ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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そいやっとこさときました20話目
なんだか感想で期待されすぎててワロタw



『ソノメ、ダレノメ?』

 

 烏を模したヴェネチアの仮装のような仮面で顔を隠し、黒を基調としたローブで身を包んだ一見冗談のような格好をした男。彼が拳闘の舞台へと向かう途中で、同じように灰色のローブで正体を隠した人物にその先行きを縫い止められる。

 男は、思わずため息をついたような動作をし、その人物へと声をかけた。

 

 

「何の用だ」

 

 

 質問ではない。その行動から男に用事があるのは明らかだ。

 ローブへと向けた言葉は返されること無く、その人物は片手を出して金貨の入った袋を男へ見せ付けた。

 

 

「ここに賞金額の倍入っている

 次の試合。負けてくれるのなら、喜んでこれを進呈しようじゃないか」

 

 

 何のことは無い。拳闘で八百長をしろ、という『お誘い』であった。

 

 

「拳闘士として、わざと負けるような気はさらさら無い」

 

 

 無碍も無く断るように言葉を零しつつ、男は通路を進む。

 ローブの人物はソレを遮るような姿勢になりかけた、が、男が懐から手を出し、金貨の袋を掴むことで、安堵の息を漏らす。

 

 

「が、スプリングフィールドが逃げ出さない限りは勝つチャンスも巡ってくることもある」

 

 

 金貨の袋を懐へと仕舞いつつ、男はローブの人物とすれ違い、そう返答した。

 

 

   × × × × ×

 

 

「英雄の再来

 その正体は八百長に塗れた虚構、か」

 

 

 烏マスクの男が呟いた言葉は誰の耳にも届かない。

 ここは円形闘技場の真っ只中であるし、さっきから喧しいくらいにリングガールがネギ=スプリングフィールドの今までの戦跡をアピールしている。

 その戦いは正々堂々・流麗可憐、ときに負けそうな戦いを見せても、必ず巻き返して勝利を掴む。

 拳闘士としてデビューしてまだ一週間もたっていないというのに華々しい快勝を幾度と繰り返し、その甘いマスクも相俟って彼の人気は鰻登り。

 更には赤き翼の英雄と同じ姓ということもあり、その真相を知りたくて彼のファンになってゆくもの(特に女性)が後を絶たなかった。

 

 闘技場の反対側から出てくる姿は、なるほど、確かによく知られている赤き翼の『彼』によく似ているのだろう。

 だが、それで騙されるのは彼を直接知らないものくらいだ。

 近くで見ればよくわかる。

 その顔つきは、まかり間違っても拳闘を嗜んでいるような凛々しいものには到底思えない。

 彼は、世間知らずの小僧がそのまま大きくなったような、暢気な表情で舞台へと現れていた。

 

 

『相対するは今回初登場! 賞金稼ぎとも噂される、レイヴーン=ブラック選手!

 言っちゃあなんですが何処までネギ選手に対抗できるのか、はっきり言って未知数です!

 それとも今回も私たちに素敵な戦いを魅せてくれるのかネギ選手っ!

 それでは両者揃ったところで! 試合ッ! 開始――――ッ!!!』

 

 

 彼女も幾らか積まれているのかもしれない。スプリングフィールド寄りな選手紹介を一頻りし、試合開始のゴングが鳴った。

 

 

「行きますっ先手必勝!」

 

 

 先手必勝と言いつつも、

 

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル、」

 

 

 始動キーから始まり、詠唱に入る。

 正直、ブラックは戸惑った。

 これでは拳闘どころではない。

 まるで魔法学校を卒業したばかりの、本物の初心者を相手にしているようだと。

 

 

「魔法の射手! 光の17矢!」

 

 

 ようやく撃ち出されてくる『攻撃』に、やっと動くことができる、と内心安堵の息を漏らす。

 が、縦横無尽にぐにゃぐにゃ飛び交う『魔法の射手』は非常に遅く、それらを制御しているならば数こそ見事なれどどうやっても『当たる』とは思えなかった。

 これで勝たせろというのだから、正直早々に棄権したほうが手っ取り早いのでは、とブラックは矢をひょいひょいかわしつつ考える。

 考えている間に、スプリングフィールドが次の詠唱を唱えているのが視界の隅に映った。

 要するに今の『攻撃』は撹乱ということか。

 

 

「“雷の暴風”!」

 

 

 直線の雷撃が放たれる。

 直撃すれば確実に致命傷になりそうな攻撃だが、ブラックにとっては読み切れた手段でしかない。

 

 

「はなてこころーに(ry」

 

 

 思わず口ずさみながらブラックは身を屈め、自身の『攻撃』の準備に移った。

 さすがに無抵抗でやられるのは、誰にとっても快いものではないのだ。

 

 

「次はこちらの番だ

 受けてみろ、スプリングフィールド」

 

 

 かわされたことを目にし驚愕の表情を浮かべているネギにブラックはよく通る声で宣言し、その声が届いたことを確認すると技の名前を口にした。

 

 

「焦天回廊」

 

 

 技を唱えたその瞬間、ブラックの正面から焔が吹き出し、一瞬にして巨大な火球となって闘技場の宙空を埋め尽くす。

 火球などではない。それは最早空に広がる焔の地獄のようであった。

 

 

『こ、これはなんだー!? 無詠唱で再現したのは、もしや“燃える天空”かーっ!?』

 

 

 そう。

 これは火炎呪文の上級魔法『燃える天空』……に、一見よく似ている。

 スプリングフィールドもそう思ったのだろう。詠唱破棄で出てきたのがこれまでにない『攻撃』だったので、彼は完全に棒立ちとなってその光景に見入ってしまっていた。

 

 結果、ほぼ無防備にその攻撃を受けてしまう。

 

 

「ぬわぁーーーっ!?」

 

 

『ネギ選手に“燃える天空”が直撃っ!!

 これまでにない展開に対応し切れなかったのかっ!? というか何者だレイヴーン=ブラック! その実力はまさに未知数ですっ!』

 

 

 実況の女性は本来取るべきカウントを取らず、ブラックの正体のほうへと思考が逸れる。

 彼女もやはり買収されたのかもしれないが、これも予定調和と思っている節もあるのかもしれない。

 言葉とは裏腹に、スプリングフィールドの反撃を期待しているのが簡単に見て取れた。

 

 ブラックがそうこう思考するうちに闘技場に燃え広がっていた焔が晴れてゆく。

 その開けた視界の先にはやはり健在のスプリングフィールドの姿が見えて、実況の女性も安堵の言葉を漏らした。

 が――、

 

 

『おおっと! ネギ選手どうやら無事のようで、す――………………はっ?』

 

 

 その姿に、思わず絶句してしまった。

 

 

「けほっ、どうやら見た目だけの技だったようですね……

 ですが、これだけで倒せる僕では………………?

 ………………………………っ!?」

 

 

 焔の晴れたその先にいたネギ君もといスプリングフィールドも、また自分の姿を認識して、絶句する。

 その姿は――、

 

――ニーソスク水兎耳の青年という、誰得ー?な状態であったのだから。

 

 

「………………なっ」

 

『………………き』

 

「いやぁあああああああああああ!?」

 

『キャァアアアアアアアーーーッ!?』

 

 

 絶望と歓喜の悲鳴が同時に木霊した。

 片方はスプリングフィールド。もう片方は恐らく闘技場を眺めていた女性観客のものだろう。

 これはひどい、と云わざるを得ない。

 

 そのままスプリングフィールドは闘技場から逃走。

 興奮冷めやらぬ闘技場観客席と違って、呆気に取られたのは審判のほう。

 実況の女性はというと、彼女的には役得の姿であったのかナニヤラ興奮して詳しく聞きたくない解説を熱演している状態。

 中継は意図的に彼女の解説を放送しないようにカットしたのは、賢明な判断であった。

 

 

『えー……

 スプリングフィールド選手の戦闘放棄により、レイヴーン=ブラック選手の勝利といたします……』

 

 

 この現状では当初の目的を果たせるわけもなく、結果的に勝ち鬨を上げられるのはブラックのほう。

 相手が逃走してしまっては、彼を勝たせるなんてことは既に不可能となる。

 それはわかっていても、どうしても納得のいかない結末としても、依頼者も現状を認めざるを得ない。

 

 どこか微妙な空気を醸したままに、闘技場の一部をいやーな沈黙が支配していたという。

 

 




~ソノメダレノメ?
 推理する必要性がほぼ見られない内容。
 大体わかる気もします。

~レイヴーン=ブラック
 正体を隠した謎の新人仮面拳闘士。
 くそっ、一体ナニモノなんだー。

~『焦天回廊』
 ネタ技その2。元ネタは『マテリアルパズル』。
 この作品では派手なだけの偽火でのフェイク。本命は内側に仕込まれた『武装変換』の魔法。パクティオカードにも搭載されているあの機能を改悪した技術で、どのような人物でも「ニーソスク水バニーイヤー」の姿へと瞬間的に着替えさせる最悪な呪文。
 エヴァには禁術指定まで食らったとか。


短いですがこんなカンジでどうでしょうか?
期待されていた方には悪いですが、一週間程度で上手く戦えるわけがないのでこの展開です
ネギくん的にはナンテコッタイな現実ですが、元老院の手元に居ればこんな風に扱われることも仕方ないかなと思われます
焦天回廊は前々から考えていたネタの一つ。無月以来の遊びがこれだよ!

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