ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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『ドッチボールといったな、あれは、嘘だ』

 

「やるならバレーじゃね?」

 

「えー? ソレだと普通にあたしらが不利じゃない?」

 

「バカ、よく考えろ

 そもそも体格の差が出るのはどっちでも変わらないんだよ

 ドッチだと選手に当てる必要性が出てくるけど、バレーならばコートに落とせば点になる

 そして何より、体の何処かにボールが当たっても『反則じゃない』」

 

「………………っ」

 

「気づいたようだな」

 

 

 例えば脚、例えば頭、例えば胸。わざわざ手で掴んで投げ直す必要がバレーにはないのだ。当たったとしても、故意じゃなければ『反則ではない』。

 

 

「じゃあ、言いたいことはわかったよな?」

 

 

 改めてそう確認を取ると、明日菜・雪広の二人はこくりと頷いて、

 

 

『バレーで勝負よっ!』

『えええええっ!?』

 

 

 前回で引いた台詞を綺麗に撤回した。

 

 

「……お前って偶に、懐に螺子とか隠し持ってるのかってくらいにゲスいよな……」

 

 

 誰が負完全筆頭か。

 

 

   × × × × ×

 

 

 屋上に来てみると先に場所を取っていた高等部のお姉さま方。かてて加えて先に監督に来ていたネギ君が再び捕食されており、ついに雪広がキレた。

 売り言葉に買い言葉のオンパレードで、すわ喧嘩になるかってところ、ネギ君の鶴の一声が球技で勝負ということを決定付けたらしい。

 なんだかんだで『先生』をやろうっていうんだからネギ君も真面目だよな。いや、この場合は周りの淑女諸君が総じて幼いのかもしれない。ロリ淑女。精神だけロリでも萌えねえ。無しだな。

 

 というのが居なかったときのダイジェストだそうな。説明をした和泉もゲームに参加。ガンバ。

 

 

「いや、烏丸くんも手伝ってな」

 

「え。男が入るのってありなのか?」

 

「平気やて

 参加人数はこっちは十人、あっちは六人

 先に十点とったほうの勝ちやって」

 

 

 思ったとおりにゆるいルールだな。

 まあエキシビジョンだろうし、テキトーにや……いやいや、俺が参加する必要性ないよね?

 

 

「ち・な・み・に

 このゲームで勝ったほうがネギ先生を担任にできるってことでいいわよね?」

 

 

 ネギ君を抱き上げながら、そーんなことを宣うお姉さまA。

 いやいや、そういうのはまず学園長とかに許可を取らないと。と言おうとしたところ、

 

 

「ふっ、ふざけるんじゃありませんわ!

 そんな勝手が罷り通るとお思いですの!?」

 

「もう決めたもんねー♪」

 

 

 雪広が絶叫して、ツッコミが入る前に条件として浸透していた。女子の決定力とでも言うものだろうか、強固過ぎて突っついても壊せないと判断。

 仕方ないよね。

 

 

   × × × × ×

 

 

 参加するのは、明日菜、雪広、運動部組四名の明石・和泉・大河内・佐々木、バカイエロー(古菲)、何故か超、俺に付き合っての風香、そして俺。

 ずるずると参加する破目になっていた原因の一つが参戦しないクラスメイトにあることを噛み締めるように理解しつつ、睨む。長谷川は目をそらした。宮崎&鳴滝妹は申し訳なさそうにしていた。その他は大したリアクションもしなかった。

 チアとして柿崎を筆頭にポンポンを振り回す女子応援団に、何処から持ってきたのか花火を飛ばす茶々丸。麻帆良武道四天王のうち半分は我関せずと見学中。忍者はいつの間にかいない。サボり? かと思いきや少し離れた校舎の屋上にその姿を発見。ハットリ君を表現したかのようなその暢気な所業には、憤りを感じざるを得ない。

 

 

「なんで俺が……」

 

「烏丸さん! 提案したのは貴方なのですから当然ですわ! ネギ先生を奪われないためにも、尽力してくださいましね!」

 

「いや、だからそういうのは学園長とかが関わることだから、生徒が勝手に決められるものでもないと、」

 

「さあ皆さん! 力をあわせて!」

 

「聞いてよ」

 

 

 ショタコンとして覚醒中の雪広には言葉が通じないらしい。ぐぬぬ。

 

 

   × × × × ×

 

 

『ボレーサーブ!』

 

『ちょっ、ソレ足!』

 

『故意ではないので試合続行です!』

 

『審判流したっ!?』

 

『アハトアハトキャノン!』

 

『弾丸スマッシュ!?』

 

『なんの! 烏丸ガード!』

 

『ぐぶえ』

 

『でかしましたわ烏丸さん! 今必殺の――!』

 

『負けてられるかー!』

 

『この一球に! すべてをかける!』

 

『俺に任せろっ!』

 

『明日菜を踏み台にしたっ!?』

 

『オーバーヘッドドライブシューット!!!』

 

『試合終了ー!!』

 

 

   × × × × ×

 

 

「……負けたわ

 ……でも、なんだろう……

 とっても清々しい気分……

 おかしいわね、負けて悔しいはずなのに」

 

「いいえ、私たちも同じ気持ちですわ

 これはどちらの負けというハナシではございません

 私≪わたくし≫たちの絆の勝利なのですわ、お姉さま方」

 

「フフ、今更取り繕わなくてもかまわないわよ

 

 いい勝負だったわ

 また、やりましょう」

 

「ええ、ぜひ」

 

「………………

 キミたち、その輝かしい絆の背景には傷だらけの犠牲者がいるということも覚えておいてもらえると嬉しいのだけれどもね」

 

 

 こちとらスマッシュの壁にされたり、着地を失敗してけっこうズタボロな状態なのですが。

 ……こっち見ろや。

 

 そんなわけで、白熱した試合は皆の健闘も相俟って2-Aの勝利によって幕を閉じた。

 終わってみてなんだが、景品扱いにされていたネギ君は徹頭徹尾蚊帳の外である。酷ぇ。

 

 勝てて健闘を称えあっているお嬢様方ですけども、この学園の中学生が普通の中学生であるはずがない。相手が高校生クラスだろうと、割と軽く勝利できるであろうことは始めっから見据えられていた事実。むしろよくここまで食い下がったものだ、と相手側を褒め称えたいです。

 

 

「そらも、お疲れ

 怪我はどう?」

 

「おー、明日菜もお疲れ

 大した怪我もねえよ

 どっちかというとお前のほうがどう?と聞きたいのだけども」

 

「あはは、まあお互いぼろぼろよねー」

 

 

 最後の一球、明日菜を踏み台にした俺は腕の力だけで跳び上がった。紳士として女性は足蹴にできないことは当然なのだが、お陰で逆立ち状態での蹴り返しを成功させたはいいモノの、着地は明日菜を巻き込んでの失敗。相手が明日菜でなかったらToLoveるな展開になっていたぜ。ふぅ。

 

 

『うう、ぼく、せんせいなのに……』

 

 

 あ。

 

 

「やっべ、ネギ君のフォロー忘れてた」

 

「ふぉろー?

 ……あ」

 

 

 今更思い出したのだが、このイベントネギ君がクラスに馴染むためのそこそこ必要な代物だった気がする。最近原作知識をろくに活用できていないのですっかり忘れていた。やべぇ、どうしよう。

 

 

「ど、どうしよっか、そら

 ネギのことすっかり忘れてたんだけど……」

 

「うん……

 そもそもネギ君の威厳をある程度示すのが今回の仲直りとしては適切だったと思うんだが、そんなの必要ないくらいにお互いを褒め称えているよなー……」

 

 

 うろたえる明日菜に思わず呆然としてしまう俺。視線を向ければ、雪広とお姉さま方はうふふあははと朗らかなご様子。今更何をどうにかする必要性もないくらいには仲良くなっていた。ショタコン同士、通じ合うものもあるのだろう。

 

 

「………………」

「………………」

 

 

 なんとなく、気まずい沈黙が俺と明日菜の間に漂う。

 

 

「見なかったことに」

「そうね」

 

 

 即答だった。

 細かいフォローは同室らしきこのかにでも任せよう。明日菜も同室のはずだけど、まあそこはそれ、気にしない一拓で。

 




~バレーで勝負
 黒百合なんて無かった。

~懐に螺子
 負完全筆頭。裸エプロンせんぱーい!

~試合内容
 いちいち書くとクッソ長くなりましたのでダイジェストでお送りいたしましたら今度はめっさ短くなった。どういうことなの。
 本来は意地と意地、絆と友情のぶつかり合いが醸し出す実に熱い球技マンガが三週に渡って広がっていたらしい。講談社もびっくりである。嘘だけど。

~明日菜を踏み台にしたっ!?
 正確には腕の力だけで跳び上がったすごい・そらの・きせき・な身体制御。腕の力だけで空中を繰る繰るぶつかり合うカレイドなスターに通じるものが…あるわけない。
 着地は明らかにラブコメな展開のはずなのだが、気安すぎるこの二人には然程気にするものでもないらしい。傍から見たらお前らもう付き合っちゃえよ、と言われてもおかしくないレベル。

~ネギ放置プレイ
 もっと絡めるつもりだった。気がついたらいらない子だった。魔法もねぇ!出番もねぇ!教師としての威厳もねぇ!こんなネギいやだ~♪アンチのつもりもヘイトもない。この小説は結局こういうもの、というだけである。
 嘘みたいだろ?これで一巻分が終わってるんだぜ?

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