ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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コイツが主人公でも良くね?
かっこよく書けてたらいいなー
そんな番外編


『そのころ麻帆良では』

 

 今日も気だるい気分で目を覚ます。

 清々しい朝なのに、片付かない問題がひとつあるだけでこんなにも憂鬱になるとは。

 俺もまだまだ修行が足りない。

 と起き抜けの頭で、彼は自身を叱咤した。

 

 

「はぁ……」

 

 

 ため息をついてその『問題』へと視線を向ける。

 目を覚ましたその背後、枕元の寝台の角には、学ラン姿の『悪霊』が膝立ちとなって佇んでいた。

 いや、コイツは『悪霊』ではないのだ。そのことは不本意ながら、彼自身がファンでもあるマンガの知識でよく知っている。

 

 それの名称は『スタンド』。

 それも第三部の主人公に憑いていた『スタープラチナ』と良く似た姿の『スタンド』だ。

 

 戦うための能力を持った不可視の存在を背後に従え、豪徳寺薫は今日も憂鬱にため息をついた。

 

 

   × × × × ×

 

 

 俺は『喧嘩屋』だ。

 男とは強くあるもの、漢であるもの、という理念の下に素手(ステゴロ)で最強を目指す。

 麻帆良ではよく居る、熱き夢を目指した少年たちが目指した先の通過点の一人だ。

 

 そのことを良く知っているからこそ、自覚しているからこそ、強くなろうという後進を見るのは嬉しく、胸に熱くこみ上げてくるものがある。

 それ以上に強くなりたい、という信念も己にある。

 だからこそ後進には壁となり、一足先を行くものたちに追いつきたいとも足掻く/鍛えることを忘れない。

 

 そんな己に、何故こんなものが憑いたのかが理解できなかった。

 

 強さは確かに渇望していた。

 だがそれは『自分自身を』という前提が敷かれている目標だ。

 マンガで読むような戦況を覆せる特殊能力ではない、自分が積み重ねてきた努力が土壇場で活きる。そんな才能こそが俺には必要だ。

 だからこんな能力は必要ない。そう思っていたが……。

 

 ……どうも世の中という奴は上手く回らないものらしい。

 

 間違っても己の喧嘩に使ってしまわないようにスタンドを制御しようとしたのだが、このスタンド、姿を現してから今日で一週間目、うんともすんとも反応しねえ。

 お前、何しに現れたんだ……?

 

 

「やあ豪徳寺君、調子はどうだい?」

 

「瀬流彦先生か……」

 

 

 スタンド制御を目的として、今日もいつも通りの特訓をしていたところ『先輩』がふらりと現れた。

 一見してそうは見えないが、この人も俺と同じ『スタンド使い』だ。

 先達として色々助言を受けてはいるものの、いまいち様にならないことが情けなくて歯噛みしちまう。

 

 

「どうもこうも、一向に反応がありゃしねえ

 先生はどうやって動かしてやがんだ?」

 

「うーん、僕の場合は『動かない』なんてこと自体がなかったからなぁ。助言だけじゃ話せることももうないよ」

 

「そうか……」

 

 

 芳しくない回答に、思わず恐ろしいヴィジョンが脳裏に浮かぶ。

 もしコレが俺に制御できないままだったら?

 そしてそれが喧嘩の最中に突然動くような事態になってしまったら?

 そしてその能力が予想以上の結果を出してしまったら?

 

 コイツは見た目スタープラチナに良く似ているのだが、細部が微妙に違う。

 特に身体の数箇所に掲げられているはずの『星』のマーク自体が『ハート型』へと変わってるのだ。

 『ハート』で思い起こすのは無理な連想かもしれないが、どうしてもあの『爆弾魔』キラークイーンを思い起こしちまう。

 もしそんな能力が自分の制御できない事態になってしまったら、などと思うとぞっとしない。

 俺は喧嘩屋であって殺人鬼ではない。

 

 

「強く……なりてぇ……」

 

 

 思わず口から漏れた。

 勝てる強さじゃない。

 己を律することのできる、従えることのできる強さが欲しい。

 当然勝つことも希望には入っているから己のなんと強欲で浅ましいものか、と自嘲するような気分にもなっちまっていた。

 

 

「強く、か……

 何なら、手をかしてあげてもいいんだよ?」

 

 

 俺の呟きに応えたことに瀬流彦先生の方へと思わず目を向ければ、先生はスーツの上着を脱いでネクタイの襟を緩めていた。

 何故か背筋が寒くなった気がした、があまり気にせずに聞いてみる。

 

 

「なんか、手段でもあるのか……?」

 

「手段というほどのものでもないけれどね、試してみて損はないと思うよ」

 

 

 「セカンドフロッガー」と、先生の背後に緑色のスタンドが現れる。

 前にも見せてもらったが、尻尾のない某人造人間もどきはやはり見慣れたものじゃない。

 

 

「スタンドは戦うためのものだ

 僕のは間違っても戦闘向きじゃないけど、だからこそスタンド専用のデコイとも呼べる代物だ

 さあ、僕/スタンドを殴って見せろ!」

 

 

 唐突的な変態発言にも似通った台詞だが、恐らくは俺を気遣ってのものなのだろう。

 要するに模擬戦の相手をしてくれると言っているのだ。

 

 

「――ちっ、先輩のご好意には頭が上がらねえぜ

 それじゃあ遠慮なくやらせてもらうけど……、

 ――怪我しても、知らねえぜ?」

 

 

 「構いやしないよむしろ来い!」と挑発にも律儀に応えてくれる先生に内心の嬉しさを隠しきれず、俺は拳を握り締めた。

 

 

「いくぜぇええ!」

 

「よっしゃこいバッチコイいますぐきてぇえぇええええ!!!」

 

 

「――モザイクブルー!」

 

 

「え」

 

「――あげろぱっ!?」

 

 

 ドフッス! と鈍い音が俺の拳の届く前に響いた。

 

 セル彦先生のスタンドは、突然現れた青い別のスタンドに鳩尾をアッパーカット気味に打ち貫かれ、それに合わせるように悲鳴を上げつつ、セル彦先生自身の身体もくの字に折れ曲がる。

 メタァ、とスタンドと連動してダメージを受けたセル彦先生が地面へ膝から崩れ落ち、青いスタンドはそれを気にせずに「セカンド」の首根っこを掴まえて佇んでいた。

 

 

「……え、だ、誰だ……?」

 

「なんか不穏な気配感じたから思わず

 お邪魔、しました?」

 

 

 後ろから声がかかり、ばっと振り向くと長身の女生徒がいた。

 コイツが、あのスタンドを使っているやつか……?

 

 

「ナニモンだ、テメエ……?」

 

「そんなに警戒されても……

 とりあえず敵じゃないです」

 

 

 そんなことを言われても信じられるわけがねえ。

 セル彦先生を不意打ちでいきなり倒したスタンド使い、なんて警戒しないほうが可笑しいだろ。

 

 

「とりあえず、そいつを放せ

 ハナシはそれからだ……っ」

 

 

 「セカンド某」とかいう緑のスタンドを未だに掴まえている状態なんて、充分に警戒に値するよな?

 

 

「全然信用してもらえてない……

 どうすればいいかな……」

 

 

 放せばいいと思うぜ?

 

 

『アラアラアラァ?

 何をしているのかしら? あなたたちは?』

 

 

 ――不意に、そんな声が聞こえた。

 

 

「「「!?」」」

 

 

 女生徒が、俺が、そしてなんとかいつの間にか復活していたセル彦先生が、そっちのほうへと顔を向ければ、そこには信じられない存在があった。

 

 

『校内で喧嘩かしら?

 そんな悪い子にはしっかりとOHANASHIしないとねぇえ?』

 

 

 ――戦車だ。

 

 

「は――っ、はぁああああああっ!?」

「え、ナニアレ」

「ひぃぃぃぃ!?」

 

 

 三者三様に驚きの声が上がる。

 無理もないと思う。

 そして、その『戦車』の砲台はしっかりとこちらを向いていた。

 

 

「やば」

 

 

 女生徒が呟く。

 俺も全身の毛が逆立つのを感じたのだから、同じように危機感を感じ取ったのかもしれない。

 そしてそれからの仕草は流れるように流麗だった。

 

 

「セル彦ばりあー」

「はい!?」

 

 

 青いスタンドが緑のスタンドを俺たちの眼前へと放り投げる。

 それと同じようなタイミングで、『戦車』が砲撃を発射した。

 

 

「ぎゃああああああ!?」

 

 

 セル彦先生が鼻毛を扱う少年漫画のよく犠牲になるところてんのような悲鳴をあげ、緑のスタンドが俺たちの壁となって砕け散った。

 その隙に俺たちは物陰へと全力で隠れる。

 ありがとう、俺はお前を忘れない……っ。

 

 

「って、セル彦先生死んだんじゃねえのかっ!?」

 

「あ」

 

 

 慌てて先生のほうを向く。

 先生(本体)は真っ白になって膝から崩れ落ちていた。

 例のマンガの描写的には完全に死んだイメージしか伺えないのだが!?

 

 

「………………………………………………

 多分大丈夫。スタンドが砕け散ったのなら本人も砕けるはずだから。全身満身創痍にしか見えないけど、多分生きてる。多分」

 

「沈黙が長すぎるだろ! というか『多分』多いな!」

 

 

 本当に生きてるんだろうな!?

 こんなギャグみたいな死に方なんて哀れすぎるぞ!

 

 

   × × × × ×

 

 

 『それ』はとある人物のスタンドである。

 『彼女』はこの場に来ることもできたが、直接動くことを是とはしない。

 『彼女』はあくまで裏方で、今回のコレも彼女本来の仕事の延長線上にスタンド使いが関わっていたから出張ってきたに過ぎないのだ。

 

 だが、そんなことは彼らには露ほども関係ない。

 

 むしろ、第一の犠牲者が出たことによって命の危機を感じる事態へとなってしまっていた。

 

 

「で、どうしよう?」

 

「スタンド……だろうな。あんなのが敷地内にいたら、基本なんでもありのさすがの麻帆良でも騒ぎになるだろうし……

 くそ、シアーハートアタックより性質が悪い……っ、あれで更に遠隔操作型なんて言ったら本気で逃げたくなるぜ」

 

 

 薫が至ったその思考は間違っていない。

 コレは『彼女』のスタンドの第三形態の上に、遠隔操作型であることも当たっていた。

 故に、この場の誰もが気づかないが、現状最悪な状況のままなのである。

 

 

「えーと、先輩? のあれは戦えますか?」

 

 

 長身の女生徒、アキラが薫に尋ねる。

 見た目中学生に見えないから先輩と呼んだのだろう。大方これも間違ってはいない。

 

 

「いや、無理だ

 俺のスタンドは何故か一向に動く気配がない」

 

 

 一見主役級にも見えるそいつは、薫の背後で佇むのみ。

 それを確認すると、アキラは頷いた。

 

 

「わかりました

 じゃあ私がアレを惹きつけますから、先輩はその隙に逃げてください」

 

「なっ! バカ言え! あんなのに敵う筈が――!」

 

「敵う敵わないの話じゃないんです

 戦えるものが戦う。それだけです」

 

 

 それが正義感なのか。

 それとも蛮勇か。

 アキラの言葉が薫の胸のうちに響く。

 息を呑み、前にも後ろにも進めない、そんな感覚を薫が覚えている間に、アキラは今にでも戦線へ躍り出そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「(俺は――何をしている?)」

 

 

 スタンドを使える。

 スタンドを使えない。

 ただそれだけの理由で二人の選択肢が分岐する。

 

 

「………………わかった、死ぬんじゃねえぞ」

 

「死ぬ気なんて、ありませんから」

 

 

 それに納得できない自分がいることを自覚しつつも、今はこれしか選択肢がないのだ。

 薫はこそ泥のように逃げつつ、そう自分に言い聞かせようとしていた。

 その時――、

 

 

『――本当にそれでいいのか?』

 

「!? だっ、誰だ!?」

 

 

 響いたその声に慌てて振り向く。

 そこにいるのは己のスタンドのみ。

 『それ』が、自分に言い聞かせていた。

 『それ』が、語っているのが理解できた。

 『それ』は、自分の声でもあった。

 

 

『お前は強くなりたいと願ったんじゃなかったのか?』

 

『女子供を捨てて逃げ出す、それがお前の強さか?』

 

『勝つことができなければ逃げ出すのか?』

 

『それでお前は強くなれているのか?』

 

 

「お、俺は……、俺、は……」

 

 

 どれもこれも自分の声で、どれもこれも自分が納得できない現状への不満で。

 どれもこれも、

 

 

「俺、は――っ!!」

 

『『『『俺は、強くなりたい』』』』

 

 

 ――彼の、願いだった。

 

 

   × × × × ×

 

 

 大河内アキラは普通の女子中学生だ。

 少し他人より背丈があって、少し他人より腕力がある。それでいて水泳に趣向を傾ける程度の、まだ常識人の範囲にいるはずの少女だ。

 少し他人より違うのは、不可視の能力であるスタンドを使える。ただその程度。

 

 だから、またセル彦先生が何かやっているのかと嗜めるつもりで口を挟んだ。

 被害意識と正義感、それ以上の感情も衝動もないままに、ここは平和な日本の一角なのだと、そんな無意識を自覚しないままに、知らないスタンドと対峙していた。

 

 それが――、今、命の危機を覚えている。

 

 

「はぁ、はぁ、くっ」

 

 

 息を切らせ、砲身がこちらを向く前に駆けて近づく。

 モザイクブルーは直接戦闘用のスタンドなために、最低でも2mは近づかないことには手も足も出ない。

 あまりにも無防備な、あまりにも無策な素人の行動。

 それでも近づけたのは、その『戦車』の砲身が見たところ一つだけに見えたからだった。

 

 

「これで、決まる――!」

 

 

 モザイクブルーにコブシを振り下ろさせる。

 

 ――が、

 

 

「―――っ!?」

 

 

 じわり、と自分の手が痛むのを感じた。

 石か鉄を直接殴ったような感触に、思わず手を引っ込めて握る。

 

 そして、『戦車』はまったくダメージを負っているようには見えない。

 コレの意味するところは、つまり、

 

 

「……っ、倒せ、ない……っ」

 

『そぉねえ

 というか、普通に考えればわかることだと思うけど?』

 

 

 事実に慄き、思わず呟いたそこへ投げられたのは『戦車』からの声。

 中に使い手がいるのか。それとも別の方法で意思の疎通を可としているのかは、アキラには判別できない現状であった。

 

 

『離れなくて、いいのかしら?』

「っ!?」

 

 

 次の瞬間、『戦車』が動いた。

 

 本来ならば――、

 すべての地上兵器を直接射撃で破壊する高初速砲の攻撃力と、その自身の砲をゼロ距離で防ぎきれる複合装甲の防御力。

 更にその50t前後の巨体を時速70kで駆け巡らせる起動力を併せ持って敵陣を蹂躙し歩兵の盾となる、最強の地上兵器。

 戦車とは怪獣映画に使われるようなかませ犬などではない。

 

 対して――、

 様々な能力と不可視の実体を持ち、常人では対処のしようもないようなエネルギーの塊。

 ただしそれは『対人』に限っての話。

 広域を殲滅したり、対象を爆弾に変えたり、バイオテロのような効果を発揮したりという非常識な悪意を顕現させる存在であっても、それらが高速戦闘機などと直接戦ったという話はない。

 スタンドとは、あくまで『対人』に特化した戦闘技能の延長線上でしかない。

 

 故に。

 車に直接体当たりを喰らわされたような錯覚を覚えつつ、轢帯を唸らせた『それ』から距離をとったのは間違いではない。

 たとえそれで砲身の害意を向けられているのだとしても――、

 

 

「あ――」

 

『ハイ、おしまい』

 

 

 砲身が唸り、目に映らぬ速さの衝撃がモザイクブルーを捉える。

 その瞬間、

 

 

「漢玉ぁっ!!」

 

 

 『それ』を横っ面から弾き飛ばした『攻撃』があった。

 

 

「っ? なんで……」

 

 

「へっ

 のこのこ逃げてちゃ漢が廃る、ってなもんよ」

 

 

 それは逃げろと離れた人物。

 自分が囮になるからと逃がしたはずの彼。

 

 ――豪徳寺薫が、そこにいた。

 

 




予想外に長くなったけど、これくらいの内容ならどうかな、という実験も兼ねての番外編
次回に続く。わけではない
こんな書き方ってどうよ?
展開が中途半端?
これから豪徳寺先輩のストーリーを初めてゆくんだよ、多分
まあ学園祭までは直接絡む予定はないけど。いつになるやら

以下、没ネタ

―――――――――――――――

 響いたその声に慌てて振り向く。
 そこにいるのは己のスタンドのみ。
 『それ』が、自分に言い聞かせていた。
 『それ』が、語っているのが理解できた。
 『それ』は、自分の声でもあった。

『お前は強くなりたいと願ったんじゃなかったのか?』
『女子供を捨てて逃げ出す、それがお前の強さか?』
『勝つことができなければ逃げ出すのか?』
『それでお前は強くなれているのか?』

「お、俺は……、俺、は……」

 どれもこれも自分の声で、どれもこれも自分が納得できない現状への不満で。
 どれもこれも、

「俺、は――っ!!」

『『『『俺は、強くなりたい』』』』

 彼の、願いだった。


「ペル、ソナァ……っ!」

『我は汝、汝は我』


 背後の『自分』が動き出す。
 さぁ――、反撃の始まりだ。

―――――――――――――――

本気でやりかけてあわてて消去
ペルソナじゃねえよスタンドだよ!
番長、自重してください


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