でも何でも無い。勉強しなければ頭に入らないし、一目見ただけで全てを覚えるのはそれこそ異常である。時間当たりの濃度が凄まじく高いだけで、しっかりとした段階を踏み、ただ学習しなければならないことを学習しているだけなのだ。

 

「そうそ! 一秒でも無駄にしたくないから電波時計でばっちり計っているよ!」

「能ある鷹は……って言うけど、ここまであからさまなのがいるとは思わなかったわ……」

 

 真姫がボソリと言ったのを思穂は聞き逃さなかったが、あえてそれに突っ込むことはしなかった。別にそう見られたくてやっている訳ではないし、これで距離を取られて困ってしまう。

 普通に接して、普通に馬鹿話をする。これが片桐思穂の流儀である。

 

「わ、私にも教えて欲しいです……」

「花陽ちゃん!? 良いよ良いよ! もう個室でたっぷりマンツーマン授業してあげるよぉー!!」

「そ、それは~……!」

「かよちんがやるなら、凛もしてほしいにゃ~!」

 

 今日が命日か、そう感じたのも無理はなかった。個室でたっぷり花陽と凛をお触……スキンシップが出来る機会が訪れたのだから。だが、それはすぐに海未によって無くなってしまった。

 

「それはテストが終わった後にしてください。そう言えば思穂、理事長と何を話していたんですか?」

「あー。今度の期末で結果を出さないと、また補習だって先生から提案があったらしいよ? ほんと私の事、大好きだよねー眼鏡先生」

「……大丈夫なんですよね?」

「またぐうの音も出させない結果を叩き付ければ良いだけだから私の事は大丈夫。それよりも……穂乃果ちゃん凛ちゃん、にこ先輩だよね……」

 

 その言葉のどれだけ難しいことか、室内にいる皆がひたすら苦笑を浮かべていた。むしろ爆弾三人をどう処理したらいいか、頭を悩ませる思穂である。こればかりは勉強してもらうしかない。

 しかしどう配分するかも問題である。教える人が誰も居ないにこに付きっきりと言うのもアリだが、できる事なら凛と穂乃果の方も見ておきたい。

 そんな時、部室の扉が開かれた。

 

「にこっちはウチが担当するわ」

 

 このタイミングで現れた東條希が勝利の女神に見えたのは、きっと気のせいでは無いのだろう――。

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