ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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『お悩み相談教室【ちう編】』

 

「はよーっす」

 

「あ、普通にくるんだ

 昨日の様子から来ないのかと思った」

 

「暗にくんなっていいたいのかコラ」

 

 

 女子中の校舎へとやってくる男子なんて目立ってしょうがねえ。ちらちら見られ眺められ指差されまくって、かなり肩身が狭かったさ。

 2-Aに入って早々、顔を合わせたのは柿崎。そういえば昨日の報復がまだだったな。

 

 

「で、なんか申し開きはあるか」

 

「いふぁいいふぁい、ふぉっぺをふゅままにゃいでよぉ」

 

 

 ぐにぃ、とミサミサのほっぺを伸ばす作業。それほど痛くもねえだろうが、抗議の声が上がる。

 それより自身に衝撃走る。女子の頬袋柔らけえ。

 

 

「うぅ~

 でも今更どうすることもできなくない?」

 

「せめて中二な二つ名だけは訂正しておいてくれよ

 いや中二だけどさ、まだ。

 で、俺の席どこ?」

 

 

 頬をさすりつつ恨めしげな上目遣い。

 はっ、お前のが通用するとでも?

 

 鼻で笑ったら今度はアヒル口でむくれた。

 

 

「そっちのそこ、長谷川の隣だよー」

 

「長谷川さんね、ハイハイ

 ――――なんで?」

 

 

 聞き返したが怒ったように去っていった。

 わずかに、舌打つ。弄り過ぎたか。

 もっと落ち着かないとな、俺。

 

 で、席は長谷川千雨のお隣。最後尾、と。

 

 

「えーと長谷川さん?」

 

「………………おう、あー、烏丸? おはよう……」

 

「おお、おはよーさん」

 

 

 話しかけたが鬱陶しそうな雰囲気。

 むしろ私に話しかけんな、を地で行く雰囲気。

 むしろコミュ障の雰囲気?

 

 

「まあよろしく

 三学期の間だけだと思いたいけどね」

 

「おぅ……

 あー、烏丸、はさ」

 

「うん、なんすか?」

 

 

 コミュ障ではない様子。

 話題を振ってくるならば喜んで応えようじゃないか! 友達作りって大事だしね!

 

 

「自分から、志願とか、したのか? その、女子中に通うの、って……」

 

「いや、志願してそうなるわけじゃねえと思うよ?

 俺の場合は学園長と高畑さんに頼まれたのが実情だね」

 

「そか。

 あー、そか、だよ、なぁ……

 あ、いや悪いな。あんたもなんだかんだで巻き込まれている口なのか

 クラスの奴と結構親しげだから、トラブルメーカーなのかと勘違いしてたわ」

 

「いーよいーよ、こんな異常な状況にぶち込まれていれば疑心暗鬼になるのもわかるし」

 

「だよなぁ………………

 ………………………………ん?」

 

 

 そういや昨日は結局まともな授業受けていなかったな。一時間目はなんだ?

 

 

「あー、時間割確認してなかった

 すまん長谷川さん、教科書見せt」

「おいちょっと待て」

「お、おー、なんすか?」

 

 

 え、やだなにこの状況。

 ちうたんが俺の襟首を締め上げてるんですけれど。

 

 ……昨日といい、昨今の女子中学生はネックハンギングツリーがコミュニケーションの主流なのか?

 

 

「……質問がある」

 

「はい、何なりと」

 

 

 もう登校している何人かもこちらの状況を見ていると思われるのだけれども、目線を向ければほぼ全員が逸らしてゆく。巻き込まれたくないんですね、わかります。

 

 

「お前、この学園都市をどう思う?」

 

「ってゆうと? たとえば?」

 

「たとえば、車並みの速度で走る学生がいたり」

 

 

 すいません、それ俺もできます。

 

 

「たとえば、山より高い馬鹿でかい樹が生えていたり」

 

 

 世界樹ですね。葉っぱ一枚で死者蘇生できるのかなぁ。

 

 

「極めつけはこのクラスだけどな」

 

 

 あぁ。幼女が三人くらいいるしね。

 逆にやたら発育のいいのもいるし。ほんとに同年代? って言いたいんですか。

 あと学生の身で店を切り盛りしていたり。

 ロボとか通っていたり。

 普通に見てごった煮、って感じだもんな。このクラスは。

 

 

「お前は、どう、思う……?」

 

 

 そんな、すがり付くような目で見ないで欲しいんだけどね。

 抱きしめたくなっちまうよ。

 

 

「ちょっと、場所変えるか」

 

 

 今すぐが大事。授業? あとあと。

 

 

   × × × × ×

 

 

「落ち着いたー?」

 

「ああ……、わりーな、いきなり……」

 

「いーよ

 人間、何が琴線に触れるかわからんし」

 

 

 肌寒い季節ではあるが、外にて自販機前のベンチに腰掛け並んで飲み物を啜る。今日は日差しがいいので、朝でもそれほど寒くなさそうだ。しかし一応飲み物は熱燗で紅茶系。ちなみに俺のおごり。

 昨日から俺ばかり奢っているのだが、男子は女子に奢らなくてはならない暗黙の了解があるのだと思う。そう思わないとやってられない。これが大宇宙の意思か……っ。

 

 ちなみにこの場所は校舎から結構人目につく場所。俺は紳士ですからー。人気のない場所になんて連れ込んだりしませんよー。

 

 

「琴線か……、そーだな……」

 

 

 さて、なぜこうなった?

 

 よくある二次創作にあるように、多分このちうたんは原作通りに麻帆良の異常に慣れることができなかったんだろう。

 認識阻害が効かないっていうのがどういう理屈でそうなっているのかは知らないけれど、そういう状況に晒され続けていればその異常に慣れることができない現状からくる尋常じゃない孤独感を感じていたのだろうことはよくわかる。

 それを解決できる手段や人物が目の前に現れれば、少なくとも同類っぽい奴が目の前にいれば、それにすがり付きたくなるのは目に見るよりも明らかだ。

 

 ただ、それがなんで俺になったんだ。その理由がわからねえ。

 俺なんか特別な台詞でも吐いた?

 

 

「で、一応俺から答えるけどな」

 

「――おう」

 

 

 ここで誤魔化してその末をネギ君に任せるのは簡単だろうけれど、こうやって意を決したような表情でじっと見られると、なぁ。

 そうしちゃいけないよな。やっぱり。

 

 

「正直、この学園都市は異常だよ

 普通じゃない」

 

「――!

 ………………だ、よな

 だよなぁ!」

 

 

 とたんに元気になったけれどさ、ちうたん。これは結局、負け犬が傷を舐め合っているだけってことに気づいてる?

 

 

「学生の部活動の間口が広がりすぎ

 広範囲になんでもやらせるにしても限度がある」

 

「そうなんだよ! 飛行機とか運転できるんだよ!

 科学部とか研究とかだってロボットを作るのはともかく、麻帆良以外での技術と比べても先を行き過ぎだろうがよっ!」

 

 

 人間は社会生活を主軸にして進化してきた。そしてそれをぶれさせない為にそれぞれのコミュニティで暗黙のルールを作り上げる。そこから外れちまうと、社会に適応できていないって言うことになる。

 

 

「樹齢が何年かは知らないけれど、あの樹だってありえない

 航空法とかに引っかからないのかねぇ」

 

「ギネスに載っててもおかしくねぇだろっ!

 なんでみんな平然と受け入れてんだよっ!?」

 

 

 ドロップアウトしちまう人間は、社会に馴染めないというだけで負け犬扱いされる。それは厳しいことだけど、そもそもルールに人情はない。人が作り上げたもののはずなのに、おかしな話だ。

 

 

「極めつけはうちのクラス、か

 見た目的に中学生に見えない奴らばっかりだもんなぁ、上も下も」

 

「さらに子供先生とまできたからな!

 もう腹いっぱいだっつうの!」

 

 

 ルールを定めるのは最低限度の常識。その常識ですら環境が変われば変動する。

 麻帆良はその『変動した常識』を強行させている世界だ。けれど腹立たしいことにそれですら『常識』。自身の常識と反りが合わないからといって、それが非常識足り得ないことになる。

 だから――、

 

 

「非常識がここまでまかり通ることだって、あり得ねぇだろうがよ……っ!」

 

 

 ――残念だけど、そんなちうたんは結局社会に馴染めていない『負け犬』なんだよね。いくら口惜しそうに嘆いてもさ、受けている傷を癒せているわけじゃないんだよなぁ。

 

 それで、俺としてもただ共感できるわけでもない。残念ながら負け犬じゃないし、俺。

 

 

「でもさ、こんな街でも俺は好きだよ?」

 

「あぁ……?」

 

 

 うむ。ちょい裏切られたような表情。

 でもさ、言うべきことは言っておきたいのは性分なのですよ。

 

 

「基本的に悪いやつが悪いことをやっているってわけでもないし。この町の主成分は善意でできています、って言っても過言ではない気もするし

 やりすぎ感は多分にあるけれど、ブレーキを利かせられないってだけでハナシを聞かないわけじゃない、……と思いたいけどさぁ」

 

「希望も混じってんじゃねえかよそれ

 つーか、昨日手痛い目に遭わせられといてよくそう言えるよな」

 

「男が女に弱いのは昔っからのお約束」

 

「それを認められるのかよ……」

 

 

 だって勝てないんだもん。

 男はさ、守れればいいんだよ、女の子を。

 

 

「イヤじゃないのかよ、お前だって色々と迷惑被っているように見えたぞ

 お前は、この町の異常を知っている

 私と、同類なんじゃねえのかよ」

 

「イヤであっても嫌いじゃない

 だったら認めちまうと意外と気楽だ」

 

 

 説教できる立場でもねえから、あんまりこういうハナシもしたくねえんだけどね。

 

 あー、もう一時間目始まってるよなー。

 初日第一回目が新田先生でないことを祈るばかりだ。

 そんなことを考えつつ、立ち上がる。

 ちうたんは、まだ残っているつもり?

 

 

「ま、ストレスフリー自体、みんながみんなできているわけでもない。その人の内心なんてそう見えたものでもないし、なにを考えてなにを悩んでいるかなんてのも他人にはわかることでもない

 本人のストレス発散が別個にあるように、モノの見方もそれぞれにあるんだよ。

 

 少なくとも俺は好きだ

 だったらそれでもいいんだよ

 そっちにそれを強制するつもりもないけど、気楽にいこうぜーちうたん」

 

「あ゛ー……、言いたいことはわかる気もするよ……、

 愚痴に付き合ってもらったみたいで悪かったな……

 ………………って、おい!? なんでてめぇがそれを知ってやがるっ!?』

 

 

 ひらひらと手を振って、かっこよく去っていった。つもりだったのだが、なんか最後怒鳴られた気がした。

 俺、またなんか失言したのかね?

 

 

   × × × × ×

 

 

 せっかくなので手洗いの場所確認も兼ねて一時間目はサボり。仕方ないんだ。途中から顔を出して授業を遮るわけにも行かないんだ。

 そんな言い訳にもならないことを内心思いつつも、男性用は教員用にしかないという何処の航空戦闘系ハーレム主人公ラノベ? と感想を抱きつつも手洗いから離脱。

 二時間目の鐘を待つかね、と時計を確認した刹那、

 

 

「そらさーん!!!」

 

「ひでぶっ!?」

 

 

 懐古系セーラーの薄幸少女に体当たりを噛まされた。

 

 

「ちょ、さよちゃん? なに、どしたのさ」

 

「うう~! だましましたねっ! 誰も気づいてくれないじゃないですかっ!」

 

 

 え。少なくともスタンド使いはあと二人いるから大丈夫だと思ったんだけど。

 ちなみに名前呼びしないと怒られるのでちゃん付け。

 

 

「誰も? ポニテとか幼女とかも?」

 

「まったくですよっ!

 私のことを見える人がいるって聞いたから目の前に出て挨拶もしたのに見事なスルー!

 イジメかと思いましたよっ!?」

 

 

 特徴っつうかカテゴリで呼んでしまったけれどこのほうがわかりやすいと思ったんだ。

 それにしてもテンションが高い。幽霊という割には俺にはそれがまったく実感できないのだが。

 

 しかし見えない、ねぇ。本格的にイジメではない限り、普通に考えて『見えていない』のだと想定したほうがいいのかね。

 幽霊だから、って言うのが理由か?

 

 つーかスタンド使いだから見えているわけじゃないのか、俺?

 あと正直、見えて触れられる幽霊が実在するなら、俺も『夕子さん』みたいなナイスバディが良かったかも。あの絵柄はマジでエロいと――、

 

 

「あらあら、授業をサボるのは感心しないわね」

 

 

――ドッ、と冷や汗が出た。

 声に振り向けばしずな先生が。

 せんせい、いつのまに?

 

 

「いえ、ちょっと見慣れない構造でしたので。

 道に迷ってしまいましたよ

 

 いけませんねぇ、僕の、悪い、癖です」

 

 

 コマンド→水○豊のモノマネで乗り切る。

 

 見ると、にこにことした表情でこちらを見ていた。しかし、目は確実に笑っていない。

 

 ……怖ぇ。

 

 

「……すみませんでした。

 二限目はちゃんと出るので許してください」

 

「……ま、いいけれど

 あなたはここ唯一の男子なのだから、その行動には気をつけること

 これは普通に教員としての注意よ」

 

「肝に命じます」

 

 

 威圧感がぱない。お陰でさっきからさよちゃんが引っ付いていてやわこくてきもちいーくて、そのことに気づかれないように精神力を絶賛稼動中な訳ですが。

 つーか、しずな先生もさよちゃんが見えてないよね。これ。

 

 あれ? マジで俺の見えている理由って何だ?

 

 




~頬袋ぷにぷに
 リスじゃねえんだから。

~失言だらけの主人公
 自覚なし。ちうたんが警戒を開始しました。

~夕子さん
 黄昏乙女。アニメ化したとか聞いた気もした。いいの?

~水○豊
 相棒。

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