「……ハロウィンパーティー?」
「はい。それの企画と実行委員をオカルト研究会の活動として引き受けました」
「……拒否権は」
「四ノ月、諦めてくれ。オカ研を存続させる条件なんだ」
詳しく、と問い詰めると、どうやら柊史やめぐるがオカ研に入部したのは紬や春秋が転入してくるわずか前のことで、それこそ十月には寧々一人で活動していたという。
部活を行うにはもちろん規則があり、オカルト研究会としては実績も、部員も足りないまさに絶望的状況だった。
部員は柊史を始め、めぐるや紬が参加したこともあり規定人数に達しはしたが、肝心の実績報告が何もできていないのであった。
そこで、前任の生徒会長――戸隠憧子からの提案であった。中間考査の終わりに行われるハロウィンパーティーの運営委員をやってほしい、と。
この居場所を守りたい寧々と柊史はもちろん賛同し、めぐるや紬も納得していた。
だが、春秋は。
「…………」
「四ノ月くん?」
春秋としては、折角目標が出来てそれを目指しているところだった。紬の欠片集めは順調で、欠片を集めきるのも時間の問題かと思っていたところだ。
もちろんそれは、自分が奪ってしまった欠片を返したい思いと、紬の代償を早く終わらせたいという願い。だからこそ、余計なことに時間を割きたくなかった。
「四ノ月くんっ?」
早く、早く、早く。思いは焦りを生み、思考が乱雑に絡まっていく。
嗚呼―――自覚する。
また、崩れかけてる。心が。不安定に。発作のように訪れるそれは、春秋にはどうすることもできない。
自覚して、自分が嫌になって。また迷惑をかけてしまう、と自分で自分を追い込んでいく。
何処か静かな場所で眠ろうと、席を立とうとする。そんな春秋を止めたのは、心配そうに彼を見上げる、紬。
「違うんだ」
「四ノ月くん、今、私に嘘ついてない?」
「違う。俺は」
そういう顔をして欲しくない。
不安げな表情。心底、春秋を心配しているとわかる表情。
「四ノ月くん、私に何かできることはない? 今の四ノ月くんを見てるの、すっごく辛いよ……」
「……抱きしめて欲しい」
悲しそうな、苦しそうな表情の紬。そんな彼女がぽつりと漏らした言葉に、思考が纏まらない春秋は言葉が勝手に口から出る。
それがどうして、その答えが出たかはわからない。でも、ずっとずっと思っていたこと。
彼女に触れたい。触れていたい。少しでも彼女の心に触れたからか、彼女の温もりを求めていた。
「うん」
優しく微笑んだ紬は、ゆっくりと春秋の頭を抱えるように抱きしめた。
温もりと、少女特有の柔らかさと、仄かに感じる香りに、春秋は目を閉じて、不安だった感情が抑えられていくのを感じた。
手を伸ばして、自らも抱きしめるように、紬の背中に手を回す。
時間がゆっくりと流れる。まるで二人だけの空間かのように、ゆっくりと、静寂が支配する。
そんな光景を見て、寧々は柊史をそっと制止して、二人が動き出すのを待つ。
ゆっくりと。ゆったりと。
暖かい、温もりに。春秋は心の底から安堵する。
子供のように扱われても、それでも彼は安心している。
冷たかった心が、少しずつ温かくなっていくのがわかる。
落ち着いていく。崩れかけた心が取り戻されていく、そんな感覚。
心が、取り戻される。
それを感じて、春秋は急に紬の身体を引き剥がした。
「わっ、し、四ノ月くんっ!?」
「か、欠片。あの瓶はっ!?」
春秋に言われて、不思議な表情のまま紬はポケットから心の欠片を集めた小瓶を取り出す。
ここ数日、二人で集めていた欠片は以前と同じくらいに集まっていた。
そしてそれが、少しだが、増えている。
「え、え、これ……」
「少しですが、四ノ月くんから欠片が戻ってきたみたいですね」
「欠片が……」
「ふふ。抱きしめられて満たされるなんて、四ノ月くんも子供っぽいところがあるんですね」
「……うるさい」
それがどうしてか、春秋は自覚していた。
多分、紬以外にされても心は動かなかった。
紬だから。そう自覚して、余計に気恥ずかしくなって。
顔を真っ赤にして、恥ずかしくて紬から顔を逸らす。
紬も顔を真っ赤にして、でも、嬉しそうに微笑を浮かべながら春秋を見ていた。
照れ臭くなって、頬を掻いて立ち上がる。
「あーもうっ。俺は大丈夫だから。ハロウィンパーティーだろ? 協力するから早く打ち合わせやるぞっ!」
「はい。ご協力よろしくお願いします」