「ふえー」
「ふわー」
「ほへー」
「はわわ」
「ふええ」
「みんな気にしすぎやでー
そらくんは狙いすぎや」
いかんか。
お嬢様のご実家に通されて、恐らくは客間で待機中の我ら麻帆良一行。
通されたそこが、実家というよりは屋敷、客間というよりは本殿、と意訳したほうがしっくり来る場所なので完全に圧倒される。
上から順に、明日菜・ネギ君・触覚・鈴木・俺、と間の抜けた声で心内を表現してみればこのかに窘められてしまったぜ。てへぺろ。
平気そうなのは雪広と茶々丸、意外なところでゆえきちくらいだった。あ、いやゆえきちは微妙に緊張してるっぽいな。声を出せなかっただけかも知れぬ。
ちなみに鈴木は何気に俺の後ろを陣取っている。すそを小さく掴んでいる仕草が引っ込み思案な妹みたいで思わず萌える。なんというハニートラップ。くそっ、強すぎる! みんな! ここは俺が食い止める! ょぅι゛ょは任せて先にいけー! ぐへへ。
「最後ので台無しや」
「心を読むな」
そんなとりとめも無い会話をしていると、きっちり正装した壮年の小父様が登場した。初見だけどこのかパパなのだろう。きっと。
「ようこそいらっしゃいました麻帆良の皆様
私はこのかの父の近衛詠春といいます。このかがいつもお世話になっています」
「いっ、いえこちらこそっ!」
真っ先に明日菜が反応した。オジコンレーダーに触れたか? お辞儀をする恭しい明日菜に反応して慌ててソレに倣う図書館探検部の面子。
割と平然としているのは俺と、やっぱり雪広と茶々丸くらいだ。
「こちらこそ、このかさんとは普段から良くしていただいておりますわ
申し送れましたがワタクシ雪広あやかと申します
僭越ながら学級委員長を勤めさせていただいておりますわ
このかさんにはそちらでも手を貸していただくことがよくありまして――」
雪広の社交スキルが天元突破。
対してこのかパパはというと、妙にぽかんとしている。
さてはこういう普通な対応がくるとは思っても見なかったな?
「あ、ああいえ、そんな畏まらなくてもかまいませんよ
ええと――」
ん?
なんかこっちをチラ見してる。
ああ、全員が魔法関係者だとでも勘違いしていたのかも。
さすがにいきなり敵対視するつもりは無いだろうけど、連絡なしにいきなりだったから対処し切れなかったのか。
「雪広、チェンジ」
「あら
そらさんに相応の対応ができますの?」
「誤解があるようだから取っ払っておこうかな、と」
改めて。
「ども、近衛さんとはお友達をしています烏丸といいます
ちなみにこちらはネギ君、近衛さんを初めとしたこちらの女子たちの担任をしている子供教師です
直接的な関係者は俺たち二人くらいなので、過剰な反応はナシにしていただけるとありがたいです」
一応は友人の父親、という相手なのでこのかのことは呼び捨てにはできない。
そう言うと、少しだけ納得したような顔をした。
「そうでしたか
しかし、この場で話すというのも適さない話でしょうし――」
「ああいえ、一応は魔法のことには知識として知っている娘らなので大丈夫ですよ」
「――そ、そうですか」
再度苦笑されてしまった。解せぬ。
「で、本日来た理由なのですが」
改めて本題を切り出す。
無駄に溜めると、周囲の巫女さんらまでもが緊張した空気を張り詰めさせる。
「――ただの暇つぶしです」
『――は?』
おお、全員の言葉がシンクロした。
相手を驚かせることができるのって、なんか新鮮。
「正直特に目的も無く
ネギ君には日本文化をある程度見学させてあげようっていうのが名目ですけど、その過程上でここに寄っただけですので邪魔だというならお暇します」
『え……ええー……?』
まあ『魔法使い』をこの初心者集団に見せるっていう名目も亡きにしも非ずなのだけれど。
このかの実家が『まっとうな』魔法関係者集団だというなら、この場にやってきた俺らを一網打尽にするようなバカな真似はやらないだろう。という打算もちょっとはある。
で、いい加減に相応の反応をして欲しいのだけど。
「そ、そうですか……」
反応できたのはこのかパパのみ。
俺はDIOじゃないのだけれどなー。
× × × × ×
そして、時は動き出す――。
と、なったのは少年が突貫してきたお陰だった。
そうならなかったらあの空気のまま夕方まで放置となるところだったぜ。
「しょーぶや! 西洋魔法士!」
突貫してきたのは犬上小太郎と名乗るネギ君くらいの少年。
バイタリティあふれる彼に連れられるまま、我が一団は庭先へと移動していた。
あのままあの部屋にいても気まずかったから気にしないけれどもさ、子供をフルボッコにするのはさすがに気が引ける。
「そんなわけで、ネギくん。Go」
「え、ボクですかっ!?」
おや。
まさか自分ではないと思っていたのかな?
「だってこの中で西洋魔法士なんていうカテゴリにいるのはネギ君だけだし」
ほんとは鈴木もだけど、6号ちゃんはすでにやる気なしに縁側で茶を啜り観戦モードに移行している。
俺? ほら俺ってばスタンド使いだし。
「そらさんも魔法使いじゃ……」
「なにをばかな
まあ逝きたまえよ。キミくらいの年の男の子なら喧嘩に明け暮れるのも経験さ」
すっとぼけたことを言いつつ戦線離脱。
取り残されたネギ君は臨戦態勢な犬っ子に「えー……」と若干引き気味。
「はっ、おびえて喧嘩もできへんのか? 西洋魔術師なんてーのは臆病もんの集まりやなー!」
こたろう は ちょうはつした!
それはそうとカテゴリは統一しようぜ。
なけなしのプライドが勝ったのか、ネギ君も反論する。
一応は拳闘をやっていたから相応に『男子』な部分が反応したのかもしれない。
口喧嘩がデットヒート。
殴り合えよ。
「なんかgdgdだよな」
「あの~、あまり喧嘩を助長するのはどうかと~……」
「まあまあ本屋ちゃん、あれくらいならかわいいもんじゃない?」
「怪我は男の勲章、とも言いますしね
ネギ先生にも少年らしきところがあったということなのではないでしょうか」
「けんとう、を見た感じそれほど危なっかしいようにはみえへんかったしなー
日本ならもっとあんぜんちゃうん?」
うん? ……、あぁ。
なんでか気が抜けてるのかと思えば、ネギ君の試合を見た感想がみんなの第一印象として残っているのか。
まあ観戦したネギ君のあの試合はどれもこれも手加減された代物だったし、見た目派手なだけのプロレスみたいな拳闘だったからそう印象付けられるのも無理は無いか。
――ドコォッ!
そんなことを考えていたらネギ君が殴り飛ばされた。
唖然とする女子中学生群。
茶を啜る幼女。
舞い飛ぶ薬味少年。
犬っ子の追撃が繰り出される。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
どう見てもオーバーキルです。本当に(ry
「ちょっ、やりすぎじゃないの!?」
「ああっ! ネギ先生がっ! ぼろ雑巾のようにっ!」
「やりすぎです! 早く止めなくては!」
「いやあれはあれで正しい対応なんだけどね」
魔法使い相手にはかなり正攻法な対処法。
要するに詠唱させないようにラッシュで畳む。
単純だけど確実な戦略。
それにしてもよく息が続く。すげーな犬っ子。
「感心している場合ですのっ!?」
大体障壁で衝撃ぐらいは緩和しているから、俺としてはそれほど慌てることもないのだけれど。
まあどの障壁も打ち抜かれてクリティカルってるようにしか見えないのが現状だけども。
「ハッ、やっぱ西洋魔法士なんつーのはこの程度ってことやな!」
うぃなー、こたろう。
勝ち鬨を挙げる犬っ子はまあ置いといて、薬味少年を回収する。
「あーあ、ぼろぼろだなー」
「の、のんきやなそらくん」
「この程度の怪我なら回復手段ぐらい頼めばあるんじゃね?」
暗にこのかぱぱとかに聞いてみればどうよ? とこのかに話題を振ってみる。
理解力↑なこのかはうなずくと、すぐに人を呼びに行った。
「うう、そらさん……、こ、これで、僕のかたきを……」
「瀕死の割りには余裕だねネギ君」
バレーボールのようにヴォッコヴォコにされたネギ君は、腫れた顔でよろよろと懐から小判を取り出した。
それ映画村のお土産?
「ほぉー、お次はにいちゃんの番かい」
「え、いや俺は」
やるつもりはないのだけれど、
「やっておしまいなさいそらさん!」
「やっちゃえ烏丸くん!」
「ね、ネギ先生の敵をー!」
「生意気なガキは畳んじまうです!」
うーわ。
我らが担任をフルボッコにされたことで女子らはお怒りのご様子である。
改めて愛されてるねー、ネギ君。
「……明日菜は静かだな」
いの一番にモンペ的なことを言いそうな幼なじみに思わず目を向ければ、何か微妙な顔つき。
なんぞ?
「ほんなら行くでー!」
「え、まだやるとは言ってn「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
繰り出されるラッシュ。
その全てが俺を襲う。
――が、
「めんどいっ」「オ、ラァッハぁ!?」
がっし、ぽーい。
――ど・ぼーん
振り飛ばされた小太郎は庭先の池へと着水した。
「まだまだぁ!」
「えぇー」
どざぁ、と池から這い出てきて、再び襲い掛かってくる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
がっし、ぽーい。
――ゴン
振り飛ばされた小太郎は庭先の石灯籠へと着地した。頭から。
「……っ……! ……っ!」
悶絶する犬っ子。
平気?
「ダ、ダメージ受けるっつうこと知らんのかいアンタは!?」
「些細なことだろ」
「納得いくかぁーっ!!」
単にスタンドで全部攻撃を受けきったって程度なんだけどなー。
まあ見えなかったらわかるわけないか。
「か、烏丸くんってあんなに強かったの……?」
「ふ、ふぇー」
「た、確かにあれでは、烏丸さんからすればイジメにしかならないのですね……」
「それだけでは済みませんわよ……! 反撃しなさいそらさん……! ネギ先生をごみくずのように扱った報いを受けさせるのですわ……っ!」
「いいんちょ、ちょっと落ち着いて(……でも強かったんだ、そらって……。なんか心配して損した……)」
ほらー、ドン引きじゃないかよみんな。
雪広は未だに腸煮えくり返っている状態のようだけど。
つーかその言い方、何気にネギ君の傷口抉ってるから。
あとなんか明日菜が最後ボソっとつぶやいた気がした。気のせいか?
「もーいいだろ、そろそろお暇しておきたいのだけれどな」
「納得できるかい! ちゃんと勝負しろやー!」
現状、手も足も効かないのによく言えたもんだ。
「仕方ねえなあ」
ちぃともんでやろう。
雪広もうるさいし。
構えらしい構えはない。
自然体で、力を抜き、抜き身のコブシをだらり、と引っさげての、カウンターに対処できる抜刀術。
その名も――、
「ヒテンミツルギスタイル」
「なん……やて……っ!?」
まあ刀なんて持ってないけど。
子供相手には無刀で充分。
ほら、かかってこいよ。
~ょぅι゛ょは任せて先にいけ!
最強にして最悪の兵器。
投下された戦場では兵士の帰還率は最低を割る。
~このかぱぱ、空振り
正装もまったくの無駄。
ふぁいと。
~いぬっこ が あらわれた!
対処はネギ君に任せる!
ほら、そらってば平和主義者だしー(意味深)。
~こたろう の こうげき!
ある意味まっとうなオラオララッシュのアーキタイプ。
あきらたんのラッシュなんてなかったんや!
~だが すべて ふせがれた!
インストールドットは概念を打ち込むスタンドですがその基本形態は【意思】を撃ち込むもの。
防御する/迎撃するという【意思】があれば完全防衛のできるスグレモノ。
逆に攻撃が単体では出来ない、というのがこれまでのおさらい。
これでよくスタンド使いとか名乗れる。
都合のいいときばっかりだけどな!
~あすな は しんぱいそうに こちらをみている
久しぶりにヒロインらしいことを書いた気がする。
もう、ゴールしてもいいかな・・・?
犬っ子で一話作ろうとしたけど関呪のさわりを書いてたら変なところで切れてしまった
気楽な二次小説なのでそれほど深く書き込むつもりもないので、組織とかムツカシイハナシはやりたくないよ!
そして相変わらずちっちゃい娘が目立つ目立つ
鈴木をレギュラーにする運動が勃発しそうです
次回次々回辺り、大体出揃っている原作設定に改変が加わるかもしれません
ついていけねーよ、と思った方は遠慮なさらずにご感想をください
こいつほんとに好き放題書くなw、と思った方はエールをください
そんな感想が私の原動力です