ラブライブ!~オタク女子と九人の女神の奮闘記~【完結】   作:鍵のすけ

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今回の話は私の書いている「スーパーロボット大戦OG~泣き虫の亡霊~」の主人公と思穂の話になります。

そういうのが苦手な人は即刻ブラウザバックしてください。


『超』番外回 オタク女子がゲーセンで出会ったのは……

 鉛弾が装甲を掠ると鈍い音が思穂の鼓膜を揺らす。本来ならば直撃コース。だが思穂の機体が沈まなかったのも、微細なスティック捌きと射線退避が早かった故の当然の結果である。次弾装填まで三秒のラグがあることは既に把握済み。

 ペダルを踏み込み、機体を推進させるなり、ターゲットをレティクル内に収める。大砲に手足を生やしたような機体――《バレリオン》。堅牢な装甲と長距離砲撃を得意とする機体である。

 思穂は己の機体である《量産型ヒュッケバインМk-Ⅱ》の機体コンディションが表示されているモニターに視線を移し、一瞬で把握する。そうしながらも思穂は、右手の近くにあるタッチパネルに指を踊らせ、武装をセレクトする。プラズマカッター、エネルギー効率が良い非実体兵器である。

 背部のメインスラスターが一気に吹き出し、《バレリオン》へ肉薄する思穂機はその手に握っていた光子の刃を横一文字に振り抜いた。

 大砲ともなっている頭部がチーズのごとく裂けていき、中の配線や弾倉を焼き切っていく。前面から背部へ刀身が通った辺りで《バレリオン》のメインカメラから光が消え、徐々に各部から火花が散っていった。小刻みな爆発の後、《バレリオン》はついに紅蓮に包まれた。

 ――ゲームセット。

 メインモニターにその一文が映し出されたところで、思穂はコクピットブロックから降り、伸びを一つ。

 

「っはー! やっぱり熱いねーこの『バーニングPT』は!」

 

 今、思穂が最もハマっているゲームの一つである。PT(パーソナルトルーパー)というロボットを操作して敵のロボットを倒していくと言う単純明快なゲーム。全天周囲モニターを採用しており、まるで本当にその戦場にいるかのような映像クオリティ。そして対人戦も出来るこのゲームの操作性はリアルもリアル。オートならば適当に操縦桿のボタンやペダルを踏むだけで機体が動いてくれるが、セミオートやマニュアルならばまるで話が変わってくる。

 思穂が使っている操縦モードはマニュアル。四肢の駆動や武器へ注ぎ込むエネルギーの出力量を調整したり、効果的な索敵をするにもちゃんとセンサーをアクティブ・パッシブを選択していかなければならない。だが、操作難度が高い分、機体を思うように動かせてしまうというこの神仕様。

 正直、ここまで作り込まれていると作為的なモノを感じずにはいられないが、たかがゲームにそんな壮大な伏線は有り得ない。

 第一、そんな妙な懐疑を抱いていたら、わざわざ隣町のゲームセンターまでやってこない。喉が渇いた思穂は自販機へ足を運ぶ。

 

「ぷはー! やっぱりCP戦を終えた時の炭酸は本当に染みるねー!」

 

 乾いた喉を自販機で買った炭酸飲料で良い具合に痛めつけながら、思穂は『バーニングPT』の筐体周囲を一瞥する。

 正直に言って、このゲームはマイナーの部類に入った。この辺で重厚なロボットゲームをやるような人間がいない事を知っている思穂は物足りなさを感じていた。

 いつもやっているのはCP戦ばかり。対人戦も出来るはずのこのゲームで対人戦をやったことはただの一度も無いのだ。

 思穂は望んでいた。いつか胸が熱くなるような対人戦を繰り広げてみたいことを。

 

 

「――失礼。今、あの筐体で誰かプレイしていますか?」

 

 

 後ろから声を掛けられた思穂が振り向くと、そこには女性が立っていた。控えめにいっても美人である。黒に限りなく近い赤い髪を後頭部辺りで縛っており、その目はすこしばかり眠たげな印象を伺わせる。すらりとした手足を強調するように、彼女の服装はタンクトップの上に羽織った半そでのジャケットとホットパンツという何とも魅力的な組み合わせである。これには思穂もご満悦だ。

 思穂の視線に気づいたのか、その女性は小首を傾げた。

 

「どうされましたか?」

「あ、いえいえいえいえ!! 別に一切いやらしい視線は向けてないですから! はい!」

「……不思議な方ですね」

「あはは、良く言われます」

 

 そんなやり取りの後、女性は言った。

 

「ところで、見たところ貴方もこのゲームをやるのですか?」

「『バーニングPT』ですか? もちろん! 大好きです!」

 

 その言葉に女性は満足げに頷いた。表情はどこか嬉しそうで。そして女性は筐体を親指で示しながら言った。

 

「――もしお暇なら一戦どうですか? これをプレイしている人間はこの辺りにはいないみたいで、対戦相手が欲しかった所なんですよ」

「や、やります! むしろこちらからお願いします!」

 

 まさに棚からボタ餅。対人戦を求めていた矢先に美人からの対戦の申し込みは何か運命的なモノを感じてしまった。超反応でその申し出を受け、早速二人は向かい合っているように配置されている筐体へそれぞれ入った。

 すぐに向こうの筐体から通信が入った。筐体内の背部にスピーカーが設置されているので、女性の凛とした声が良く聞こえる。

 

『そちらの準備は整いましたか?』

「はい! オッケーです! ルールはどうしますか?」

『時間無制限のデスマッチ。フィールドはランダム、機体周りは全て規制なし。これでどうでしょうか?』

「オールオッケーです! それでは始めましょうか!」

 

 操縦桿を握り直し、ペダルに軽く足を掛けた思穂は左右のコンソールをタッチし、次々に必要事項を選択していく。機体はいつも使っている《量産型ヒュッケバインMk-Ⅱ》。武装は標準的な射撃兵装であるM950マシンガン、そして斬撃武器であるコールドメタルナイフ、そして大型火砲レクタングル・ランチャーという比較的オーソドックスな装備で纏めたこれ以上にないくらいガチな選択である。

 何故かこの女性を相手に手は抜けない、と思穂の本能がそう言っていたからだ。彼女のオーラ、と言えばいいのだろうか。

 そこまで考えたところで、思穂は一つ聞きそびれていたことを思い出した。既に戦闘開始されるが、それでも聞いておきたかった。

 

「そう言えば、お名前伺ってませんでしたよね。私、片桐思穂って言います!」

『そうでしたね、失礼しました。私の名は――』

 

 『戦闘開始』の一文がメインモニターに表示されたと同時に、女性は名乗った。

 

『――宮代来花(ミヤシロ・ライカ)と言います。よろしくお願いします』

 

 すぐにメインモニターに今回戦うこととなるフィールドが映し出された。森や山があるオーソドックスなバトルフィールド。障害物を上手く使って敵の攻撃をやり過ごしたり、攻撃の基点にしていったりなどシンプルながら実に奥が深いアーケード版では最初に戦うこととなるステージだ。

 しかし、それはどうでも良くて。驚くべきは来花の使っている機体であった。

 

「そ、その機体は……《量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ》!? 初期機体も初期機体じゃないですか!?」

 

 ――《量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ》。このゲームの設定では一番最初に作られたPTである《ゲシュペンスト》の後継機の量産型であった。

 丸い頭部と突き出た眉庇(まびさし)を持ち、眼の部分はゴーグルの下に二つのカメラアイがあり、両耳に当たる部分からは薄く細長いセンサーブレードが伸びている。そのほかにも丸みを帯びた四肢を持つなど色々特徴的な外見だが、最も目を引くのは左腕の三本の突起物――放電打突武装『プラズマステーク』。

 単純明快ながらも威力は高く、思穂が使っている《量産型ヒュッケバインMk-Ⅱ》をも一撃で落としかねない攻撃力を持っていた。

 

『そちらはヒュッケバインですか……何とも因縁がある相手ですが――上等』

 

 来花機からのロックオンアラートがコクピット内に鳴り響く。ロックオンが早い。思穂は早速射線から逃れるため、機体を空中に移動させる。この機体には飛行システムが積んであり、地上戦空中戦など戦う場所を選ばない機体だ。

 しかし、来花機には飛行システムが無く、背部スラスターを使用しての“跳躍”やホバー移動で地表を滑るなど、地上戦のみしかこなせない。――基本性能では思穂の機体が勝っていた。

 来花機の手にはM90アサルトマシンガンと言う一発限りの大火力を備えたM950マシンガンと近い性能を持った兵装が携えられている。

 

(うっそ……!?)

 

 回避行動先を読まれているかのように弾丸が機体を掠めていく。だが致命傷足りえず、舐めれば治る程度の損傷。そんな小さな被害を気にするよりも、思穂は来花の腕に戦慄を覚えていた。

 決して思穂が二次元的な動きをしている訳では無い。上下左右前後と、三次元的な回避行動を意識しているのにも関わらず、来花機の銃口がピタリと思穂機を捉えて離さないのだ。

 

(……手馴れたものですね。動きにメリハリを感じる)

 

 来花は思穂の回避技術を内心賞賛していた。本人も意識しているのだろうが、パターン化されておらず、実に有機的。回避パターンを探るためにあえて甘い射撃を行っていたが、これは思わぬ収穫。

 サブモニターに表示されている兵装リストを一瞥し、来花は戦術を組み立てる。

 

(……こちらの手持ちはマシンガンとその予備弾倉、そしてスプリットミサイルにプラズマステークと何とも(わび)しいものですね)

 

 とは言ったもの、特に不足は感じていない。ばらまける武装と、当たれば痛打を与えられる兵装が一つでもあれば来花は十二分に戦えた。

 

(ですがゲシュペンストは質実剛健を象徴する機体。私の無茶に応えられる機体であれば渡り合える……!)

 

 山を盾にするよう位置取り、思穂機からの応射をやりすごしながら、来花は次の攻撃に備えた。

 

「ほわっちゃ……! げ、ゲシュペンストってこんなに動けるの……!?」

 

 思穂は絶句していた。鋭い射撃をやり過ごし、ようやく反撃できたと思ったら、予測でもしていたのかというレベルですぐに山を盾にするように後退していく来花の冷静な判断にだ。

 ――慣れ過ぎている。というのがこの攻防に対する思穂の第一印象であった。

 機体特性を十二分以上に理解した戦闘機動(マニューバ)をさらりと行える来花に、思穂はつい聞いてしまった。

 

「ら、来花さんってどうしてその機体でそこまで動けるんですか!?」

 

 すると、来花はさも当然とばかりに返答する。

 

『この機体を――ゲシュペンストを愛しているからですね』

 

 クールな印象を持っていた来花の口から出たとは思えない程、その言葉には熱が籠もっていて。だからこそ、その言葉に込められた“重み”を感じた思穂。

 ペダルを踏み込み、操縦桿を倒すと、山を飛び越えるように空中を進む思穂機。制空権は完全にこちらが握っていた。

 空対地射撃で手堅く攻撃を加えていこうとする思穂機に対し、来花機は山や森を上手く利用してその弾丸の雨から逃れることを選択した。その間にも来花機からの鋭い応射が思穂機を襲う。

 未だに来花機に明確な損傷を与えられていない。与えられたとすれば、射撃の余波で飛び散った岩の破片などが機体の装甲板を傷つけていくだけ。

 

「ど、どうしようかこれは……」

 

 それと反比例するように思穂機のダメージは蓄積するばかり。M950マシンガンの弾数を節約するため、思穂機のマシンガンからレクタングル・ランチャーに持ち替えた。M950マシンガンよりも大型の火砲は当たれば相当なダメージが期待できる。

 高度を下げたり、回避方向を変えながらも思穂は来花機へ照準を合わせるため、目を細める。上下左右するレティクル。動体視力には多少自信がある思穂でも来花の決してパターンを絞らせない動きを捉えるのは至難の業で。

 ――そして、思穂は気づかなかった。来花機が徐々に距離を詰め始めていることに。

 

(片桐思穂さんですか。中々どうして……良く立ち回れている)

 

 適切な間合い管理で近づけさせず、そして遠すぎずの距離を絶対維持していた来花は予備弾倉の交換を終え、一気に距離を縮める。

 その動きに思穂は戸惑いを隠せなかった。

 

「これは何ともはや……! 逃げられない……!」

『恐れ入りました思穂。天性のモノなのでしょうね、素晴らしい動きです』

「ら、来花さんこそ……酷くえげつない動きを!」

 

 この時点で思穂は来花の手の平で踊らされていたことに気づいた。全く逃げさせてもらえない。地上から空中を撃つ来花の射撃精度の高さは空にいる思穂に絡みついて離さない。

 だが、それもとうとうここまでのようだ。

 

「当たった……!?」

『ですが、どうやら経験値では私が一枚上を行っていたようだ』

 

 その時、思穂は来花からのフェイントに引っかかっていたことに気づいてしまった。射撃のリズム、そして射撃方向など思穂の回避先を徹底的に潰し、必中の位置まで持っていく来花の狡猾さ。

 背部スラスターの一部が損傷し、浮力を保てなくなってきた思穂機。すぐさま思穂は損傷部へのエネルギー出力をカットし、その分を駆動系に回す判断を下した。高度が下がっていく間にも、思穂はダメもとでレクタングル・ランチャーによる大火力を来花機へ放り投げ続け、とうとう地表へ降り立った。

 逃げよう。そんな選択肢が思穂の脳裏に浮かんだ。このままではあっという間に倒されてしまう。ならば機体性能を活かし、消耗戦を粘り強く続ければいつかは……。

 ――そんな恥ずかしい選択肢、死んでもごめんだ。

 

「その積み上げられた経験値の隙間を、私は貫く……!!」

『……どこかの彼が言いそうな台詞だ……!』

 

 来花の機体が向かってきた。その光景に、思穂は機体名の通り『亡霊』を幻視して。だからこそ、思穂は迎え撃つことを選択する。

 真っ向勝負。思穂は機体の右手にM950マシンガンを持たせ、発砲を続け、そして空いた手にはコールドメタルナイフを装備させた。

 降り注ぐ弾丸を掻い潜りながらも来花はコンソールを開き、スプリットミサイルを選択する。即座にトリガーを引くと、来花機の背部ユニットから二基のミサイルが飛翔し、ターゲットである思穂機へ向かっていった。自機と思穂機のちょうど真ん中あたりの距離で二基のミサイルが頂点から割れ、中に大量に積められていた子弾が前面を制圧するように次々に点火し、推進を開始する。

 

(冷静にやり過ごせば……! 一発一発なら耐えられる……!)

 

 だが、スプリットミサイルが放たれた時点で、思穂は全力で逃げるべきであった。

 十分に展開された辺りで来花機が握っていたM90アサルトマシンガンをフルオートで撒き散らす。しかしそのどれもが思穂機へ当たるものでは無く、自らが放った子弾に当たっていった。次々に攻撃が当たり、爆ぜていくミサイル群。

 爆風が重なり、思穂の視界に煙が広がっていく。

 ――その向こう、煙の中からゆらりと『亡霊』の眼光が思穂機を捉える。

 

「負けませんよ来花さん!」

『良い心掛けです……!!』

 

 煙を切り裂き、来花機は思穂機の前へ躍り出る。既に左腕の兵装――プラズマステークは起動を終え、三本の突起物にはプラズマが蓄えられている。

 このやり取りで決着が付く。操縦桿を握る手に力が入る。思穂は既に呼吸を止め、瞬きすら止まっていた。一秒が永遠に感じられる。そんな引き延ばされた時間。来花機はそんな中でも経験値を見せつける。

 

「なっ……!?」

 

 右手に持っていたM90アサルトマシンガンのアンダーバレルに備えれられていた一発限りの無誘導ミサイルが放たれる。プラズマステーク程ではないが、その一撃は決して楽観視できるものでは無く。咄嗟に銃を持っている側の腕部でそれを防いだ。

 至近距離で喰らったので、腕部は完全に使い物にならなくなり、頼みの綱はナイフを持っている方のみ。既に来花機は左腕を殴りつけるモーションに移行していて。

 

『……ショウダウンです』

「こなくそー!!」

 

 思穂はほぼ無意識に操縦桿を引いて前へ動かした――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ありがとうございました!」

「ええ、こちらこそ良い試合でしたね」

 

 近くの公園のベンチに二人はいた。死闘を繰り広げたあと、少しだけ話そうと言うことになり、二人はコンビニで軽食を買って雑談をしていた。

 思穂はちくわとミネラルウォーター。そして来花は栄養ドリンクとあんぱんであった。

 

「……何か来花さんって刑事みたいな物食べますね。ていうか栄養ドリンクとあんぱんって中々面白い組み合わせ……」

「美味しいんですよ? 栄養ドリンクの酸味と餡子の甘さが高いレベルで調和している有力な組み合わせです」

 

 冗談を言っているつもりはないようで、来花は真顔であんぱんを齧り、栄養ドリンクを煽る。無表情で食べているのでシュールさが凄まじい。

 

「それにしても思穂は相当にやり込んでいますね。つい熱が入りました」

「いやいや! 来花さん相手に手なんか抜く方が難しいですって!」

「私のゲシュペンストに一撃を与えられた。これは十分過ぎる結果ですよ」

「ナイフ掠らせただけだから誇れない自分がいますよ……」

 

 ――結果としては思穂の完敗であった。

 どうあがいても下地が違い過ぎた。苦し紛れに突きだしたナイフを掻い潜り、思穂機のコクピット部へプラズマステークを叩き込んでのゲームセット。

 何でも出来る思穂の操縦技術は平均以上。むしろ、相手はほぼいないと言っても過言では無い。――しかし、来花はその上を遥かにいっていた、というのが思穂の感想である。

 射撃能力、格闘センス、位置取りなど、全てが思穂を凌駕していた。その溝は一生埋まることはないであろう、というレベルで。

 

「どうして来花さんはそんなに強いんですか?」

「そうですね……あの機体、好きなので使い続けていたらいつの間にか……といった所でしょうか?」

「好きこそものの何ちゃらって奴ですか……凄まじいなぁ」

 

 あんぱんを全て平らげ、来花は立ち上がった。

 

「私はこれで行きますね。思穂、貴方がまだこのゲームをやり続けているのなら、いずれまた出会うでしょう。その時は更に成長した貴方を見せてください」

「は、はい! この片桐思穂、全力で努力します!」

「……その物言い。貴方は彼と気が合いそうだ」

「彼……ですか?」

「ええ。私が通う萬台高校(ばんだいこうこう)の後輩ですが」

 

 そう言い、薄く笑みを湛える来花がとても美しく。同じ女性だと言うのに、思わず見惚れてしまった。絵里や希とはまた違う魅力が、彼女にはあった。その数秒後、にこの顔を思い出したのはご愛嬌。

 

「わ、私! 音ノ木坂学院二年、片桐思穂です!! もう一度、貴方のお名前を聞かせてくれませんか!?」

 

 すると、来花は居住まいを正し、思穂の目をしっかり見て、微笑と共に名を告げる。

 

「私は萬台高校三年、宮代来花です。いつかまた、会いましょうね思穂」

 

 時間にしては一時間にも満たない。だが、この邂逅は思穂にとって忘れられることの出来ない尊い物となって、心に刻み込まれる。

 ――またいつか。

 その言葉を信じ、思穂はまず家庭版のバーニングPTを買うべくゲームショップへ走り出した――。

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