東方渡世抄 〜現実と幻想の境界〜 【更新停止】   作:小鳥戦士

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第15話 ショタってのは大変らしい。

1.

 

 

紫にスキマ落としされた瞬間、あの気持ち悪い空間に叩き込まれた。さっきまで畳の部屋にいたのに、瞬間的に景色が変わるこの感覚は絶対に慣れることは無いだろう。

 

「クッソ、やられた。だから嫌なんだよあのスキマ妖怪。急に変な空間に叩き込みやがる」

 

ぺっ、と唾を吐くように悪態を吐き、とりあえず気を落ち着かせる。だれしもこんな大量の目玉の部屋に叩き込まれたら安心する事なんて出来ないのだから落ち着かせる時間は必要である。

 

「(しっかし、相変わらず趣味の悪い空間だな……この空間にある全ての目玉にこっちを凝視されてる感覚がまたもうなんとも……)」

 

「あらあら、ごめんなさいね?まさか自分からなんてうふふふふ」

 

俺は問答無用で球型の弾幕を紫に放った。が、当然のようにスキマ送りされた。

 

「あら、こわいこわい……さて、少しお話しがあるのだけれど」

 

「急に真剣になってんじゃねーよ……で?話とはなんですか“師匠”?」

 

「その呼び方、貴方も真剣みたいじゃない」

 

「うっせ、そう言えっていったのはあんただろ」

 

「純粋ねぇ……可愛い♪」

 

「吐きそう」

 

紫は問答無用でクナイ型の弾幕を放った。が、当然のように避けた。

 

「んっんん……さて、本題だけれど」

 

ちなみに、一応飛行や能力、弾幕を教えて貰ったとして、紫からはせめて二人きりの時だけでも師匠と呼んで欲しいと頼まれている。正直面倒くさいがたまにはそう呼んでやっている

 

「はいはい?」

 

「その“闇”との戦闘、どうやって倒したのよ」

 

「は?あんたいつも幻想郷を監視してんじゃなかったのかよ?」

 

「いやーその……寝てたわ」

 

「アホか」

 

多分嘘だろうなー。スキマ妖怪八雲紫は冬眠する事はあれどあんな時間には寝ない筈だ。もしそれでも寝ていたのならば……俺の中でキャラ崩壊だ。

 

「それでね?どんな風に倒したのか参考程度に教えて欲しいの。もし弱点があるのならこれからの為になるし」

 

まぁ紫が言う事にも一理ある。敵の情報は今は喉から手が出るように欲しいところだし、さっきまで言っていなかった細かな情報を渡す事にした。てかさっきの会議で言えば良かった。

 

「りょーかい……まずは最初に遭遇した時だ。闇は最初ルーミアに取り付いていた。恐らくだけど、同じ闇繋がりだったんだろうな。闇はルーミアの意識を完全にモノにしてたよ。能力もだ」

 

実際どうなのかはわからない。が、完全にルーミアは乗っ取られていた筈だ。あの時の能力の使い方、あれはルーミアが狩りや移動に使っている闇の球型のそれだろう。

 

「で、その闇の空間に取り込まれて攻撃された。魔理沙とは分断されて独断で動くしかなかった。だから、闇に必ず効果があるスマホのライトで闇を切った」

 

「闇を切った?ルーミアの闇はそんな……」

 

「おう、紫もおかしいと感じた通りそんなヤワな光で能力を打ち破れる訳がないわな。つまり、闇は能力を完璧に扱えないって事だろうよ」

 

試されたこともない事だが、単に内部からの光にルーミアの闇は弱いだけかもしれない。が、完璧には扱うことはできないだろう。何故なら

 

「それは、フランと戦った事で証明された」

 

そう、フラン戦の時である。

 

「もしもフランを完全に支配出来ていたら、既に俺は死んでる筈だろうよ。だっていつでも能力で爆砕だぜ?でも奴は一回使うごとにインターバルを要していた」

 

「つまり……敵は完全には支配出来ないという事ね」

 

「多分な。ただ、あくまで俺が戦った印象なだけだ。それが正しいって訳では無いし、そもそもいつどこにどんな状態で現れるのかが全くわからないんだ…まだ情報が足らない」

 

「そうね……ま、これくらいにしてそろそろ白玉楼に行きましょうか。今からスキマから出すわね」

 

そう言って紫は数ある目を縦に開いた。そこには……先の見えない階段が。

 

「………おい、まさか登れと?すっげぇデジャブなんだけど」

 

「えぇ、これも修行の一環よ。飛んだらまたスタート地点にスキマ送りだから♪」

 

「あんた絶対さっきのBABA発言根にもっーーー」

 

紫に確認する間もなく、さっきまでのスキマ空間と打って変わって木々が生い茂る森の様な空間に俺は立っていた。俺はもう手遅れと思い、そしてため息を吐いた。辺りを見回しても木々しか見えないのだが、明らかに違和感のある点が。

 

「……少し寒気がしてきた。流石冥界、生きてる者は歓迎しないってか。つーか囲まれてんじゃん」

 

敵意がない様に見えるが、恐らく冥界に住んでいる幽霊らしき者の視線がさっきから俺を刺している。正直幽霊にガン見されるなんてイヤだし、あっちもあっちでいきなり生きてる人間が現れて動けずこちらを観察しているだけのようだ。なら早くここから去りたい。

 

「幽霊に囲まれただなんて体験、動画投稿したらすげぇー再生回数になるだろうな……ん?」

 

皮肉めいた事を吐いていると、目の前に先の見えない石の階段があることに気が付いた。なんなら既に俺が立っているのはその石階段と繋がっている道であり、もうこの階段しか逃げ場はなさそうだ。

 

「あー…すみませんねーびっくりさせちゃって。文句はあのスキマ妖怪にどうぞ。……『霊力放出』」

 

 

そう言いながら俺自身に眠る霊力を身に纏わせるように放出した。纏わせた霊力は身体に馴染んでいき、身体能力がかなり向上したのが感じ取れる。

霊力放出はとても便利な物だ。今みたいに身体に纏わせれば身体能力は上るし、勢い良く放出すれば近づいてきた敵や弾幕を弾く事も出来るかも知れない。

 

俺はかけっこの体制をとり後ろに下げた右足に力をこめ、蹴った。そのまま階段を段を飛ばし飛ばし低空で上に走る。自分が風になったかの様に錯覚する程加速し、もし躓いたら洒落にならないので足元に細心の注意を払うのも忘れない。

 

「もっかい……放出ッ‼︎」

 

階段に終わりが見えてきたので、残りの段を飛ばすべくもう一度右足に霊力を集中させ、一気に放出した。

 

「うーーーーおーーーーぁぁぁ⁉︎」

 

しかし階段を越えようとした辺りで霊力の制御と体制の維持をミスり、階段を余裕で飛び越えそのまま吹き飛んで行った。

 

「ーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ‼︎‼︎止まれ止まれ止まれぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」

 

フルパワーで加速した為、逆噴射でも勢いを殺す事も叶わない。しかし諦めたらジ・エンドなので何度も霊力を逆噴射するが、目の前に大きな屋敷が見えてきた。このままだと勢いそのままに衝突して死ぬ。

 

「ぬっぐぅぅぅ‼︎『形成』‼︎」

 

目前に迫る屋敷にぶつかる前に能力を発動、緊急回避でCの形をした霊力の道で勢いを上に流す。

 

「うぉぉぉ……これやっぱ便利だな……」

 

前に向かっていた身体が上に吹き飛んだ事により勢いが失速、上空で完全に停止した。勢いが止まったことにより思考にも落ち着きが訪れる。

 

が、まだ身体は空中にある事には変わりない。

その事に気付いた蒼刃の霊力放出による抵抗虚しく、運が良かったのか悪かったのか、真下にあった池に叩きつけられた。

 

 

 

 

2

 

 

その後、騒ぎを聞きつけたらしい白髪の少女がすぐに池に浮かんでいた俺を救出、濡れた服に変わる着替えを屋敷の中の一室にて貸してくれた。なお、四次元ポーチは無事だった。何故に。

 

「お着替えの大きさは合いますでしょうか?何しろ偶然見つけた男性用の物ですので……」

 

「あ、大丈夫大丈夫。問題無いよ。着替え貸してくれてありがとう」

 

「お気に召したのであれば良かったです」

 

現在俺の服装は紺色の浴衣の様な薄い服を貸して貰っている。ズボンもまた紺色の薄めの物だ。

着替え終わったので俺は部屋の前で待っていてくれた少女に声をかけ部屋から出た。

 

「そういえばまだ自己紹介がまだだったな。俺は望月蒼刃。一応幻想郷で言う外来人って奴だ」

 

「外来人……?あぁ、前に幽々子様が言っていた……コホン、申し遅れました。私はこの白玉楼で庭師兼剣術指南役を務めております、魂魄妖夢です」

 

「うん、よろしくな」

 

魂魄妖夢。幽霊と人間とのハーフで、種族的には半人半霊である。この白玉楼の主の従者であり、戦闘時には楼観剣という刀身の長い刀と白桜剣という楼観剣よりかは刀身の短い刀の二刀を操る刀使いである。幻想郷では比較的珍しい近接戦特化であるが弾幕として飛ぶ斬撃を放ったり、半身である白いモノから弾幕を放ったり分身して斬り掛かってきたりとだいぶえげつなかったり。

 

「では、主がお呼びですので参りましょうか。ついてきて下さい」

 

「はーい」

 

妖夢について行くと、外から見た時から気づいていたが明らかに博麗神社より広い。果たして博麗神社には中庭なんてあっただろうか。いや、ない。昔のお屋敷にあるような池は?無いな。飯を用意したり、掃除したりする従者は?いな……いや俺がそれみたいなもんか。

 

「はぁ……いいよなーこんな屋敷に住めて。博麗神社とは大違いだ」

 

「え?急にどうしたんですか?」

 

「いやさ、博麗神社みたいな狭〜いトコよりここの方がいいよなって話。それに『あんたは居候なんだから家事とか全部しなさいよ?あとはそうね……じゃあ神社の掃除とかもよろしく!』……なーんてアホみたいにしんどい事させられないだろ?」

 

「え?そうなんですか?私の所も屋敷の手入れ等は他の幽霊達に任せていますが……その、幽々子様はたいへん大食らいなものですから……偶に1ヶ月分にと溜め買いしておいた食料全部幽々子様の胃の為に半日掛けて調理ーー」

 

「いやもう言わなくていいから。あんたも苦労してんだな……お互い頑張ろう」

 

「……良かった、この苦労を共有出来る人がいて……」

 

俺たちはお互いの健闘を讃え合い、そのまま無言で握手した。ああ……忘れていた。魂魄妖夢は東方の世界の中でもトップレベルの苦労人である事を……また今度料理くらい手伝ってあげよう……

 

「コホン……ではこちらがこの屋敷の主、西行寺幽々子様がお待ちしている部屋となります」

 

「あれ?もう着いたのか。ここは……大広間?」

 

「はい、その認識で大丈夫です。…幽々子様、お客様をお連れしました」

 

「は〜いどうぞ〜」

 

妖夢が部屋の外から呼び掛けると、中から柔らかい雰囲気を纏わせた声が返ってきた。「失礼します」と妖夢が襖を開けた。襖が開かれ、すぐに声の主の姿が見えた。

 

「望月様、あちら正面におられるのがこの白玉楼の主、西行時幽々子様です」

 

「はいは〜い、私がゆゆさまよ〜?」

 

西行時幽々子。東方の世界の中で最強の一角を担う亡霊の姫だ。ピンク色の髪にピンク色寄りの着物、そしておっとりとした不思議な空気を纏う女性である。一連の流れを見る通り天然っぽい女性に見えるが、中身は天然なんて言っていられない。何故なら、能力が人類的に非常に危険だからだ。

 

「(彼女が持つ能力…それは『死に誘う程度の能力』だった筈。正直この人が一番危ないんだよなぁ…)」

 

死に誘う程度の能力。その名の通りあらゆる生命を殺す能力であり、命があるものは逆らう事が出来ない権能級の能力である。だが、西行時幽々子の人間性(亡霊性?)からか能力の使用は滅多にしないし、そもそも敵じゃない俺に対して絶対使わないと思うが……根本的な恐怖には勝てない。

 

「初めまして、望月蒼刃です。あの、庭園の件についてはすみませんでした。この後すぐにでも修復しますので……」

 

「あぁそれはもういいわよ〜。さっき真犯人さんから事情は聞いたから彼女にさせてるから」

 

「……彼女?ってあぁ、スキマ妖怪ですか…ありがとうございます」

 

「いいのよ〜、災難だったわね〜」

 

俺は彼女の寛大さに感謝し、ぺこりと頭を下げた。あのスキマ妖怪にはずっと働いていてもらうとしよう。……しかしなんだろう、彼女が俺を見ながら何やらうずうずしているのだが……なんだろ

 

「え〜と、その〜……ちょっと来て貰える?」

 

何やら胸の前で指を突き合わせた後、ちょいちょいと招き猫みたいに手を振った。俺は頭の上に疑問符を付けてゆっくりと近づいた。彼女は俺が近づくにつれて目を輝かせ、両手を広げて迎え入れるようにしてーー

 

「ゑ?むぐぅ⁉︎」

 

「きゃぁぁぁ!可愛い〜‼︎」

 

その豊満な体で俺をむぎゅっと抱き締めた。それはもう満面の笑みで。そんで色んなトコが柔らかくていい匂いがした。ありがとうございます。…そうじゃなくて。

 

「ゆゆゆゆ幽々子様⁉︎な、何してるんですか⁉︎」

 

「あら妖夢、あなたには彼の可愛いさがわからないというの?このぷにぷになほっぺとか身長とか‼︎」

 

「望月様がもはや成されるがままに⁉︎」

 

あわあわと妖夢が顔を赤くして慌てふためいている。ちょっと可愛い。え?俺?がっちりホールドされて抜け出せないから諦めました。助けてください。

 

「いーい?今から私の事はゆゆさまって呼ぶのよ?わかった?」

 

「ワカリマシタ、ユユサマ」

 

「あ〜んもう素直でいい子ね〜!よ〜しよしよし」

 

「あ、あの幽々子様…そろそろその辺りで止めてあげてください。彼もう表情が死んできてます」

 

頭を撫で撫でされ、一段と深く抱き締められ逃げられなくなってきたところで妖夢が止めに入った。これ、どう考えても彼女に俺はショタだと思われてないか?もしかしてこれから初対面の人たちにそう思われるパターンあるやつ?

 

しかし、そんな蒼刃の不安を他所に彼女の勢いは止まらなかった。

 

「それじゃあ蒼くん」

 

「蒼くん⁉︎」

 

彼女は、とんでもない爆弾発現をしたのだ。

 

 

 

 

 

 

「今日は泊まっていって、お風呂一緒に入りましょう!」

 

 

 

 

 

俺は一気に目が覚め、全力で拘束から抜け出した。

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